クラウドエンジニアとは?
クラウドエンジニアとは、クラウドサービスを利用してITシステムの設計や実装、運用、保守を行うITエンジニアです。
クラウドサービスは、インターネットを通じて、コンピューティングリソース(データの計算や処理をする資源。以降、ITリソース、リソースと呼びます)や、さまざまなソフトウェアサービスを提供する仕組みの総称です。
クラウドサービスの利用者は、サーバーやストレージ、ネットワーク機能、データベース、アプリケーションなどの開発に必要となるITリソースを、あたかも自分のコンピュータで所有しているかのように利用できます。
実際にはこれらのITリソースは、クラウドベンダー(クラウドプラットフォームやクラウドサービスの提供事業者)がデータセンター内で保守・管理しており、ユーザーはインターネット経由でその一部を借りる形で利用します。
このクラウドプラットフォームを利用して、クラウドサービス上で動作するITシステムの構築や運用を行うのがクラウドエンジニアの主な仕事です。国内外含めて広く利用されている主要なクラウドプラットフォームとしては以下があります。
クラウドプラットフォーム | クラウドベンダー |
---|---|
AWS(Amazon Web Services) | Amazon Web Services, Inc. |
Google Cloud | Google LLC |
Microsoft Azure | Microsoft Corporation |
さくらのクラウド | さくらインターネット株式会社 |
ALTUS | GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 |
IIJ GIO | 株式会社インターネットイニシアティブ |
Oracle Cloud Infrastructure(OCI) | Oracle Corporation |
IBM Cloud | IBM Corporation |
クラウド技術は進化が速く、クラウドベンダーも最新技術を利用したサービスを提供します。そのため、オンプレミス(サーバーやネットワーク機器などを自社で保有・運用すること)からクラウドへ移行する企業も増加傾向となっています。
このような背景から、クラウド技術に対して高い専門性を持つクラウドエンジニアの需要は高まっていますが、類似する職種も多くあります。ここではインフラエンジニア、サーバーエンジニア、ネットワークエンジニアとの違いを解説します。
クラウドエンジニアとインフラエンジニアの違い
クラウドエンジニアと同列に扱われることが多い職種にインフラエンジニアがあります。クラウドエンジニアとインフラエンジニアは、どちらもITシステムのインフラに関連した職種ではありますが、取り扱うインフラの種類や管理方法が大きく異なります。
クラウドエンジニアは、クラウドサービスで提供されるインフラの設計や構築、管理などを行います。
クラウドサービス自体はデータセンター内で物理サーバーやネットワーク機器などを使って構築されていますが、それらはクラウドベンダーによって管理されており、ユーザーはその環境の一部をサービスとして利用します。
そのため、クラウドエンジニアが実際にデータセンターに行って作業することはなく、インターネットを通じてクラウドベンダーが提供する管理ツールなどを使って開発を行います。
それに対してインフラエンジニアは、データセンターや企業のサーバールームなどで、物理サーバーやネットワーク機器などを直接使用してインフラの設計や構築、管理を行います。
そのため、クラウドに限らず、サーバーのセットアップや、ネットワークの物理的な配線、ストレージ機器やネットワーク機器の管理、電源管理などといった、ハードウェアに関する作業も担当するのがクラウドエンジニアとの大きな違いです。
インフラエンジニアの仕事内容については次の記事も参考にしてください。
クラウドエンジニアとサーバーエンジニアの違い
サーバーエンジニアは、ITインフラの中でも特にサーバーの設置や運用、保守を専門としているエンジニアです。
サーバーエンジニアも、インフラエンジニアと同様に、OSやソフトウェアだけでなく物理的なサーバー機器を取り扱う点がクラウドエンジニアとは異なります。
