フルスタックエンジニアとは
フルスタックエンジニアとは、ITシステムの開発において、アプリケーションのフロントエンド(ユーザーインターフェース)からバックエンド(サーバーやデータベース、アプリケーションのロジック)まで、すべての層にわたって取り扱うことができるエンジニアのことです。
「フルスタックエンジニア」という呼び方は、主にWebアプリケーション開発の分野における職種または役割のひとつとして使われることが多いですが、開発全般に携わる能力を持ったエンジニアを指す一般用語として使われることもあります。
通常、ITシステムの開発に携わるエンジニアは、フロントエンドのプログラムの開発や、サーバー側で動作するプログラムの開発、アプリケーションが稼働するサーバーの環境構築、データベースシステムの構築、ネットワークの構築など、それぞれが個別の専門領域を持って仕事をしています。
そのため、ひとつのアプリケーションでも、複数の担当者が専門領域ごとに分担して開発・運用するのが一般的です。それに対してフルスタックエンジニアは、アプリケーション全体を単独で開発できる幅広い知識とスキルを持っています。
フルスタックエンジニアは、システム開発の上流から下流まであらゆる段階に関与することができるため、中小企業やスタートアップ企業の小規模なチームで特に大きな力を発揮します。
フルスタックエンジニアは常にすべての開発作業を一人で行っていると思われがちですが、それは大きな誤解です。
単独ですべて開発するスキルを持っているのは事実ですが、複数人のチームの中でオールマイティな支援役としてフルスタックエンジニアが活躍しているケースや、複数のフルスタックエンジニアがひとつのチームを組んで協力して開発や運用を行っているケースも多々あります。
フルスタックエンジニアとシステムエンジニアの違い
フルスタックエンジニアの理解を深めるために、代表的なITエンジニア職種のひとつであるシステムエンジニア(SE)と比較して違いを見てみましょう。
一般的に、システムエンジニアはシステム全体の要件定義や設計、構築、管理といった上流工程を担当します。顧客へのヒアリングを通じて要求を分析し、それに応えるために最適なシステムを設計・開発して納品することがシステムエンジニアの主な役割です。
設計書を作成したりプログラムを開発したりといった作業だけでなく、チーム編成やスケジュール管理、顧客との意見の調整なども行い、プロジェクト全体を円滑に進めることがシステムエンジニアの責務になります。
それに対してフルスタックエンジニアは、システムの環境構築やプログラムの開発、テスト、運用保守といった下流工程を担当することが多い職種です。
この下流工程の中にも、フロントエンドやバックエンド、データベースなどといったより細かな専門分野があり、それらを総合的に扱うことができるのがフルスタックエンジニアです。
取り扱う技術の幅にも違いがあります。システムエンジニアは、ソフトウェアだけでなくハードウェアやネットワーク管理を含めた、システム全体の設計や構築に関する広範な技術を扱います。また、要件定義やプロジェクト管理などの技術以外のスキルも必要となります。
一方でフルスタックエンジニアは、開発や保守に使用するソフトウェア技術に焦点を当てた、より専門的なスキルが求められます。
具体的には、HTMLやCSS、JavaScript、フロントエンドのフレームワーク、JavaやPythonなどのサーバーサイドのプログラミング言語、データベース技術、サーバーサイドのフレームワークやミドルウェア、Linuxをはじめとするサーバー向けOSなどを扱います。
もちろん、システムエンジニアにもソフトウェア技術について高度なスキルを求められるケースはあります。逆に、小規模なチームではフルスタックエンジニアが設計をはじめとする上流工程まで含めて担当することもあります。フルスタックエンジニアはシステム全般を俯瞰的に見渡すことができるので、その知識は上流工程でも活かすことができます。
フルスタックエンジニアの仕事内容
フルスタックエンジニアは、ITシステムのさまざまな機能の開発・構築を担当します。主な仕事内容としては次のものが挙げられます。
- フロントエンド開発
- バックエンド開発
- データベースの構築
- インフラの構築
それぞれ詳しく見ていきましょう。
フロントエンド開発
WebサイトやWebアプリケーションの中で、ユーザーが直接利用する部分のことを総称して「フロントエンド」と呼びます。
