インフラエンジニアとは
インフラエンジニアとは、システムのインフラであるネットワーク・サーバー・データベースなどの構築や管理を専門とするエンジニアのことです。インフラは、基幹システムやWebアプリケーションなど特定の分野に限らずシステムに不可欠な存在であることから、それを扱うインフラエンジニアは「IT業界全体」を支える重要な職種といえます。
ただし、インフラエンジニアについての明確な定義はなく、インフラエンジニアが担当する業務の範囲は、会社やプロジェクトによって異なってきます。また、後述しますが、ITインフラの中でも細分化された領域を担当する職種を設けるケースもあります。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)インフラエンジニアの仕事内容
インフラエンジニアの仕事は、大きく設計・構築・運用の3つに分けられます。
インフラ設計
インフラを新たに設置する場合や、刷新する場合には「設計」が行われます。スペックやメンテナンス性など、さまざまな側面から検討して、必要な機器やサービスを選定します。
物理的なサーバーや通信機器を設置する場合には、モジュールのサイズや取り付け方なども重要な要素です。また、具体的な設置場所や配線方法についても検討します。
検討した結果は設計書としてドキュメントにまとめられます。
インフラ構築
設計が終わると「構築」のフェーズです。設計書をもとにインフラ機器を設置し、回線をつなげていきます(クラウド上のサーバーを利用する場合にはサービスの開設などを行います)。設置が完了すると、初期設定やソフトウェアのインストールを行います。
構築のフェーズでは、設計書の指示に従い、作業を着実にこなしていくことが重要です。設計書の指示以外のアクションをすると、思わぬトラブルが発生するおそれがあります。また、復旧に時間がかかることもあるため、構築の作業には慎重さや正確さが求められます。
インフラ運用
サービスを提供し続けるために欠かせないのが「運用」です。各種インフラ機器を正常に動作させ続けるためには、日々のチェックと定期的なメンテナンスが欠かせません。また、突発的なトラブルが起こった場合には、早急な対策が求められます。
インフラ機器は24時間365日稼働するのが基本です。そのため、休日や夜間の運用作業については、夜勤やアウトソーシングして対応します。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)インフラエンジニアの種類
インフラエンジニアはインフラ全般を受け持つ職種ですが、前述したとおり、インフラの中でも特定の役割を担う職種も存在します。例えば、ネットワークベンダーのような専門性の高い企業では、職域に応じて「ネットワークエンジニア」「サーバーエンジニア」などと明確に区分しているケースが多く見られます。
一方で、SIerなどではネットワーク事業部など部署や部門が分かれているケースもありますが、「インフラエンジニア」という大きなくくりでインフラ全般を幅広く担当することも少なくありません。
ここでは、そうした細分化されたインフラ系職種を4種類ご紹介しますが、会社によってはさらに細かい区分を設けていたり、役割を兼務していたりすることもあるため、あくまでも例としてご覧ください。
- サーバーエンジニア(クラウドエンジニア)
- ネットワークエンジニア(NE)
- データベースエンジニア
- セキュリティエンジニア
また、実際にインフラエンジニアへの転職を目指す場合には「インフラエンジニアをどのように定義しているのか」「どのような仕事内容でエンジニアを募集しているのか」を確認しておくことが重要です。
サーバーエンジニア(クラウドエンジニア)
サーバーエンジニアは、Webサーバーやメールサーバーなどを専門に扱う職種です。数年前までは、自社でサーバーを構築・管理(オンプレミス)するケースが一般的でしたが、近年ではクラウド上で構築するケース(IaaS)が増えています。そのため求められる知識も、物理的なサーバーに関するものから、クラウドに関するものへと変化しつつあります。また、クラウド環境を受け持つ職種をクラウドエンジニアと呼ぶこともあります。
なお、クラウドサーバーは、AWSやAzure、GCPなどのサービスごとに使い方が異なります。そのため、クラウドサーバーに関する一般的な知識に加えて、AWSなど特定の製品を使いこなせるほうが転職活動で有利となる傾向があります。
ネットワークエンジニア(NE)
ネットワークエンジニアは、物理的なネットワークを構築・管理する職種です。通信プロトコルやネットワークセキュリティなど、深い知識が求められます。また、ルーターやハブなど、通信機器に対する理解も欠かせません。製品知識や具体的な使用経験が、転職活動時の評価につながることもあるでしょう。
データベースエンジニア
