もっと、自分らしい働き方が見つかる女性向けイベントWoman's Career Meeting Report
掲載日:2014年4月21日
現役の女性管理職が語る ~私が管理職になった理由~
Woman Career主催の「Woman's Career Meeting」は、各界で活躍する講師を招き、女性が「自分らしいキャリア」を真剣に考えるきっかけ作りを目指す女性向けイベントです。
第3回は3月19日(水)に東京・丸の内で開催され、「私が管理職になった理由」と題して、日本を代表する企業の女性管理職5名によるトークショーが繰り広げられました。管理職を打診された時の迷いや昇進を決めた理由、管理職として働くことの魅力と苦労など、トークテーマは多彩。キャリアカウンセラーの藤井佐和子さんを進行役として、5名の本音トークと力強いメッセージが交わされたイベントの模様を、Woman Career編集部がレポートします。
profile 講師プロフィール
榎本珠子 さんSGホールディングス株式会社 法務部コンプライアンスユニット
1979年、京都府生まれ。33歳で管理職に。 京都市立芸術大学の音楽学部を卒業後、佐川急便株式会社に入社。人事労務部にて人材2007年には総務部へ。12年、SGホールディングスの法務部へ異動。13年6月、同社内で最年少の昇進となる33歳で現職に就任。
腰高美幸 さん株式会社ローソン
南関東ローソン支社 千葉南支店 支店長補佐
1983年、栃木県生まれ。29歳で管理職に。既婚・第一子を妊娠中。
東邦大学の理学部を卒業後、ローソンに入社。店舗勤務、店長、ASV(アシスタント・スーパー・バイザー)、SVを経て、2012年11月に、同社内で最年少の昇進となる29歳で現職に就任。千葉県内の約160店舗を管轄する。
谷合美恵 さん日本郵便株式会社 人事部課長 アシスタントマネージャー
1972年、東京都生まれ。31歳で管理職に。
既婚。
学習院大学の法学部を卒業後、当時の郵政省に入省。郵便関係の部局にて手紙コンクールを主催するなど、手紙文化の振興に携わる。98年、人事部に異動。2003年、管理職となる神奈川県二宮郵便局の総務課長に就任。05年、日本郵政公社の本社人事部マネジャー、07年には民営化後の郵便事業株式会社にて人事制度を担当し、12年4月から現職。
東紀久子 さん株式会社三越伊勢丹ホールディングス 経営戦略本部 人事部労務担当 シニアマネージャー
1966年、東京都生まれ。30歳で管理職に。既婚・子ども2人。
慶應義塾大学の経済学部卒業後、当時の株式会社伊勢丹に入社。96年、管理職となるマネージャーに昇格後、二児をもうける。01年に社会保険労務士に合格、04年にはキャリアカウンセラー資格を取得。子会社への出向を経て、2009年に伊勢丹の人事部労務部門に異動し、株式会社三越との統合に伴う人事制度の導入に携わる。2013年4月から現職。
藤田紀久子 さんコスメーム株式会社(イオングループ)代表取締役社長
1964年、東京都生まれ。34歳で管理職に。
学習院大学の英米文学科を卒業後、株式会社西友(当時)に入社して会長秘書などを務める。出向先の大手ホテルにて広報などを経験。96年、株式会社イオンフォレストに社長秘書として転職し、99年に管理職となるCSR担当マネジャーに着任。人事総務部、コミュニケーション部、トレーニング部(スタッフ教育)の部長、およびイオン株式会社の広報部門マネジャーを務め、2013年5月から現職。一般社団法人日本秘書協会の常任理事も務める。
ファシリテーター
藤井佐和子さん株式会社キャリエーラ/キャリアカウンセラー
1968年生まれ。大学卒業後、大手カメラメーカーを経て、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)にて8年間勤務。派遣事業部や人材紹介事業部、さらに女性を対象とした転職支援チームを立ち上げ、数多くの転職を支援。その後、株式会社キャリエーラを立ち上げ、述べ13,000人以上のカウンセリング、年250日以上の講演、研修実績を持つ。『「あなたには、ずっといてほしい」と会社で言われるために、いますぐはじめる45のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。
思いがけない打診に戸惑いや不安も「管理職への昇進を決意するまで」