例えばショッピングサイトであれば、商品一覧を表示する画面や、各商品の情報を表示する画面、ログイン画面や、ショッピングカートの画面など、私たちが普段目にしているのはすべてフロントエンドに分類されます。
フロントエンドはユーザーが直接利用する部分なので、その完成度がサービスの使い勝手を左右し、ユーザーからの評価にも大きな影響を与えます。
フロントエンドの開発はフルスタックエンジニアの主要な仕事のひとつです。具体的には、HTMLやCSS、JavaScriptをはじめとする技術を使って、ユーザーが直接操作する画面のユーザーインターフェースやサーバーとやり取りをする機能を作成します。
フロントエンド開発では、JavaScriptの機能を拡張する各種フレームワークやライブラリを使うことで、より高機能で対話性の高いユーザーインターフェースを構築することができます。
フロントエンド開発がどのような仕事なのかについては、フロントエンドエンジニアについて解説している以下の記事もあわせて参考にしてください。
バックエンド開発
フロントエンドに対して、ユーザーの目には触れないサーバー側の仕組みのことを総称して「バックエンド」と呼びます。
バックエンドでは、フロントエンドからの要求に応じてさまざまな処理を行い、その結果をフロントエンドに返します。フロントエンドとバックエンドは表裏一体で、両者が連携することによってひとつのアプリケーションが完成します。
例えばショッピングサイトの商品検索画面で、ユーザーが検索条件を入力したとします。このときバックエンドでは、入力された検索条件を受け取って、その条件に合う商品の情報を商品データベースから探し出し、その結果をフロントエンドに返します。
ユーザーが商品を購入したときは、決済の処理を行い、商品データベースの在庫情報の更新や配送のための処理を行います。
実務作業としては、JavaやPython、PHPなどのプログラミング言語を使用して、アプリケーションのサーバー側で動作するプログラムを開発します。データベースやCMS(Contents Management System)など、特定の機能を提供する専用のシステムを使うことも少なくありません。また、APIを使って外部のシステムと連携させることもあります。
バックエンドはWebアプリケーションの本質的な機能を実現する部分です。フルスタックエンジニアは、フロントエンドとあわせてバックエンドの開発も行います。
バックエンド開発がどのような仕事なのかについては、バックエンドエンジニアについて解説している以下の記事もあわせて参考にしてください。
データベースの構築
フルスタックエンジニアは、バックエンド開発の一部として、アプリケーションが使用するデータを管理するためのデータベースの構築も行います。
データベースの構築では、単にデータを格納するだけでなく、大量のデータから目的の情報をスムーズに取り出すための最適な構成を考えたり、バックアップの仕組みを整備したりするなど、さまざまな専門的な作業が必要です。
データベースの構築は、ユーザーから見たWebアプリケーションの動作速度に大きく影響します。いくらプログラムの処理が速くても、データベースでデータを検索する速度が遅ければ、その分だけユーザーの待ち時間も長くなります。
また、大事なデータを扱うシステムなので、セキュリティも万全に整える必要があります。
実務作業としては、データベース管理ソフトウェアのセットアップ、データをどのように格納するかの詳細な設計、バックエンドのプログラムと連携するためのインターフェースの準備、実際に使用するデータの格納などを行います。
広く利用されているデータベース管理システムとしては、Oracle DatabaseやPostgreSQL、MySQL、Microsoft SQL Serverなどがあります。最近では、Amazon RDSやGoogle Cloud SQL、Azure SQL Databaseなどといったクラウド型データベースを利用するケースも多くなっています。
インフラの構築
フルスタックエンジニアの仕事は主にアプリケーションの開発に焦点を当てたものですが、バックエンド開発の一部として、アプリケーションの実行に必要なインフラの構築を行うこともあります。
最近ではアプリケーションの実行環境としてクラウドプラットフォームを利用するケースが増えており、インフラの構築もソフトウェア的に行うことが可能になったため、フルスタックエンジニアが関与できる範囲も広がっています。