クラウドエンジニアもサーバーの設定や管理を行いますが、それは主にクラウドサービスの一部として提供される仮想サーバーが対象であり、物理的なサーバー機器を取り扱うことはありません。
それに対してサーバーエンジニアは、クラウドだけでなくデータセンターやサーバールームで物理サーバーの設置や管理も行います。機材の調達や、サーバーラックの配置、ケーブルの配線、電源管理などといった、ハードウェアのメンテナンスやトラブルシューティングも仕事に含まれます。
サーバーエンジニアの仕事内容については次の記事も参考にしてください。
クラウドエンジニアとネットワークエンジニアの違い
ネットワークエンジニアは、ITインフラの中でも特にネットワーク設備の設計や構築、運用、保守を専門としているエンジニアです。
ネットワークエンジニアも、インフラエンジニアと同様に、物理的なネットワーク機器を取り扱う点がクラウドエンジニアとは異なります。
クラウドエンジニアは、インフラ構築の一環として、クラウドベンダーが提供する管理ツールを使用してソフトウェア的にネットワーク関連の設定を行いますが、物理的な機器を扱うことはありません。
それに対してネットワークエンジニアは、クラウドに限らずデータセンターやサーバールームで、ケーブルの配線やネットワーク機器の設置、管理も担当します。
機材の調達や、ケーブルの配線、回線速度やネットワーク負荷の監視、トラブルシューティングもネットワークエンジニアの仕事です。
ネットワークエンジニアの仕事内容については次の記事も参考にしてください。
ネットワークエンジニアとはどんな職種? 仕事内容/年収/転職事情を解説【doda職種図鑑】
ここまで3つの職種とクラウドエンジニアの違いを解説しましたが、ハードウェアに関する作業の有無は共通した違いといえます。
クラウドサービスが普及した現在では、インフラエンジニアやサーバーエンジニア、ネットワークエンジニアがクラウドサービスを利用するケースはありますが、クラウドエンジニアがハードウェアを扱うということは基本的にはありません。
クラウドエンジニアは顧客折衝の機会が多い
クラウド上に構築されるサービスは、オンプレミスのシステムと違ってインフラ・サーバー・ネットワークとアプリケーションの業務が明確に分離されていません。
そのため、顧客折衝の際に最適なクラウドサービスの選定やクラウドとオンプレミスのシステムの効果的な接続方法などについて、相談や提案に応じる機会が多いといえます。
クラウドエンジニアの仕事内容
クラウドエンジニアは、クラウドサービスを利用したさまざまなITシステムの構築や運用を担当します。主な仕事内容としては次のものが挙げられます。
- クラウド環境の設計と構築
- クラウド上でのシステムの構築や保守・運用
- クラウド環境の運用の自動化・効率化
- 最新技術の調査・導入
それぞれ詳しく見ていきましょう。
クラウド環境の設計と構築
クラウドプラットフォーム上での環境の設計や構築は、クラウドエンジニアの主要な仕事のひとつです。
具体的には、必要なサーバーの台数やスペック、ネットワーク構成、ストレージの種類や容量、データベースの種類などを決定します。ビジネスの要件を理解した上で、可用性や拡張性、耐障害性などを考慮したアーキテクチャを設計することが重要です。
具体的な構成が決まったら、実際にそれぞれのコンポーネント(ソフトウェアやシステムの部品)の構築作業を行います。
構築の方法は使用するクラウドプラットフォームによって異なるので、それぞれのプラットフォームで提供されるツールについてよく理解しておく必要があります。
クラウド環境を安全に利用するためには、ファイアウォールやアクセス制御の設定など、さまざまなセキュリティ対策も施さなければなりません。セキュリティ対策については、より専門的な知識を持ったセキュリティエンジニアと共同で実施することもあります。
クラウド上でのシステムの構築や保守・運用
クラウド環境上で動作するシステムの構築や保守・運用もクラウドエンジニアの仕事です。
利用するアプリケーションやサービスを選定し、セットアップや詳細な設定を実施します。独自のアプリケーションを開発する場合には、開発を担当するチームとシステム構成に関する情報を共有し、デプロイメント環境の構築や、追加で必要な設定を行います。
保守・運用にあたっては、クラウド環境上のシステムを監視し、問題が発生した場合は迅速に解決できる仕組みを構築しなければなりません。