キャリアカウンセリングをしていて、女性から多く寄せられる相談の一つが、管理職への昇進に関するものです。「私に務まるか自信がない」「ロールモデルがいないので不安」といった声や、逆に「管理職として活躍したいけれど、どうキャリアを積めばいいのか分からない」といった相談も。そこでまずは、みなさんが管理職に就かれた経緯と、その時の率直な気持ちを教えてください。
大学卒業後に入社した佐川急便は、運送業という性質上、男性が圧倒的に多い職場でした。現在はグループの親会社であるSGホールディングスに在籍し、女性も少なくはない環境ですが、それでも管理職の話をいただいた時は、「私でいいのだろうか」というのが正直な心境。 責任が伴う職務への不安もありました。引き受けることを決めたのは、入社以来、「男性社会」の色合いが濃い中でも、私自身の意見を尊重してもらえる環境で仕事に力を注いで来られた実感があったからです。加えて、入社10年の節目に新たな気持ちでスタートしたいという思いから、挑戦を選びました。
三越伊勢丹ホールディングスの人事部労務部門で、部長クラスに当たるシニアマネジャーを務めています。もともと百貨店業界は女性社員の割合が高く、管理職として活躍する女性も珍しくありません。ただ、部長クラスとなると女性比率は5%ほどで、私のように子育てをしながら務めるケースは非常に少ないのが現状です。ロールモデルがいないことに不安はありましたが、「あなた流のマネジメントスタイルを確立すればいい」という上司 や仲間の言葉に背中を押されました。これまで二度の産休・育休を取り、周りにサポートされながら仕事を続けてきたので、何らかの形で恩返しがしたいという気持ちもありましたね。
イオンのグループ会社で、ラグジュアリー化粧品のセレクトショップを展開する「コスメーム」の代表取締役社長を務めています。キャリアを振り返って幸運だと思うのは、大学卒業後に就職した西友で、一番初めに配属された秘書課の課長が女性だったことです。仕事において大切な基礎を叩き込まれたと同時に、そこに性別は関係ないのだと学びました。課長から教わった「周囲から信頼を得てはじめて仕事ができること」「急な欠勤で迷惑をかけないこと」は今も胸に刻まれていて、おかげで社会人になって27年間、皆勤です(笑)。転職後、イオンフォレストで社長秘書を務め、トップの采配を間近で見る機会を持ったことが、管理職や、その先の経営に関わる立場に挑戦したいという思いにつながりました。
仕事内容の変化、やりがい、育児との両立…「実際に管理職に就いて感じること」
管理職になると仕事内容はどのように変わるのか、という点に会場のみなさんも関心をお持ちではないでしょうか。それまでの仕事との違いや、管理職だからこそ得られるやりがいについてお聞かせください。
支店長補佐として千葉県内のローソン約160店舗を管轄する業務に携わっています。スーパーバイザー(SV)をしていたころは店舗のオーナーさんらと直に接し、手応えも得やすかったのですが、SVを指導する立場となった今は、自分の仕事がどれだけ店舗に変化を与えられているのか、成果を実感しにくい面はあります。管理職になって痛感したのは、自分にとっての当たり前が、必ずしも相手にとってそうだとは限らないこと。それを認識した上で、状況に合わせてトップダウンとボトムアップの手法を使い分けながら、目標達成へと組織を導くのがマネジメントなのだと学びました。意思疎通がうまく行けば、私一人の力では出せない結果を組織として生むことができ、マネジメント次第で結果はさらに伸びる、そこに今は楽しさを覚えています。
日本郵便株式会社で人事部の課長を務めています。2007年の郵政民営化までは国家公務員であり、キャリアパスは明確でした。初めて管理職として郵便局の総務課長に就いた時、課員は全員私より年上。気後れしそうにもなりましたが、「ほかの人も通る道なのだから私にだってできるはず」という思いが支えになりました。部下に接する際は、人生経験と仕事経験の両方において先輩であることへの敬意を持ちながらも、上司として最終決断をするのは私だということを常に意識していました。管理職として一段上の仕事を任されるということは、経営に一歩近づくということ。本社で管理職に就く今は、自分の仕事が全国20,000の郵便局に影響を与え得るというスケール感も、やりがいになっています。
ステージが上がることで影響力や発言力が増し、より伸び伸びと仕事ができるという側面もありますね。さまざまなことに挑戦する場が与えられ、それによってさらに経験値が上がる、その好循環がやりがいです。子育てをしながら管理職を務めるには、限られた時間の中でパフォーマンスを高めていくことが不可欠。アンテナを張って得た情報を仕事に活かしたり、創意工夫を重ねたりすることも非常に大切だと感じます。「育児と仕事の両立」や「ワークライフバランス」という言葉もよく聞かれますが、結局のところ、その時どきにできることに対して最大限の力を尽くす、その積み重ねしかないのかなと思います。
