#089
2021.07.19
Q.仕事でもプライベートでもやりたいことをかなえる方法を知りたい
仕事とプライベート
どちらもうまくいかせるには…?
どちらかがうまくいかないともう一方にも影響が出てしまうなど、切っても切り離せない仕事とプライベート。どちらもうまくいかせたいけど、時間やお金、労力を考えると難しい…。
そこで、転職エージェントとしてのキャリアを持つ株式会社morich代表の森本千賀子さんにどちらのやりたいこともかなえる方法をアドバイスしていただきました。
仕事とプライベートの理想と現実
そもそも仕事とプライベートのやりたいことが両立できている状態とは、どういうことなのでしょうか。「これは私見ではありますが…」と前置きした上で、森本さんは話してくれました。
森本千賀子さん(以下、森本さん)
仕事とプライベートのやりたいことを両立できている方は、両者の境界線があまりないように感じます。むしろ、仕事とプライベートがクロスしていて、シナジーがある状態です。よく言う”ワークライフバランス”ではなく“ワークライフハーモニー”です。
両者を切り離して考えるよりも、地続きで考えることが大切のよう。ただ、仕事をする時間は1日の大半を占めるため、そこを楽しめないと人生そのものが楽しくないといいます。
気づいたら仕事ばかりに比重が偏ってしまう人の特徴
仕事とプライベートはバランス良く!とは思うものの、気づくとどちらかに比重が偏ってしまっているのが現実。
まずは、“やりたいこと”の比重が仕事に偏ってしまっている人のタイプを森本さんに分析してもらいました。
森本さん
目の前の仕事に対して「自分がやらなきゃ!」と思い込んでしまうようなまじめで責任感の強い人に多い印象です。
周りを見る余裕がなく、人付き合いも希薄になりやすいため、人脈が偏っていたり、ネットワークが狭かったりする傾向があります。
気づいたらプライベートに比重が偏ってしまう人の特徴
一方、仕事も頑張りたかったはずなのにプライベートで手いっぱいになってしまっている人の特徴はというと…。
森本さん
プライベートが充実しているというよりも、自分が思い描いているような仕事ができていないなど、仕事に対する不満があり、プライベートが逃げ場のようになってしまっているタイプです。
恋愛にのめり込みすぎてしまい、仕事がおろそかになってしまうような方も一定数見受けられます。
いずれの場合も片方に偏ってしまった結果、もう片方がおろそかになってしまっているのが分かります。
仕事でやりたいことをかなえるためのアプローチ
先行き不透明な時代だからこそ、仕事もプライベートもやりたいことを叶えるのが難しいのでは…と思われる方もいるのではないでしょうか? ではどうしたらよいのか、まずは仕事でやりたいことを叶えるために必要なことから森本さんに伺いました。
森本さん
新型コロナの影響で世の中が一変し、これから先に何が起こるかは誰にも分かりません。たとえ今の仕事や生活に満足していたとしても、ある日突然環境が変わる可能性もあります。トップが代わって組織の方針が変わるかもしれないし、思わぬ部署異動がないとも言い切れません。
そのときに限られた仕事の経験しかないと、会社の方針を受け入れるしかなくなってしまいます。私がよく伝えているのは、いざというときに最善の方法を選べるようにするための選択肢を持っておいてほしいということです。
森本さんの言う選択肢は、手持ちのカードを増やすことを意味します。今の会社にいながら自分の選択肢を増やすには、どうしたらいいのでしょうか。
① 自分の意志で「いろんな仕事」を経験してみる
仕事の幅を広げることで、自分の手持ちのカードを増やす方法です。
森本さん
別の業務を経験するために自分の意志で部署異動を希望するなど、さまざまな仕事を自ら率先して経験することです。社外ならボランティア活動に参加して新たなキャリアに挑戦するのもおすすめです。
② 手に職をつけられるようなスキルを身につける
続いては、スキルによって自分のできることを増やしてみる方法です。
森本さん
