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Vol.12会社情報(IR・財務)の読み方入門講座

キャッシュフローって何? 営業CF、投資CF、財務CF、現金同等物残高の意味とは

今回はキャッシュフローについて解説します。企業の財務情報を見ていると「キャッシュフロー(CF)」という項目が出てきます。営業CF、投資CF、財務CF、現金同等物残高はどう違うのか。どこに注目したらいいのかという疑問を持っている方も多いでしょう。今回は、その疑問にお答えします。

この記事を要約すると…

  • キャッシュフロー計算書は、実際のお金の流れで会社の経営状況の実態を表すもの
  • 見極めポイントは(プラス)か(マイナス)か
  • 優良企業は、営業CF(プラス)・投資CF(マイナス)・財務CF(マイナス)

※別の用語を調べる

1.キャッシュフローとは

キャッシュフローとは、会社における資金(キャッシュ)の流れ(フロー)のことをいいます。そして、キャッシュフロー計算書は、実際のお金の流れを表したもので会社の経営状況の実態を表しています。キャッシュフロー計算書は、支出より収入が多ければプラスに、収入より支出が多ければマイナスになります。

例えば、「会社が利益を出しているのに、資金が残っていない」というケースでは、この資金の流れに何らかの問題があることを示しています。会社がどこに資金を使ったのか、どのように資金を増やしたのかといった、資金の流れを把握することができ、倒産リスクを見極めたり、会計期間の初めと終わりでどれくらいお金の流れに変化があったのか、などを読み取ることができます。

キャッシュフロー計算書は、営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)、投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)、財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)の3つに分けられます。

<見本>

キャッシュフロー見本

2.営業キャッシュフロー(営業CF)とは

営業CFは、本業による収入と支出の差額を表します。つまり、本業を行った結果として、手元のお金がいくら「増えたか」または「減ったか」が分かる項目です。この項目の合計額がプラスの会社は、本業が順調と判断できます。逆にマイナスの会社は、本業で苦戦しており、現金不足で苦しんでいることが分かります。

営業CFは「本業でどれだけのお金を稼いでいるか」を表します。3つのキャッシュフローのなかで、最も重要なキャッシュフローです。営業CFは本業による稼ぎを表すため、プラスの数値であることが大前提です。

プラスになっていれば、本業でしっかりキャッシュを残しているということを表しています。逆にマイナスになった場合は、「売り上げが不振である」「売り上げが上がっていても、現金の回収が上がっていない」「経費が多すぎる」といったことが考えられますので、現金不足であるといえます。営業CFのマイナスが続く会社は、少し危険な会社と見てもいいでしょう。起業時のように先に現金が出ていくといった特別な事情がない限り、営業CFはプラスであるべきです。

3.投資キャッシュフロー(投資CF)とは

投資CFは、「投資活動によるキャッシュフロー」で、設備投資 や企業買収など、将来の事業拡大のためにどれだけお金を使っているか、投資からどれだけ回収しているかなど、資金を投じる活動に伴うキャッシュフローを表しています。投資CFを見ることで、会社がどのような投資活動に力を入れているかが分かります。

投資CFはマイナスになったとしても、それが将来のために積極的に投資していることが原因であれば、来期以降の業績がよくなる可能性があるということになります。一方、設備や株式などを売却した場合は、投資CFはプラスになりますが、将来のための投資よりも資産の売却を優先していることの表れともいえます。優良企業は、この項目はマイナスであることが多いです。逆にプラスの場合は、会社が持っている設備や、株、債券などを売った金額が投資分を上回っていることを示しています。

4.財務キャッシュフロー(財務CF)とは

財務CFは、「財務活動によるキャッシュフロー」で、出資の受け入れや金融機関からの借入など資金調達によるキャッシュフローを示しています。どのような資金を調達し、それを返済しているのかを示す情報です。財務CFは、営業CFと投資CFを調整するものでもあり、財務CFを見ると、足りないキャッシュをどのような手段で補充したのかが分かります。

財務CFがプラスの場合は、お金を調達していることを意味するものですから、毎年プラスが続いている場合には、その分が増えることになりますので、よほど右肩上がりで成長している会社でない限り注意が必要ということになります。一方、借入金を返済した場合は財務CFがマイナスになりますが、その分負債も減少することになります。

財務CFについては、資金の増減の要因を分析した上で、会社の事業活動に見合ったものかどうかを確認することが大切です。優良企業は、マイナスであることが多いですが、経営難にもかかわらず、金融機関に返済を迫られてやむなくマイナスとなるところもあります。また、積極的に成長を目指す企業は、借入金などの資金調達も多くなりがちでプラスになることがあります。

5.現金同等物残高とは

キャッシュフローの欄の中に、現金同等物という項目があります。これは、「現金及び現金同等物の増減」を表しています。現金同等物残高が前の期と比べてプラスになっていれば金回りが順調で、経営状態もよいといえます。

ちなみに、「現金同等物」とは具体的にどのようなものを指すのか気になった人もいるかもしれません。「現金同等物」は、「容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資」とされており、連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準で定義されています。注解(注2)で「例えば、取得日から満期日又は償還日までの期間が3か月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパー、売戻し条件付現先、公社債投資信託が含まれる」と書かれています。

6.3つのキャッシュフローと現金同等物残高から分かることとは?

営業CF、投資CF、財務CFの組み合わせによってどのような解釈ができるのかを見ていきます。一般的には3つのパターンに分けられます。

キャッシュフロー計算書の見極めポイント

営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスの企業は、本業で稼げている企業であり、成長のための投資も行っていて、借入を返せているということですので、優良企業であると判断できます。

営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスの企業は、本業で稼げていて、成長のための投資を行っているものの、借入や資金調達額が多いということですので、積極投資企業といえます。このような企業への転職を考えている場合は、どのような事業に積極投資を行っているのかをよく調べるようにしましょう。

営業CFがマイナス、投資CFがプラス、財務CFがプラスの企業は、本業で稼げておらず、成長のための投資も行えておらず、借入も多いということですので、財務活動上は懸念のある企業といえます。このような企業への転職を考えている場合は、一時的にこの状態となっているのか、今後も懸念は続きそうなのかを調べるようにしましょう。Webページでの情報で懸念が残る場合は、内定を得たあとに企業に直接確認し、納得ができたら内定承諾をするようにしましょう。

執筆者:馬渕 磨理子
フィスコ 企業リサーチレポーター
京都大学公共政策大学院修了。日本テクニカルアナリスト。
医療法人でトレーダーとして資産運用に携わり、現在はフィスコで活動。同時に日本クラウドキャピタルでもマーケティングに従事。プレジデントやSPA!など多数執筆。
Twitter https://twitter.com/marikomabuchi
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