データベースエンジニアはデータベースを専門に扱うエンジニアです。主に、データベースの設計や構築、運用などを行います。データベースはOracleやMicrosoft SQL Serverなど多くの製品があり、それぞれ管理ツールが異なります。
また、データベースエンジニアの募集は「Oracle経験○年以上」など、特定の製品についての知識や経験を求められるケースが多いでしょう。そのため、データベースエンジニアは、「Oracleエンジニア」のように特定のデータベースに強みを持つことも大切です。
セキュリティエンジニア
ITシステムのセキュリティ対策全般を担当するのが、セキュリティエンジニアです。近年さまざまな情報がインターネット上でやり取りされるようになった一方で、総務省が発表した情報通信白書(令和4年)によると、不正アクセスやサイバー攻撃は年々増加傾向にあります。
このような背景から、サイバー攻撃から企業を守るセキュリティエンジニアの重要性は年々高まっています。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)インフラエンジニアの需要・将来性
インフラエンジニアは、システムに不可欠なインフラを扱う重要な職種です。そのため、今後も安定した需要が見込め、ITエンジニアのなかでも将来性は高いといえるでしょう。
特にクラウドは、オンプレミスからクラウド化への潮流から、クラウドを扱えるインフラエンジニアの需要も急速に高まっています。とりわけ、クラウドサービスとしてシェアの高いAWSやAzureを扱えるインフラエンジニアは、多くの企業で必要とされています。
また、技術にははやり・廃りがあるため、インフラエンジニアとして活躍し続けるには、新しい技術を積極的に取り込み、知識をアップデートしていくことも必要です。例えば2024年現在では、IaC(Infrastructure as Code)の需要が高まりを見せています。したがって、このような潮流を常に把握し、スキルを身につけていく姿勢も求められるでしょう。
また、dodaが集計した「ITエンジニア中途採用マーケットレポート」のサーバーエンジニア、ネットワークエンジニア、セキュリティエンジニアの求人マーケット動向を見ても、例えば2022年12月から2023年11月の求人数は基本的に右肩上がりの傾向にあり、需要の強さがうかがえます。
ITエンジニア中途採用マーケットレポート(2023年6月発行)
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)インフラエンジニアの平均年収
dodaの「平均年収ランキング」(2023年版)を見ると、インフラエンジニアの職種のひとつである「サーバーエンジニア」の平均年収は454万円、「ネットワークエンジニア」の平均年収は446万円、「セキュリティエンジニア(脆弱性診断/ネットワークセキュリティ)」の平均年収は487万円となっています。
ITエンジニア全体の平均年収が452万円であるため、インフラエンジニアの年収は平均的な水準といえます。
職種 | 平均年収(全体) | 平均年収(男女別) | 平均年収(年代別) |
---|---|---|---|
サーバーエンジニア | 454万円 |
男性 473万円 女性 385万円 |
20代 393万円 30代 517万円 40代 635万円 50代~ 693万円 |
ネットワークエンジニア | 446万円 |
男性 465万円 女性 380万円 |
20代 376万円 30代 525万円 40代 647万円 50代~ 798万円 |
セキュリティエンジニア (脆弱性診断/ネットワークセキュリティ) |
487万円 |
男性 502万円 女性 390万円 |
20代 409万円 30代 567万円 40代 - 万円 50代~ - 万円 |
ITエンジニア全体 | 452万円 |
男性 473万円 女性 398万円 |
20代 380万円 30代 512万円 40代 642万円 50代~ 717万円 |
出典 : doda「平均年収ランキング」(2023年版)
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)インフラエンジニアの転職に役立つ資格
インフラエンジニアへの転職では、資格よりもこれまで携わってきた業務内容など、「経験」が重要視されますが、特定の資格はスキルを証明することに役立つため一定の評価につながるでしょう。近年では、IPAなどの汎用的な資格よりもベンダー資格が評価される傾向があります。ここでは、取得していると転職に役立つ5つの資格を紹介します。
AWS Certified Solutions Architect – Associate(SAA)
AWS認定ソリューションアーキテクト – アソシエイト(SAA)は、AWSの利用経験1年程度を有するインフラエンジニア(クラウドエンジニア)を対象とした資格です。AWSに関する全般的な知識が問われます。クラウドシェア1位であるAWSの基礎スキルを証明できるため、一定の評価を得られます。
