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女性のモヤモヤを解消する100問100答

#079

2021.03.15

Q.リモートワークで職場の人たちと
うまくコミュニケーションが取れない…どうしたら?

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職場の人たちとのやりとりが
オンラインだと難しいのはなぜ…?

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、働き方や仕事観が変化するなかで生じるモヤモヤを取り上げる「with コロナ時代の女性のはたらく特集」。

今回ご紹介するのは、「ちょっとした相談をしづらい」「仕事のモチベーションが上がらない」など、これまで対面で行われていたやりとりがオンラインやテキストベースになったことで生じる悩みについて。これらに深く関わるのが、職場の心理的安全性です。

企業や行政機関で産業医を務める堤多可弘先生に、リモートワークで心理的安全性を高める方法をアドバイスしていただきました。

リモートワーク普及によるコミュニケーション不足問題

対面でのやりとりからオンラインに変わったことで生じるコミュニケーション問題。堤先生の元には、どのような悩みが寄せられているのでしょうか。

堤多可弘

堤多可弘先生(以下、堤先生)

雑談やブレストのしにくさなどのコミュニケーションの方法に関する悩みに加え、働くモチベーションを維持できないなどの個人的な問題も生じています。上司がうまくマネジメントできなくなった結果、部下の勤務状況をチェックしすぎてしまい、監視に近い状態になってしまったケースもあります。

この対局にあるのが、「上司から仕事をサボっていると思われていそうで不安」という部下の立場の悩み。多くの人がオンラインのコミュニケーションを十分に活用できるわけではなく、戸惑っていることが分かります。

堤多可弘

堤先生

ほかにも、「今日中によろしく!」と厳しい期限で仕事を振られてしまい、悩んでいる方も。これまで双方向でできていたやりとりが、オンラインで片道になってしまったことが原因だと考えられます。

このような問題は、職場の心理的安全性が保たれているかどうかによっても深刻さが異なります。心理的安全性が低ければ、それだけ問題も顕著になるのです。

心理的安全性を高めるには?

そもそも、心理的安全性が高い職場とは、どのような状態を指すのでしょうか。

堤多可弘

堤先生

立場に関係なく、率直な意見や素朴な質問、違和感に対する指摘がいつでもできる状態を指します。言い換えれば、処罰されたり、メンバーから拒絶されたりする心配がなく発言できる状態です。ただし、この意見は、組織やチームの成果を上げるためのものであり、“心理的安全性が高い状態=自分のわがままを通せる状態”ではありません。

つまり、上司から「余計なことを言うな!」と一喝されて萎縮してしまったり、「その場の空気が乱れるのがこわいから」と自主的に黙ってしまったりするのは、心理的安全性が低い状態と言えます。

誰もが意見を言い合える心理的安全性が高い状態では、情報や知識を共有し合ったり、意思決定の質が上がったりするなど職場にとっていい効果を得られるといいます。

オフラインでも実現が難しそうな状態ですが、意外なことに、リモートワークでも心理的安全性を高めることができるそうです。

堤多可弘

堤先生

職場での心理的安全性を高めるポイントは、「①話しやすさ」「②助け合い」「③挑戦」「④新奇歓迎」の4つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

心理的安全性を高めるポイント「①話しやすさ」「②助け合い」

堤多可弘

堤先生

まずは、「①話しやすさ」と「②助け合い」について。対面で顔を合わせていたときには、会議やランチタイム、ちょっとした立ち話、飲み会など複数の“チャンネル”がありました。話す内容や話しやすさなどはチャンネルによってまちまちで、シーンによってそれぞれ使い分けていたかと思います。

オンラインでこれを補うには、コミュニケーションツールを活用して、話すための場を多種多様に用意することがポイント。ほかにもみんなで一緒に作業をする“もくもくタイム”※の場を設けること。

※複数人が集まって各自「黙々」と作業をする時間のこと

ツールは複数導入してもいいし、「Slack」や「Chatwork」のような一つのビジネスチャットツールで複数の会議室やチャンネルを設けられるものを活用してもいいそう。いずれにせよ「雑談用」「相談用」「業務用」など緊急度合いによって使い分けることが肝心です。