具体的には、システムの稼働状況、パフォーマンス、ログなどを監視して、異常が発見された場合には原因を調査した上で、復旧と再発防止策を講じます。問題の発生を早期に発見するためには、適切な監視ツールや分析ツールを導入することが大切です。
クラウド環境の運用の自動化・効率化
クラウド環境やクラウド上で動作するシステムの運用効率を向上させることは、クラウドエンジニアに任される大きな課題のひとつです。
そのための効果的な手段としては、トラフィックや負荷の変動に応じて自動でリソースのスケールアップ/スケールダウンが行えるサービス、インフラの構成をテンプレートにして効率化できる構成管理ツールの導入などがあります。
主なサービス名は以下です。
- 自動化サービス:AWS Auto Scaling(AWS)、Azure Virtual Machine Scale Sets(Microsoft Azure)など
- 構成管理サービス:Terraform(オープンソースツール)、AWS CloudFormation(AWS)など
また、組織内で使用する技術の標準化やマニュアル化などを進めることも重要です。
最新技術の調査・導入
クラウド技術は常に進化しており、クラウドベンダーはさまざまな最新の技術を利用したサービスを提供します。そのためクラウドエンジニアには、常に最新技術の動向に注目し、有用なクラウドサービスが開始された場合には調査して導入を検討することが求められます。
特にセキュリティ関連の市場動向や新機能のリリースには、目を光らせておく必要があります。もし新たな攻撃手法が報告された場合には、クラウドベンダーから共有される情報も参考にしながら、速やかに対策を講じなければなりません。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)クラウドエンジニアのやりがい
クラウドエンジニアの担当する業務の範囲は非常に幅広く、さまざまな専門的知識が必要となりますが、その分だけ多くのやりがいがある職種です。
一般的にクラウドエンジニアがやりがいを感じるポイントとしては、次のようなものを挙げることができます。
最先端の技術に触れることができる
クラウドエンジニアには、常に最新のクラウド技術やクラウドサービス、関連するツールなどを使用する機会があります。技術の進歩が非常に速い分野であるため、最先端の技術や、革新的な技術に触れられることは、仕事に対する高いモチベーションにつながります。
さまざまな知識・スキルを活かせる
企業のITシステムのクラウド移行や運用をサポートするのが、クラウドエンジニアの主な役割です。システムの設計から実装、運用、トラブルシューティングまで、担当する業務の範囲は多岐にわたります。
身につけた最先端の技術を、現実の問題解決に直接活かせることは、エンジニアとしても大きな喜びのひとつといえます。
高い報酬を期待できる
後述の「クラウドエンジニアの平均年収はどのくらい?」で解説するように、クラウドエンジニアは極めて需要が高い職種であり、その専門性に比例して高い報酬を期待できます。
高い報酬は、経済的な安定感を得られるのと同時に、自分のスキルが必要とされているという自己肯定感にもつながります。
社会に対する影響力が強い
近年では、クラウドサービスはすでに社会を支える重要なインフラのひとつです。クラウドエンジニアはその根本を支える職種であり、強い責任感とやりがいを持って臨むことができます。
クラウドエンジニアに向いている人の5つの特徴
では、どのようなタイプの人がクラウドエンジニアに向いているのでしょうか。一般的な特徴としては、次のようなタイプの人はクラウドエンジニアに向いているといえます。
もちろん、ここで紹介するのはあくまでも傾向でしかないので、これに当てはまらないからといって必ずしも向いていないというわけでありません。
- 最新技術への学習意欲が高い人
- 技術的な課題を解決する意欲が高い人
- 多様なプラットフォームに柔軟に対応できる人
- アプリケーションやサービスの開発に興味がある人
- グローバルな環境に抵抗がない人
最新技術への学習意欲が高い人
IT技術の中でも、クラウド関連の技術は特に進化が速く、次々と新しいツールやサービスが誕生しています。クラウドエンジニアとして成長するためには、それらの新しい技術やサービスに興味を持ち、常に学び続ける意欲を持ち続けることが重要です。
