掲載日:2013年12月16日
「寿退社」が死語となりつつあり、長く働き続ける女性も増えてきた現在。しかし結婚や出産、介護などがキャリアに影響を与える度合は大きく、それらを機にキャリアプランの変更を迫られる女性が多いのも事実です。転職でキャリアアップを目指す上で、女性が直面しがちな問題やその解決へのヒントとは。多くの転職をサポートしてきたdodaの女性キャリアアドバイザーが、同性の目線から本音で語り合います。
- 乾 真由美
乾 真由美得意分野:MRや臨床開発など、医療業界の職種全般大手製薬企業でのMR職を経て、結婚を機にdodaキャリアアドバイザーに。以来、メディカル領域を専門に担当。「転職がゴールではなく、自身の強みが活かせる”未来”の提案」をモットーに、MRをはじめとする医薬品や医療機器の営業職、研究職を含めた臨床開発関連の職種など、幅広くサポートしている。
- 大澤 優子
大澤 優子得意分野:製造業界におけるエレクトロニクス領域の開発設計職、品質や製造、サービスエンジニアなどの技術職大手子ども服メーカーの営業部門の企画・事務職を経て、2006年にdodaキャリアアドバイザーに。製造業界の法人営業を約5年間務め、長男を出産。産休・育休を経て2012年から時短勤務にて復職。「転職者の可能性を広げる提案と、ライフイベントや家族状況に寄り添いながら相談に乗ること」をモットーにサポートしている。
- 柏木 あずさ
柏木 あずさ得意分野:業界問わず、営業職全般2006年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。金融業界の法人営業とキャリアアドバイザーを経て、2012年に営業職のサポート専門に。「転職希望者の気持ちを理解して最善の、かつ実現可能な提案」を心掛けている。2013年に結婚。
- 川嶋 由美子
川嶋 由美子得意分野:メーカーや商社、サービス業界の営業職全般2002年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。IT業界のエンジニア派遣の法人営業を3年経験し、キャリアアドバイザーに。2度の産休・育休を経て、現在は時短勤務にて4歳と1歳の息子の育児をしながら、営業職の方の転職をサポートする部門のマネジャーを務める。「幅広い情報提供と、率直な意見やアドバイスを伝えること」がモットー。
- 黒瀬 ともみ
黒瀬 ともみ得意分野:マーケティングや事業企画、経営企画などの企画職全般人材派遣会社での広報・宣伝職を経て1999年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)に転職。人材派遣部門でのキャリアアドバイザーを11年務め、その後dodaキャリアアドバイザーに。「転職をスタートとして、活躍できる未来を一緒に描けること」をモットーに、これまで約200人の転職をサポートしている。
- 張本 美慧
張本 美慧得意分野:ITコンサルタントやアプリエンジニアなど大手語学学校でのスクールマネジメント職を経て、2006年にdodaキャリアアドバイザーに。以来、IT領域を専門に担当し、約400人の転職をサポート。「目先の転職ではなく、数年先まで見通したキャリアのサポート」を心掛ける。現在、第一子を妊娠中。
女性の転職はもはや珍しくなく、dodaエージェントサービスにも女性の登録者数は増えています。ただ、女性が転職しやすくなってきているかというと、一概にそうとは言えないですね。私が担当する営業職の領域では、景気回復に伴って全体の求人数が増加しているのは事実ですが、女性の採用が特に増えている実感はありません。
私も営業職の方を担当していますが、印象は同じ。その中で女性に有利な動向を挙げるとすれば、丁寧な対応や細やかなフォローの実績を評価して女性の営業職を採用し、女性ならではの観点を活かして業績向上につなげたいと考える企業が増えていることです。例えば建築業界のように、顧客の男性比率が高い業界が、あえて女性営業を投入して差別化を図りたいという狙いを持っている企業もあるようです。
最近は、ダイバーシティ推進や、企業イメージ向上のために女性の活躍推進を積極的に打ち出す企業も増えていますよね。担当しているメディカル領域は、看護師や臨床開発職など、比較的昔から女性が多く活躍している業界。産休や育休を経てマネジャー職に就いている例も珍しくありません。加えてここ数年は、女性営業職が結婚や出産を経て、いかに長く働けるかに関心が移行してきている印象です。
私が担当するのは、女性の数がまだまだ少ないIT業界。メディカル領域と同じように、ダイバーシティ推進や女性の活躍推進をブランディングにつなげようという意識も強い。ただ、実績が少ないせいか、育児中の女性が働く環境などはまだ整っていない企業も多いかもしれません。
製造業界を担当していますが、IT業界同様、女性の技術者は圧倒的に少なく、1割にも満たないほど。ただ、何よりスキルが重要視されるので、技術者として経験を積んでいれば、男女関係なく評価される傾向が強いですね。企業風土や経営者の理念などの要素も影響しますが。
専門職の方を担当していますが、10年ほど前と比べて大きく変化したのは、面接において未婚・既婚、あるいは将来子どもを産む意思の有無を質問されるケースが減ったこと。既婚女性の転職も増えてきましたし、将来出産を考えている女性に対して、企業の理解も進んできているように感じます。