基本的なことですが、感謝の気持ちを伝えること、素直に謝ることは、職位の上下に関わらず大事だと改めて感じます。管理職になって、自分自身が立てた企画を主導的に動かせることや、その企画が形になった時にチーム全員で喜びを分かち合えることは、私にとって何ものにも代えられない喜びですね。プレーヤーではなくコントローラーとして仕事に関わるからこそ、見えてくる世界、味わえる感動はたくさんあると思います。
自らがロールモデルとなる選択肢も「キャリアを考える女性に伝えたいこと」
キャリアカウンセラーの立場からも、管理職を「食わず嫌い」せず、ぜひ選択肢の一つとして考えていただきたいですね。これからのキャリアを考える女性に向けて、女性管理職の先輩としてメッセージをお願いします。
マネジメントスキルは部署が異動になっても通用するものなので、長い目でキャリアを考えた時に大きな武器になるはずです。私も管理職に就いた当初は、周りにロールモデルがいないことが不安でしたが、前例がない分、自分でつくり上げていく自由があるわけで今はむしろメリットだと感じています。私自身が後輩のロールモデルになれればいいですね。出産を控えていますが、この先もワークとライフの両軸を大切にして仕事を続け、女性の新しい働き方をみなさんと一緒につくっていきたいと思っています。
私自身もそうでしたが、管理職になることに不安を覚えるのは、自分が女性だからというよりも、スキルが足りないと感じていることが理由ではないでしょうか。つまり、不安に思うのは誰でも同じ。管理職というと「壁の向こう側」のように思えるかもしれませんが、実際に踏み出してみると、周りの力や自分のそれまでの経験にも支えられて、それほど高い壁ではなかったりします。「新しい仕事にチャレンジする」という気持ちで管理職を選ぶ女性が増えてくれるとうれしいですね。
管理職だからといって部署のすべてを詳細にわたって把握する必要はなく、むしろ、部下たちが思い切り仕事をできる環境を整えることが管理職の役目なのだと、私も経験から学びました。良きパートナーや応援団の存在が前に進む力になるので、世代や性別の垣根を超えた幅広い友人を持つことも大切です。そしてぜひ、自分だけでなく周りの人々や地域社会の幸せにまで視点を広げてください。キャリアのステージが上がった分だけ、周りにお返しする力が増すと考えれば、キャリアアップをより前向きに捉えられるのではないでしょうか。
「周りを幸せにできる管理職」というビジョンは、キャリアアップを目指す上での大きな指針になりますね。今日の内容が、参加者のみなさまにとってこれからのキャリアを考えるヒントになることを願っています。ありがとうございました。
トークショーの終了後、講師も交えて参加者は思い思いに輪をつくり、交流タイムがスタート。参加者から寄せられるさまざまな質問や相談に直接答えました。中でも多かった質問が「管理職に必要なスキルや素質とは?」。これに対し講師陣からは「視野の広さやバランス感覚に加えて、良識を備えていることも大切」「部下からの説明は、プラス面を強調してマイナス情報にはあまり触れない傾向があるので、上司として決定するにはものごとの裏や全体像を見抜く目が必要」など、実体験を踏まえた具体的な回答が示されました。日本を代表する企業の現役女性管理職に直接話を聞ける機会とあって、懇親会は大いに盛り上がり、熱心にメモをとる参加者の姿も多く見られました。
- 管理職になることに関して、あまり身構えなくていいと聞いて少し安心しました。管理職になったばかりの方から、キャリアが長い方までいろいろな話が聞けて良かったです。(33歳)
- 目の前の仕事をきちんとこなしていれば、誰にでもキャリアアップのチャンスがあるということがよく分かる内容でした。(29歳)
- さまざまな業種、経験から角度を変えてお話をうかがうことができ、 初めてのイベント参加でしたが、大変勉強になりました。(34歳)
- 管理職への決断、現在の悩みなど、共感できる部分が多かったです。それぞれの分野で活躍されている女性の方々のリアルな声が聞けて良かったです。(37歳)
- それぞれ個性があり、素敵な方々でした。とても充実した時間でした。管理職になってみたいと感じました。(39歳)
- 一つのテーマに対して、5人それぞれの立場や生き方、経験からお話が聞けてすごく良かったです。(33歳)