もっと、自分らしい働き方が見つかる女性向けイベントWoman's Career Meeting Report
掲載日:2015年7月20日
転職成功に欠かせない“キャリアの棚卸し”
~私の強み・弱みって何?~
「doda女性のための転職フェア」が2015年5月29日(金)、30日(土)の両日、東京の渋谷ヒカリエにて開催されました。会場内で講演会も開かれ、各界で活躍する女性や、dodaの女性キャリアアドバイザーが、今後のキャリアや仕事に役立つテーマについて講演しました。
今回はその中から、dodaキャリアアドバイザー田村智絵実の講演の模様をWoman Career編集部がレポートします。
profile 講師プロフィール
田村 智絵実
dodaキャリアアドバイザー
dodaキャリアアドバイザーとして、営業、事務、企画系の職種や、管理職と幅広い層の支援実績を誇る。また、女性の支援としては20~40代と多様な年代層の転職をサポートしてきた。GCDFキャリアカウンセラー資格保有。小学1年生の男児がいるワーキングマザー。
転職活動の「軸」が明確かどうかが採用担当者の印象を大きく左右する
「キャリアの棚卸し」という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的に何をどうすればいいのか分からない方も多いのではないでしょうか。「棚卸しなんてしなくても内定は出るのでは?」「忙しいし、面倒だな…」と思う方もいるかもしれません。今日は、キャリアの棚卸しが必要な理由や、棚卸しの具体的な手順を詳しくご紹介します。私自身は20代で二度の転職を経験しています。自分のキャリアに自信を持って転職活動を始めたのですが、面接を受けては不採用に終わる、ということが何度も続きました。今振り返ると、キャリアの棚卸しが十分にできていなかったことが大きな原因。かつての自分自身への反省も込めて今日はお話ししたいと思います。
キャリアの棚卸しとは、分かりやすく言い換えると次のような作業になります。
・過去から現在まで、職務で身につけたスキル、能力を整理する
・思い描く未来に必要なスキル、能力を考える
・応募する企業向けの自分自身の「強み」「弱み」を把握する
1番目と3番目はイメージがつきやすいかもしれませんが、2番目の「まだ起きていない未来に向けて考える」というのは、意外に思えるかもしれません。でも転職活動自体が「自らの未来を形づくること」です。この先、自分が目指していきたい未来を想定し、そこから今を振り返って、次のキャリアではどのような経験を積む必要があるのかを考える、これが大切なポイントです。
具体的な方法は後ほど詳しく説明しますが、まずは「なぜキャリアの棚卸しが必要なのか」を考えてみましょう。
キャリアの棚卸しをする必要性は次の3つです。
・自分の強みが分かり、応募企業に対して自信を持ってアピールできるようになる
・長期的なキャリアの方向性が描ける
・転職活動の軸、自分が大事にしたいコアな要素が明確になる
この中でも特に重要なのが「転職活動の軸」です。軸が定まらない状態、つまり「自分にとって何をかなえるための転職なのか」が分からない状態で転職活動を進めてしまうと、企業の採用担当者からは「うちの会社でなくてもいいのでは」と判断されてしまいます。軸の有無が、採用・不採用を大きく左右すると言っても過言ではありません。また、せっかく転職しても「想像していた仕事内容と違った」などのミスマッチが原因で早期離職につながりやすかったり、転職の時点で長期的なキャリアビジョンが描けていないために、年齢を重ねる中で「このキャリアでいいのだろうか」という不安や迷いが生じやすい、という状況にもなってしまいがちです。納得のいく転職を実現するために、キャリアの棚卸しはとても重要です。
企業が求める人材像に合った「強み」を具体的にアピールすることが重要
キャリアの棚卸しには大きく分けて以下の3つのステップがあります。各ステップの具体的な手順をご紹介します。
【ステップ1】自分を知ろう
最初のステップは自分自身を知ること。「過去~現在」「未来~現在」の両方に目を向けて、自分自身のことを棚卸ししましょう。
▼過去~現在までの棚卸し
- (1)現職で経験してきた職務を振り返る
職種、経験年数、顧客、商材、目標達成率、なぜこの企業・職種を選んだか、成功体験、失敗体験、やりがいなど - (2)仕事を通して身につけたもの(能力、スキル、知識、人脈など)を洗い出す
▼未来~現在までの棚卸し
- (1)この先のライフプランを想定する(30歳で結婚、32歳で出産など)
- (2)何年後に、どのように働いていたいかを想定する(職種、年収、活躍の度合いなど)
- (3)(1)、(2)を実現するためには、次の転職でどんなスキル、経験を身につける必要があるかを考える
「未来のことは漠然としていて考えにくい」と感じる方もいるかもしれません。そんな時は、遠い未来のことではなく、まずは「3年後にどうなっていたいか」を想像してみましょう。またライフプランを検討する際は、「子どもを1人育てるのにどのくらいお金がかかるのか」「自分が希望している職種の平均年収はどのくらいなのか」など、具体的な情報も集めてみてください。自分の過去・現在・未来を客観的に見るこのステップを通して、自分がキャリアや人生において何を大切に思っているかなど、新たな発見もあるかもしれません。
【ステップ2】相手を知ろう
