もっと、自分らしい働き方が見つかる女性向けイベントWoman's Career Meeting Report
掲載日:2014年8月4日
「男性上司のホンネが聞ける」
~明日から変わる、上司への接し方~
「やりたいことや描いているキャリアプランはあるけれど、それを男性上司に、いつ、どのように伝えればいいのか分からない」「どうすれば上司と円滑にコミュニケーションをとれるのだろう」。そんな悩みを感じたことはありませんか。そこで今回は、20年以上にわたり企業の人事担当として大勢の女性部下を育成してきた大竹哲郎さんが、自身の経験や男女の思考の違いなどを踏まえながら、「男性上司のホンネ」を詳しく解説。さらに、「かなえたいキャリアを男性上司に伝える方法」をテーマに、キャリアカウンセラーの藤井佐和子さんと語り合いました。あなたのキャリアをかなえるヒントをつかんでください。この記事は、2014年6月19日に開催した第4回Woman's Career Meetingの内容をまとめています。
今回のお話の三つのポイント
- 男性上司にははっきりと要望を伝える。「察して」は通じない
- 男女の脳は違うので、そもそもの思考や行動が異なる
- 男女それぞれの強みを活かせるキャリア形成が重要
profile 講師プロフィール
大竹哲郎さん
ジャパンマリンユナイテッド株式会社 人事部人事グループ長
1967年生まれ。1991年に石川播磨重工業株式会社(現、株式会社IHI)に入社して以来、23年間にわたって、人事制度企画、管理職の360度評価制度作成、キャリアプログラム開発など、人事関係の業務に携わる。2007年、IHIのグループ会社である株式会社エイチ・アイマリンユナイテッドに転籍。同社の合併に伴い、13年1月から現職。現在は採用、教育、評価など、人事業務全般を担当している。CDA(キャリアカウンセラー)資格保有。
藤井佐和子さん
株式会社キャリエーラ/キャリアカウンセラー
1968年生まれ。大学卒業後、大手カメラメーカーを経て、パーソルキャリア株式会社にて8年間勤務。派遣事業部や人材紹介事業部、さらに女性を対象とした転職支援チームを立ち上げ、数多くの転職を支援。その後、株式会社キャリエーラを立ち上げ、述べ13,000人以上のカウンセリング、年250日以上の講演、研修実績を持つ。『女性社員に支持されるできる上司の働き方』(WAVE出版)など著書多数。
大竹哲郎さんによる講演 男性上司のホンネ
男性上司が悩んでいること
講師の大竹哲郎さんは、製造業界で23年間にわたり人事部門を担当し、キャリアカウンセラーの資格も保有。男性上司への接し方に悩む会場の女性たちに向けて、まずは「男性上司の側が、女性部下に対して抱えがちな悩み」を紹介しました(※)。「コミュニケーションがうまく取れない」「やる気が見えない」「何を考えているかよく分からない」「感情的になりやすい」「ビジネスルールが通用しない」。項目が紹介されるたびに、会場の女性の間には思い当たる節があるような表情や、苦笑が広がりました。
「これらは一般的な例ですが、私自身、どれも経験があります。たとえば、女性は不満や要望を言葉に出す代わりに、暗にほのめかして理解を得ようとしがちですが、私を含め、男性上司はその真意に気づかない。そのすれ違いが『女性部下が何を考えているかよく分からない』になると考えられます」。
ビジネスルールについても男女で認識の差を感じるといいます。「男性は集団の中で自分の立ち位置をわきまえることや、“筋を通す”ことを非常に重視します。一方、女性はそうとは限らず、相談事や悩みを、直属の上司を飛び越えてその上の仲の良い上司に直接話したりするのもその例ですね」。
それでは、男性上司にとって「仕事をしやすい女性社員」とは。大竹さんは表を示します。
仕事がしやすい人 | 仕事がしにくい人 |
---|---|
愛想が良い |
不機嫌 |
よく気がつく |
言われたことしかやらない |
物事を体系的にとらえる |
一つの考えにこだわり、突っ走る |
外からの刺激を受け止める |
外からの刺激に過敏に反応する |
しかしこれらはすべて、男性・女性を問わず当てはまること。つまり、「仕事をしやすい部下」の像に男女差はないはずなのに、なぜ男性上司の多くが、男性部下よりも女性部下との仕事にやりづらさを感じているのか。大竹さんの投げかける問いに会場は聞き入ります。
※参考文献:田島弓子『女子社員マネジメントの教科書』ダイヤモンド社
男女の脳と行動の違いを知れば、対応法が分かる
大竹さんがその要因として挙げるのは「性別による思考やコミュニケーションの違い」、さらに根本には「男女の脳の仕組みの違い」があると指摘します。「たとえば、女性は相手の表情や顔色から敏感に『察する』ことに優れています。しかし男性は単刀直入かつ必要最低限な情報交換を好む傾向にある。基本となる思考方法や行動が男女で異なることで、行き違いや誤解が生まれるのです」。
男性脳・女性脳の度合いには個人差があり、「女性にとって最もコミュニケーションを取りやすいのは、男性脳の度合いが低く、かつ男女の思考に違いがあることを理解している上司。逆に、男性脳の度合いが高く、男女の違いを理解してない上司とは意志疎通に支障が生じがちです」と大竹さん。これらを踏まえ、「男性上司に自分のキャリアの希望などを伝えるために大事なこと」を四つ挙げます。
