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トップ企業が本音で語る 飛躍を前に立ちはだかる事業課題・経営課題

ソフトバンクグループ通信3社 執行役員人事本部 本部長 甲田修三氏

Company&Personal PROFILE
1981年の創業以来、代表・孫正義氏の力強いリーダーシップの下、経営理念「情報革命で人々を幸せに」を掲げ、数多くの革新的なサービスを展開してきたソフトバンクグループ。創業30年を迎えた2010年には「ソフトバンク新30年ビジョン」を発表し、これからの経済界をリードする代表的企業グループとして、さらなる期待が高まっている。
甲田氏は、1987年にソフトバンクに中途入社。その後、営業、マーケティング、経営企画、子会社役員などを経て、2004年にソフトバンクBBの人事本部長に就任する。そして現在、ソフトバンクモバイル、ソフトバンクテレコムを含むソフトバンクグループ通信3社の人事・組織戦略を統括する執行役員を担当。次世代の人材育成と組織形成に手腕を振るっている。

次の30年をつくるのは、「志」を軸とした人材育成と組織戦略

孫正義の後継者を発掘し、育成する道場「ソフトバンクアカデミア」を開設

ソフトバンクグループは、創業30年を迎えた2010年に「ソフトバンク新30年ビジョン」を発表しました。次の30年も引き続き、情報革命で人々の幸せに貢献して、時価総額で世界トップ10を目指し、そして「世界の人々から最も必要とされるグループ」として300年間成長し続けることを宣言しました。そのような壮大な長期戦略と背中合わせに存在するのが、後継者育成という課題です。「第2の孫正義」とも呼べる新しいリーダーを発掘して育て上げるために、2010年7月、後継者育成を目的とした道場「ソフトバンクアカデミア」を開設しました。

ソフトバンクアカデミアは週に1回程度、校長である孫正義が直面している具体的な経営課題について参加者で議論したり、ファーストリテイリング社長の柳井正さんをはじめとする著名な経営者を招いて社長の孫と対談するなど、多彩なカリキュラムを展開しています。定員は300名。参加者はソフトバンクグループの社内外問わず、幅広く募集しています。

1回目の募集ではグループ内から約1,000人、一般からは3,000人以上の応募が殺到しました。厳正なる審査の下、参加しているメンバーの多くは、20代・30代の若手のビジネスパーソンや経営者。中には、ソフトバンクグループの新卒採用の内定者もいます。半期に一度、20%の入校生を入れ替えながら続けていますが、新しい発想を生み出す創造的な場として、参加者にとって良い刺激になっているようです。この中からいつか、日本を代表する新しいリーダーが生まれることを楽しみにしています。

個々の「志」を企業の原動力に変えていく組織制度と人材採用

孫正義の後継者となり得る人材に必要不可欠な要素は「高い志を持ち、その実現に執念を燃やせる人」「変化を起こし、新しいビジネスをつくり出せる人」だと私は考えています。

そこで、社員一人一人の志と、ビジネスアイデアを表現できる場をつくりたいという思いから2011年、新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」をスタートさせました。ソフトバンクグループの社員であれば誰でも応募可能で、テーマは「情報革命で人々を幸せに」を軸としていれば、何でも好きなことを提案できます。社員自らの意志に任せて半年に1回、事業アイデアを募っていますが、前回は1,200件もの提案が集まり、10件が事業化検討の対象になりました。今回も1,200件を超え、最終審査の段階に入っていますが、驚くべきは、そのうち2件が新卒内定者によるアイデアだったことです。いつか新入社員の配属先が、自ら提案した事業を展開する会社や部署になるかもしれません。そんな未来図を想像すると、非常にワクワクしますね。

そのほかにも、個々の意志を組織の原動力へと変えていく人事制度が数多くあります。その一つが「ジョブポスティング制度」です。新規事業や新会社立ち上げの際に、社員が挙手制で参加できる仕組みで、手を挙げた社員に対しては、現在の所属部署の上司にも新しい部署への参加を拒否する権利はありません。組織の都合よりも、個々の自主性を優先することが、逆に組織の活力を向上させると信じています。

また、新卒採用においては「No.1採用」と呼ぶ制度を取り入れています。これは、大学での研究や部活動、ビジネスコンテストなど、ジャンルは一切不問で、何かの分野で「No.1」になったことのある学生を募集対象としている制度です。「大きな目標を掲げ、No.1になるために邁進した経験のある人材は、ビジネスパーソンとして優秀である」という視点から生まれた採用手法です。実際、この枠で入社した新入社員の中で、半年で営業成績トップになった社員もいます。このような「志の実現」を軸にした組織制度や人材登用戦略はソフトバンクならではだと思っています。

多様な企業文化の融合と、広がる事業の中で一つだけ変わらないことがある

「ソフトバンク新30年ビジョン」は、後継者育成と同時に「戦略的シナジーグループ」を掲げています。これは、世界中の優れた企業とパートナーシップを組みながら、自己進化と自己増殖をくり返して、30年以内に5,000社規模のグループ構築を目指す構想です。すでにソフトバンクは、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクモバイル、ソフトバンクBBの3社を中核に、数多くのグループ企業を抱えていますが、業務において企業間の隔たりはまったく存在しません。一つのプロジェクトに、異なる企業のメンバーが混在するのが当然という環境です。そのため、社員同士は、誰がどこの社員か特別意識していないと思います。さまざまな企業文化の融合こそが、新しさを生み出すエンジンになっていると思うのです。

「異なる企業文化で育ったメンバーが混在することで、組織の一体感が失われないのか」という危惧もあるかもしれません。しかし社員同士のつながりを生み出しているのは組織ではありません。孫が掲げる痛快なまでのビジョンにひもづく、各プロジェクトの事業目的です。事業ミッションが強い求心力となり、社員を結束させているのです。

今後、さらなる事業拡大を続けることで、社員にとって挑戦するフィールドは広がり、多種多様な人材が適材適所で各事業を牽引していくことになるでしょう。そんな多様性の中、どのようなタイプの人間が次世代の後継者になっていくかはまだ分かりません。崖っぷちの精神で攻め続けた孫から一転、守りのタイプの人間が台頭するかもしれませんし、もしかしたら複数の人間による合議制になるかもしれません。しかし、ただ一つ後継者の条件として確実に言えることは、孫の志を引き継ぐ人間であることです。この「志」という古くて新しい概念は、何年・何十年経ってもソフトバンググループの中心に存在し続けていくのだと思います。

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