この記事を要約すると…
- 利益剰余金=会社が成長するための原動力。会社の年輪ともいえるものであり、その会社の長期的な収益力を判断する指標となる
- 内部留保とは「利益剰余金」のことを指す
1.利益剰余金とは
2.「内部留保」とは
正確な会計用語として内部留保という言葉が使われることはないため、上場企業が公表する決算書の中を探しても内部留保という言葉はどこにも出てきません。内部留保とは「利益剰余金」のことを指します。内部留保は企業を守る側面があることから非常に重要な指標になります。
例えば、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大により経営に大きなダメージを受けた企業が多く、従業員への給与や固定費の支払いなど、これまで以上に手元資金の重要性が高まっています。日本の大手企業では、アベノミクス以降、内部留保を積み増してきたことで、今回のコロナショックにある程度耐え得る利益剰余金の分厚さを確保していたところが多数ありました。そのため、あらためて、内部留保(利益剰余金)の重要性が注目されているのです。
3.利益剰余金(内部留保)が多いと何が良いの?
利益剰余金(内部留保)が多いか、少ないかの判断の目安としては、会社の創業年数も関係してきます。利益剰余金は「企業が生み出した利益を積み立てたお金」だと述べました。ということは、利益剰余金の金額を会社の「期数(年数)」で割り算すれば、毎期の平均的な利益を計算できます。例えば、決算書の利益剰余金が 10,000円であり、それが10期目の決算書であれば、毎期の平均利益 = 10,000円 ÷ 10年 = 1,000円という計算になります。「この会社は毎期だいたい 1,000円ほどの利益をあげる」ということが分かります。10期分の決算書を集めて分析するのは骨が折れる作業ですが、それが1期分の決算書だけで概算で分かるのが利益剰余金なのです。利益剰余金の多い・少ないは企業の年数や業種によって異なります。
利益剰余金が多いということは、自己資本 である純資産の部が多いということであり、自己資本が多い会社は財政が安定しているといえます。自己資本を増やす方法としては「資本金 」を増額するか「利益剰余金」を増やすかのどちらかになります。しかし、いくら「資本金」を追加投入したとしても本業の経営がうまくいっておらず本業での収益力がなければ意味がありません。
一方、内部留保として計上される利益剰余金は、本業が順調であれば、年々増え続けるはずです。経営体質そのものが良い状態の企業だといえるでしょう。利益剰余金(内部留保) はどんなことに使われるかといえば、上記でも述べたように、現金のまま持つのではなく、会社の成長のために工場設備や店舗などに投資されます。利益剰余金が多ければ、危機の時に企業を守るだけでなく、成長のための攻めにも使えるメリットがあるのです。
逆に、大企業でも巨額の赤字に陥り、利益剰余金を吐き出してしまうケースがあります。利益剰余金がマイナスの企業は経営状況が悪化している状態であり、マイナス状況が続けば負債が資産を上回って債務超過に陥ってしまうのです。
まとめ
利益剰余金は会社が成長するための原動力なので、チェックすることが大切です。毎年しっかりと利益を出している会社は、毎年の利益が積み上がっていくため、利益剰余金が増えています。利益剰余金は、会社の年輪ともいえるものであり、その会社の長期的な収益力を判断する指標となります。利益剰余金が多い企業ほど経営が順調であり、資金力に余裕があるといえるでしょう。
フィスコ 企業リサーチレポーター
京都大学公共政策大学院修了。日本テクニカルアナリスト。
医療法人でトレーダーとして資産運用に携わり、現在はフィスコで活動。同時に日本クラウドキャピタルでもマーケティングに従事。プレジデントやSPA!など多数執筆。
Twitter https://twitter.com/marikomabuchi
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