次のステップは、相手を知ること。志望する職種や企業について知るということです。イメージや先入観で判断するのではなく、求人広告や企業ホームページを見たり、実際にその職種に就いている人に話を聞いたり、キャリアアドバイザーに相談するなど、より具体的な情報を集めてほしいと思います。情報を集めてみると、イメージとは違っていたというケースも。具体的な情報を多く集めることで、その職種・企業の仕事内容や働き方の実態、求められる要件や人材像などが見えてきます。それを踏まえて、ステップ 1で洗い出した自分のスキル、経験と照らし合わせて、どの部分が合致しているかを考えてみましょう。それが、志望先企業に対してアピールすべき「強み」になります。相手が求めるものを知った上で、そこにポイントを絞って的確にアピールすることが重要です。
【ステップ3】アピールしよう
ステップ1、2で「志望する職種や企業に合わせた自身の強み」が認識できたら、それを応募書類や面接でアピールしましょう。その際に気をつけたいのは次の点です。
▼活かせる強みを明確にアピールする
企業が求める要件に当てはまる強みをアピールすることを意識しましょう。これまでの職歴をただ並べるだけではアピール力は弱くなってしまいます。貢献できるスキルを要約して応募書類に記入したり、面接での自己PRにつなげましょう。特に、未経験の職種を志望する場合や、企業が求める要件に満たない部分がある場合には、活かせる強みに加えて、足りない部分を補うためにどのような努力をしているかを具体的に示すことも大切です。
▼成果を表す数値や、成功事例を盛り込む
目標に対する達成率など、採用担当者が客観的に判断できる数値を入れてアピールしましょう。事務や企画など、実績を数値で表すことが難しい職種もあるかもしれませんが、その場合も成果や成功事例をなるべく具体的に盛り込むことを意識してください。
▼二つの側面から志望動機を伝える
「応募する企業に魅力を感じる点」と「貢献できる点、活かせる強み」の両方を志望動機として伝えること。例えば、自身の強みを十分にアピールできたとしても、「なぜその企業で働きたいのか」という熱意が伝わらなければ、採用担当者から「ほかの企業でもいいのでは」と思われてしまいます。どちらか一つが欠けてもアピール力は弱くなってしまいますので、両方をバランス良く盛り込むこが重要です。
立ち止まって自分を振り返る「キャリアの棚卸し」は
豊かなキャリアを築いていくための大切なプロセス
キャリアカウンセリングでは、キャリアの棚卸しに関する相談や悩みも多く寄せられます。特に多い相談内容と、それに対する解決のヒントをご紹介します。
1:強みが分からない
「自分の強みが分からない」という相談はとても多いです。まずは、自分自身の弱みと感じることを書き出してみましょう。弱みは、見方を変えることで、持ち味や強みとしてアピールできる可能性があります。例えば「大雑把である」という弱みは、「おおらかな性格」という強みに言い換えることができます。「細かいことを気にしてしまう」という弱みなら、「細部まで気を配れる」「慎重にものごとを進められる」と表現することができるでしょう。
同僚や友人、家族など、第三者の意見を聞いてみることも大切です。自分では当たり前にやってきたと思えることでも、客観的に見れば、その人ならではの強みと言えることがあるかもしれません。自分では気がついていない長所を見つけてもらえる可能性もあります。
また、女性は一般的に自己評価が低い傾向があります。潜在的な意識として「目立つことは良くないのでは」「自分を高く評価するのは気が引ける」などと考えがちで、これは、女性のキャリアアップを阻む「グラスシーリング(見えない天井)」の一要因にもなっていると言われます。自己評価が低くなる傾向を認識して、自分の評価を正当にアピールすることも大切です。
2:なりたい未来と現実にギャップがある
キャリアの棚卸しで思い描いた未来と、現状との間に大きなギャップがあり、どう実現すればいいか分からないという相談も少なくありません。アドバイスとしては、次の転職でいきなり「思い描く未来」を実現しようと考えないこと。理想の未来に向かって一段ずつステップを踏むことを意識し、やりたい仕事に少しでも近づけるキャリアを選択しましょう。また、実際にその職業に就いている人に話を聞くなどして、目標を実現するまでのキャリアパスを具体的にイメージすることも大切です。
3:やりたいことが分からない
やりたいことや目指したい姿が見えず、「未来~現在」のキャリアの棚卸しがうまくできないという相談も多くあります。むしろ、やりたいことがはっきりと自分の中で固まっている人の方が少ないかもしれません。やりたいことを無理に見つけようと焦ることはありません。これまでに培った強みを活かし、その延長線上でキャリアを積んでいく中で、やりたいことが見えてくる場合もあります。
4:不安や忙しさから、モチベーションが上がらない
「キャリアの棚卸しがうまくできるか自信がない」あるいは「忙しくてキャリアの棚卸しをする時間がない」という女性もいます。情報を提供してくれる友人やキャリアアドバイザーなど、相談できる相手を見つけましょう。また、自分に合ったペースや方法でキャリアの棚卸しを進めていくことをお勧めします。例えば、時間を設定して一気に進めた方が良いという人もいれば、他の作業と並行しながら毎日少しずつ取り組みたいという人もいるでしょう。紙に書き出したり、人と話しながら進めたりと、方法もさまざまです。自分にとってやりやすいペースや方法を選びましょう。
キャリアの棚卸しについて、必要性や進め方のイメージができたでしょうか。キャリアの棚卸しを経て転職を成功させた方からは「転職活動を機に、いったん立ち止まって仕事のこと、自分や家族のことをじっくりと考える時間を持ったことで、自分自身のキャリアや人生を前向きに捉えるきっかけになった」という感想が多く聞かれます。キャリアの棚卸しは、転職活動を成功させるために必要不可欠なだけでなく、自らが望むキャリアを主体的に築いていくためにも大切なプロセスと言えます。実りある人生を自分でつかみ取っていくための作業として、ぜひ楽しみながら、キャリアの棚卸しに取り組んでください。