具体的には、以下の作業を担当することがあります。
- Webサーバーのセットアップ
- クラウド上の仮想マシンのセットアップ
- ストレージやネットワークなどのリソース設定
- Dockerをはじめとしたコンテナ実行環境の構築
- モニタリングやログ管理の仕組みの構築
ほかにもテストの自動化やCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)など、アプリケーションのデプロイメント環境の整備も行います。
ただし、フルスタックエンジニアが関与するインフラ関連の作業は、アプリケーションの開発やデプロイメント(使用可能な状態にすること)を支援するためのものが中心であり、インフラ全体の設計や運用管理についてはより専門的な知識を持ったシステムエンジニアやインフラエンジニアが担当することになります。
例えば、物理サーバーのセットアップやデータセンターの運用、大規模なネットワークの設計や管理、堅牢なセキュリティ対策、複雑なシステムの監視や障害対策などは、極めて高度な専門知識が必要とされる作業であり、通常はそれぞれの専門家が担当します。
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フルスタックエンジニアがどのような仕事なのか分かったところで、自分に向いているかどうか気になる方もいるのはないでしょうか。ここでは、どのような人がフルスタックエンジニアに向いているのかを紹介します。
もちろん、ここで紹介するのはあくまでも全体的な傾向でしかないので、これに当てはまらないからといって必ずしも向いていないというわけでありません。
- 好奇心旺盛で学習意欲が高い
- コミュニケーション能力が高い
- マルチタスクが得意
- 得意分野以外の領域に飛び込むことを厭わない
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
好奇心旺盛で学習意欲が高い
ITの世界では次々と新しい技術やツールが登場しており、ITエンジニアにはそれらを積極的に取り入れて業務に活かすことが求められます。そのため、ITエンジニアは常に最新の技術動向に注目し、自分の技術やスキルを磨き続ける必要があります。
フルスタックエンジニアは扱う技術の種類が多岐にわたるため、その傾向は特に顕著です。
好奇心が強く、新しい技術や製品が発表されたときにワクワクしてすぐに使ってみたくなるようなタイプの人は、フルスタックエンジニアとして成長する素養を備えているといえるでしょう。
コミュニケーション能力が高い
フルスタックエンジニアは担当する業務の範囲が広いので、必然的にチーム内外のほかのメンバーとコミュニケーションを取る機会が増える傾向にあります。
例えばバックエンドの開発ではインフラエンジニアやセキュリティエンジニアとの連携が必要ですし、フロントエンドの開発ではデザイナーからの協力が不可欠です。要件定義や仕様の作成にも関わる場合は、顧客やユーザーのニーズを正確に把握するためのヒアリング能力や説明能力が必要になります。
技術的な内容を分かりやすくほかのチームメンバーやステークホルダーに説明できる人は、プロジェクトのさまざまな領域で自身の持つ知識やスキルを最大限に発揮することができるため、フルスタックエンジニアに向いているといえます。
マルチタスクが得意
複数のタスクを並行して進めることができる人もフルスタックエンジニアに向いています。
フルスタックエンジニアは、通常であれば複数のエンジニアが分担して行う範囲のタスクを一人で担当します。そのため、あるタスクを実施している最中に、別のタスクが割り込むというようなケースが多々あります。
そのような場合には、優先順位をつけて適切に時間管理しながら仕事を進める能力が求められます。
得意分野以外の領域に飛び込むことを厭わない
実際にフルスタックエンジニアとして働いている人でも、最初から担当するすべての分野の技術に精通していたという人はほとんどいません。
大抵は、まず何かひとつの得意分野を持った上で、それ以外のものにも積極的に取り組んだ結果として、幅広い技術を身につけています。
「それは自分の得意なことではないから得意な人に任せる」という姿勢ではなく、むしろ「挑戦するチャンス」と受け取って躊躇せず新しい領域に飛び込んでいける人は、フルスタックエンジニアとして活躍できる可能性があります。
フルスタックエンジニアの年収はどのくらい?
