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トップ企業が本音で語る 飛躍を前に立ちはだかる事業課題・経営課題

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長 出口治明氏

Company&Personal PROFILE
日本国内の独立系生命保険会社としては、実に74年ぶりに誕生したライフネット生命保険。「20代30代の若い世代の保険料を半分にすることで、安心して子どもを産み、育てることができる社会を育てたい」という思いのもと、手数料を抑えるために営業職員を抱えず、インターネットを活用した効率的かつ先進的なビジネスモデルで急成長を遂げた。そして2012年3月15日には、設立からわずか4年弱で東証マザーズに上場。その動向にますます注目が集まっている。
代表である出口氏は、日本生命保険相互会社に1972年から30年以上勤めた後、58歳で退社。60歳でライフネット生命保険を開業した「還暦ベンチャー社長」だ。設立から現在に至るまで、同社のスポークスマンとして数多くの著書を発行。さらには講演活動のために全国各地を奔走するなど、エネルギッシュで多忙な毎日を送っている。

商品ではなく、企業のあり方を売る 顧客をファン化し、生命保険の常識を変えてゆく

認知度の向上=信頼性の向上 3年10カ月で成し遂げた、世界初のネット専業生保の株式上場

なぜ、当社が現在、「認知度」を経営課題として掲げ、テレビCMや交通広告、書籍、講演活動、さらにはFacebookやTwitterをはじめとしたSNSなどあらゆる手段を使って、広報・PR活動を精力的に展開しているのか。その発端は、設立間もない頃に痛感した「見通しの甘さ」にあります。

当時、私は「生命保険業を始めるには、内閣総理大臣からの免許が必要。その高いハードルを乗り越えたのだから、それだけでも十分、成功できるだろう」と少しタカをくくっていました。しかし、フタを開けてみるとまったく契約数が伸びない。途方に暮れていたときに、ある女性の声を耳にしたのです。「生命保険は10年20年という長期間のお付き合いを前提とする商品。まだ設立から3年にも満たない会社からは買えないわ」と。大変ショックでしたが、そこでようやく気づいたのです。ライフネット生命保険には、まだ圧倒的に顧客からの信用が足りないのだと。

BtoCビジネスにおいて信頼を勝ち取るには、多くの人に知ってもらい、認知度を高めるしかありません。しかし、当社には営業は1人もいない。だからこそ、他社以上に広報・PRに力を注ぐ必要があったのです。設立4年弱という、ネット専業生保としてはおそらく世界最速での株式上場を成し遂げたのも、そんな施策のひとつ。アダム・スミスが『国富論』で「銀行や保険会社は、会社としてパブリックであるべきだ」と言っているように、IPOによる認知度と信用度の向上は、当社にとって早急に達成すべきミッションだったのです。

真っ正直な姿勢と具体策で、企業のファンを作り出す

私たちが、数多くのメディアで発信している情報は一貫しています。それは、「企業としての考え方」です。技術が進化した現代において、個別の商品やサービスだけでの差別化には限界があります。だからこそ「商品」だけを売ってはいけない。「企業としてのあり方や理念」も売る。企業そのもののファンになってもらい、そのうえで商品を購入していただくのです。そんな考え方から、当社では「真っ正直で、透明性を追求した経営姿勢」「わかりやすく、安くて便利な生命保険の提供」をお客さまへのマニフェストとして掲げ、ホームページにも載せています。

マニフェストを具現化した取り組みを一部紹介しますと、これまでブラックボックスとされてきた保険料に含まれる手数料をすべてオープンにしたこと、働いているお客さまでも問い合わせしやすいように、コンタクトセンターを平日は午後10時まで営業していることです。加えて、株主総会でも独自のスタイルを採用しています。当社の株主のほとんどは個人の方なので、無理なく出席できるように開催は週末に。有価証券報告書も事前に公開する。上場企業では、私たちを含めてわずか2社だけの施策だそうです。また会場は、株主だけでなく契約者の方々にも開放し、傍聴いただいています。

こういった企業姿勢を支持いただけているのか、ネット生保の同業他社に比べ、約3倍以上の保有契約件数を記録しています(2012年6月末時点)。それも、当社より価格が安く、外資系や大手金融という盤石な後ろ盾を持つ競合企業があるにも関わらず、です。このことは、海外の投資家からも注目を浴びており、「投資のセオリーを破る信じ難い現象。非常に不思議な会社だ」という評判が広がっているそうです。ビジネスの常識を超えたブランドであることが認知されつつあります。

強い組織に必要なのは、ダイバーシティとゼロベース発想

2011年度、ライフネット生命保険の売上にあたる経常収益は37億円でした。これは生命保険業界全体が約40兆円ですから、0.01%に満たない数字です。つまり、私たちという存在が世の中に大きなインパクトを与えるには、もっと大きく成長することがすべて。それにはまず、ライフネット生命の認知度を40%、50%と大幅に高めていかなければいけない。組織一丸で、さらにスピードを上げて、あらゆる広報活動を質・量ともに向上させていく必要があります。

強固な組織を作り出すために重要なのが、ダイバーシティ、多様性です。例えば、当社のホームページを制作しているのは、保険のプロではありません。さまざまな業界出身のいわば「保険の素人集団」です。だからこそ既成概念にとらわれることなく、多角的な視点から、ユーザーと同じ目線で情報を提供できるのです。また、国内生保企業で初めて常勤の女性取締役を抜擢し、副社長の岩瀬もまだ30代。前例にとらわれず、多種多様な人材を柔軟に登用していくことで、生命力豊かな組織を育んでいます。

ダイバーシティを重んじる一方で、社員全員に共通して求めるものがひとつだけあります。それは、「他の人が考えつかないことを、考える力」です。経営において必要不可欠である「数字・ファクト・ロジック」を踏まえた上で、ゼロベースから新しく発想していくこと。これなくしては、ベンチャー企業に勝機はありません。だから、当社では人材採用においても「考える力」を最重視しています。欧米企業の経営幹部はドクター、マスター取得者が珍しくありません。これと同様に、しっかり勉強してきた人に入社してもらいたい。そのため、新卒の定義を30歳まで広げ、非常に難易度の高いテーマの論文を提出した人だけを面接、その中から採用しているのです。発想力、想像力に富んだ多彩な人材組織で、生命保険の常識を変え、世の中を変えていきたいと考えています。

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