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女性のモヤモヤを解消する100問100答

#084

2021.05.31

Q.キャリア迷子は“自己認識力”が低いせい!?
仕事も人生も好転する方法を教えて!

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モヤモヤ悩んで
答えが出せない…
どうしたら自分で決められるのかな?

「キャリアデザインのイメージがわかない」「会社でどう評価されているのか気になる」など、働く女性のモヤモヤは尽きないもの。もしかしたら、それ、“自己認識力”が低いことが影響しているかもしれません。

自己認識力とは、自分のことを正しく理解する力のこと。働くことに関する調査・研究を行っているパーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員によると、「自己認識力が低いと、自らの強みに気づけず、自信を持てないことが多い」といいます。

一方で、自己認識力が高ければキャリアデザインの見通しが良くなるだけでなく、人間関係やリーダーシップ、創造性などにおいてプラスの影響があるのだそう。

人生100年時代、長く働く上で高めておきたい自己認識力について、引き続き小林さんに伺います。

仕事や人生が好転する? “自己認識力”とは?

自分を正しく理解することが自己認識力なのであれば、自己認識力が高い状態とはどのような状態を指すのでしょうか。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

パーソル総合研究所
小林祐児さん(以下、小林さん)

自己認識力は“セルフ・アウェアネス”とも呼ばれています。

自己認識力には“内面的なもの”と“外面的なもの”の2つがあり、前者は、自分がどう思っているか理解すること。後者は、他人(または世間)から自分がどう見られているか理解することを指します。

その両側面のバランスが取れている状態が「自己認識力が高い状態」と言えるでしょう。

たとえ内面的自己認識力が高くても、外面的自己認識力が低ければ、自己認識力が高い状態とはいえません。

これは内面外面どちらかの比重が高くても、バランスが取れていなければ自己認識力が低い状態には変わりがないようです。

自己認識力が低い状態になると、具体的にはどのような不都合が生まれるのでしょうか。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

たとえば、自分ではある特定のスキルを持っていると自負していても、外からはそのスキルが不足していると評価されていることもありますし、また、その逆もあるわけです。

このように自己認識のバランスが悪い、つまり自己認識力が低い状態ですと、キャリアや仕事において自分の強みや弱みを理解できません。それだけではなく、自分にとって何がやりたいことなのか、何が課題なのかも分からないため、自信を失いモヤモヤしてしまうのです。

バランスの偏り方も年齢によって違いがあるといいます。

とりわけキャリアに関する自己認識は若い人ほど内面的なもの(自分がどう思っているか)に比重が置かれ、客観性が乏しい状態に陥りやすいのだそう。

一方で、年齢を重ねると世間体や社会的地位などが気になり、外面的(自分がどう見られているか)に偏りやすくなっていく傾向にあるのだとか。

女性の場合、育児でキャリアにブランクがある人ほど外面的に偏りやすく、自信を失っていることが多いそうです。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

実際には育児もマルチタスクをこなすマネジメント力が必要とされるので、育児経験を通じて仕事を回す能力が磨かれて、職種をまたいでも活躍できることがあります。

でも、自分の強みを自覚していない。結局強みとは、自分が持っていて、かつ相手が求めているものであるということ。

強みを自覚するには、自分のことも、自分がどう見られていて何を求められているかということも理解する必要があります。だから自己認識力は重要なのです。

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働く女性が自己認識力を高めるメリットは?