Linux Professional Institute LPIC-1・2
Linux Professional Institute LPIC-1・Linux Professional Institute LPIC-2は、サーバーOSとしてシェアが高いLinuxを扱うスキルを証明する資格です。Linuxは、AWSなどのクラウドサービス上に構築したサーバーにインストールして使うケースも多く、クラウドサービス系の資格と合わせて取得するとよいでしょう。試験ではLinuxに関する幅広い知識が問われます。
シスコ技術者認定
シスコ技術者認定は、通信機器としてシェアNo.1であるシスコ製品を扱うスキルを証明する資格です。ネットワークエンジニアのデファクトスタンダートとも言える資格です。
幅広い資格が提供されていますが、まずは登竜門的な位置付けのCCNAから取得し、ステップアップでCCNP(数種類あり)の取得を目指すとよいでしょう。
ORACLE MASTER Silver DBA
ORACLE MASTER Silver DBAは、データベースとして高いシェアを持つORACLEを扱うスキルを証明する資格です。資格は、Bronze・Silver・Gold・Platinumと段階が分かれていますが、Silver以上が実務スキルを証明する面で評価されやすいでしょう。
情報処理安全確保支援士
情報処理安全確保支援士は、セキュリティエンジニアを目指す方におすすめの資格です。情報セキュリティに関する全般的な知識・技能が問われます。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)企業がインフラエンジニアに求める人物像とは
企業側はインフラエンジニアにどのようなタイプを求めているのでしょうか。詳細は求人によって異なりますが、求められることの多い人物像や資質についていくつかの例をご紹介します。
段取りのよさ
インフラの導入などでは、段取りのよさが重要です。特に、サーバーなどの設備を設置して配線する業務では、段取りのよさが作業効率を大きく左右します。また、誰でも間違いなく作業できるように、各種段取りをドキュメントにまとめる能力も必要です。
リサーチ力
各種インフラ機器やクラウドの上のサービスを選ぶ際、スペック上にはあらわれない「使いやすさ」や「保守のしやすさ」といった項目も重要です。しっかりとリサーチして、最適な組み合わせを検討する必要があります。
トレンドを見抜く力
インフラは一度導入すると、数年間は使われるのが一般的です。そのため、数年後のトレンドも見据えて、機器やサービスの選定を行わなければなりません。
社交性・調整能力
インフラは単体で動くものではありません。インフラにかかわる各種部門とのやり取りが発生するため、協力関係を構築する社交性が重要です。
また、インフラを入れ替える場合には、テスト日程や環境の確保など、高い調整能力が求められます。
業務改善・効率化意識
保守・運用においては定常業務も多く発生します。業務の自動化ができれば、工数や人員の大幅な削減が見込めるでしょう。目の前の仕事をただこなすのではなく、少しでも業務を効率化するという意識を持って仕事に臨む姿勢が求められます。
冷静沈着さ
インフラ系でトラブルが発生すると、企業活動に大きな影響を及ぼすリスクがあるため、一刻も早い復旧が望まれます。緊急事態でも冷静さを保ち、問題を切り分けて着実に復旧作業をこなせる能力は評価されます。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)転職希望者が押さえておくべきインフラエンジニアのトレンド
インフラエンジニアを目指すのであれば、どのような技術が今のトレンドなのかを押さえておくことも重要です。ここでは、近年のインフラに関するトレンドを紹介します。
オンプレミス環境からクラウドへの移行
オンプレミス環境からAWSをはじめとした各種クラウドサーバーへの移行は、インフラにおける大きなトレンドのひとつです。クラウド移行経験があるエンジニアの需要は高く、クラウドサーバーの構築から移行、運用経験などがあれば、転職活動時にアピールできます。
ハイブリッドクラウド・マルチクラウド
クラウド化の潮流に伴い、ハイブリッドクラウドやマルチクラウド対応の需要も増えています。これらに対応するスキルを有していると、インフラエンジニアとしての価値がさらに高まるでしょう。
クラウド化に伴うゼロトラスト対応
サーバーのクラウド化によって、さまざまな場所から、さまざまな端末を通じて各種情報へアクセスできるようになりました。便利なことも多い半面、情報セキュリティの観点では、より重厚な対策が必要となります。そこで求められるのが「ゼロトラスト」の概念です。ゼロトラストもホットなテーマですので、知見を集めておくとよいでしょう。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)未経験からインフラエンジニアは目指せるのか?
