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Vol.1会社情報(IR・財務)の読み方入門講座

上場企業とは? 非上場企業との違いは?メリットと大変さは?

「上場企業」と聞いてどのような会社を思い浮かべるでしょうか? 上場=安定=待遇も良いというように連想した方もいらっしゃるかもしれません。でも非上場企業の中にも安定していて、待遇の良い会社はたくさんあります。上場企業、非上場企業のメリットと大変さを知って、転職先を選ぶときに会社ごとの違いをチェックしてみましょう。

この記事を要約すると…

  • 企業や個人から資金を集めるためにを発行する証券を株式という
  • 上場株式を発行している会社のことを「上場企業」、そうでない企業を「非上場企業」

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上場企業とは?

「上場企業」を説明する前に「株式会社」について知っておきましょう。企業が事業を拡大する場合や、新事業を立ち上げる場合などには当然「お金」がかかりますよね? そのお金を完全に自社で賄うことができれば問題ありませんが、現金・預金の多い企業でなければ難しいのです。

そこで企業は、「外部から資金を募る」必要が生じますが、資金を調達する方法は1つではありません。企業や個人から資金を集めるために証券を発行するのもそのひとつです。

その証券が「株式」と呼ばれるもので、それを発行しているのが株式会社です。株式は特別な審査を経て、公に上場されて、証券会社に口座を持てば誰でも売買できる上場株式と、そうでない非上場株式に分類されます。上場株式を発行している会社のことを「上場企業」といいます。

上場企業にはどのような種類があるの?

これまで東京証券取引所には、「東証一部」「東証二部」「JASDAQ(さらにスタンダード、グロースに分けられる)」「マザーズ」という4つの市場がありましたが、2022年4月4日から、新たに「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つの市場に再編されました。
※日本国内の証券取引所は東京証券取引所(東証)だけではなく、名古屋、福岡、札幌の3カ所にも存在しますが、今回は入門編のため東京証券取引所のみの説明に限定させていただきます。

この東証再編の理由としては、東証一部上場企業の数が増えすぎて、日本の最上位市場として質の低下が起きていることが原因とされています。22年4月時点で、東証一部上場企業の約35%(754社)は時価総額が250億円を下回っており、約50%(1,096社)のPBR(株価純資産倍率)が1を下回っているなど、一部上場企業の質の低下が問題となっていました。

そこで、3市場に再編することで投資家にも分かりやすく、市場を活性化させる狙いがあります。3市場それぞれの特徴を見ていきましょう。

プライム市場とは?

東証公表のプライム市場のコンセプトは「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」です。グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場であるため新規上場・上場維持基準が最も厳しく定められています。1,836社が上場しています(2022年6月6日時点)。

スタンダード市場とは?

主に国内向けの市場で、「日本経済の中核」と位置付けられています。プライム市場の上場要件に満たなかった東証一部企業のほか、東証二部やジャスダック(スタンダード)に上場していた企業で構成。1,457社が上場しています(2022年6月6日時点)。

グロース市場とは?

スタートアップなど、成長可能性の高い企業向けの市場。主にマザーズやジャスダック(グロース)に上場していた企業で構成。467社が上場しています(2022年6月6日時点)。

現状の市場区分と新市場区分
出所:日本取引所

上場企業、非上場、勤めるときのメリットと大変さとは?

上場企業に勤めるメリット

・会社の情報が開示されている
・社会的信用がある

上場企業の業績の数値は監査法人にチェックされており、有価証券報告書などでは財務情報はもちろん従業員数の推移や勤続年数、給与なども開示されており、会社がいまどのような状況にあるのか、外部から客観的に分かることはメリットと言えるでしょう。

また、一般的には非上場企業よりも信用力があるとされ、クレジットカードや住宅ローンの審査が通りやすいことも働く人にとってのメリットと言えるかもしれません。

上場企業ならではの大変さ

・社内規定・コンプライアンスが厳しい
・短期的な利益を追わなければならない場合がある

上場企業であればすべて良しというわけではありません。社内規定・コンプライアンスが厳しいため、間接業務が多く新しいことがなかなか進みにくいこともあります。

また、上場企業になると株主の意向に沿った経営を行う必要があるため、非上場企業に比べると、経営陣や株主の方針によっては、短期的な利益を追わなければならない場合があります。

非上場企業に勤めるメリット

・社外の意向に左右されにくい経営環境で仕事に取り組める
・(将来上場する場合は)ストックオプションがある

上場企業は四半期に1回の決算発表が義務付けられており、投資家も四半期ごとの結果を求める傾向にあります。長期的な成長を志向する企業があえて非上場を選ぶということもあります。非上場企業でも、これから上場しようと頑張っている企業もありますし、そのような会社の株式を社員として持っていたら、ストックオプションなども含めて、上場したときに株式の値上がり益を得ることができます。

非上場企業ならではの大変さ

・経営陣の意向が経営に反映されやすい
・(上場を志向する場合は)事業が成長期にあり、定型の業務フローのない仕事が多い

株式が上場されていない場合、オーナー経営者が株式の多くを保有している事例も散見されます。大株主と経営者が同一である場合、権限が分散されていない傾向にあり、オーナー経営者の意向がより経営に反映されやすいと言えます。そのような場合、経営に対する考えに共感できるか、社風が合うかの見極めが大切になってきます。また、上場を志向するような場合は、事業が成長期にあり、定型の業務フローのない仕事や、業務フローを共に作っていく仕事が多いことも特徴になります。マニュアルに沿って決められた仕事をしっかりやりたい人は注意が必要でしょう。

まとめ

上場企業だから良い、非上場企業だから悪いということはありません。これまで述べてきたことのどこを重視するのか、そもそも業績が順調で利益が従業員に還元されているのかという視点が重要でしょう。

執筆者:馬渕 磨理子
フィスコ 企業リサーチレポーター
京都大学公共政策大学院修了。日本テクニカルアナリスト。
医療法人でトレーダーとして資産運用に携わり、現在はフィスコで活動。同時に日本クラウドキャピタルでもマーケティングに従事。プレジデントやSPA!など多数執筆。
Twitter https://twitter.com/marikomabuchi
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