自己認識力が高い状態だと、自分の強みを有効的に仕事に活かせることが分かりました。

さらに小林さんによると、「自己認識力が高ければ、行動に対してうまく軌道修正ができるようになり、キャリアの選択肢の幅が広がる」といいます。

具体的には、“転職時の行動変容”が起きるそうです。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

条件面で折り合いがつかなかったり、面接がうまくいかなかったり、転職活動には、こんなはずじゃなかったというショックがつきものですよね。

そこで必要なのは、行動のチューニング。自己認識力が高いと、面接時の話し方を変えたり、情報収集の仕方を見直したり、やるべきことと優先順位が見えてきて、うまく軌道修正ができるんです。

自己PRでやりがちなのが、自分がやってきたことをずらっと書いたり、自分がやりたいことばかりを書いたりすること。これでは一方的で自己認識が内面的なものに偏っていますよね。

相手が求めてくれて初めて転職が成り立つので、他者の視点を取り込むことも大事。そういう点で転職活動に自己認識力の高さが重要になってくるのです。

失敗してもそこから分析し、次の行動に活かす。トライ・アンド・エラーを通して、企業が求めることと自分ができることの重なりを見つけてアピールする。

自己認識力が高いと、転職活動におけるPDCAを回すプロセスがスムーズになるようです。それだけではありません。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

コロナで不確実性にさらされて今の仕事を続けてもよいのか不安になる人も多いですが、自己認識力が高いと「自分の強み」や「キャリアの方向性」が明確になるため、今の自分に必要なことや大切なことを冷静に選択できるようになります。

例えば、コロナによる不安から安定していそうな会社に入るべきなのか悩んだときに、転職という選択肢だけでなく、会社に残って新たなスキル習得に励むといった第二の選択肢を持ち、どちらが自分にとって必要か考えたうえで、決断する。

そうやって人生の選択肢を自分で選ぶ力、いわゆる自己決定力も高くなり、結果、不安な状態に置かれることが少なくなるのではないでしょうか。

自己認識力はキャリアの選択肢や、自己決定力など多方面に影響するようです。どんな人生を描くにせよ、自己認識力を高めたほうが良さそうですね。

自己認識力の高め方は?

自己認識力の高め方と聞くと、自己分析や適性検査を思い浮かべる人も多そうですが、「内省する方法によっては自分の思い込みを強める可能性もある」と小林さんは言います。

では、どのようにして高めていくのがベストなのでしょうか。ポイントは「信頼できる複数人の他者の視点をいかに取り入れるか」と小林さんは解説します。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

信頼できる人にキャリアについて相談し、自分がどう見えているか意見をもらいましょう。

ここで言う“信頼できる人”とは、自分に寄り添い共感してくれる友人のことではありません。転職エージェントや仕事関係の知人など、きたんなく客観的に意見してくれる人がいいでしょう。

また、相手に答えや正解を求めてはいけません。そして人の意見を自分の正解だと刷り込むのもやめましょう。

自己開示をして自分のことを話す。相手に話す過程で、自分の本心や本当にやりたいことが見えてきます。

信頼できる人にする相談は、判断材料となる客観的な意見をもらえるだけでなく、自分で答えを見つける作業にもつながるといいます。

そうして複数人の信頼できる人に相談することを繰り返していくうちに、内面的にも外面的にも自己理解が深まり、自己認識力が高まった結果、キャリアにおけるベストな自己決定ができるようになりそうです。

もし複数人の意見がすべてバラバラで、それぞれの意見に揺れるようであれば、まだまだ内面的自己認識力が低い状態。

自分で内面に立ち返る作業をするとともに、キャリアアドバイザーに相談してみるといいかもしれません。

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まとめ

キャリア迷子や自分に自信が持てない人は…

「信頼できる他者に相談することで自己認識力を高めよう」

というアドバイスが。
自分のことを主観的、客観的に分かっていないと、どうしたいか、どうすべきかなんて見えてこないもの。

特に仕事やキャリアに関しては転職などの一大イベント時にしか相談することをしない人もいるでしょう。日ごろから自己開示して信頼できる他者に話していくことが重要なのかもしれませんね。

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Profile

識者プロフィール

小林 祐児/顔写真

パーソル総合研究所 上席主任研究員
小林 祐児
NHK放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年入社。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。『働くみんなの必修講義 転職学 人生が豊かになる科学的なキャリア行動とは 』(中原淳氏との共著、KADOKAWA)、『マーケティング・リサーチの基本』(岸川茂氏編著・分担執筆・日本実業出版社)など著書多数。
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