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女性のモヤモヤを解消する100問100答

#068

2023.8.10

Q.上司からのセクハラ。泣き寝入りしたくないけど、
声を上げて会社にいられなくなったらどうしよう…

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上司のなれなれしい言動が不快…。
これってセクハラ?
やめさせるにはどんな言い方をすればいい?

こちらのお悩みのように、自分がされている行為がセクハラかどうかの判断って、難しいですよね。やめてほしいけれど、声を上げて会社にいづらくなったら困る…となかなか行動を起こせない人も多いと思います。

そこでハラスメント対策専門家の山藤祐子(ざんとう・ゆうこ)さんに、どんな行為がセクハラに該当するのか、セクハラの定義とその対処法についても伺いました。

これってセクハラ?職場のセクハラの定義

職場におけるセクシュアルハラスメントとは、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と男女雇用機会均等法により定められています。

その中で、職場のセクハラは大きく分けて以下の2種類があるとされています。

・対価型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動に対して労働者が拒否や抵抗をした際に、解雇や降格など、不利益をこうむること。例えば、性的な関係を迫る上司に「やめてください」と言った結果、本人が望まない部署に異動させられることなどが該当します。

・環境型セクシュアルハラスメント
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。例えば、上司から頻繁にボディタッチをされたり、職場で常に性的な映像が流れていたりして、仕事の妨げになることなどが挙げられます。

出展:「職場におけるハラスメントの防止のために」(厚生労働省)

しかし、職場のセクハラが必ずしもこの2つに当てはまるとは言えないと山藤さんは指摘します。

ハラスメント対策専門家
山藤祐子さん(以下、山藤さん)

職場で性的な発言があったとしても、1人の上司によるものなら必ずしも環境型とは断定できません。すべてを対価型と環境型のどちらかに振り分けられないくらい、セクハラの種類は広いのです。

性役割の押し付けやアウティングもセクハラの対象に

「セクシュアルな言動」は性的な言動だけにはとどまりません。

山藤さん

女性のお茶くみや男性に対する力仕事の強要、「男のくせに」「女らしく」などの発言、このような性役割の押し付けもセクシュアルハラスメントに該当します。また、性的指向・性自認について本人の同意なく第三者に話す「アウティング」についても、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)によって禁止されています。

「今日はメイクをしていないんだね」はセクハラになる?

職場での言動には、セクハラなのか判断しづらいものもあります。例えば、オンライン会議中に上司から「今日はメイクしていないんだね」と言われた場合はどうなのでしょうか。

山藤さん

普段はメイクをしているけど、今日はしていない状態を指す発言のため、セクハラかどうかと言われれば、正直グレーです。その発言に「メイクくらいしろよ」とプラスαが加われば問題ですが、ひとつの発言だけで判断するのは難しいケースもあります。

オンライン会議では、自分の部屋が映ってしまうこともあります。「こういう部屋に住んでいるんだね」など、部屋について言及された場合もプラスαがあるかによって判断できるそうです。

「最寄り駅はどこ?」はセクハラになる?

質問の内容によっては、セクハラかどうかの意見が分かれるものもあります。例えば、上司との会話で「○○さん、最寄り駅はどこ?」と聞かれた場合はどうでしょうか。

山藤さん

これは、上司の人間性や日ごろからの関係性によって受け取る印象も変わります。信頼関係が成立している上司から聞かれれば、不快には感じないかもしれません。一方、普段から「○○ちゃん、デートしようよ」と声をかけてくる人から聞かれたら、どういう意図で聞いているのかと警戒してしまいますよね。

その言動がセクハラに該当するかを見極めるためには、自分と同世代の一般女性従業員、一般男性従業員がどう感じるかも重要な判断材料になります。客観的な意見と自分の主観、その両軸が必要です。

