掲載日:2014年7月7日
Vol.3 Special contents少子化ジャーナリスト・相模女子大客員教授
白河桃子さん
女性のキャリアは「常に全力」じゃなくてもいい。
“緩急”をつけた働き方を
第3回は、少子化ジャーナリスト・作家として、女性のライフプランやキャリアなどをテーマに活動に取り組む白河桃子さんにご登場いただきます。齊藤英和さん(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター副センター長)との共著『「産む」と「働く」の教科書』では、「女性が当たり前に仕事を続けながら子どもを育てる」ことの意義やコツを伝授。仕事を続けることの重要性とは、そして、子育てとキャリアアップを両立させるために必要なこととは。白河さんにお話を伺いました。
- 講談社/2014年3月24日発売/
1300円(税別)
「産むと働くの授業」無料オンライン講座として公開中「産むX働くの授業」
https://www.youtube.com/user/goninkatsu
仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座
- 著者 白河桃子さん
- 少子化ジャーナリスト・
相模女子大客員教授1961年、東京都生まれ。慶応義塾大学卒。「婚活」「妊活」など、女性たちのキーワードを発信する。『婚活時代』(2008年)出版をきっかけに、共著者の山田昌弘中央大学教授とともに婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、女性活用、男女共同参画、不妊治療、ワークライフバランスなどがテーマ。
完璧でなければ、という「理想像」に縛られていませんか?
女性にとって、仕事と、結婚・出産などのライフイベントは切っても切り離せないものですが、統括する公官庁は別々、授業も別々、女性自身もばらばらに考えているという印象を持っていました。そんな女性たちにメッセージを送りたいと、今回この本をまとめました。もとにしているのは、国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター副センター長の齊藤英和先生とともに2012年から実施している「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」。講座自体は主に女子学生を対象としていますが、今回の本には、身近にロールモデルがいないことで妊娠に踏み切れないでいたり、子育てと仕事の両立に不安を抱えていたりする働く女性たちにもぜひ知っておいてほしいライフプランニングをまとめました。
2009年に育児・介護休業法が改正され、短時間勤務制度を設けることが事業主に義務づけられるなど、ここ数年、仕事と家庭の両立支援の動きが国の政策レベルで進んでいます。かつてのように女性が「仕事か、出産か」の二者択一を迫られることも今ではほぼなくなり、「産んでも働く」という選択肢が世の中に定着してきています。ただ、そこに「活躍する」という要素を加えようとした場合、思うようにいかずモヤモヤしている女性は多いのではないでしょうか。仕事への楽しさややりがいが大きければ大きいほど、子育てとの両立に不安や難しさを感じ、自分でキャリアにブレーキをかけてしまったり、逆に無理をしすぎたりする女性は少なくありません。
その要因の一つとなっているのが、女性たちを縛る、昔ながらの昭和型の父母をお手本とした「理想像」ではないでしょうか。働く女性は増えていますが「男性は仕事、女性は家庭」という価値観がぬぐい切れず、誰に言われたわけでもないのに、働く女性たちは「仕事も家庭も完璧でなければ」と一人で抱え込んでしまいがちです。冒頭で紹介した講座でも、参加した女子学生からの感想で多いのが、「子どもは預けていい、家事は手抜きしてもいいと知って感動した」というもの。それほどに、完璧な妻像・母親像が若い女性の間でも根強いことがうかがえます。同時に父親のように「仕事は何にもまして優先」とも思っている。これでは両立する女性は引き裂かれてしまいます。仕事像と母親像がまったく一致していないのです。
20代のうちに、実績や信用の蓄積を
女性のみなさんにまずアドバイスしたいのは、そうした理想像から抜け出すことです。仕事ができる人ほど、ほかの面でも完璧を目指そうとしがちですが、高すぎる理想は自分を追い詰めることになりかねません。「完璧でなければ」「100%やり切らなければ」という考えを一度見直してみてください。そもそも、ライフプランニングに「完璧」はありません。授かりものである妊娠をはじめ、計画通りに進まないことの方がむしろ多く、プラン自体も変化を重ねて当然です。大切なのは、その中で自分にとって「譲れないもの」「大切なもの」が何なのかを考え、その軸に沿って、能動的に自らのキャリアを形成していくこと。将来的に出産を考えているのであれば、出産後にどんな働き方をしたいのかをしっかりと描いておくとともに、それに対する会社の支援体制はどうか、いま現在子育てをしている先輩の女性社員はどんな働き方をしているのか、意識的に情報収集することから始めましょう。
