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Vol.16会社情報(IR・財務)の読み方入門講座

ROICとは? メリットやROE・ROAとの違いとは?

今回はROICについて解説します。ROEROAと似た指標として注目される「投下資本利益率(ROIC)」について、よく分からないと思っている方も多いでしょう。ROICのメリットとROE・ROAとの違いについて見ていきます。

この記事を要約すると…

  • ROICは調達したお金を使って効率的に利益をあげられたかを測る指標
  • ROICは「本業からの稼ぎ」に重点を置いている
  • ROICはROE・ROAの問題点を解決した指標
  • ROICから企業の成長トレンドが分かる

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1.ROICとは?

ROICとは、Return On Invested Capitalの略称で「ロイック」と読みます。企業と債権者(銀行など)から調達したお金に対して、どれだけ効率的に利益をあげることができたかを測定する財務指標です。日本語では投下資本利益率と言われます。

計算式:ROIC=税引後営業利益÷投下資本(投下資本 = 有利子負債+株主資本)

図解してみましょう。

ROIC

企業は金融機関からの借入(有利子負債)や株主からの出資(株主資本)によって資金調達を行い、その資金を事業に投資します。分母の投下資本とはこの事業に投資した資金です。また分子の税引後営業利益とは本業の儲けである営業利益から法人税等を除いたものです。つまり、ROICとは事業に投下した資金からどれだけの利益(リターン)を生み出したかを示す指標です。

2.ROICのメリット

なぜROEROAではなく、ROICが優れているのか、利用時にどのような点に注意すべきなのかを解説していきます。

まず、ROEは「株主視点」での利益率を測る指標です。株主がいくら拠出して、それに対するリターンがいくらかということなので株主に配当可能な金額である純資産と当期純利益が利用されます。
ただ、ROEは純資産を変えることで簡単に数字を操作できる点が問題点です。

ROE

ROAは、すべての資産を使ってどれだけ純利益をあげたかという指標です。そのため、ROAは取引先に対する交渉力を反映できないという問題点があります。取引先に対する発言権が強い企業は買掛金(資産に分類)の支払いを留保することができます。そのため、資金効率が上昇して運転資本として少ない資金を調達するだけでよくなります。

ROA

これらのROE、ROAの両方の問題を解決したものがROICです。
ROIC = 営業利益 ÷投下資本(有利子負債+株主資本)であるため株主資本比率を変えても分母を変えられませんし、事業負債を除いた純粋な投下資本で計算できているので資本提供者側にとっての適切なリターンになっています。小手先で操作することが難しく株主と債権者からの調達コストに対応した収益力を測定できるのです。

3.ROICの注意点

ただし、ROICは概念がやや難解で現場への導入が難しい側面があります。

ROIC、ROE、ROAの違い

4.ROICのランキング

日本経済新聞社が売上高100億円以下の中堅上場企業「NEXT1000」を対象に、投資の効率を示す投下資本利益率(ROIC)の3年平均を調べたランキングをご紹介します。(2019年12月13日時点で直近4年間のデータが取得できる企業が対象)

順位 社名 ROIC 3年平均
1 and factory 56.8%
2 エヌリンク 55.0%
3 北の達人コーポレーション 54.6%
4 ウェルビー 52.5%
5 エニグモ 52.1%
6 リンクバル 51.7%
7 ダブルスタンダード 49.3%
8 Mマート 48.8%
9 Orchestra Holdings 48.1%
10 GameWith 47.2%
11 スタジオアタオ 46.8%
12 ピーバンドットコム 44.6%
13 インソース 43.2%
14 SKIYAKI 40.9%
15 フィックスターズ 40.7%
16 グレイステクノロジー 39.6%
17 イー・ガーディアン 39.5%
18 みらいワークス 38.9%
19 ライトアップ 38.1%
20 カナミックネットワーク 38.0%
20 マークライアンズ 38.0%
22 アルトナー 37.3%
23 モバイルファクトリー 37.1%
23 ジェイホールディングス 37.1%
25 ストライク 36.7%

出典:日本経済新聞 2020年1月13日

まとめ

ROICは投下資本に対して「どれだけ効率的に税引後営業利益を獲得しているか」を測る指標です。「ROE」と「ROA」と似た指標ですが、本業である営業利益に着目している点が、「当期純利益」に焦点を当てているROEとROAとは異なります。またROICはROAやROEとは違い、分母が操作できない点がメリットです。ある意味「雑音」を除外して、成長のトレンドを見いだすのにROICは有効な指標なのです。

執筆者:馬渕 磨理子
フィスコ 企業リサーチレポーター
京都大学公共政策大学院修了。日本テクニカルアナリスト。
医療法人でトレーダーとして資産運用に携わり、現在はフィスコで活動。同時に日本クラウドキャピタルでもマーケティングに従事。プレジデントやSPA!など多数執筆。
Twitter https://twitter.com/marikomabuchi
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