掲載日:2014年4月14日
Progress story #07
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
チャレンジするかどうか、
最後に決めるのは自分自身
そのために、フェアな環境を用意する
入社当時、“女性はお茶くみ”という慣習が残る中
徐々に変化したダイバーシティへの意識
女性活用DATA
- 出産特別休暇:
-
妊娠23週まで:4週間に1日
妊娠24~35週まで:2週間に1日
妊娠36週以降:1週間に1日
- 育児短時間勤務:
-
中学校就学まで1日2時間まで短縮
- 看護特別休暇:
-
小学校就学まで、子供の看護・予防接種・健康診断の際に年間12日間まで休暇を取得可能
- コアなしフレックスタイム制度:
-
出社時間・退社時間を選択可能
- 在宅勤務制度:
-
育児・介護等の事情がある場合に、週2日は在宅勤務が可能
世界有数の事業規模を誇るGEグループは、ダイバーシティの取り組みを1990年代から積極的に推進し、その中でも女性のキャリア・リーダーシップ開発を促す「ウィメンズ・ネットワーク(以下WN)」というボランティア組織の活動が97年からスタートした。日本でのWNの活動は2001年に始まり、05年当時には、将来的にグループ全体の女性管理職の割合を30%にするためのアクションプラン「Road to 30」を掲げた。
1986年、男女雇用機会均等法の施行の年に入社した草谷氏は、その活動が始まる以前の社内状況を振り返る。「お恥ずかしながら、当時はまだ “お茶くみは女性”という雰囲気がありました。そうした雰囲気が、90年ごろのオフィス移転を機に“そもそも女性にお茶くみをさせるのはおかしい”という意見が出てティーサーバーを導入するなど、徐々に変化していきました。特に何か大きなきっかけがあったわけではありませんが、アメリカ本国のダイバーシティの動きやWNの活動などを通して、本当に少しずつ変わっていったという感じです」。
ただ、女性の活躍推進の活動はこれまで、さまざまな課題もあったと語る草谷氏。WNのスタート時は、拠点ごとにボランティアで参加者を募る形だったため、同じ職場で、似たような価値観を持つメンバーが集まる“仲良しクラブ”になってしまい、参加に抵抗感を示す女性社員も増えてしまったという。「それを解消するために、拠点や部門が横断的につながるように変えていきました。所属も職種も違うメンバーが集まる形にしたのです」。
“失敗してもいいからまずはやってみる”というチャレンジすることが社員の積極性を引き出す
現在は、男女を問わず社員が自主的にテーマを決め、それごとにチームを作り、自由なアイデアでイベントを企画・実施。女性社員たちが働きやすい環境づくりや、スキルアップのための機会提供、そして「男女差なく、社員全員がフェアに活躍できる」という文化の定着を目指している。
女性社員の参画や成長を促すため、WNでは様々な取り組みを始めている。例えば、「マイコネクション」という取り組みでは、普段はなかなか直接話す機会のない人たちとの交流を通して、視野を広げているという。社内のリーダーを招待して、ビジネスの動向やキャリアアップについて議論したり、時にはそのリーダーから外部のビジネスリーダーを紹介してもらいながら、人材交流をすることで、自身のリーダーシップスタイルを考えてもらっている。また、エンジニアやITなどのテクノロジー部門の社員を対象とした「ウィメン・アンド・テクノロジー」は、男性が多くなりがちなフィールドの中で、いかに女性が技術職として活躍できるかを検討しているし、「メン・イン・ウィメン」という取り組みでは、女性社員だけが、「女性にとって働きやすい職場」を考えるのではなく、男性社員やリーダーも含めたチームで、年1回、イベントを企画している。ビジネスリーダーたちが女性社員を招いたバーベキューを開いたこともあり、お互いの理解を深めるアクションとなっている。