堤多可弘

堤先生

複数の場を設けることで“ちょっとした相談”や情報共有をしやすくなるため、助け合える環境を整えられます。会社によっては、“もくもくタイム”として、作業中に「Zoom」や「Discord」などオンライン会議ツールをミュートした状態でつなげておくケースも。こうするとリモートでも一緒に仕事をしているような感覚が強くなり、すぐに話しかけることができるようになりますよね。

しかし、ツールの導入にあたっては、上司の許可や社内申請など会社によって踏むべきステップもさまざま。「自分は導入したいけど、上司が嫌がりそう」とためらう人に向けて、第一関門となる上司への説得のコツを教えてもらいました。

堤多可弘

堤先生

上司に新しいツールをすすめる際に、「◯◯がいいらしいですよ」とただ情報を伝えるだけでは興味を持ってもらえません。新しいものに対して「難しそう」と抵抗感を抱く人もいるため、簡単に操作できると知ってもらうことが大切です。

「ここをクリックするだけ」など具体的に解説して、「自分にもできそう」と安心感を抱いてもらうことが大切とのこと。「ツールを活用すると、こんなふうにハッピーになれますよ!」とポジティブにアピールしましょう。

心理的安全性を高めるポイント「③挑戦」「④新奇歓迎」

続いては、「③挑戦」「④新奇歓迎」について。この2つは、ワードの選択がポイントとなるようです。

堤多可弘

堤先生

まずは、言葉づかいを意識しましょう。「だって・でも・どうせ」は“ダメな3D”といわれています。これを「だからこそ・どうやったら・できるかな?」の“いい3D”に変換するだけで、気持ちが前向きになりますよ。

「どうせ~できない」のように、ダメな3Dの後にはネガティブなワードが続きます。新しいことに挑戦する不安から、つい発してしまうことも。しかし、この言葉を「どうやったらできるかな?」にするだけで、自分が取るべき方法も自然と前向きなものになるはずです。

堤多可弘

堤先生

新しいことやもの、人に対する前向きな姿勢を意味する「新奇歓迎」の場合、「分かった」はNGワードです。相手の意見に賛同しているようにも感じられますが、実は「分かったからもういいよ」とやりとりを遮断する要素が含まれています。

まずは、「分かった」を「なるほど」「おもしろい」に変えてみましょう。人間の脳は不思議なもので、同じものを見ても「おもしろい」とつぶやきながらだと、いい点を探そうとするんですよ。

「分かった」で終わらせずに、「なるほど」「おもしろい」などの含みを持たせる言葉を口にすることで、視野も広がるといいます。

リモートワークにおけるコミュニケーション術

心理的安全性を高めるポイントは分かりました。とはいえ、相手とのかみ合わなさややりとりの難しさを感じるのがオンラインコミュニケーション。使うツールや相手によって伝え方も異なります。ちょっとしたコツを知ることで、認識のズレやストレスも少なくなるはず。まずは、ケース別に見ていきましょう。

ビデオ会議のコツ

大人数で実施することもあり、悩ましいのがビデオ会議中の振る舞い。ちょっとした工夫で相手に与える印象も変わります。

堤多可弘

堤先生

パソコンの場合、カメラを見てしまうと相手の顔を見られないので、目線を合わせることは難しいですよね。なので、できる限り体が正面を向くようパソコンやカメラの位置を調整しましょう。これで“あなたの話を聞いています”という相手への意思表示になりますよ。リアクションを大きくすることも、やはり大事だと思います。

とくに上司や先輩から部下・後輩に対して効果的なのが、「◯◯さん、おつかれさま」と名前を呼んで話しかけること。「自分を見てくれている」と感じることでリモートワークでは得られにくい承認欲求につながります。

また、「なるべく早く」「もう少し」などの「程度言葉」を使わないことも大切です。

堤多可弘

堤先生

空気感の分かりづらいオンラインでは、とくに避けたほうがいいです。「至急資料をつくって」と言われても、指示された側は、「至急」がいつまでを指すのか分からないですから。もし上司から言われた場合は、具体的に確認するといいですよ。

ちょっとしたことで誤解が生じやすいオンラインコミュニケーションの場合はとくに、あいまいなやりとりはNG。指示する側・される側のいずれの場合も明確さを意識することが肝心です。同様に、共通言語の見直しも大切とのこと。

堤多可弘

堤先生

職場で使われている略語など、なんとなく分かっているつもりで話していると、認識が大きくずれている可能性もあります。オンラインミーティングなどのタイミングで、共通言語を整理しましょう。

