掲載日:2014年2月3日
Progress story #05
SGホールディングス株式会社
(佐川急便を中核とする持ち株会社)
会社の成長のために、必要不可欠な女性の力
「物流業界は女性が活躍できる場所」
というイメージを定着させたい
必然から生まれた「女性1万人採用」計画
女性活用DATA
- 女性役員比率:
約25%
- 育児休業:
3年
- 育児短時間勤務:
原則6時間(定める基準に基づき、協議の上、調整は可能)
爽やかに荷物を運ぶ健康的な“佐川男子”―。男性が活躍する職場としてのイメージが強い物流業界だが、佐川急便株式会社を中核に構成されるSGホールディングスグループは2011年「1万人の女性採用」を打ち出した。それから約3年の2014年1月時点で、女性従業員は約8,000人から約17,500人となり、目標の到達は目前だ。女性比率は間もなく25%になる。
SGホールディングスグループが女性の力の必要性を認識したきっかけは、顧客ニーズ、特に女性顧客の要望の多様化だった。「朝のメイク前や夜遅い時間は、女性ドライバーに来てほしい」。その声に応えるため、女性のドライバーを増員、またトラックを使わずに、台車で荷物を運ぶサービスセンターを拡充して女性従業員を増やした。すると、荷物の宅配率が上昇。これまで玄関を開けてくれなかった女性顧客が、朝や夜でも「同じ女性なら」と荷物を受け取るようになった。
配達の現場だけでなく、新たなサービスでも女性従業員の力が活かされている。きめ細やかな対応が求められる引っ越しの荷造りサービスでは、女性スタッフが指名されることも多い。また、壊れた靴を集荷して修理会社に回し、直した靴をまた届けるというサービスが2012年2月に生まれた。男性ドライバーに壊れた靴を渡すのは抵抗がある、女性同士であれば気がねなく渡すことができると好評だ。大越氏は「女性が活躍できる職場というイメージは弱く、女性の活躍推進もほかの業界に比べたら、まだまだ遅れています。それでも、会社の成長のために、女性の力は必要であるということは明らかです。やれることから、どんどんやっていかなければなりません」と力を込める。
成功体験により、
女性が自信を持てる環境整備が第一歩
「急増する女性従業員の活躍を促すためには、会社が積極的にサポートすることが必要」と大越氏。女性従業員に「女性が働きやすい、活躍できる環境の実現のために必要なもの」を聞くと「周囲の理解」という答えが多かったという。大越氏は「制度の拡充などの声が挙がることを予想していたので、意外な結果でした。女性は必ずしも特別視されることを求めていない。改革すべきは制度よりも風土だということを認識しました。正直これまでは、『元気良く、たくましく働くこと』が美徳とされていた風潮もありましたが、根本的な意識変革が必要だと痛感しました」と語る。まずは就業ルールを整備し、長時間勤務の改善を図った。また、有給休暇の取得を促す目的で、年1回の長期休暇取得を推進し始めた。これによって長期休暇の取得率は大きく高まり、現在では長期休暇を取って当たり前という雰囲気に変わりつつある。
SGホールディングスは「グループ事業の売上の30%を女性が担う」という目標も掲げている。大越氏は「これは収益だけが目的というわけではありません。本当の狙いは、成功体験を積むことによって、女性が自信を持てる環境整備を推進すること」と説明する。取り組みの一つとして、女性従業員が主体的に参加し業績貢献など成果を残した仕事を表彰する「わくわくウィメンズアワード」を計画。応募は自薦で、最後は役員を前にプレゼンテーションする。このほか、佐川急便は東京と福岡など全国に、女性がリーダーを務めるサービスセンターを設けている。「今後は女性管理職の比率を上げていくためにも、マネジメント経験のある女性を増やしている」と言う。
女性の活躍推進に対する意識改革はまだ始まったばかり。本当に活躍できるのか、成果を出せるのか、不安を感じている女性従業員もまだ多い。だからこそ、成功体験が積める機会を会社が仕掛けている。大越氏は「自信を持って仕事に取り組み、活躍する女性が増えれば、自ずと収益はついてくる。こうした成功サイクルを生み出すことで、当初の目的である女性の活躍推進を果たしていきたい」と語る。
ダイバーシティが浸透するか。
男性の意識改革が最大の課題
SGホールディングスグループが女性の活躍推進を進める上での課題は大きく二つ。「女性従業員の定着率の向上」と「男性従業員の意識改革」だ。一つ目の「定着率」は、女性の人数自体は増えているが、結婚や出産を機に退職する従業員もまだ多い。そこで産休・育休からの復職を促す取り組みとして、上司からメッセージカードを送る活動を始めた。「復帰を待ってるよ」などの言葉が女性たちの励みになっている。この施策には意外な波及効果も。メッセージを書く側の上司の気持ちの変化だ。復職する女性の活躍を具体的に思い描きながらコメントするので、受け入れる準備につながっているという。
「男性の意識改革」は、男性主体の企業から、男女恊働の企業への変化を目指すSGホールディングスにとって最大の課題だ。前述の施策もその一例だが、ASEANを中心としたグローバル化を進める中で、女性も多様性の一つであり、グローバルを含めたさまざまな価値観を受け入れる「ダイバーシティ」の浸透を試みる。大越氏は「男性主体の企業文化は、当社だけでなく物流業界として根付いている風潮でもあるので、すぐに変えることは難しいかもしれません。少しずつではありますが、意識を浸透させていくしかありません。そして、物流業界は女性が活躍できる場所だというイメージを定着させたいと考えています」と語る。
COMPANY DATA
- 企業名
- SGホールディングス株式会社(SG Holdings Co., Ltd.)
- 設立
- 1965年11月
- 従業員
- 2006(平成18)年3月21日
- 事業内容
- グループ経営戦略策定・管理並びにそれらに付帯する業務
女性活用を進めてきた企業について知る
- #10 「アクセンチュア株式会社」
同じ「子育て中の女性」でも働き方の志向はそれぞれ
キャリアの「アクセル」と「ブレーキ」を、女性自身が踏み分けできる環境を - #09 「日本郵便株式会社」
サービスの充実、競争力の強化を図るために“女性活躍室”を設置。秘めている能力の引き出しに全力を注ぐ。 - #08 「株式会社IHI」
重工業界で先駆的に女性の活躍を推進。根底にあるのは、多様な人材の能力を引き出すことが「企業の重要な使命」という信念 - #07 「GEヘルスケア・ジャパン株式会社」
チャレンジするかどうか、最後に決めるのは自分自身。 そのために、フェアな環境を用意する。 - #06 「株式会社ローソン」
男女ともに活躍する環境を当たり前にするために女性の成果をあえて“見せて”いく - #05 「SGホールディングス株式会社(佐川急便を中核とする持ち株会社)」
会社の成長のために、必要不可欠な女性の力「物流業界は女性が活躍できる場所」というイメージを定着させたい - #04 「ヤフー株式会社」
ITで世の中の課題を解決できる会社であるためにまずは、働く人が幸せな会社でなければならない - #03 「日本マイクロソフト株式会社」
実は多い管理職を志す女性たち。女性活用のアイコンカンパニーとして、ダイバーシティを推進する - #02 「ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニー」
ダイバーシティ推進の“第2章”へ さらに進化するために、今、変わらなければならない - #01 「日産自動車株式会社」
変わらなければならない必然性そして根づいた「多様性を受け入れるカルチャー」