本当にそうですよね。昔は「結婚しているの?」「子どもは考えているの?」という質問が当然のようにあって、女性側に答える義務はないけれど、安易に答えてしまって落とされる…というようなことが多くありました。そうした質問がモラルに反していることが社会通念としてようやく浸透してきましたよね。
女性に活躍してもらわないと経営が成り立たないという企業もありますよね。男女比において女性が6割から8割を占める企業も実際に多いですし。
個人向け商材の企業などがそうですね。消費の決定権を握るのが女性である以上、社員に女性を積極登用することは経営戦略として不可欠になっています。ほかにもメーカーやサービス業など、顧客に女性が多い分野では、女性の活躍推進への意識が高い。ビジネスの性質上、女性が活躍しやすい業界から改革が進んでいる印象です。
個人側に目を移すと「将来結婚や出産をしても働き続けたいから、今のうちに仕事環境をよくしておきたい」という女性が増えている印象です。大きくキャリアアップしたい、年収を上げたいというアグレッシブな転職というよりも、より長く、より良く働くために環境を整えたいという理由で相談に来る方が多いように思います。
そのような理由で転職を考える気持ちはすごく分かるけれど、もどかしさも感じますよね。まだ結婚していないのに、将来あるかもしれない出来事に備えて守りに入るのは非常にもったいない。結婚や出産に備えてキャリアダウンするのではなく、思いっ切り働ける今のうちに自分のスキルを存分に磨いておく方が、将来を見据えたときにプラスになるはず。
思い込みや先入観で、自らの選択肢を狭めている方もいますよね。「営業の仕事がきついので事務職に転職したい」という相談を受けることも多いのですが、私はご本人がそう考えるに至った理由をきちんと聞くようにしています。もし営業職を不向きだと感じて、事務職の方が合うと思うのであれば転職を否定するつもりはありません。ただ「事務職なら長く働けそう」という思い込みで転職をしてしまうと、のちのち後悔する可能性は高いですね。
「事務職は営業職よりも楽」というイメージ自体が思い込みですよね。事務職でも残業のある職場もあるし、専門性も求められる。逆に営業職のままでも、企業や業界を替えれば違う働き方ができるかもしれません。
「残業が少ない職種で無理なく働く」という選択は、一見「長く働く」ことにつながるように見えて、実は自分の可能性の幅を狭める行為だと思うんです。それよりも、自分にしかできない仕事を極めて社内での存在意義を確立する方が、長く、しかも必要とされながら働くことにつながる。過去、お子さんが3人いる女性の転職をサポートした経験がありますが、ご本人に金融専門職の知識と経験があったことから、高待遇での転職が実現しました。採用担当者も「残業はしなくていい。時間内で貢献してほしい」と言われて。必要とされる人材になることの価値を、私自身も教えられました。
職種に対する「思い込み」の話が出ましたが、企業規模や制度にまつわる先入観もあると思います。例えば「勤務先に産休を取得した女性が1人しかいない。自分も取れるか不安だから、制度が整っている大手に行きたい」と転職を希望する方がいますが、それは短絡的だという気がします。そもそも女性の産休・育休は法で定められていて、その企業の実績の有無にかかわらず取れるのです。利用経験者が少ないからといって制度が整っていないと判断するのは早急です。今は規模を問わず女性の活躍推進に積極的な企業は増えているので、企業ごとに実情をお伝えしています。
企業規模へのこだわりは捨ててほしいなというのが本音です。働きやすいかどうかは、人それぞれ。大手だから、中小規模だから、とか、制度の有無ではなく、例えば、女性の活躍を本心で進めようとしているか、その経営者の理念が組織に行きわたっているか、などの観点で企業を見ることも必要ですよね。
実際に、ベンチャー企業で、自分の意見を通してやりたいことに挑戦したり、働き方の自由度の高さを利用して育児と両立させている女性もいます。先入観や思い込みを払拭することが、転職を成功させるために必要なことではないでしょうか。
「男性と同じくらいバリバリ働きたい」「女性の働きやすさについては特に気にしない」という女性もいますね。全体の2割くらいでしょうか。そういう方々には、同じ女性として、ぜひそのまま突き進んでいただきたいと思います。転勤もOKというのであれば選択肢もすごく広がるので、どんな提案をしようかとこちらもわくわくします。女性はどうしても的を狭く絞って攻めようとしがちなので…。
確かに、条件をたくさん並べる女性は多いですね。残業はなるべく短くて、ワークライフバランスが取れて、やりがいもあって、なおかつ対外的にも評価してもらえる企業や仕事がいいと。でも、条件面だけを見て求人を絞っていては、可能性はどんどん狭まってしまいます。だから私は、例えば残業時間を気にする人には「早く帰れるよう効率的に仕事をすることで、解決できる可能性はありますよね」とお話ししたりします。
女性は「あれも大事、これも大事」となりがち。優先順位をつけてくださいと言っても、なかなかつけられなかったりします。全部を求めようとしてもなかなか前に進めない。時間をかけてでも、少しずつ考えを整理してほしいですね。
要望をたくさん持つ女性に、きちんと納得していただきながら転職活動を進めてもらうためにも、私たちキャリアアドバイザーもより多くの情報やノウハウを蓄積していかなければならないですね。「この企業に転職してこんなふうに活躍している人がいる」「この企業はベンチャーだけど残業時間に融通が利きますよ」という具体例が多いほど、選択しやすくなりますからね。