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グローバルキャリアの入り口 日系企業の現地採用/イメージ画像

グローバルキャリアの入り口 日系企業の現地採用 グローバルキャリアと英語と異文化コミュニケーション

更新日:2023/5/31

グローバルキャリアを積むにはどのような方法があり、どの国や地域で、そしてどのような会社で働くのがふさわしいでしょうか。「グローバルキャリアの入り口として最適なのは、アジア諸国にある日系企業の現地法人への転職」と提案するのは海外3カ国で勤務経験のあるグローバル人材コンサルタントの野上健次さん。今回のコラムでは、なぜアジアの日系企業の現地法人がグローバルキャリアの入り口として適しているのか、海外駐在との違い、待遇面や収入面の実情について触れながら解説します。また、記事の後半では、初めて海外転職する人におすすめの国も紹介します。

1. 転職による海外就業の主な方法 海外駐在と現地採用のメリット・デメリット

日本での就労経験や日本語能力を活かして海外で働くには、主として「海外駐在」と「現地採用」の2つの方法があります(両者の違いについては、「ステップで分かるグローバル転職ガイド」内の『海外で働く場合の「海外駐在」と「現地採用」の違い』参照)。

「海外駐在」は、日本国内に本社のある企業の社員がその会社の社員という身分のまま海外に赴任することです。海外駐在員は休暇のための帰国費用や子女の学費などの補助を会社から受けられることが多く、「待遇の良さ」というメリットがあります。
しかし、海外駐在員の求人は特定の国や地域において特定のスキルや経験を持った人か、海外駐在の経験者を即戦力として求めていることが多く、海外就業が初めての人にとっては狭き門となる傾向があります。さらに、海外駐在はあくまで会社側が決めた条件で赴任をするため、キャリアプランの自由度が低くなるというデメリットがあります。

一方、「現地採用」は海外にある企業に直接採用されることを指します。現地採用の最大のメリットは、転職のタイミング、国や地域も自ら選択が可能であるため、キャリアプランの自由度が高いことです。野上さんは次のようなキャリアプランを提案します。

「例えば、20代はアジアの国で海外就業を通しグローバルに活躍できる人材として必要なスキルを習得する。続いて30代は国内勤務で専門スキルに磨きをかけ、40代でマネジメントとして欧米諸国で就業する等、自由にグローバルキャリアのプランを描くことができます」

現地採用のデメリットについては、海外駐在に比べて待遇面や収入面を期待できないことが挙げられていました。しかしながら、東南アジアを中心に最低賃金引き上げの動きが高まっており、それに伴い現地採用の給与水準も上昇傾向にあります。

オンラインスペース上でのグローバルキャリア構築

海外で働く主な方法に、海外駐在と現地採用があると説明してきました。しかしながら、最近では場所を問わずグローバルキャリアを積む新たな方法として、「オンラインスペースが注目されている」と野上さん。

「移動が制限されていたコロナ下で、オンラインスペース上で得意分野を活かした仕事を受けられる『クラウドソーシング』の利用が一般化しました。例えば、クラウドソーシングサイト世界最大手の『Upwork』にはすでに世界中の1,000万人以上のフリーランサーが登録しています。彼らは国境なく世界中から自由に仕事を受注できるため、物理的な移動を伴わずにグローバルキャリアを積み上げることができています」

クラウドソーシングを利用して海外の仕事を受けられることは魅力的ですが、オンラインスペース上での異文化の人々とのコミュニケーションは対面のコミュニケーションに比べて高い語学力や異文化コミュニケーション力が必要となることは想像に難くないでしょう。言葉の壁により細かなニュアンスが伝えられず、トラブルが発生してしまうことも珍しくありません。
そのため、グローバルキャリアの入り口として、オンライン上のキャリア構築はハードルが高そうです。「これまで挙げた中でも、キャリアプランを自由に設計でき、働きたい場所を選べる現地採用は、これからグローバルキャリアを積む方にとって望ましい選択肢」と野上さんは考えます。

2. 日系企業の現地採用のメリット

次に、現地採用を考える上で重要な「現地採用の分類」についてご説明します。日本での就労経験がある人や日本語話者向けに現地採用の求人をしている企業は大きく分けて2通りあります。
① 日系企業の現地拠点
② 日本とのビジネスを重視している現地企業や多国籍企業

2023年4月現在のdodaの求人数での比率は、①が②の10倍以上となり、①の数が圧倒的に多くなります。
両者を比較した場合、①の日系企業の現地拠点にはさまざまなメリットが挙げられます。野上さんはこのように解説します。