とはいえ、ことあるごとに同世代に意見を聞くのは難しいものです。判断に困ったら、「それは仕事に関係あるのか?」を軸にすればいいとのこと。

山藤さん

「彼氏はいるの?」「結婚しているの?」などの質問は、業務に関係ありませんよね。プライベートに関することを聞かれたときには、なぜその質問が必要なのかを考えてみるといいですよ。

踏み込んだことを聞かれたら、「その質問はセクハラです」と伝えたほうがいいとのこと。もうひとつ効果的なのが、言葉づかいを意識することだそうです。

山藤さん

上司や取引先など、「やめてほしい」とこちらの思いをはっきり伝えるのが難しい相手には、常にていねいな受け答えをして、言葉づかいで相手に距離を感じさせるといいでしょう。

プライベートな事柄をどこまで話すのか、自分でルールを決めておくのもオススメです。踏み込んだ質問をされたら、「すみません、ちょっと…」と当たり障りのない言い方で会話を終わらせて、ビジネスライクな関係性を維持することを心がけましょう。

身近に潜んでいる「職場のセクハラ」具体的事例を紹介

職場でのセクハラには、どのような事例があるのでしょうか。過去に上司からセクハラを受けた女性たちから聞いた体験談を紹介します。「セクハラかもしれない」と気づいても、相手との関係や状況を考えると、自ら行動を起こしてその行為をやめさせるのはとても難しいことが分かりますね。

20代前半のころに仕事の悩みを抱えていたのですが、自分の部署の課長には相談しづらくて。普段から「大丈夫?」「今日も残業なの?」と声をかけてくれていた隣の部署の課長に相談をしました。

そのうちに『ビール一杯くらいどう?』と誘われて、何度か飲みに行きました。いつも仕事の悩みを聞いてくれてとても信頼していたのですが、あるとき帰りにキスをされてしまい…。突然のことで混乱しましたが、自分を責める気持ちや関係性を悪くしたくないなどの気持ちがあり、何も言わずに帰ってしまいました。(28歳・総合職)

女性は、悩んだ結果友人に相談。「その課長とのやりとりが残る形でセクハラだと言ったほうがいい」とアドバイスされたため、後日メールで伝えたところ、課長からは「そんなつもりはなかった。君のことが好きなんだ」と返事が来たのだとか。

その女性の会社には相談窓口が整備されておらず、相手から「黙っていてほしい」と言われたため、次の行動を起こすことはありませんでした。同じ会社で働き続けることを選んだものの、現在は転職を考えているそうです。

「この女性のように、信頼していた上司や先輩がセクハラの行為者になる事例は多い」と山藤さん。

続いては、時間差でセクハラだと気づいたケースです。

ホテルのレストランに勤務していた23歳のころに、仕事を辞めたいとマネジャーに伝えたことがありました。『勉強も兼ねて、新規オープンしたホテルのレストランに行こう。食事をしながら話を聞くよ』と言われたので、ついていくことに。

食事が終わり、帰りのエレベーターの中で、マネジャーから突然『泊まっていく?』と聞かれました。本気だとは思わず軽く流してその場は終わったのですが、その後に行ったカラオケで松田聖子の「抱いて…」をリクエストされ、歌っているときに手をつながれました。その後は特に何もされず、私も希望どおり退職したので、マネジャーとの接点もそれっきりです。(37歳・事務系)

退職から数年後、そのマネジャーがセクハラで退職したことを知ったそうです。セクハラの内容は、カラオケで部下の手を握ったこと。そこで初めて、自分がされたことをセクハラだと認識したといいます。

セクハラを受けた際に具体的に行動を起こすよりも、退職やそのまま働き続けるほうを選ぶ人が多いようです。山藤さんに寄せられる相談の中にも「この先も同じ会社で働き続けたいから波風を立てたくない」と声を上げられない女性が多いのだとか。

山藤さん

セクハラをされると自分を責めてしまう人もいるけど、悪いのは行為者です。堂々とした態度や言い方で、はっきり嫌だと伝えたほうがいいと私は思います。

いざ勇気を出して加害者に伝えたけれど、セクハラ行為をやめさせることができなかった場合、または関係上どうしても自分から言い出せない場合はどうすればよいでしょうか。対処法を段階別に紹介します。