手に職をつけるとは、簿記の資格やITの知識などの専門的なスキルだけでなく、持ち運びができるポータブルスキルを身につけることが大事です。キャリアアップや結婚、出産など、ライフコースの選択をする際にも役に立つはず。
何を学んだらいいか悩んだときは、これまでの経験やスキルを活かせるものや市場のニーズがある仕事につけるかどうかを意識するのも方法の一つです。
現在はオンラインで新しいことを学べる機会も増えているので、さまざまな分野で時間や場所を選ばず取り組めるのもいいですよね。
③ 副業に挑戦してみる
会社で認められている場合は、学んだスキルを活かして副業に挑戦してみるのもいいそうです。新型コロナの影響もあり、従来よりも働き方が柔軟になったことに加え、リモートワークの普及とともに副業を選択できる環境が整いつつあります。
森本さん
最近増えているのが、自分のスキルを使って地方に貢献したい人と企業をマッチングする取り組みです。この場合のスキルは、業務に携わった即戦力としての経験がなくても構いません。
たとえば、「ホームページを作ってほしい」と地方の企業が人材を募集したときに、自分がホームページ制作について勉強中で、アウトプットの場を探しているなら、挑戦できるいい機会になると思います。
キャリアアップになるのはもちろん、新たな出会いもあるなどネットワークづくりにもつながります。
プライベートでやりたいことをかなえるためのアプローチ
仕事におけるキャリアの棚卸しのように、プライベートにおける自身のありかたややりたいことをかなえるためのアプローチをいくつか教えていただきました。
①自分にQuestion(問い)を出し、出てきたAnswer(答え)のWhy(理由)を考えてみる
まずは、意識を向けていないために見逃してしまっている自分の興味・関心を引き出す方法です。
森本さん
自分がどういう状態だったらワクワクするのか、前向きな気持ちになるのかを分析してみましょう。最初に、自分で自分に質問をします。
質問内容は、「今まで読んだ本の中で一番好きな本は?」「何色が好き?」などの簡単なものでOKです。回答したら、なぜそう思ったのかを深く考えてエクセルなどのツールに入力して可視化します。
しばらく続けているうちに、自分が好むものや環境などの傾向が分かるようになります。入力した内容を誰かと見せ合ってもおもしろいですよ。
②寝る前の15分を活用してワクワクした気持ちを思い出す
続いては、毎日のルーティンとしておすすめの方法。寝る前の15分間を活用するそうです。
森本さん
15分は、24時間の1%分に相当します。その1%を使って、その日に起きたうれしいことやワクワクしたことや感謝の気持ちを思い出してみましょう。
「今日のお昼ごはんがおいしかった」「さっき見たドラマがおもしろかった」「上司のあの一言がうれしかった」など、内容はなんでもいいですよ。
寝る前に楽しいことや嬉しいことを思い出すようにすると、眠っている間にオキシトシン(幸せホルモン)の分泌作用が加速するといわれているため、翌朝の目覚めもいいですし、日々の生活のなかで起きたポジティブなことをより意識するようになります。
続けているうちに自分を俯瞰できるようになり、「今まで気づかなかったけど、意外と毎日充実している」と気づけるメリットもあるそうです。
③朝の時間を活用しよう
「やりたいことはあっても費やせる時間がない」と思っている人は、朝を活動の時間にあてるといいそうです。
森本さん
朝活は、私も次男が生まれてとにかく時間に追われていたときから実践している方法です。睡眠時間を削るのではなく、寝る時間を早くして、いつもより1時間早く起きましょう。まだ世の中が静かですし、出社や始業までの限られた時間内だと思うとより集中でき、生産性の高い時間を過ごせますよ。
テレワークで通勤がなくなった人は、その時間を使ってもいいですね。
また、やりたいことを続けるためのモチベーションを保つには、その先の目標を立てることも大事なポイントです。
森本さん