技術的な課題を解決する意欲が高い人
クラウド関連の技術は比較的新しい上に、さまざまな要素が関連し合ってシステムを構成しています。そのため、構築や運用ではいろいろな問題が発生することがあります。
そのため、技術的な課題を解決するのが好きで、粘り強く取り組むことができる人は、クラウドエンジニアに向いています。
多様なプラットフォームに柔軟に対応できる人
クラウドプラットフォームには、主要なものだけでもAWSやMicrosoft Azure、Google Cloudのように複数の種類があり、それぞれで提供されているサービスの内容や使い方が少しずつ異なります。
クラウドエンジニアには、そのような多様なプラットフォームに柔軟に対応する能力が求められます。
アプリケーションやサービスの開発に興味がある人
すでにITシステムのインフラに関する知識があり、顧客向けのアプリケーションやサービスの開発にも興味を持っているような人は、クラウドエンジニアとしての素養があります。
クラウド上に構築されるサービスは、オンプレミスのシステムと違ってインフラとアプリケーションが明確に分離されていません。
そのため、クラウドエンジニアは、顧客折衝の際にインフラの知識を活かし、クラウドサービスの選定やクラウドとオンプレミスのシステムの接続方法などについての相談に応じる機会が多くなります。
これにより、顧客に近い領域でもインフラ関連の知識を活かすことができるのです。
グローバルな環境に抵抗がない人
クラウドサービスは世界中で利用されており、国の境界があいまいです。特に最新のサービスに関する情報は英語で発信されることが多く、海外の他のユーザーと情報交換しなければならない機会が多くあります。
そのようなグローバルな環境に抵抗がなく、海外の人と積極的にコミュニケーションを取ることができる人は、クラウドエンジニアに向いています。
クラウドエンジニアの将来性
クラウドコンピューティングの市場は急速に成長しており、多くの企業がITインフラのクラウドへの移行を進めています。そのためクラウドエンジニアの需要は高く、非常に将来性が高い職種になっています。
クラウドへ移行する企業数は増加傾向
総務省が2023年に公開した「令和4年通信利用動向調査の結果」では、すでにクラウドサービスを利用している企業は年々増え続けており、2022年には全体の70%を超えています。
産業別の統計でも、情報通信業だけにとどまらず、金融・保険業や不動産業、建設業など、さまざまな業界に満遍なくクラウドサービスが浸透していることが分かります。
企業がクラウドへの移行を推進している理由はさまざまです。主な理由としてはシステムの拡張性や柔軟性の確保が挙げられます。
クラウドサービスであれば、需要に応じてリソースを簡単に拡張・縮小できるので、オンプレミスではしばしば課題となるピーク時の負荷に対応するために、過剰なスペックの機器を用意しなくて済むという強みがあります。
また、サーバーの設置場所や機材の調達も不要で、インターネット経由で場所を選ばずにいつでも使えるという利点もあります。
クラウドサービスは堅牢な設備を持ったデータセンターで、24時間365日対応の体制で運用されているため、自前でインフラを持つよりも障害に強いというメリットもあります。
万が一の障害の発生に備えたバックアップなどの対策も、自前で用意することなく、クラウドベンダーに任せることができます。
セキュリティやコンプライアンスの観点からもメリット
セキュリティやコンプライアンスの観点でも、クラウドへの移行はメリットがあります。
クラウドベンダーは最新の技術やベストプラクティスを使って非常に高いレベルのセキュリティ対策を行っており、アクセス制御やシステム監視についても厳密に運用しています。
コンプライアンスの重要性にも敏感で、企業のコンプライアンス要件を満たすためのさまざまなツールやサービスを提供しています。
このように、クラウドサービスにはさまざまなメリットがあるため、企業は専門的な知識やスキルを持ったエンジニアを必要としています。従って、クラウドエンジニアは今後も高い需要が続くと予想されており、非常に将来性が高い職種だといえます。
クラウドエンジニアの平均年収はどのくらい?