セクハラ対処法1「社内の相談窓口や信頼できる上司に相談する」

セクハラをなかったことにはしたくないと考えたとき、まず思いつくのが社内の相談窓口や信頼できる上司に相談すること。

相談窓口の場合、担当者が社員のパターンと、外部委託先の専門家のパターンがあり、さらには男女それぞれの担当者が設けられている場合とそうでない場合があります。そのため、相談のしやすさは会社によって多少違いますが、決定的なセクハラではなく、ちょっとした違和感を覚えたというケースでも、利用してまったく問題ありません。

一方、上司に相談するという手段ですが、普段からコミュニケーションを図っており信頼関係が築けていることが前提。というのも、相談先である上司の対応ミスにより、行為者から逆恨みされていじめに発展した事例もあるからです。フォロー体制を整える上でも、相談相手は慎重に選びたいところ。“普段から信頼のおける上司”であることを前提として、さらに相談相手を見極めるポイントが3つあります。

山藤さん

一番肝心なのは、口が堅い人を選ぶこと。人選を間違えると、セクハラの詳細が社内に広まってしまうケースもあるからです。私がパワーハラスメントの研修で行ったある企業では、行為者について社員のほとんどが知っていたことがありました。セクハラも同じで、被害者だけでなく行為者のプライバシーを守ることも求められているため、企業としてあってはならないことです。

2つ目は、権限がある人を選ぶこと。行為者にセクハラをやめさせるためには、その人よりも役職が上であることが重要です。自身の直属の上司でなくても構いません。

3つ目は、性別に関係なく男女平等の考え方ができる人です。

上記を踏まえて、いざというときに相談できる人を日ごろから探しておくとよさそうです。普段から信頼のおける上司がいないのであれば、社内の相談窓口に相談しましょう。

セクハラ対処法2「労働局または労働基準監督署に相談する」

社内に相談窓口が設置されていない場合や、上司や窓口の担当者に相談しても状況が改善されない場合に、次の相談先として労働局の雇用環境・均等部や労働基準監督署があります。面談あるいは電話で相談を受け付けているので、労働局または労働基準監督署のHPで近くの窓口を確認してみましょう。

「全国労働基準監督署の所在案内」(厚生労働省)

「厚生労働省委託事業 ハラスメント悩み相談室 相談機関紹介」

労働局や労働基準監督署に相談すると、関連する法令についての情報提供やその後の助言・指導制度の説明があります。その上で、相談内容から問題点を指摘し、法令に違反する可能性がある場合は企業への助言・指導が行われます。

相談をした結果、雇用者が労働者に対して解雇や異動などの不利益な扱いをすることは禁じられているため、安心して利用できるのも心強いです。一方で、「行政としてできることは限られている」と山藤さんは指摘します。

山藤さん

労働局や労働基準監督署はセクハラのみを扱う機関ではありません。行政が関わることにより話は大きくなるものの、すぐに行為者を異動させるなど早急な改善は期待できません。

助言・指導で企業の対応に改善が見られない場合には、「あっせん制度」に移行できます。「あっせん」とは、労働問題の専門家が当事者の間に立ち、双方の主張を聞いた上で要点をまとめ、話し合いによる解決を図ることです。しかし、どちらかが不参加の場合は打ち切りになります。

セクハラ対処法3「法的措置をとる」

1と2の方法でも改善されない場合に最終的な方法のひとつとして、法的措置があります。行為者はもちろん、対策を講じなかった会社に対しても損害賠償を請求できる可能性があるのです。