幅広いスキルを必要とされるフルスタックエンジニアですが、平均年収はどれくらいなのでしょうか。
フルスタックエンジニアが担当する業務の範囲や求められる技術レベルは企業やチームによって大きく異なるため、その年収にも明確な基準がなく、相場を判断するのは困難です。
しかし一般的に、対応可能な業務が多く、それぞれの専門性が高ければ、それだけ高い年収を得ることができます。
dodaの「平均年収ランキング」では、2023年12月時点のアプリケーション開発に関連した職種の平均年収は次のようになっています。
職種 | 平均年収 |
---|---|
データベースエンジニア | 412万円 |
システムエンジニア/プログラマー | 422万円 |
Webサービスエンジニア | 424万円 |
ネットワークエンジニア | 446万円 |
サーバーエンジニア | 454万円 |
システム開発/運用 | 472万円 |
フルスタックエンジニアは、これらの複数の専門領域を一人で担当することができる貴重な人材なので、より高額な年収を期待できるでしょう。
ただし、フルスタックエンジニアの求人は中堅以上の人材を想定したものが多く、高い年収を得るためには豊富な開発経験を求められることにも注意する必要があります。
フルスタックエンジニアは将来性が高い職種!
IT技術の進化が速く、デジタル化が急速に進む現代においては、インターネットを利用したアプリケーションやサービスの開発ニーズが増加しており、ITエンジニアの需要も高まっています。
しかしその一方で、企業側の立場では、人件費の削減やエンジニア不足などの課題に悩まされているという事情もあります。
そんな中で、幅広いスキルを持ち、一人で複数の専門分野の業務を担当できるフルスタックエンジニアは貴重な存在であるため、転職市場でも需要が高いでしょう。
エンジニアの市場価値について解説している次の記事でも、フルスタックエンジニアは市場価値が高い職種のひとつとして紹介されています。
エンジニアとしての市場価値を高めるためには?診断する方法はある?
また、近年では開発担当と運用担当が緊密に連携してアプリケーションを開発する「DevOps」と呼ばれる手法を採用する企業が増えてきました。
フロントエンドとバックエンドの開発に加えて、データベースやインフラのスキルまで持ち合わせているフルスタックエンジニアは、システム全体を理解して効率的に管理できることから、DevOpsの実践で重要な役割を果たせるとして期待されています。
フルスタックエンジニアになるにはどうしたらいい?
実際にフルスタックエンジニアを目指す場合にはどのようにアプローチしていけばいいのでしょうか。
フルスタックエンジニアになるためには複数の分野の専門知識を持つ必要があるため、以下のような段階を踏んで、長期的なプランを持ってキャリアを積み上げることが重要です。
- 基礎的なスキルを身につける
- ひとつの分野のエンジニアとして経験を積む
- 専門分野の幅を広げる
基礎的なスキルを身につける
現時点でITエンジニアとしての経験がない場合には、まずは基礎的なスキルや知識を身につけることから始める必要があります。どのようなスキルが必要になるのかは、後述する「フルスタックエンジニアに必要なスキル5つ」を参考にしてください。
大切なのは、学んだ内容を必ず自分で実践することです。
参考書や資料を読んで理論を学ぶだけではなく、自分でプログラムを書いて実行し、動作を確認しながら学習を進めるようにしましょう。そしてある程度の知識が身についたら、簡単なものでもよいので実際に動作するWebアプリケーションを開発してみましょう。
そうすることで、一人でWebアプリケーションを開発するためには、具体的にどのようなスキルが必要なのかを肌で感じ取ることができるはずです。
ひとつの分野のエンジニアとして経験を積む
最終的にフルスタックエンジニアとしての就業を目指すとしても、最初は特定の専門分野のエンジニアとして就職し、開発の経験を積むほうが堅実なキャリアプランです。
一般的なアプローチは、フロントエンドの開発者として経験を積んで徐々にバックエンドも扱えるようになるか、逆にバックエンドの開発者として経験を積んでフロントエンドも扱えるようになるかのどちらかでしょう。
インフラエンジニアとして経験を積んでフルスタックエンジニアを目指す道もありますが、前述のようにフルスタックエンジニアが担当するインフラ構築はアプリケーションの実行環境に焦点を当てたものに限られる傾向がある点に注意する必要があります。
専門分野の幅を広げる
ITエンジニアとしてある程度の開発経験が身についたら、徐々にカバーできる専門分野を広げていきましょう。そのためには、日々の業務の中で、自分の専門分野に隣接する分野にも積極的に関与することをおすすめします。
