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Progress -女性活用の先駆社- Progress -女性活用の先駆社-

男女雇用機会均等法が施行されて約30年。さまざまな制度の整備などによって、女性活用が推進されてはきたが、本当の意味での活用はまだまだ進んでいない。そして今あらためてその必要性が叫ばれている。そのような中、先駆者的に女性活用を進めてきた企業がある。それらの企業はこれまで、どのような課題にぶつかり、それをどのように乗り越えてきたのか。また今後、どう前進していくのか。先駆“社”をレポートする。

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掲載日:2014年6月23日

Progress story #08
株式会社IHI

(写真左)

秋元 潤 氏 人事部 人材開発グループ 部長

1994年入社。人事部、経営企画部などを経て、人事部人材開発グループ長に就任。2013年に策定した「グループ人材マネジメント方針」に基づき人材開発を推進している。2013年4月より現職。

(写真右)

大島 千佳子 氏 CSR推進部長 兼 人事部 人材開発グループ グローバル・ダイバーシティ担当

1984年入社。調達管理本部、内部監査部、法務部などを経て、CSR推進部長に就任。人事部人材開発グループ グローバル・ダイバーシティ担当を兼務し、IHIグループの女性活躍推進活動に取り組む。2014年4月より現職。

重工業界で先駆的に女性の活躍を推進
根底にあるのは、多様な人材の能力を引き出すことが
企業の重要な使命」という信念

女性管理職9名がリーダー役となり、女性同士の縦横のネットワークを醸成

女性活用DATA

チャイルドケア休暇制度:

小学校卒業まで。 子1人につき通算20日(有給)

短時間勤務制度:

小学校卒業まで

子の育児・看護のための復活年休:

小学校卒業までの子の育児・看護を行なうために休業する場合、消滅年休の復活特例取得可能

育児休業取得後の復職率:

100%(2013年度)

嘉永6年(1853年)創業の歴史を誇り、総合重工業メーカーとして多分野で事業を展開する株式会社IHI。これまで長く“男性社会”のイメージが強かった重工業界において、同社はグループ全体で女性の活躍推進に積極的に取り組み、2014年には東京証券取引所と経済産業省より「なでしこ銘柄」にも選定されている。同社のさまざまな施策の中で、特色ある取り組みの一つが「ネットワークリーダー」だ。

これは、会社から任命を受けた若手女性管理職9名がリーダーとなり、各事業所で20代半ばから30歳前後の女性社員のネットワークを広げる活動で、2013年から開始。各地区の総務部が支援する形で、全員参加型の座談会や勉強会を開くほか、ネットワークリーダーの呼びかけでランチ会などを開催。それらの交流の場を通じて、ネットワークリーダーが悩みや課題、キャリアビジョンなどについての相談相手を務めてきた。「長期的に活躍していくのは難しそう」と、結婚や出産を機に、退職してしまう女性も多かったため、あえて年齢差が大きくない “身近な”ロールモデルとのつながりを持ってもらうことで、社内での長期的なキャリアパスを描いてほしいという狙いがある。

この取り組みの背景には、“男性社会”の名残ともいえる社内事情があったと大島氏は説明する。「男性社員が比較的容易に社内で人脈を構築しているのに対し、女性社員、特に若手の女性は、縦にも横にもつながりを持ちにくい状況でした。また、女性の管理職は2014年4月時点で51名ですが、これは全管理職の1.8%にとどまっており、女性社員が身近にロールモデルを見出しにくいことも課題でした。そこで、若手の女性社員の点と点を結んでネットワークを張ると同時に、そのリーダー役を若手の女性管理職が務めることで、ロールモデルを示したいという狙いもありました」。

リーダー研修会や、対象となる女性社員へのサンプルインタビューなど入念な準備を重ねてスタート。取り組みは思わぬ効果ももたらした。「参加した若手女性から『相談相手ができて心強い』『将来のキャリアをより具体的に描けるようになった』などの感想が寄せられただけでなく、ネットワークリーダー自身が女性活躍推進の意義や必要性を正しく理解する契機となりました。9名の成長は著しく、全員が今年度もリーダーの活動を継続しています」と大島氏。本社の人事部主導で始まった取り組みだが、いずれはネットワーク自体が自立し、メンバーの異動や転勤を経ても、つながりを持ち続けることが目標だ。