将来性が高いクラウドエンジニアですが、業務範囲が非常に幅広いため、年収は求人によって大きく異なります。ただ、一般的には、高度で専門的な知識やスキルを要求される職種であることから、高い年収を期待できます。
dodaの「平均年収ランキング」(2023年版)では、クラウドエンジニアという分類はありませんが、専門領域が比較的近い職種の2023年12月時点の平均年収は次のようになっています。
職種 | 平均年収 |
---|---|
SE/プログラマ | 422万円 |
Webサービスエンジニア | 424万円 |
ネットワークエンジニア | 446万円 |
サーバーエンジニア | 454万円 |
システム開発/運用 | 472万円 |
セキュリティエンジニア(脆弱性診断/ネットワークセキュリティ) | 487万円 |
近年、クラウドエンジニアの市場価値は急速に高まっているため、これらの職種よりも高いか、少なくとも同程度の水準の年収が期待できるでしょう。
IT技術の本場であるアメリカ合衆国では、クラウドエンジニアはどのように評価されているのでしょうか。
Indeedが公開している2024年5月時点の統計データでは、「Cloud Engineer」の年収は平均で126,585ドル(約2,045万円)、最低で84,429ドル(約1,364万円)、最高で189,790ドル(約3,067万円)となっています。
日本とアメリカとでは物価水準や契約形態が異なるため単純に金額を比較することはできませんが、極めて需要が高い職種であることは明らかです。
同データで「Infrastructure Engineer」を検索した場合の平均年収は119,974ドル、「Server Engineer」では94,466ドル、「Network Engineer」では97,027ドルです。Cloud Engineerの平均年収は、これら3つの職種よりも高い水準にあることが分かります。
クラウドエンジニアは未経験でも転職できる?
ITエンジニアの経験がまったくない人がクラウドエンジニアに転職することはできるのでしょうか。
残念ながら、完全に未経験の状態での転職はかなり難しいといわざるを得ません。クラウドエンジニアとして働くためには、ITシステム全般に関する基礎的な知識が不可欠です。
ただ、クラウドサービスに関する実務経験がなくても、インフラエンジニアやサーバーエンジニアとして物理的なITインフラを扱った経験がある場合は、クラウドエンジニアに転職できるチャンスは大幅に上がります。
物理インフラの設計や構築に関するスキルは、クラウド上のシステムの設計や構築でも大いに役に立つからです。
プログラマーやシステムエンジニアなど、ソフトウェアの開発に関わる仕事に従事している人も、クラウドエンジニアにキャリアチェンジするチャンスがあります。
近年のソフトウェア開発ではクラウドサービスを利用するのが一般的であるため、クラウドに関する知識を身につける機会が多いからです。
従って、まずはクラウドサービスを利用する機会が多いITエンジニア職で実務経験を積み、その上でクラウドエンジニアへのキャリアアップを目指すのが、未経験からの現実的なキャリアプランだといえるでしょう。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)クラウドエンジニアになるために必要なスキル5選
それでは、クラウドエンジニアになるためには具体的にどのような知識やスキルを身につければよいのでしょうか。ここでは、クラウドエンジニアに必須とされる5つの知識・スキルを紹介します。
- クラウドサービスに関する知識
- サーバーやネットワークに関する知識
- セキュリティやコンプライアンスに関する知識
- コンテナ技術やコンテナオーケストレーションツールのスキル
- システムの監視やパフォーマンスチューニングのスキル
クラウドサービスに関する知識
クラウドエンジニアにとっては、クラウドサービスに関する基本的な仕組みの理解と操作スキルは必須です。
特に、世界的に広く利用されているクラウドプラットフォームであるAWS、Google Cloud、Microsoft Azureについては、どのようなサービスが提供されているのかという概要と、基本的な利用方法などを習得しておいたほうがよいでしょう。
所属する組織やチームで使用しているクラウドサービスについては、より広範かつ深い知識が必要です。
具体的には、仮想サーバーをはじめとするコンピューティング機能や、ネットワーク構成、セキュリティ対策、ストレージの構成、データベースや監視ツールの導入など、システムの構築や運用に関わる各種サービスの詳細な使い方を習得しなければなりません。
サーバーやネットワークに関する知識
特にクラウドエンジニアの仕事には、仮想サーバーのセットアップやネットワーク設定なども含まれます。
そのためには、仮想サーバーのセットアップ方法、OSやミドルウェア(Webサーバーやアプリケーションサーバーなど)の管理、サブネットやVPN(仮想プライベートネットワーク)といったネットワークに関する知識が必要になります。
認証やファイアウォールによるアクセス制御、ロードバランサー(負荷分散装置)を使った負荷対策などに関する理解も重要です。