例えば、フロントエンドのエンジニアであれば、アプリケーションのサーバーサイドの仕組みの理解も深めていきましょう。バックエンドのエンジニアは、日々の業務の中でもOSやデータベース、クラウド技術などを扱う機会があるはずなので、それらをより深く理解するように努めましょう。
このようにして、取り扱える技術を段階的に増やしていくことが重要です。
キャリアアドバイザーに聞くフルスタックエンジニアの転職のポイント
ここまでフルスタックエンジニアになるためのステップを紹介してきました。それでは、実際にフルスタックエンジニアへの転職を目指す場合は、どのようなことがポイントになるのでしょうか。dodaのキャリアアドバイザーに聞いてみました。
dodaキャリアアドバイザー・眞鍋 翼(まなべ・つばさ)
「フルスタックエンジニアは複数採用よりも一名枠などピンポイントで採用しているケースが多くなります。そのため、採用充足になるスピードも速く、求人の入れ替わりが激しくなりやすい職種です。
気になる求人があれば早めに応募を進めていくとよいでしょう。」
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)フルスタックエンジニアに必要なスキル5つ
フルスタックエンジニアになるためには、アプリケーション開発全般にわたって幅広いスキルを身につけなければなりません。ここでは、その中でも特に重要となる次の5つのスキルを取り上げます。
- フロントエンドのプログラミングスキル
- バックエンドのプログラミングスキル
- サーバーに関する知識
- データベースに関する知識
- クラウドサービスに関する知識
フロントエンドのプログラミングスキル
フルスタックエンジニアの主な仕事の領域はWebアプリケーション開発なので、フロントエンドとバックエンドのプログラミングのスキルは必須です。
フロントエンドの開発で使われている主なプログラミング言語はJavaScriptなので、まずはJavaScriptの習得を目指しましょう。また、JavaScriptとセットで使われるHTMLおよびCSSも習得しておく必要があります。
HTMLとCSSはWebページのレイアウトやデザインを作成するためのものなので、厳密にはデザイナーの担当領域になりますが、エンジニアにも要求されることが多いスキルです。
プログラミング言語としてのJavaScriptだけでなく、Webアプリケーション開発をサポートするJavaScriptフレームワークについて学ぶことも大切です。
フレームワークとは、システムやアプリケーションを開発する際の基盤となる機能やライブラリをまとめたツールセットです。JavaScriptフレームワークでは、Webページの構造を作る機能や、バックエンドとの連携を容易にする機能などが提供されます。
主なJavaScriptフレームワークとしてはReact、Vue.js、Next.jsといったものが挙げられます。ただし、フロントエンドの開発技術は進化が速く、フレームワークの流行もすぐに移り変わる傾向にあるので、常に最新の動向に注意して技術選択をする必要があります。
バックエンドのプログラミングスキル
フルスタックエンジニアには、フロントエンドだけでなくバックエンドのプログラミングのスキルも必要です。バックエンドの開発で使われる主要なプログラミング言語としては、JavaやPython、Ruby、PHPなどがあります。
それぞれの言語で習得のしやすさや得意とする分野が少しずつ異なるので、当面の目標に合わせて学習する言語を選ぶのがいいでしょう。言語の知識だけでなく、フロントエンドのプログラムやデータベースと連携する仕組みについても理解しておく必要があります。
バックエンドの開発でもフレームワークが重要であり、それぞれの言語ごとにさまざまなフレームワークが提供されています。
例えばJavaであればSpring FrameworkやJakarta EEなどがよく使われます。PythonであればDjangoやFlaskといったフレームワークが人気です。少し変わったものとしては、JavaScriptをバックエンドの開発に使えるようにするNode.jsのようなフレームワークもあります。
次の記事では、初心者が学習するのにおすすめのプログラミング言語を5つ取り上げ、特徴や目的別の選び方とあわせて、それぞれの言語向けの主なフレームワークについても紹介しています。
フロントエンドやバックエンドでどのプログラミング言語を学習するか迷っている場合には参考にしてみてください。
初心者におすすめのプログラミング言語5選!特徴や目的別の選び方について解説
さらに、最近ではJavaScriptの機能を拡張したTypeScriptも需要があります。TypeScriptは、JavaScriptに加えて、プログラムを書くときにデータの種類を事前に決める機能を持っており、特に大規模なプロジェクトでプログラムの品質を保つために有用です。