職場の共通言語はチームメンバーがそれぞれの解釈で使っているケースもあるため、一度しっかり確認するとコミュニケーションもスムーズに運びそうです。

テキストコミュニケーションのコツ

テキストコミュニケーションの場合、伝える相手によっておさえるポイントも異なります。

堤多可弘

堤先生

相手が上司の場合、五月雨式に連絡をするのではなく、伝えたい内容に優先順位をつけるなど、いったん整理してから書きこむようにしましょう。簡潔さを心がけるのがいいですね。

一方で、後輩や部下に指導などをする場合は、PNP(ポジティブ→ネガティブ→ポジティブ)を心がけることをオススメします。たとえば、資料のチェックを求められたときは、改善点だけ伝えるのではなく、「すごく情報が網羅されているね」「強いて言うなら、図が大きいとなおいいね」「けど、全体的によくまとまっているよ」のような流れを意識するといいでしょう。

言葉の体温を感じづらいテキストコミュニケーションの場合、簡潔に指示をすると相手によっては叱られているような印象を与えてしまう可能性も。ネガティブをポジティブで挟むことで、相手へ与えるダメージもやわらぎます。

その問題、リモートワークのせいだけじゃないかも!!

ここまでリモートワークにおける悩みとその解決法を紹介しましたが、「実は以前からあった問題がリモートワークでより顕著になっただけ」というケースもあるといいます。

堤多可弘

堤先生

たとえば、「部下や後輩が相談してくれない」という上司や先輩にあたる人の相談は、リモートワークになる以前からありました。「分からないことがあれば聞いてね」と声をかけても「大丈夫です」と言われ、一人で抱え込んでしまうそうです。

一方で、テキストコミュニケーションに慣れているデジタルネイティブ世代だと、対面よりもリモートワークになったことで相談しやすくなる可能性も。そのためにも、先述のようなチャットツールなどを活用して間口を広げておくと、むしろ以前よりも相談がしやすくなるかもしれません。

後輩の仕事への取り組みや体調管理に関しても同様です。

堤多可弘

堤先生

「後輩の仕事での悩みや体調の変化が分からなくなってしまった」と悩まれる場合、対面で仕事をしていたときから漫然と後輩のことを見てしまっていた可能性があります。これからは意識的に声をかけたり、仕事の進み具合やメールの返信の速さなどを見たりしておけば、ちょっとした変化で悩みや不調に気づけるようになるでしょう。

特定の誰かが仕事を担当し、チーム内に情報共有ができていない「属人化」もその一つ。ツールを活用し共有できていれば、リモートワークでも業務に支障が生じなくなるでしょう。

ここまで紹介した対策を講じてもうまくいかない場合、選択肢の一つとしてあるのが転職です。dodaキャリアアドバイザーの柏木あずさから一言。

dodaキャリアアドバイザー柏木あずさ

柏木

リモートワークになる前から、職場の人間関係が悪かったということはありませんか? または、自分のスキルに自信がなく、成果を出せていないから発言しづらいという可能性も。これらの場合、自分の力が発揮できるような仕事を探すのも方法の一つです。何かあれば、キャリアアドバイザーに相談してみてくださいね

オンラインで適職相談!女性の転職ならdodaエージェントサービス

まとめ

リモートワークのコミュニケーションで心理的安全性を高めるには?

ツールを活用してコミュニケーションの場を複数設ける

「だって・でも・どうせ」の“ダメな3D”を「だからこそ・どうやったら・できるかな?」の“いい3D”に

あいまいな情報共有を回避するために、指示は明確に

テキストの場合、上司には簡潔さを意識し、部下や後輩に対しては、「PNP(ポジティブ→ネガティブ→ポジティブ)」を心がける

ツールの活用や言葉づかいに気を配るなど、一人でできるものからチームを巻き込むものまで、アプローチの方法はさまざま。まずは取り入れやすいことから始めて、“抱えなくていい不安”を取り除いてみるのが良さそうです。

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Profile

識者プロフィール

堤多可弘/顔写真

堤 多可弘(つつみ・たかひろ)
精神科医/産業医
弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長と、健康経営コンサルティング企業である株式会社Appdateの取締役を務めるとともに、首都圏および青森県の企業や行政機関の産業医を10カ所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。共著に『企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医』(祥伝社新書)。
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