これらの活動について、吉住氏は、「業務命令ではなく、自主的に参加してもらうために、人事としては黒子の役割をすることもあります」と説明。活動を通じてリーダーシップを発揮する、積極的に意見を出しながらチームをまとめるなど、日常の業務では発揮し切れていない女性社員の能力を発見することも少なくないという。草谷氏は「WNの良いところは、仕事ではないので、失敗を恐れる必要がありませんし、評価にも影響がないところにもあると思います。ある意味 “ゆるい”雰囲気の中で気負うこともありません。ミスを恐れずに自分から発信して、やりたいことをやってみる。そして、成功体験も失敗体験もできることが、女性のチャレンジを活発化することにつながっています」と語る。
無理に引き上げることはせず自分で決めたキャリアの道を進んでもらう
吉住氏は「女性の活躍が事業の成果にどのようにつながっているか、それを測定することは難しいですし、女性の活躍が事業の成果に結びつかないのであれば採用しないのか、と言われればそうではないので、そもそも測定する必要はないと思っています」と言う。GEグループは、フェアな労働環境を作り、男女の別なく活躍できる文化を醸成すること、それこそが企業の力になると考えている。
同時に「女性の意識改革についても即効性のある手段はない」と指摘。企業側は、正当に評価する人事制度を用意し、いかにキャリアを形成していくかを最終的に自分で決められる環境を整備することが大事だと言う。「直属の上司だけではなく、人事担当者や部門長なども加わる人事評価制度を取り入れて、1対1の人間関係に左右されない正当な評価ができるようにしています。そうしたフェアな環境の中で、多様な選択肢の中から選ぶことが大切なのです。だからこそ、WNの活動や新たな業務にチャレンジすることを通じて、いろいろな人と出会いながら、“こんなキャリアもあるんだ”と気づくこと、視野を広げることに、大きな意味があると思います」。
草谷氏は「 “自分はできていない”と思ってしまう女性も多いので、実績をきちんと自己評価し、次のステップに進むことを後押しする体制を整えることは、とても大切」と語る。吉住氏は「無理に上に引き上げるようなことはしませんし、社員たちは自分で決めたキャリアの道を進むべきです。意欲がある人とそうでない人の二極化が進まないようにすることも課題なので、キャリアを積み重ねることの魅力を、効果的に見せていきたいですね」と、今後の取り組みについて語った。
COMPANY DATA
- 企業名
- GEヘルスケア・ジャパン株式会社
- 設立
- 1982年4月
- 従業員
- 約2,100名
- 事業内容
- 医用画像診断装置の開発・製造・販売・サービス、病院情報システム、バイオテクノロジー関連製品等の販売保守サービス
女性活用を進めてきた企業について知る
- #10 「アクセンチュア株式会社」
同じ「子育て中の女性」でも働き方の志向はそれぞれ
キャリアの「アクセル」と「ブレーキ」を、女性自身が踏み分けできる環境を - #09 「日本郵便株式会社」
サービスの充実、競争力の強化を図るために“女性活躍室”を設置。秘めている能力の引き出しに全力を注ぐ。 - #08 「株式会社IHI」
重工業界で先駆的に女性の活躍を推進。根底にあるのは、多様な人材の能力を引き出すことが「企業の重要な使命」という信念 - #07 「GEヘルスケア・ジャパン株式会社」
チャレンジするかどうか、最後に決めるのは自分自身。 そのために、フェアな環境を用意する。 - #06 「株式会社ローソン」
男女ともに活躍する環境を当たり前にするために女性の成果をあえて“見せて”いく - #05 「SGホールディングス株式会社(佐川急便を中核とする持ち株会社)」
会社の成長のために、必要不可欠な女性の力「物流業界は女性が活躍できる場所」というイメージを定着させたい - #04 「ヤフー株式会社」
ITで世の中の課題を解決できる会社であるためにまずは、働く人が幸せな会社でなければならない - #03 「日本マイクロソフト株式会社」
実は多い管理職を志す女性たち。女性活用のアイコンカンパニーとして、ダイバーシティを推進する - #02 「ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニー」
ダイバーシティ推進の“第2章”へ さらに進化するために、今、変わらなければならない - #01 「日産自動車株式会社」
変わらなければならない必然性そして根づいた「多様性を受け入れるカルチャー」