TypeScriptはフロントエンドだけでなく、バックエンドの開発にも使用されることがあるため、幅広い場面で役立つプログラミング言語として注目を集めています。主なTypeScriptフレームワークとしてはAngularがあります。
サーバーに関する知識
アプリケーションが動作する環境をセットアップするためには、基盤となるサーバーも扱えなければなりません。Webアプリケーション開発でよく使われるサーバー用OSはLinuxですが、プロジェクトによってはWindows Serverが採用されている場合もあります。
普段使っているデスクトップPCとは異なり、サーバー環境ではGUI(グラフィカルユーザーインターフェース。マウスやアイコンを使い視覚的に操作できる画面を指す)ではなくコマンドでさまざまな操作や設定を行うことが多いため、基本的なコマンドは使えるようになっておく必要があります。
コマンドとはコンピューターに特定の処理を実行するための命令文です。また、Webサーバーソフトウェアやデータベースソフトウェア、バックアップツール、各種プログラミング言語の実行環境など、一般的なソフトウェアのセットアップ方法も身につけておきましょう。
データベースに関する知識
現代のアプリケーション開発ではデータベースに関する知識もほとんど必須といえるものになっています。
バックエンドの開発をするエンジニアにとって特に重要なのは、データベースシステムに対してデータの格納や取得を行うためのクエリ言語である「SQL(Structured Query Language)」で、プログラミング言語とあわせて身につけておく必要があります。
また、小規模なアプリケーションではデータベースの構築そのものをフルスタックエンジニアが担当することもあるので、データベースソフトウェアのセットアップや、データ構造(プログラムで扱うデータの格納、管理、操作に使用する形式)の設計、データの安全性を保つための分散化やバックアップの仕組みの構築などといったスキルも重要になります。
クラウドサービスに関する知識
最近ではアプリケーションの実行環境としてクラウドプラットフォームを利用するケースが増えています。また、アプリケーションの機能の一部としてクラウドサービスを利用するのも一般的になってきました。
そのような事情から、フルスタックエンジニアには、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureなどをはじめとするクラウドサービスに関する知識も求められています。
クラウドサービスが一般的になったことで、Dockerをはじめとしたコンテナ環境や、Kubernetesのようなコンテナオーケストレーションツールなど、よりクラウドに最適化されたアプリケーション実行基盤を採用するケースも増えてきました。
フルスタックエンジニアとしての仕事では、これらの技術に関する知識が必要になることもあります。
フルスタックエンジニアに資格は必要?
フルスタックエンジニアとして仕事をするためにはスキルや経験が重要であり、資格は必須のものではありません。しかし、資格試験や検定の合格を目指して体系立てた学習を行うことは、土台となる知識やスキルを身につける上で大いに役に立ちます。
フルスタックエンジニアが扱う技術の範囲は幅広いため関連する資格や検定も多数ありますが、ここではその中でも特に基礎的な知識を身につけるのに適した次の3つの試験を紹介します。
- 応用情報技術者試験
- データベーススペシャリスト試験
- Linux技術者認定試験(LPIC/LinuC)
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験の上位試験に位置づけられており、より実践的な情報技術の応用能力やシステムの設計、開発、運用などに関する知識が求められます。
また、プロジェクトマネジメントやシステム監査、経営戦略など、技術以外の分野の問題も出題されます。応用情報技術者試験がカバーする内容は、フルスタックエンジニアとして働く際にとても重要です。
応用情報技術者試験の合格率は20%前後で、難度は高めだといえるでしょう。出題範囲が非常に広いため、実務経験があったとしても、合格を目指すにはしっかりとした試験対策が必要です。
データベーススペシャリスト試験
データベーススペシャリスト試験は、データベースの設計や運用に関わる専門知識が問われる試験です。
現代のアプリケーション開発ではデータベースに関する知識はほとんど必須のものとされているため、データベーススペシャリスト試験はフルスタックエンジニアを目指す上でも有用な試験といえます。
データベーススペシャリスト試験で求められるのは、データベースの基本的な概念や、設計原則、SQL(Structured Query Language)、パフォーマンスチューニング、セキュリティなどに関する知識です。