「最大のメリットは、異国での仕事や生活において同僚から受けられるサポートです。特に海外で初めて働く人は、会社の企業文化への適応に加え、異国での新しい生活と、大きな変化を同時に2つも経験することになります。
しかし、日系企業の現地拠点には本社からの駐在員が勤務していることが多く、彼らは異国での仕事だけでなく生活面においても有益なアドバイスをしてくれるでしょう。
また、日本のビジネススタイルに精通している現地社員も多く勤務しているため、仕事がしやすい傾向にあります。さらに人事担当者は現地採用者の就労ビザや住居の手配にも慣れていて、新しい環境でのスムーズなスタートを手助けしてくれるでしょう。海外転職において、社内の多方面からのサポートは大変心強いものとなります」

さらに、17年の海外日系企業での勤務経験がある野上さんは、日系以外の現地企業に就職が決定した日本人のエピソードを教えてくれました。

「現地の人事担当者が就労ビザの取得作業に不慣れで何度も書類のやり取りが必要となり、実際の渡航まで数カ月も待たされたというケースを何度か聞いたことがあります。初めて海外で働く人にとって『初めからつまずきたくない』と思うのが本音でしょう。
また、勤務開始後も、日系企業以外では容赦なくレイオフや解雇されるのも大きな不安要素です。日系企業は日本の企業文化がベースにあるため、労働者を守る法律を前提に突然の解雇などは起こりにくい傾向です」

日系企業現地採用の2つ目のメリットは、「グローバルキャリア構築に必須となる『異文化対応力』が効率的に習得できること」と野上さんは話します。

「2回目のコラムで『海外駐在員が習得できるスキル』について説明していますが、現地採用者も駐在員と同じく自国文化と現地文化の橋渡しの役割(異文化ブリッジング)を担うことが多く、異文化ブリッジング力の習得には最適なポジションです。
一方、転職先が現地企業の場合は、異文化ブリッジング力よりも自らが現地化することを求められることになるでしょう。また、多国籍企業の場合は自国文化と複数の文化のブリッジングとなることが想定されるため、初めて海外転職する方にはかなりハードルが高くなると考えられます」

社内からのサポートを受けられやすい、自国文化と異国文化のブリッジング力を培うことができるなど、日系企業の現地採用は海外就労経験がない方にとっても挑戦しやすいと言えます。

3. 日系企業現地採用の生活実態

日系企業の現地採用は、前述の「転職による海外就業の主な方法」でもお伝えしたとおり、待遇面と収入面があまり期待できないことが課題となっていました。しかし、近年は海外において年収が高くなり、韓国を含む多くのOECD加盟国の平均年収はすでに日本を超えているのが現実です(図1参照:OECD2021年の国別平均年収)。
また、日本とアジア諸国の部長級の年収比較では、日本の部長級職は人事、研究開発、マーケティングの全てにおいて中国より低く、香港、シンガポールと比べても特に高いわけではないことが分かります。
(図2:部長級の年収比較 人材紹介会社のヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパン)。
現地採用=年収が低くなる、という図式は成立しなくなりつつあります。

さらに、衣・食・住それぞれの面で、野上さんがシンガポールを例にしてより具体的に生活の実態をお伝えします。

「例えば、アジアの先進国・シンガポールで5,000シンガポールドルの月収(2023年4月現在の換算レートでは50万円前後)を得る仕事に就いたとしましょう。最も負担が大きいとされる『住』は、日系企業の現地採用の場合、会社から候補をもらった中から決めるか自分でいちから探すことになります。海外駐在員ですと家賃が会社負担の場合もありますが、現地採用は一部または全額自己負担のケースがほとんどです。しかし、シンガポールで家を探すなら、シェアハウスに住むことで月1,000~1,200シンガポールドルくらいに抑えることも十分可能なため、そこまで負担は大きくありません。『食』に関しては、旅行者が行くような高級なレストランでなく現地の人々が行くホーカーセンター(屋台)で食べれば1食5~6ドルで十分おいしいものが食べられます。そして『衣』に関しては、常夏のシンガポールでは年間を通して夏服で通せるため出費は最小限に抑えることが可能です」
日系企業の現地採用は、海外駐在よりは住居部分で工夫が必要ですが、日本で働くことと比べると、そもそも可処分所得としては高くなる可能性も高くなります。

また、海外勤務で意外に重要なのは「通勤手段」と、野上さんは言及します。

「現地採用の場合、多くの人が現地社員と同じ交通手段で出勤しています。欧米諸国の大都市は自家用車や公共交通を利用して、安全で安心な通勤が可能ですが、交通インフラが整備されていないアジア諸国では、通勤手段が課題となっていました。現地タクシーやバイクでの通勤は、事故や事件などのトラブルに巻き込まれる可能性も増えます。しかし、近年アジアの主要都市では公共交通網が急速に発展し、モノレール、地下鉄、LRTの開業が急ピッチで進んでいます。ここ5年をみてもシンガポール、マレーシアのクアラルンプール、ベトナムのハノイやホーチミン、タイのバンコク、インドネシアのジャカルタ、インドのデリーと、日系企業が集中する都市部に新たな地下鉄の開業が続いており、地下鉄通勤が可能となっています」