裁判は訴えを起こす側にとってもリスクが大きいもの。結果的に不利な状況に陥ってしまうケースを避けるためには、どうすればいいのでしょうか。

山藤さん

まずは、セクハラを証明できる証拠があること。その上で、弁護士も後押しをしてくれるようであれば、決断していいと思います。

証拠として活用できるものには、録音や行為者とのメールなどの履歴、日記などがあるそう。記録を残しておくと、社内の相談窓口や外部窓口に相談する際にも役立ちます。日記をつける際には、セクハラを受けた日時や場所、行為者の氏名、具体的な言動、同席者の有無を記載しておくこと。特に同席者は、セクハラの内容を確認できる人として重要です。

もうひとつ、裁判をする上で必要なものがあると山藤さんは言います。

山藤さん

その人が裁判を起こす意義です。裁判にはお金も時間も労力もかかるため、目的によっては息切れしてしまうこともあるからです。弁護士に相談した上で、改めて意義について考えてほしいと思います。

セクハラ対処法4「転職する」

具体的に行動しても何も改善されなかったり、精神的苦痛が続いて職場にいられなくなったりした際には、転職を選ぶのもひとつの方法です。辞める際は、会社にはセクハラがあった事実を主張して、「会社都合退職」で離職票を発行してもらいましょう。「自己都合退職」よりも失業手当の支給開始時期が早く、支給期間も長いなど、失業保険給付の取り扱いで優遇が受けられます。

「転職志望先との面接では、転職理由が職場のセクハラにあることを話したほうがいい」と山藤さん。その際に留意しておきたいのが以下の2点です。

・冷静に話す
・事実と主観を切り分けて話す

山藤さん

感情的になりすぎて話しながら泣いてしまうようでは、企業も採用をためらってしまいます。
落ち着いて転職に至った経緯を説明しましょう。セクハラが理由で転職を考えたことを、事実を中心に端的に説明し、健全な環境で仕事に打ち込みたいという今後の希望につなげたほうがよいでしょう。

転職理由について話したときの企業側の対応は、自分自身が転職先を見極める手がかりにもなります。社内における男女の割合や、男性の育児休暇の取得状況なども確認するといいそうです。

面接でのやりとりについて、dodaキャリアアドバイザーの時田絵里奈からもひとこと。

dodaキャリアアドバイザー
時田絵里奈

セクハラの被害者側に落ち度はないので、退職に至った理由がセクハラであることを話してもよいのですが、面接では、企業から採用したい人材だと思ってもらうことが大切です。『セクハラを受けた気の毒な人』というだけの印象にならないように、『仕事は続けたかった』という意志を責任感や熱意と合わせて強調すると、企業への訴求力も高くなりますよ。また、セクハラはあくまでも転職のきっかけなので、企業の志望理由はきちんと用意しておきましょう。

まとめ

上司からのセクハラに悩まされている。泣き寝入りはしたくないけど、声を上げて会社にいられなくなったらどうしよう。解決策は…?

悪いのはセクハラをする行為者。嫌なら嫌だとはっきりした言い方をしてやめさせる

社内の相談窓口や信頼できる上司、外部機関などに相談する

対処をしても状況が改善されないなら、法的措置をとる、または転職を検討するのも一案

誰にも話せず苦しみ続けるよりも、声を上げる勇気を持つことが解決への第一歩なのかもしれません。まずは、信頼できる人に相談するところから始めてみるとよさそうです。

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Profile

識者プロフィール

山藤祐子/顔写真

山藤祐子(ざんとう・ゆうこ 旧姓倉本)
ハラスメント対策専門家。ハラスメント研修専門講師。キャリアコンサルタント。
自身のハラスメント経験を最大限に活かした、ハラスメント専門研修講師として、年間150日以上登壇。研修を実施した企業や自治体は400社以上にのぼる。

キャリアコンサルタントとしては、6,000人以上のカウンセリング実績があり、関東圏内の大学40校以上で就活・キャリア指導も実施。
著書『トラブル回避のために知っておきたい ハラスメント言いかえ事典』監修(朝日新聞出版)、『管理職・リーダーのハラスメント対策』(ハイテクノロジーコミュニケーションズ)

(参考)
厚生労働省「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)

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