フルスタックエンジニアにとって、これらの知識は、アプリケーションのデータ設計やデータ解析、プログラムでデータを扱う際の最適化、システムの保守や運用などにおいて重要になります。
試験の難度は高めで、データベースに関する中級レベルから上級レベルの知識と実践的な能力が必要だとされています。
Linux技術者認定試験(LPIC/LinuC)
LinuxはWebアプリケーションの実行基盤として広く利用されており、バックエンドのエンジニアが扱う機会が多いOSのひとつです。
Linuxの基本的な使い方は資格を取らなくても学ぶことはできますが、Linuxについて体系的に理解してエンジニアとしてのスキルを向上させるためには、Linux技術者向けの認定資格の取得を目指すことをおすすめします。
主要なLinux技術者の認定試験には「LPIC」と「LinuC」の2つがあります。それぞれどのような認定試験なのかを説明します。
LPIC
LPIC(Linux Professional Institute Certification)はLPI認定資格とも呼ばれており、世界中で実施されている標準的なLinux技術者認定試験です。
カナダに本部を持つ「LPI(Linux Professional Institute)」という団体が運営しており、日本ではLPIの日本支部が認定試験を実施しています。試験は、LPIC-1(レベル1)、LPIC-2(レベル2)、LPIC-3(レベル3)という3つのレベルに分かれています。
LPIC-1はLinux入門者向け、LPIC-2はシステム管理やサーバー管理のスキルを持つ実務経験者向け、そしてLPIC-3はセキュリティや仮想化、高可用性システムといった高度な知識を持つエンジニア向けの内容になっています。
Linux Professional Institute (LPI)
LinuC
LinuCの正式名称は「Linux技術者認定試験 LinuC」で、LPI-JapanというNPO法人によって運営されています。世界中で実施されているLPICに対して、LinuCは日本国内でのLinuxの需要に合わせて作られた日本独自の認定試験になっています。
LPI-Japanは、もともとは日本向けにLPIC試験の運営を担当していましたが、日本と世界ではIT市場における需要が大きく異なるという理由から、日本の市場に最適化させた形で開始したのがLinuCになります。
そのためLPICのように国際的な知名度はないものの、日本国内で働くエンジニアにとってはLinuCのほうが適しているといえるでしょう。
LinuCも、LPICのようにLinuCレベル1、LinuCレベル2、LinuCレベル3という3つのレベルに分類されていて、LinuCレベル1がLinux入門者向け、LinuCレベル2が実務経験者向け、LinuCレベル3がより高度な知識を持つエンジニア向けの内容になっています。
まとめ
この記事では、フルスタックエンジニアの仕事内容や年収、将来性、フルスタックエンジニアになるために身につけるべきスキルなどについて解説しました。
フルスタックエンジニアになるには、アプリケーション開発の経験を積み、幅広く高度な専門スキルを身につける必要があるため、その道のりは決して簡単なものではありません。
しかし、一人で多くの業務を担当できるフルスタックエンジニアは需要が高く、極めて将来性のある職種です。
dodaエージェントサービスでは、フルスタックエンジニアに関する求人の情報提供や、フルスタックエンジニアを目指す上でのキャリアプラン形成のサポートも実施しています。お気軽にご相談ください。
技術評論社 デジタルコンテンツ編集チーム
理工書やコンピュータ関連書籍を中心に刊行している技術評論社のデジタルコンテンツ編集チームでは、同社のWebメディア「gihyo.jp」をはじめ、クライアント企業のコンテンツ制作などを幅広く手掛ける。
dodaキャリアアドバイザー・眞鍋 翼(まなべ・つばさ)
人材協認定人材紹介コンサルタント資格
日本キャリア開発協会認定 CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)
2013年3月に大学を卒業後、1社目では人材紹介会社で建設・不動産業界向けのキャリア支援を約4年経験。その後、2017年4月より現職のパーソルキャリア株式会社でキャリアドバイザーとしてキャリアを築いてきました。人材業界・キャリア支援の経験は新卒の頃より一貫して担当してきましたので約11年の経験があります。得意としている領域はIT業界で、エンジニアのご経験をお持ちの方の転職支援を担当しております。
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