日系企業の現地採用でも、収入面と待遇面で大きく心配することはないことが分かりました。特にアジアは急速な発展により現地採用のハードルが一気に低くなっているので、今がまさに狙い目です。

4. グローバルキャリアの入り口としてのアジア

海外就業する企業の種類にもまして、就業する国や地域の選択も重要です。この選択は自らの海外経験や言語力のレベルを考慮して決めるのがよいでしょう。
英語がビジネス用語として確立している欧米諸国やアジアの一部の国や地域では、英語力の低さは明らかにハンディと見なされてしまいます。一方、多くのアジアの国では現地の人々も英語を第2言語として使用していることが多く、英語力が多少低くても許容される傾向があります。

野上さんは「語学力という側面に加え、生活習慣や働き方も欧米諸国に比べると同じアジア人同士で共通する部分もあり、海外勤務が初めてとなる人には軟着陸しやすいと思います。また、前述の公共交通手段の発達による生活面での利便性の向上も見逃せません」と語ります。

5. アジアでおすすめの国や地域

アジアといっても範囲は広く、どこの国や地域がおすすめなのか気になりますよね。野上さんは「グローバルキャリアの入り口として特におすすめなのは、タイとベトナムです」と具体的な国を挙げてアドバイスしています。

「2021年外務省発表の海外進出日系企業拠点数では1位が中国、2位アメリカ、3位にタイ、4位はインド、そして5位がベトナムになっています。人口や市場規模を考えた場合、中国、アメリカ、インドが入るのは自然なことですが、タイやベトナムがトップ5位に入るのはこの2カ国が日系企業にとってビジネスがしやすい環境になっていることを物語っています」

日系企業が多く進出しているということは、日本向けの求人数が多いことにもつながっていきます。海外転職をする際に、職種や業種の選択肢が多いこと自体も、キャリア設計する上で大きなメリットとなります。また、日系企業が多いことは日本食店や日本食が買えるスーパーが多いことを意味し、生活面でのハードルも低くなる傾向があります。

反対に、ハードルが高いアジアの国はどこかというと、野上さんは「インド」と答えます。4年間に及ぶインドの駐在経験を振り返りながら、次のように理由を説明してくれました。

「インドはその他のアジア諸国と比較しても、仕事のやり方から会議のスタイルまで日本とは大きく異なる部分が多いため、大きなチャレンジであることは否めません。また生活面を見ても食文化を含むライフスタイルが大きく異なるため、よりハードルが高くなります。私はアジア3カ国に駐在しましたが、インドでの経験はとてもエキサイティングでした。生活習慣や仕事の仕方も違いが大きいがゆえ、逆に学ぶものも非常に多かったです。ハイリスク、ハイリターンの国ですね。初めて海外転職する方にはかなりハードルが高いと言わざるを得ませんが、インドはグローバルキャリアの登竜門のようなところなので、挑戦しがいがあります」

日系企業が多く挑戦しやすいタイやベトナム、生活習慣から仕事のしかたまで大きな違いがあるインド、ビジネスレベルの英語力が必須の欧米諸国と、海外転職と言っても国や地域によって傾向は異なります。海外転職を考える際は、自らの言語力や異文化対応力を考慮して国や地域を選択し、長期的なグローバルキャリアパスをきちんと描いてみることをおすすめします。

「グローバルキャリアと異文化コミュニケーション」という切り口で4回にわたり、海外で働くために必要なスキル、異文化コミュニケーションの極意、グローバルキャリアを描くためのヒントを、グローバル人材コンサルタントの野上さんとともにお伝えしました。記事を読んで海外就業に興味を抱かれたら、より具体的なキャリアプランをdodaのグローバルキャリアアドバイザーと考えてみませんか。これからも世の中はグローバル化が進んでいくからこそ、dodaとともにグローバルキャリアの第一歩を今こそ踏み出しましょう!

図1:OECD加盟国 2020年の平均年収ランキング(米ドル換算単位1,000 ドル)

OECD加盟国 2020年の平均年収ランキング(米ドル換算単位1,000 ドル)

OECD (2023), Average wages (indicator). doi: 10.1787/cc3e1387-en (Accessed on 29 May 2023)

図2:部長級の年収比較(単位:100万円)

部長級の年収比較(単位:100万円)

出典:ヘイズ アジア5ヶ国・地域における1244職務の給与水準と、5,146人の雇用実態調査

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