1. 相手を知る
「男性脳」の度合いは高めか低めか。どのように言えばどう反応する傾向にあるか。相手のタイプやパターンをつかむことが重要。
2. 本当に伝えたいことだけをはっきり話す
男性に「察してほしい」は通用しない。はっきりと言葉に出して、伝えたいことを結論から明確に話す心がけを。
3. 男性上司のサポートを引き出す
男性は「問題を解決したい」という欲求を持っているもの。何を解決してほしいかを率直に伝え、男性上司のサポートを引き出して味方につけよう。
4. 感謝を伝える
“感謝”は人間関係を円滑にする大きな要素。「ありがとうございます」の一言が、次のコミュニケーションの扉を開きます。
「こうしてポイントを見ていくと、思ったほど難しくないと感じませんか」と大竹さん。要望や不安を上司にどう伝えたらいいか分からない…と悩む女性たちへ、「ポイントを意識するだけでもコミュニケーションは変わってきます。かなえたいキャリアへと一歩を踏み出すために、ぜひ明日から実践してください」とエールを送りました。
- 男性と女性の違いを活かし、上手にかかわり合っていかなければならないと強く感じました。男性上司や男性社員に対して、はっきりとキャリアの要望を伝えていこうと思いました。
- 大竹さんの「仕事がしやすい女性社員、しづらい女性社員」のお話は、グサッとくるところがありました。
大竹哲郎さんと藤井佐和子さんによるトークショー男性上司への「かなえたいキャリア」の伝え方
ライフプランの開示がキャリア形成につながる
第2部では「かなえたいキャリアを男性上司に伝える方法」をテーマに、大竹さんとキャリアカウンセラーの藤井佐和子さんが語り合いました。「男性上司の視点から、女性部下に望むこととは」という藤井さんの問いに、大竹さんは「仕事上の悩みや要望をはっきりと言葉に出して伝えてほしいですね。先ほども触れたように、男性に『察してほしい』は通じない。女性が我慢して心の中にとどめていても解決には至りません」。
また、結婚や出産など、女性部下のプライベートを含めたライフプランについて尋ねることを男性上司は躊躇しがち。結果的にコミュニケーション不足に陥り、「将来がよく分からない女性社員ではなく、同期の男性社員に仕事を任せよう」と上司から判断されてしまうケースも。「そうした事態を避けるためにも女性の側から『このようなライフイベントを見据えた上で、こんな風にキャリアを積んでいきたい』とはっきりと意思表示した方がいいですね」と藤井さん。大竹さんも同意し、「男性は制約条件の中で解決策を見出していくのが得意。ライフイベントへの考え方や要望をはっきり伝えて、男性上司のサポートを引き出しましょう」とアドバイスしました。
さらに話題は、男女の思考や行動の違いにも及びました。大竹さんは講演で話したビジネスルールの捉え方の違いに触れ「男性の考えるビジネスルールが正しいというわけでは決してなく、女性の発想の方が状況に適している場合もあります。男女の違いを理解した上でコミュニケーションを重ね、互いの持ち味を活かし合える社会や組織をつくりあげることが大切。脳の仕組みだけでなく体力的・生理的にも違いがある以上、やみくもに『男女同じ扱いを!』と求めるのは性急です」と指摘しました。
女性の強みを活かせるキャリアを目指そう
ここまで男性上司の話題が続いたところで、藤井さんは逆の立場、つまり「女性の管理職」に言及。「管理職を打診されるといったんは断る女性が多いですね。決してやる気がないわけではなく、『部下をぐいぐい引っ張っていくのは無理』などが理由。でもそもそも、男性と同じマネジメントをする必要はないですよね」と考えを語ります。これに対し大竹さんは、男女を問わずマネジメントのあり方が変わってきていることを紹介。「以前のぐいぐい引っ張るリーダー像から、部下を支えて目標達成に導く、奉仕型の“サーバントリーダーシップ”が主流になりつつあります。察する力や観察力に優れた女性の強みを活かせるリーダーシップですね。また、部下一人ひとりの個性や能力を引き出す多様性マネジメントにも、女性のそうした力が存分に活かされると思います」。
続く質疑応答では、会場から「急に子どもが熱を出して保育園に迎えに行かなければならない時、男性上司にどう伝えるべきか悩む」との声が。大竹さんは「事情を率直に話すよりほかにないと思いますが、確かに周りの人への後ろめたさも感じるでしょう。ですが、人は誰しもライフステージが変化するにつれてワークとライフの比重は移り変わります。その前提で、普段から相互理解の関係を築き上げておくことが大切だと思います」と回答。
「描く未来のために、要望や思いをはっきり言葉に出して伝えよう」「性別による思考や行動の違いを理解した上で自分を上手くプロデュースしよう」という二人のメッセージが、キャリアアップを目指す女性たちを勇気づけました。
- 自分の要望がうまく伝わらない理由や、ほかの会社でも女性社員が同じような悩みに直面している事実に、あらためて気づかされました。上司や同僚とのコミュニケーションに活かせそうなヒントをたくさん得られました。
- 今まで男性社員とがむしゃらに競っていたのですが、女性の能力を活かした方法で仕事をしてもいいんじゃないか、と感じるようになりました。“目からウロコ”のお話でした。早速明日から、上司とのコミュニケーションに実践してみようと思います。