セキュリティやコンプライアンスに関する知識
クラウドエンジニアには、クラウド環境でのデータとインフラ保護に関わるセキュリティの知識も必要です。
例えば、ユーザーの適切な権限管理や、ポリシー設定(ユーザーの方針、ルール設定)、 ユーザーアカウントに対する多要素認証の導入、データの暗号化や暗号化鍵の管理などに関する知識は、クラウドサービスを利用する上で必須のものになります。
ファイアウォールやVPN、セキュリティグループやネットワークアクセス制御リストなどの高度なセキュリティ関連の知識も使いこなさなければなりません。
セキュリティ対策と関連して、コンプライアンスに関する知識が必要とされるケースもあります。
特に個人情報や機密情報の保護については、組織内のルールだけでなく、業界標準の基準や、法的な規制が設けられているケースもあります。それらの基準や規制について理解することが、組織や顧客を守ることにつながります。
コンテナ技術やコンテナオーケストレーションツールのスキル
最近のクラウドシステムでは、Dockerをはじめとしたコンテナ技術や、Kubernetesをはじめとしたコンテナオーケストレーションツールが採用されるケースも増えています。
コンテナ技術とは、アプリケーションとその依存関係を一つのパッケージにまとめ、OSやミドルウェアなどの環境が変わっても一貫して動作するようにする技術です。これにより、アプリケーションを移植しやすく、またスケーラビリティを向上しやすくできます。
一方、コンテナオーケストレーションツールとは、 Kubernetesのような複数のコンテナを管理・運用するためのシステムです。これらのツールを使うことで、コンテナのデプロイ、自動スケーリング、負荷分散、自己修復といった複雑なタスクを自動化できます。
そのため、クラウドエンジニアにはこれらの技術やツールを使いこなすスキルも求められるようになってきました。クラウドエンジニアとしての価値を高めるために、古典的なインフラの知識だけでなく、クラウドの能力を最大限に活用できるクラウドアーキテクチャの知識やスキルを身につけることにも挑戦しましょう。
システムの監視やパフォーマンスチューニングのスキル
クラウド上の構築されたシステムの運用では、パフォーマスを監視・分析し、必要に応じてチューニングを行うことが重要になります。
システムの内部構成をよく理解し、監視ツールや分析ツールを使いこなしてパフォーマンスの最適化やトラブルの早期発見ができれば、クラウドエンジニアとしての市場価値を高めることができます。監視ツール、分析ツールには以下のようにいくつか種類があります。
- 大手クラウドベンダーが提供するツール:AWS CloudWatch、Microsoft Azure Monitor、Google Cloud Operations
- 特化した監視ツール:New Relic、Datadog
クラウドエンジニアになるために持っていると便利な資格
クラウドエンジニアになるために必須となるような資格はありませんが、各クラウドベンダーが提供している資格を取得していれば、そのベンダーのサービスに関する知識やスキルを証明することができ、転職や実務で役に立ちます。ここでは、主要な3つのクラウドベンダーが提供している次の認定資格を紹介します。
- AWS 認定
- Microsoft Azure 認定資格
- Google Cloud 認定資格
どの認定資格も、クラウド技術に関する広く一般的な知識・スキルに関する内容を含むため、合格のために身につけた知識はベンダーを問わず活用できます。
AWS認定
AWS認定は、AWSが提供するクラウドサービスに関する認定資格です。AWSのクラウドサービスを効果的に使用するための知識とスキルを証明するもので、レベルと専門分野に応じてさまざまな試験が用意されています。
主要なAWS認定資格としては次のようなものがあります。レベルは「Foundational」(初級)、「Associate」(中級)、「Professional」(上級)、「Specialty」(専門)の4段階に分類されています。
認定 | 問われる知識やスキル | レベル |
---|---|---|
AWS Certified Cloud Practitioner | クラウドの概念やAWSのサービスに関する基礎的な知識や用語の理解 | Foundational |
AWS Certified Solutions Architect – Associate | AWS上でスケーラブルかつ冗長性の高いシステムを設計するための知識 | Associate |
AWS Certified Developer – Associate | AWS上でアプリケーションの開発やデプロイ、デバッグなどを行うスキル | Associate |
AWS Certified Solutions Architect – Professional | 大規模で複雑なAWS環境を設計、実装するための高度な知識 | Professional |
AWS Certified Security – Specialty | AWS環境で高度なセキュリティソリューションの作成と実装ができるスキル | Specialty |
Microsoft Azure 認定資格