たとえば、英語を学びたいと思っていても、それだけを目的にしていたら毎朝早起きして勉強するのは難しいですよね。「英語を学んで海外旅行をする」「英語を使った仕事に転職する」などの先の目標を立てるとチベーションにつながります。
④自分自身のなりたい姿を言語化する
次に紹介するのは、森本さんが続けている「アファメーション」という方法です。
森本さん
アファメーションは、「私は常に感謝の気持ちでいっぱいでいる」「私は40歳のときにこういう生活を送っている」など、自分自身がなりたい姿を言語化するものです。私は単語帳に書いていますが、スマホのメモ帳やノートなど自分のやりやすいもので構いません。
大事なのは、書いたものを見て、声に出して読んで、耳でしっかり聞くこと。五感を使うことで、より脳に働きかけられます。
具体的にイメージすることで、“なりたい姿”と自分の選択や行動がつながってくるようになるといいます。
⑤信頼できる人に相談して、自分の考えを整理する
仕事とプライベートのやりたいことがうまく両立できないときは、職場の信頼できる先輩や友人などに相談するのも一つの方法です。
森本さん
自分一人でもんもんと考えていても、なかなか答えが出ないことがありますよね。ただ、誰しも自分のなかに答えはあるはず。信頼できる誰かに壁打ち相手になってもらいながら自分の考えをアウトプットすると、腑に落ちる答えが見つかると思いますよ。
自分自身で言語化したり、誰かと話して具現化したりと、まずは自分が何を考えていてどうしたいのかを見えるようにすることが大事といえます。
森本さん
コロナ禍の今は、これまで通用していた常識から新しい常識に変わるターニングポイントに来ていると思っています。
キャリアにおいても同じで、何が正解なのか誰にも分からない状況にいます。それはつまり、一人ひとりが自分の正解をつくっていけることでもあります。
もし自分が目指すものややりたいことが今の会社になければ転職を選んでもいいし、プライベートで挑戦したいことがあれば、時間を作れるように仕事を調整するのもいい。そのなかで、自分が思う“正解のキャリア”“理想のプライベート”を作っていってほしいと思います
考える中で、「自分の思い描くキャリアと今の仕事が一致しない」「仕事が忙しすぎてプライベートの理想には程遠い」など具体的に仕事を見直す必要がある場合には、転職を検討するのも一つの方法です。
まとめ
- 仕事とプライベートのやりたいことをかなえるには?
-
【仕事】
・自分の意志でほかの業務に携わる
・手に職・スキルを身につける
・副業をしてみる
【プライベート】
・自分に質問をして回答の理由を考え、興味や関心を引き出す
・寝る前の15分間に1日で感じた楽しいことやうれしいことを思い出す
・就寝時間と起床時間を1時間前倒して、生産性が高まる朝の時間を活用する
・自分のなりたい姿を具体的に言語化してイメージする
・信頼できる人に話を聞いてもらう
自分の興味・関心を引き出し、なりたい姿をイメージするなど内側からのアプローチと、インプットやスキル習得などの外側からのアプローチ。双方から取り組むことで、選択肢も可能性も広がり、仕事でもプライベートでもやりたいことをかなえられるようになるはずです。
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識者プロフィール
- 森本千賀子(もりもと・ちかこ)
- 株式会社morich代表取締役。獨協大学外国語学部英語学科卒。1993年リクルート人材センター(現リクルートキャリア)に入社。転職エージェントとして、大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般を手がけ、さまざまな企業ニーズに応じた人材コーディネートに携わる。2017年3月に株式会社morich設立し、代表取締役に就任。2017年9月にリクルートを退社し、同年10月に独立。本業を軸にオールラウンダーエージェントとしてTV、雑誌、新聞などで活躍する傍ら全国の経営者や人事、自治体、教育機関などの講演・セミナーで登壇。著書に『無敵の転職』(新星出版社)など。