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- YKKグループは、世界トップクラスのシェアを誇るファスニング事業(YKK株式会社)と、住宅・ビルの開口部を手がける建材事業(YKK AP株式会社)を中核に、世界71ヶ国/地域で事業展開を進めている。両事業の一貫生産を支える工機技術本部も有し、連結従業員数3万9000人が在籍するグローバルカンパニーとして、国内外で高い評価と地位を獲得している。
YKKの人事責任者を務める寺田氏は、1977年技術職としてYKK株式会社に入社。その後、1979年に香港社に赴任し、工場の生産技術者として工場運営に従事した。1982年からは技術畑で開発に関わり、1998年人事畑に異動、2005年にグループ経営管理センター人事グループに着任した。現在は、YKK株式会社 常務 人事部長として、新たなグローバル人事戦略プロジェクトを牽引している。
YKKグループでは、2010年度末に労働人口の減少、公的年金の支給開始年齢の引き上げ、雇用延長、などを背景に、「60歳定年、その後の再雇用」の現状を「65歳定年」に改めることを決定しました。対象は、国内事業会社の従業員、約17,000名です。もちろん課題はたくさんあります。私どもの試算では、定年を65歳までに引き上げると、相当の人件費上昇が見込まれます。これまでのように、年功に準じた給与制度を考えていたのでは、会社が持ちません。そこで、2011年5月に『働き方"変革への挑戦"プロジェクト』をスタートさせました。
今回のプロジェクトを進めるにあたり、大きく3つの基本コンセプトを掲げました。第一に、「公正」を基軸とした制度設計・運用。年齢・性別・学歴・国籍にかかわらない人事制度の構築を目指します。第二に、「仕事(役割)」による評価・処遇。同一役割・同一成果・同一処遇に基づく評価を社員に約束します。第三に、社員一人ひとりの「自律」を促す、自律型人生設計の奨励。仕事を人生のプロセスと捉え、各自の人生設計の創造をサポートします。つまり、社員一人ひとりの意識を変えずして、プロジェクトの成功は成り立たないということになります。
『働き方"変革への挑戦"プロジェクト』を進める中で、克服しなければならない重要な課題として認識していることがあります。それは、さらなる海外戦略を視野に入れた国籍にかかわらないグローバル人事制度の確立です。現在、YKKグループでは、世界71カ国/地域で事業を展開(※1)しており、人事制度もまた、それぞれの国や地域の文化・風習・国民性に根ざした制度で運用しています。しかし、今後さらに強固なグローバル事業を展開していくためには、海外間異動が可能な現地籍人材の育成が不可欠であり、加えて、こうした人材を公正に評価するための世界標準の人事制度も早急に整備しなくてはなりません。
「個を強くする」――、それがYKKグループの海外戦略における最重要テーマです。その実現のためには、まずは現地の役割・ポジションの見極めから始めなければなりません。たとえば、日本人が担うべき役割、海外間異動者が担うべき役割、現地社員が担うべき役割に切り分け、役割を明確化することから始めるということです。そうすることで、評価の最適化、キャリアパスの提示、採用計画の立案が自ずと導かれてきます。また、今後さらに進むであろう、グローバル規模での人材の流動化(※2)に向け、グループ全体に共有できる人事ルールの設定、タレント情報の整備、後継者計画の推進が不可欠の要素になるといっていいでしょう。現地の社員を強くし、現地の事業を強くする、それらすべてがグループ全体の経営に直結していきますので、国籍を問わず「個の強化」を主眼に置いた人事戦略を今後、積極的に仕掛けていく考えです。
- (※1) 現在、北中米、南米、EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカをカバーするエリア)、東アジア、ASAO(アセアン、南アジア、オセアニアをカバーするエリア)、そして日本と6つのブロックに分け、地域ごとの特性を活かしながら、「世界6極地域体制」としてグローバルな経営を展開している。
- (※2) ファスニング事業では、現在約450人が海外赴任中。また、入社3年目以降の技術系の若手には、「トレーニー制度」を設け、毎年約20名が1~2年間におよぶ海外研修を受けている。その一方で、技術部門の中枢である黒部事業所で、外国人従業員の研修を行ない、培ったノウハウを現地法人に還元する教育制度を導入している。日本と海外、海外と海外を行き来する人材の流動化を強化している。
YKKの人事制度は、人事理念「自律と共生」をベースに、役割を軸とした成果・実力主義の考え方で設計されています。それゆえ、それぞれの役割の価値を明示し、その任用要件を開示することが非常に重要になります。そして、それが個人の意志を育て、やがて、社員一人ひとりの豊かなキャリア形成につながります。
自律した強みを発揮した社員に対し、その仕事(役割)を公正に評価するには、年齢にかかわらない評価・処遇が必要です。先ほど、定年延長の話をしましたが、ここで社員、特に中堅・ベテラン層に改めて意識してほしいのは、「一度手にしたポストや給与は既得権ではない」ということです。若手層が新たなキャリアに果敢に挑戦することで、いい意味で互いに切磋琢磨しあう、世代間競争が生まれてほしいと願っています。社員が自分の人生設計をきっちりと考え、それに基づいた働き方という新しいレールを敷き、自らの力で走りきる能力を身につけてほしい。そのための体制づくりが、今回の『働き方"変革への挑戦"プロジェクト』における一番の狙いです。
変革を進める際は、痛みが伴うことも事実です。しかし、そうした痛みを乗り越えてこそ、われわれが目指す、強固な組織が達成できると考えます。そのためにも、まずは本社機能における人事制度基盤を強固なものにし、順次、グローバル基準の構築に向けて、各地へノウハウを展開していきたいと考えています。人事機能の活性化・緊密化が、今後の組織の飛躍を左右するといっても過言ではありません。5年後、10年後を見据え、多様化する"社員の働き方"のニーズに合わせた人事改革を、引き続き実行していく考えです。
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