インフラエンジニアの求人は経験者を求めるものが多く、実際の事例でもインフラエンジニアの経験者が経験者として転職するケースが多いです。
以下でご紹介するのは、dodaの調査に基づくサーバーエンジニアなどのインフラ系職種に転職した方のデータですが、やはりインフラ系職種からの転職がメインで、そうでなくとも何らかのIT系職種の経験者であるケースが少なくありません。未経験からインフラエンジニアを目指すのであればハードルが高くなることは理解しておくとよいでしょう。
順位 | 前職 | 割合 |
---|---|---|
1位 | サーバーエンジニア | 30.0% |
2位 | 社内SE | 24.2% |
3位 | ネットワークエンジニア | 10.0% |
4位 | アプリケーションエンジニア | 7.3% |
5位 | テクニカルサポート/ ヘルプデスク |
4.6% |
出典 : サーバーエンジニアとはどんな職種?仕事内容/給料/転職事情を解説【doda職種図鑑】
順位 | 前職 | 割合 |
---|---|---|
1位 | ネットワークエンジニア | 32.5% |
2位 | 社内SE | 25.0% |
3位 | サーバーエンジニア | 15.6% |
4位 | テクニカルサポート/ ヘルプデスク |
5.0% |
5位 | 品質管理(IT/通信) | 2.5% |
出典 : ネットワークエンジニアとはどんな職種?仕事内容/給料/転職事情を解説【doda職種図鑑】
順位 | 前職 | 割合 |
---|---|---|
1位 | データベース/ セキュリティエンジニア |
49.5% |
2位 | 社内SE | 19.0% |
3位 | アプリケーションエンジニア | 8.6% |
4位 | ネットワークエンジニア | 6.7% |
5位 | テクニカルサポート/ ヘルプデスク |
2.9% |
出典 : データベース/セキュリティエンジニアとはどんな職種?仕事内容/給料/転職事情を解説【doda職種図鑑】
その上で、未経験から転職を目指すのであれば、経験不足を補うために自らキャッチアップする必要があります。やり方は一通りではありませんが、インフラエンジニアの場合は、アプリケーション開発に携わるほかの職種と比べて、資格で学んだ内容が比較的実務に活かしやすい傾向もあるため、学習方法として資格取得を検討する価値があるでしょう。
また、面接では、志望理由やキャリアの展望を質問されることが多いです。特に未経験からの転職であれば、即戦力として価値を発揮できるわけではないため、自らの学習姿勢やキャリアプランなどから成長する部分も含めて理解してもらう必要があります。
未経験からの転職では、こうした転職活動における選考対策だけでなく、「どのぐらい準備をしてから転職するべきか」「そもそもすべきかどうか」などで、経験者としての転職よりも悩ましい部分が多いです。
こうしたお悩みや疑問については、以下の記事で解説しているため、あわせてご覧ください。
未経験からITエンジニアになるには?転職活動の進め方や、よくある疑問について解説
転職活動を効率的に進めるためには、dodaエージェントサービスのご利用もご検討ください。この記事でお伝えした内容はもちろん、転職するか決めていない段階でのキャリアの悩みなどのご相談も承りますの、ぜひお気軽にご利用ください。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)小田部 大輝(こたべ・ひろき)
新卒でウェディングプランナーを4年経験した後、パーソルキャリア株式会社に入社。現在はキャリアアドバイザーとしてIT領域の方々を中心に支援を行う。一人ひとりの状況や感情に寄り添ったサポートを得意とする。また、自分自身の転職経験も踏まえ、転職活動のリアルなアドバイスや転職を希望する方々と同じ目線に立ってのフィードバックなどを通じて伴走することを心がけている。
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