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女性のモヤモヤを解消する100問100答

#058

2020.05.25

Q.職場でことあるごとに女性としての振る舞いを求められてつらい。
でも、嫌だとはっきり言えなくて…

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私個人ではなく、
女性としての意見を求められがち…
嫌だと言えないけど、どうしたら?

悪気なく生まれる差別もある

職場でことあるごとに、女性としての発言や振る舞いを求められている。会議では私が発言しやすいように気を使ってくれているのかもしれないけど、「女性」ではなく「私個人」として接してほしい。でも指摘すると、「面倒くさい人」だと思われそうで言えない…。

そんなモヤモヤについてお話を聞いたのは、『赤ちゃん本部長』(講談社)を描いた漫画家の竹内佐千子さん。

本作は、赤ちゃんになってしまった武田営業本部長(47)や、同性のパートナーと子どもを育てている社員など、さまざまな境遇の人が働く職場が舞台。ときに意図せず差別的な発言が飛び交うこともあり、私たちの身近な問題と重なります。例え上司であっても差別的な発言があれば指摘する一方で、凝り固まった考え方の人、ステレオタイプな人を一概に悪者として描いていないのが本作の魅力。

「実は、私は同居している父に対するモヤモヤを描いている部分もあって。世代のせいなのかもしれませんが、父はどういう発言が差別になっているのかが分かっていないんです。今はもう定年退職していますが、父がもし会社で不用意な発言をしていたら…そんなことはやめてほしいと思う一方で切なくなってしまい、どうしても悪くは描けなかったんです。」

形式上の性別で判断する危うさ

印象的だったエピソードは、第22話の「赤ちゃん本部長とみんなの願い」(3巻に収録)。広報部の企画「社で働く『女子』特集」に中途採用で入社した女性社員の中川さんが指名され、本部長と中川さんの上司の橘部長(55)は頭を抱えます。

それは、中川さんが「化粧もしていないし、スカートもはいていない」、二人がイメージする「女子っぽくない」女性だから。「社で働く『女子』特集」のような女性性が立っている企画を中川さんは嫌がるだろうと危惧していたのです。ほかの部下から「彼女を面倒な人扱いするのではなく、この企画を立てた広報に問題がある」と指摘されたことで、二人は自分たちの価値観の古さに気づくことができました。

「このエピソードは、友達の経験を元にしています。彼女はノンバイナリー(性自認が男女のどちらでもないこと)なのですが、中途で入社した会社で“活躍する女性社員”として紹介されそうになり、当時はとてもつらそうでした。相手は悪気がなくやっているから余計に困ります。悪気があれば、こちらもはっきりと言いやすいですからね。」

結局その友達は、会社に「やめてほしい」と伝えたことで状況が改善されたそう。形式上の性別で相手を判断することの危うさを感じさせられるエピソードです。

エンタメを通して価値観をアップデートする重要さを伝えたい

相手に悪気がなかったとしても、女性らしさを求める発言は控えめに言っても時代遅れ。きっぱり「やめてください」と言えるに越したことはありませんが、言えないからこそ悩みが生まれるもの…。やんわりと伝えるなど、何か方法はあるのでしょうか。

「意図せず不用意な発言をした人に言いにくいのなら、言いやすい人に伝えて外堀を埋めるのも一案ですよね。それから、職場である程度自分のことを知ってもらうことも大事だと思います。何かをカミングアウトする必要はないし、職場ですべてをさらけ出さなくていいけど、人となりを知ってもらうことで伝わりやすくなることもあるのかなと思います。」

普段から自分のことを話すことにより、「女性社員」としてではなく「○○さん」としてしっかり認識してもらえるかもしれません。また、上司や先輩とのコミュニケーションを増やすことにより、気になる発言があったときに「それはちょっと…」と言いやすい関係性も築けそうです。

「もう一つの方法としては、エンタメの力を借りることです。例えば、Netflixのオリジナル作品では、海外の多様な価値観に触れられるものもあります。“今の価値観”に触れられるものを上司や先輩にオススメして、少しずつ価値観をアップデートしてもらうのはどうでしょうか」

エンタメの内容は、Webの記事でも漫画でもなんでもいいと竹内さん。例えば、『赤ちゃん本部長』に登場する橘部長は、「そんな女みたいな格好して」など、悪気なく失言を繰り返してしまいます。「何が差別なのか」が分からなくなった橘部長が頼りにしているのが、部下が作ったメモ。そこには「知らない世界を否定しない」などの注意が書かれていて…。

こうした作品をさりげなく職場に持っていき、「おもしろいですよ」と上司や先輩に薦めて読んでもらう。時間はかかるかもしれませんが、間接的に気づいてもらう方法であれば、直接伝えるよりもハードルはぐっと下がります。

「上司や先輩にはっきり言えなくて悩んでいる方は、きっと心の優しい人だと思います。ただ、言えないことで、自分に非があると思わないでほしいですね。自分が弱っていると悪いほうに考えすぎてしまうので、誰かに相談したり、ゆっくり休んだりして、モヤモヤを育てすぎないようにしてほしいです。」

相手に自分のことを伝えたり、エンタメを駆使したり…。はっきり言うのがつらいなら、自分をいたわりながら、少しずつ相手の価値観をアップデートしてもらうよう働きかける。消極的な方法ではあるけれど、状況を変えるべく働きかけることで、気持ちも楽になるかもしれません。

まとめ

職場でことあるごとに女性としての振る舞いを求められるけど、「嫌だ」とはっきり言えない。解決策は…?

上司にはっきりと言えない自分を責める必要はない

周囲とコミュニケーションを積極的に取って自分がどういう人間かを知ってもらう

エンタメの力を借りて、相手に価値観をアップデートしてもらう

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Profile

識者プロフィール

竹内佐千子/イメージイラスト

竹内佐千子(たけうち・さちこ)
漫画家。おっかけ対象が男子で恋愛対象が女子のレズビアン。
自身の恋愛体験を描いたコミックエッセイをはじめ、おっかけ、腐女子、などをテーマにしたコミックエッセイを描き続け、最近はストーリー漫画も描いている。
赤ちゃん本部長』(講談社)、『生きるために必要だから、イケメンに会いに行った。』(ぶんか社)など。
ホームページ / Twitter
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