「無意識の遠慮」と「過度な配慮」が、女性のキャリアアップを妨げる要因に

このほかにも、結婚や介護、配偶者の転勤などを理由に退職する社員を対象として、一定の基準を満たす場合に、将来的な職場復帰の希望を受けつける「キャリアリターン・エントリー制度」など独自の施策を実施。また、女性管理職を対象に、主体的なキャリア設計を進めることや、ネットワーキングを目的とした講演会や研修も毎年継続的に開催している。こうした取り組みの中で、新たな課題も浮かび上がってきたと秋元氏は明かす。「女性社員が自身の経験不足や育児休業・短時間勤務によるブランク期間などを理由に、自ら心の壁を作ってしまうケースがあることが分かってきました。一方、男性上司の側も、女性に対する過度な配慮により、ほかの男性社員と同等レベルの仕事や責任を女性部下に与えることを躊躇する傾向があった。つまり、無意識の遠慮がお互いにある構図が見えてきたのです」。

しかし、“適切な配慮の仕方”は一概に決められるものではなく、女性社員の受け止め方にも個人差があるのが実情。「必要なのは一律のマニュアルではなく、互いに十分なコミュニケーションがとれる関係性の醸成だと考えました。そこで、2014年からは、女性管理職向けの研修の場に直属の上司もペアで招き、セミナーをともに受講する方式を導入しました。さらに、研修後の懇親会はあえて女性部下グループ・男性上司グループで別々に開き、そこで出される双方の率直な意見や本音を今後の取り組みに反映していきたいと考えています」と秋元氏は説明する。

明確な数値目標を公表することで、会社の“本気度”を内外に意思表示

2013年10月、同社は女性活躍推進に関する数値目標を初めて公に発表した。2015年までに「女性の管理職者数55名(全管理職の2%)以上」、2018年までに「女性の管理職者数75名(同3%)以上」および「女性役員1名以上」という内容。その後、女性管理職者数は数値目標発表時の44名(同1.6%)から、前述の通り2014年4月時点で51名(同1.8%)へとアップし、すでに女性執行役員も1名誕生している。

当初、数値目標を出すことへの慎重論も社内にあったという。「全社員数に占める女性の割合がまだ低いこともあり、目標値のパーセンテージも低くならざるをえず、会社のイメージダウンになるのではという危惧があったのです。しかし、明確な数字を社会に向けてきちんと開示することは、取り組みに対する会社の真剣さを内外に意思表示することであり、女性社員のモチベーションを高める意味でも価値があるとの結論に至りました」と大島氏は振り返る。実際に、数値目標の公表に対する女性社員の反響は大きく、「会社の本気度が伝わった」「数字を一人歩きさせないために、自分たちも意識をもっと変えていく必要がある」という前向きな意見が多く出ているという。今後も、数値目標をクリアすることのみに主眼をおいた施策を打ち出すのではなく、女性がライフイベントを経ても退職せずに長く働ける環境や、自らのキャリアを主体的にとらえスキルアップを積んでいける環境を整備することで、女性の活躍、ひいては管理職比率の増加につなげていく方針だ。

「弊社が女性の活躍推進に取り組む根本的な理由は、多種多様な人材の能力を引き出すことが、企業の使命の一つだと考えるからです」と秋元氏。大島氏は「グローバルな競争を勝ち抜いていける強い組織となるためにも、多様な意見や考え方が活かされる職場環境であることが不可欠。ダイバーシティ推進を重要な経営戦略の一つに置く理由です」と語る。「世の中の流れだから」ではなく、企業の当然の使命として取り組むという強い信念。この明確なスタンスが、社員自身の意識変革を促す大きな推進力となっているようだ。

COMPANY DATA

企業名
株式会社IHI
設立
創業 嘉永6年(1853年)
設立 明治22年(1899年)
従業員
8,331名(2014年3月末 時点)
事業内容
資源・エネルギー・環境 (ボイラ・原子力・ガスタービン・LNG受入基地・貯蔵タンク等)
社会基盤・海洋 (橋梁・水門・シールド・交通システム・海洋構造物・農業機械等)
産業システム・汎用機械 (圧縮機・車両用過給機・物流システム・運搬機械・産業機械等)
航空・宇宙・防衛 (航空エンジン・防衛機器システム ・ロケットシステム等)
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