Microsoft Azure 認定資格は、Microsoftが提供するクラウドサービスであるAzureに関する資格です。Azureのクラウドサービスを効果的に使用するための知識とスキルを証明するもので、レベルと専門分野に応じてさまざまな試験が用意されています。
主要なMicrosoft Azure 認定資格としては次のようなものがあります。レベルは「Fundamentals」(初級)、「Associate」(中級)、「Expert」(上級)の3段階に分類されています。
認定 | 問われる知識やスキル | レベル |
---|---|---|
Microsoft Certified: Azure Fundamentals | Azureの基本概念や主要サービス、サポートに関する基礎知識 | Fundamentals |
Microsoft Certified: Azure Data Fundamentals | Azureのデータ サービスに関連する中核的なデータの概念に関する基礎知識 | Fundamentals |
Microsoft Certified: Azure Administrator Associate | Azure上でリソースの管理、ストレージの実装、仮想マシンの管理、ネットワーキングの構成などといったクラウドインフラを管理するスキル | Associate |
Microsoft Certified: Azure Developer Associate | Azure上でアプリケーションの設計や構築、テスト、保守を行うスキル | Associate |
Microsoft Certified: Azure Solutions Architect Expert | 複雑なAzureソリューションの設計と実装を行える高度なスキル | Expert |
Google Cloud 認定資格
Google Cloud 認定資格は、Google Cloudが提供するクラウドサービスに関する認定資格です。Google Cloudのクラウドサービスを効果的に使用するための知識とスキルを証明するもので、レベルと専門分野に応じてさまざまな試験が用意されています。
主要なGoogle Cloud 認定資格としては次のようなものがあります。レベルは「Foundational」(初級)、「Associate」(中級)、「Professional」(上級)の3段階に分類されています。
認定 | 問われる知識やスキル | レベル |
---|---|---|
Cloud Digital Leader | クラウド コンピューティングの基礎知識と、Google Cloudのプロダクトとサービスに関する基礎知識 | Foundational |
Associate Cloud Engineer | Google Cloud の基礎を理解し、アプリケーションのデプロイ、監視、運用などの基本的な作業が実施できるスキル | Associate |
Professional Cloud Architect | Google Cloud上で、スケーラブルで信頼性の高いシステムを設計、構築、管理できる高度なスキル | Professional |
Professional Cloud Developer | Google Cloud上で、スケーラブルで高パフォーマンスなアプリケーションを設計、開発、デプロイできるスキル | Professional |
Professional Data Engineer | Google Cloud上でデータの収集や変換、公開のプロセスを設計、構築、管理できるスキル | Professional |
まとめ
この記事では、クラウドエンジニアの仕事内容や年収、将来性、クラウドエンジニアになるために身につけるべきスキルや役に立つ認定資格などについて解説しました。
クラウドエンジニアになるには、クラウドサービスに関する高度で専門的な知識・スキルを習得する必要があるため、難易度は決して低くはありません。
しかし、企業や組織でのクラウドの利用は年を追うごとに増加していることから、クラウドエンジニアの将来性は極めて高く、未経験からでもチャレンジする価値はあるでしょう。
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技術評論社 デジタルコンテンツ編集チーム
理工書やコンピュータ関連書籍を中心に刊行している技術評論社のデジタルコンテンツ編集チームでは、同社のWebメディア「gihyo.jp」をはじめ、クライアント企業のコンテンツ制作などを幅広く手掛ける。
dodaキャリアアドバイザー・串田 聡太(くしだ・そうた)
新卒で大手SIerに入社。国内最大手のハウスメーカーグループの担当として営業職に従事。その後「介在価値高く目の前の方の人生に貢献したい」という思いからパーソルキャリア株式会社に入社。入社以来、IT領域専門のキャリアアドバイザーとして、インフラエンジニアやITコンサルタントの方を中心に年間300人近い転職支援を行う。前職で得たIT技術や業界・企業に関する知見を強みとしている。
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