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トップ企業が本音で語る 飛躍を前に立ちはだかる事業課題・経営課題

ヤマハ株式会社 執行役員 サウンドネットワーク事業部長 長谷川豊氏

Company&Personal PROFILE
2012年に創業125周年を迎えたヤマハは、日本を代表する楽器メーカーとして国内のみならず欧米、東南アジアなどでグローバルに事業を展開。世界的に大きくシェアを広げるピアノや管楽器、電子キーボードやギター・ドラムなどを開発製造する楽器事業をはじめ、オーディオ、半導体、さらにはゴルフ用品、自動車用内装部品の開発まで、多岐にわたるビジネス・サービスを手がけている。
執行役員の長谷川氏はヨーロッパでの楽器・音響機器の営業を担当した後、コンピュータ音楽、インターネットを中心とした新規事業開発に参加。現在は、サウンドネットワーク事業部の事業部長を務める。100年以上の長い歴史を持つヤマハにおいて、サウンドネットワーク事業部は2006年設立という若い部門のひとつ。いわば「社内ベンチャー」とも言える事業部の指揮官として、成長を牽引し続けている。

飽和状態のマーケットから抜け出す武器は、伝統のブランドと、改革者のゼロベース思考

世界的楽器メーカーが生んだニッチトップのネットワーク事業

サウンドネットワーク事業の主なビジネスは、事業者向けルーターや会議室システムなどのネットワーク機器の開発製造販売です。BtoCの音楽関連事業を主軸とするヤマハにとって、異質かつユニークな事業部と言えるでしょう。ルーター開発のスタートは、2006年の事業部設立以前の1996年頃までさかのぼります。ISDNが普及しつつあり、技術の転換期に差し掛かっていた当時、ヤマハにも新しくネットワーク関連事業に参入しようという動きが出始めていました。しかし、ネットワーク事業においては後発であり、音楽事業が中心である当社はまったくの門外漢。専門メーカーと真っ正面からやり合った場合、厳しい戦いを強いられるのは目に見えていました。

そこで目を付けたのが、SOHOや中小企業のマーケットでした。当時まだ高価だったネットワーク商品は、資金に限りのある企業にとっては高嶺の花。そんな小規模の事業者に向けて、安価で手軽に運用管理できるルーターを開発・販売し始めたのです。そして現在では、SOHO・中小企業向け通信機器というマーケットでは国内トップシェアを誇るまでに成長しました。その成功を支えたのは、伝統メーカー・ヤマハの信頼性と、音楽事業で培った開発技術でした。

既存のマーケットから脱却する3つの戦略とは

この十数年でニッチトップまで上り詰めたサウンドネットワーク事業ですが、現在、乗り越えるべき大きな壁にぶつかっています。それは、既存マーケットの飽和です。SOHO・中小企業向けの市場には、もう新しく攻めるべきフロンティアがほとんど存在しないのです。そんな状況の中、私たちが取るべき戦略は、大きく3つ。<(1)商品カテゴリーの拡大>、<(2)グローバル展開>、<(3)新規事業>です。

まず<(1)商品カテゴリーの拡大>については、これまでのルーター開発の技術と顧客基盤を活かし、ルーターと合わせ統合システムとして提案できるスイッチなどの周辺機器の開発・販売を強化していきます。現状の資産を活かしやすいこの戦略が、3つの戦略の中でも最も即時効果の得られる選択肢となるでしょう。

次に<(2)グローバル展開>は、すでに販売拠点のある中国を中心に、海外へと販路を広げていこうというものです。ゆくゆくは中国だけでなく、ASEAN諸国にもアプローチしていく展望もあります。そのために必要不可欠なのが、コミュニケーション力、交渉力です。日本のメーカーには、それが圧倒的に足りない。モノづくりだけでなく、その技術をどのように魅力的に伝え、惹き付けるか。克服すべき大きな課題だと思います。

最後に、<(3)新規事業>。新しい製品開発を通じて、新規顧客の開拓に乗り出していきます。その好例として挙げられるのが、「TLFスピーカー」。大判のポスターから、遠くまでささやくような音が届くヤマハならではのスピーカー技術です。このような新製品企画はマーケティング部門ではなく、主に研究開発部門から生まれており、マーケットインの現在の潮流とは真逆を行くものかもしれません。ただ、長期間かけてじっくりテストマーケティングと改良を繰り返すことで、マーケットニーズに沿った高品質なモノづくりを実現しています。このような新機軸を通じて、新しいバリューチェーンを作っていきます。

「老舗企業の中のベンチャー企業」が育むクリエイティブシンキングと、多様なカルチャー

上記のような3つの戦略を実現させていくために、強みとなるのが、やはり100年企業「ヤマハ」のネームバリューです。ネットワーク分野での歴史は浅いですが、世界的音楽機器メーカーとしてのブランド力は絶大。「高性能、高品質で長持ちする、メイド・イン・ジャパン」を象徴するメーカーとしての優位性は、海外ではもちろんのこと、国内でも強力な武器になっています。

そして今後、私たちの組織にさらに求められるものは、ゼロベースで発想、行動し、新しい事業を作り上げていくクリエイティブシンキング。既存の技術をマイナーチェンジするだけでなく、今までにない、現状をガラリと変えていく力です。この事業部は、いわば伝統企業の中にあるベンチャー企業。これからのヤマハに新しい血を注いでいく組織だからこそ、私たち自身、金太郎飴のような同質な人間ばかりの凝り固まったカルチャーに陥ってはいけません。さまざまな分野から多様な人材を受け入れ、新しいカルチャーを作り上げていきます。グローバル展開では、現地での採用・育成を強化し、ヤマハスピリッツと現地の土地勘を併せ持つメンバーの力を、販路拡大に活かしていきたいと考えています。

もともと、「とにかくやってみよう。新しい分野に飛び込んでいこう」というチャレンジ精神のもと、設立されたセクション。ヤマハにとって、挑戦・革新の象徴とも言える事業部です。私たちが成功するかどうかで、今後のヤマハの事業の広がりは大きく変化する。そんな試金石になっていることがプレッシャーでもあり、やりがいでもあります。この生まれたてのひよこのような組織をどうカタチにしていくか。それが、私のライフワークのひとつだと思っています。

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