社内SEの求人件数と転職希望者数の推移
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の影響により、求人マーケットにはさまざまな変化がありました。事業活動の縮小により求人を控える企業も多く、全体の求人件数が減少する中、IT職種については比較的落ち込み幅が緩やかな動きを見せました。社内SEもその一つです。
いったん冷え込んだ求人マーケットですが、現在は徐々に回復基調にあります。このような社会状況の下、社内SEの求人状況はどのようになっているのでしょうか。dodaが調査した「ITエンジニア中途採用マーケットレポート」をもとに、詳しくご説明します。
【採用企業向け】ITエンジニア中途採用マーケットレポート(2021年3月発行)
コロナ禍でも社内SEの求人件数はやや上昇
社内SEの求人件数はコロナ禍にあっても安定しており、2020年9月以降ゆるやかに上昇しています。中でも最近の特徴として、技術志向の人材や、クラウドやAI、データサイエンスなど特定の技術領域に知見のあるスペシャリストを募集する企業が増えてきました。
以前はシステム開発を外注する企業が多く、ベンダーコントロールなど上流工程の経験者の求人が多く見られましたが、近年はDX推進を目的としたシステムの内製化を実現するために社内SEを採用する企業が増加し、社内SEの求人市場も多様化してきています。
社内SE転職希望者数は増加
転職希望登録者は2020年12月以降、横ばい~上昇傾向にあり、2021年6、7月にいったん減少しましたが、翌8月には増加に転じています。ITエンジニアで転職を考える方の中でも社内SEの人気は高く、コロナ禍が続く現在でもこの傾向は変わりません。登録者の年齢構成は2020 と変わらず、41歳以上が3割超ともっとも多く、ほかのITエンジニアの職種に比べ高い比率となっています。
転職理由は、スキルアップや就業環境改善が挙げられる一方で、高まるDX推進の流れの中で、自身のスキルや市場価値に対する不安から、社内SEへの転職を視野に入れる方も一定数いるようです。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)社内SEの求人に見る業務内容
社内SEの仕事は社内システムに関する全般にわたりますが、企業によっては業務分担が進んでおり、範囲が限られていることも少なくありません。ここでは社内SEの主な業務内容を解説します。
IT戦略の立案
規模の大きい企業や裁量の大きいベンチャー企業では、経営方針に沿ったIT戦略の立案も業務内容に含まれる場合があります。例えば、「事業部ごとに個別管理していた顧客情報を全社で統合し、異なる事業間で送客できるようにして売り上げ拡大を図る」といった意向が経営層から伝えられた際に、IT戦略の観点からその実現方法やプロセス、予算などの戦略を立案します。
また、自発的に複数の部署から出される要望をとりまとめて、課題解決に向けて経営層にIT戦略を提案することを期待される場合もあります。
社内システムの開発、運用保守
新規システム導入および既存システム改修を目的とした設計・開発を行います。ベンダーに外注する場合と内製する場合があり、内製する場合は設計・開発・テスト・導入までのすべての工程を担います。システム部門での立場がマネージャー職の場合はプロジェクトマネージャー(PM)として、品質・納期・コストの管理も行います。また、導入後の運用・保守も社内SEの仕事です。
社内インフラの整備
サーバーやネットワークなど、社内システムを安定的に稼働させるためのインフラの構築・運用を行います。たとえば、物理的なネットワーク保守やトラブル対応も社内SEの業務の一つです。システム障害や災害など不測の事態が起きたときのBCP対策なども行います。年々リスクが高まっているサイバー攻撃から会社を守るためのセキュリティポリシーの策定やセキュリティ対策の立案・実装などまで担うこともあります。
ベンダーマネジメント
企業規模や開発領域によっては、システム開発をベンダーに依頼することがあります。その際のベンダーマネジメントも社内SEの重要な仕事です。新システム導入決定時には、提案依頼書(RFP)を作成して自社に最適な提案をする。ベンダーを選定し、プロジェクトによっては契約内容の交渉まで行います。そしてプロジェクトが開始されて以降の工程では、品質や進捗状況をチェックしながらコストや納期などを管理します。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)社内SEの求人マーケットの今後
IT人材不足の中、社内SEの需要はますます増加すると考えられています。ここでは、その要因について分析し、社内SEの求人マーケットが今後どのように変化していくのか推察します。
社内SEの需要の変化
これまでの社内SEの募集では、開発工程を外注することを前提として、IT戦略の立案やベンダー選定、プロジェクトマネジメントなどの上流工程の経験者を中心に採用していた企業が多くみられました。しかし近年では以下の背景から社内SEに求める要件が多様化してきています。
DXの加速
2018年9月、経済産業省は『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』において、レガシーシステムから脱却し、IT技術を活用して新たなビジネスモデルの創出や事業変革を推進しなければ、2025年以降大きな経済損失が出る恐れがあると警鐘を鳴らしました。この結果、多くの企業でDX推進の動きが活発になっています。
DX推進では、事業企画の知見を持つIT人材やAIやクラウド・データサイエンスなどの先端技術のスキル・経験を持つ人材などが求められています。また、変革スピードを高めるために、外注から内製化にシフトする潮流もあり、設計から開発、導入までの一連の工程を担える人材の需要も高まっています。
セキュリティリスクの高まり
年々高まるセキュリティリスクに対応するために、セキュリティスキルを持つIT人材の採用も増加傾向にあります。セキュリティポリシーの策定やセキュリティ設計から実装まで行えるスペシャリストの需要も増えています。
社内SEの今後の需要
2019年に経済産業省から発表された「- IT人材需給に関する調査 -調査報告書」によると、労働人口の減少により2030年には最大79万人のIT人材が不足するとされています。この中には情報システム部門の人材も含まれており、今後も社内SEの需要は底堅い状態が続くと考えられます。
一方で、前述したように社内SEに求められるスキルが変化してきているため、時代とともに変化する需要を見極めて身につけていくことがキャリアを設計する上で重要です。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)清水 宏将(しみず・こうすけ)
CCNP
応用技術者試験
新卒で商社系SIerへ入社し、拠点間ネットワークや大規模ネットワークに携わるインフラエンジニアとして約4年従事。在職中に受けたキャリアカウンセリングをきっかけにパーソルキャリア株式会社に入社。現在は、IT領域の中でもインフラエンジニアやセキュリティエンジニア(主にネットワークセキュリティ)を中心に、スキルアセスメントを踏まえたキャリアプランの提案を強みとして転職支援を行っている。
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