また、特に20代のうちはキャリアを前倒しするような心構えで、積極果敢に経験を積んでおくことを強くおすすめします。仕事に存分に打ち込める時期に実績や信用を蓄積しておくことで、周りから「出産後もまた一緒に働こう」と応援してもらいやすくなる。つまり、復職の後押しとなる要因をあらかじめ自分で確保しておくのです。
加えて、専門性を磨いておくことも大切。たとえば「語学が得意で簿記もできる」「理系で編集経験がある」などの複合的な専門性は、単純な足し算ではなく掛け算の価値を発揮し、とても大きな強みになります。また、資格だけでなく、マネジメントやプロジェクトリーダーなどの経験から得られるスキルも一種の専門性と言えます。その点で、若手のうちから責任あるポストを任されやすい会社でいろいろなことにチャレンジするのも一つの選択肢だと思います。
働き続けること、それ自体に大きな意味がある
今、子育てをしながら働いていて、両立の難しさに直面している人もいることでしょう。そんな女性たちには「出産前と同じように働こうと頑張りすぎないで」と伝えたいですね。女性の人生には、仕事に全力を注げる時期と、出産や子育てのために仕事をセーブせざるを得ない両方の時期がある。そう割り切った上で、緩急をつけながら、とにかく働き続けることが大切だと思うのです。「思うように仕事ができないから」と出産を機に退職してしまうのはとてももったいない。子どもはいつか手を離れますし、職場の環境も今後、世の中の流れを受けて両立支援の方向へと変化していく可能性が高いでしょう。
もう一つは「量」ではなく「質」の追求へと働き方を転換させること。時間内で結果を出す、というワークスタイルで周囲を納得させるんです。ここでも大切なのは、一人で何もかも抱え込まないこと。パートナーをはじめ、両親や友人、同僚、保育園、ファミリーサポートなど、いろいろな人にうまく力を借りることも大事なスキルの一つだと知ってほしいですね。
子育て中は、仕事に全力を注げないことに焦りを覚えるときもあるでしょう。ですが、どうか覚えていてほしいのは、あなたが働き続けているという事実、それ自体に大きな意味があるということです。あなたの働き方・生き方は次世代のロールモデルとなり、「性別にかかわらず働くことは当たり前」「子育てと仕事の両立は当たり前」という世の中の実現に寄与しています。そこに誇りと希望を持ちつつ、ぜひ自ら主体的に「働き続けるための戦略」を組み立ててください。
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あなたのキャリアに役立つエッセンス。
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「なぜ、女性が活躍する組織は強いのか?」
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1400円(税別)
外資系ホテルに勤める会社員だった著者が、超難関といわれる新司法試験に2年という限られた時間の中で合格できたのか。その秘訣を具体的な「79のルール」として分かりやすく紹介。効率と実効性を追求したオリジナルの勉強法や、試験への心構えなど、資格試験合格を目指す人にとって必読の情報が満載。
八重洲ブックセンターWEBサイト http://www.yaesu-book.co.jp/
人気スポット・八重洲を代表する大型書店
本探しはもちろん、ひと息つきたいときにも
2013年9月に完成した『グランルーフ』のオープンで、注目を集める東京駅八重洲口。1978年の開業以来、このエリアを代表するお店として人気の大型書店『八重洲ブックセンター』では、新刊発売に合わせ話題の著者を招いたトークショーやサイン会、シーズンごとのフェアや展示などを数多く開催。
地下1階から地上8階のフロアには、ビジネス書をはじめ、趣味や実用、参考書や写真集など、あらゆるジャンルの本を蔵書している。文具と雑貨のショップ『style F』や公衆無線LANが利用できるコーヒーショップ『ティファニー』を併設し、銀座や有楽町からもアクセスしやすい立地から、女性客や家族連れも多い。インターネット上で本に関する各種相談や通信販売を行う「ブックコンシェルジュサービス」も実施。
■八重洲ブックセンター本店
- 【住所】
- 〒104-8456 東京都中央区八重洲2-5-1
- 【アクセス】
- JR東京駅八重洲南口、東京メトロ銀座線京橋駅 7番出口(明治屋出口)
- 【営業時間】
- 書籍売場 平日(月曜日~金曜日)/10:00~21:00、土日祝日/10:00~20:00
コーヒーショップ「ティファニー」 平日(月曜日~金曜日)/11:00~19:00、
土日祝日/11:00~18:00 - 【電話】
- 03-3281-1811(代表)
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【千葉】
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宇都宮パセオ店