#087
2021.07.05
Q.知らぬ間に不幸せな働き方をしていた!?
どうしたら幸せに働けるの?
働いていて楽しいこともあるけど
つらいことも多くて…
働いていると幸せを実感する瞬間もあれば、不幸せを感じる瞬間もあります。実は働く上で幸せと不幸せが共存している状態は珍しくないのです。できれば不幸せの要素を取り除きたいもの…。
「はたらく人の幸福学」を慶應義塾大学前野研究室とともに研究しているパーソル総合研究所の井上亮太郎主任研究員に、不幸せを感じてしまう原因と対策について聞きました。
知らぬ間に私を不幸にしていた!?"7つの不幸せ因子"とは
具体的に“不幸せな働き方”とはどういう状態を指すのでしょうか。井上さんによると、働く人の不幸せの定義は7つの因子から構成されているといいます。
ただし、ここで注意しておきたいのが、幸せと不幸せはそれぞれ独立した因子を持っているということ。つまり、不幸せの7因子すべてを解消したからといって幸せに働けるわけではなく、単に不幸せの因子がなくなるだけなのです。そのため、幸せに働くには幸せの因子、不幸せの因子それぞれにアプローチが必要だといいます。
ここでは、働く人の不幸せを生み出す7つの因子を見ていきます。
パーソル総合研究所
井上 亮太郎さん(以下、井上さん)
働く人の不幸せを生み出している因子は、①自己抑圧(自分なんて)、②理不尽(ハラスメント)、③協働不全(職場バラバラ)、④不快空間(環境イヤイヤ)、⑤評価不満(報われない)、⑥疎外感(ひとりぼっち)、⑦オーバーワーク(ヘトヘト)の7つ。
井上さん
この中で特に女性が重視する因子は、職場環境において視覚や嗅覚など体感的に不快を感じる「不快空間(環境イヤイヤ)因子」と、膨大な仕事量により心身ともにストレスを感じる「オーバーワーク(ヘトヘト)因子」という傾向にあります。※1
働く女性に最も悪影響を与える不幸せ因子はどれ?
働く女性の多くが不快空間とオーバーワークが最も不幸せを招く因子と感じていることが分かりました。ところが、調査をさらに進めると、女性が考える“働く不幸せ実感”と、実際に不幸せに深く関わっている因子は別にあることが分かったと井上さんは言います。
井上さん
実は不幸せな働き方に最も影響する因子は、不快空間やオーバーワークより、疎外感(ひとりぼっち)因子だということが分かりました。
つまり職場でのコミュニケーションがうまくいっておらず、孤立している状態が最も不幸せを感じるということ。また、仕事の能力に自信が持てない、能力を活かせていないと感じる自己抑圧(自分なんて)因子の影響も大きいです。※2
ほかにも、理不尽(ハラスメント)や不快空間(環境イヤイヤ)、協働不全(職場バラバラ)、評価不満(報われない)の因子が不幸せ実感と結びついており、影響を受けやすいといいます。
自分が重視している不幸せ因子だけでなく、すべての不幸せ因子をなるべくクリアにするように働きかけることが重要なようです。
井上さん
特に女性へのマネジメントでは、物理的な環境をはじめ、対人関係に起因する協働不全(職場バラバラ)や疎外感(ひとりぼっち)、理不尽(ハラスメント)のほか、評価不満(報われない)といった部分に男性以上に影響を受けやすい傾向がありますので、配慮が必要と考えられます。
ただし、女性は男性に比べ、働く上で生じる不幸せを回避することを重視しているため、実際は男性よりも不幸せではない傾向にあります。※3
このように数多くの不幸せ因子が女性の働き方に影響しているようです。まずは自分がどの不幸せ因子の影響を受けているのか、診断で確認してみましょう。
働く上での不幸せの因子を取り除くには
幸せに働くことはもちろん、不幸せに感じる要素を取り除き、豊かな職業生活を送りたいもの。井上さんによると、「自身の能力や評価、仕事量などをあまり他人と比較しすぎないことが大切」だといいます。
井上さん
たとえば働く20代女性の不幸せは、まだ若く経験不足な側面から、活躍機会の少なさや能力不足などによる「自己抑圧(自分なんて)因子」が高い傾向にあります。※4
ですが、これは年齢を重ねればそれに伴い経験も積み上がって克服していける部分もあるため、改善傾向となります。
ですから、20代の今、活躍している先輩と自分を比較して不幸せを感じる必要はないのです。自分は自分というスタンスで自分らしくふるまえていることが、働く幸せにもいい影響を与えます。そしてこれは20代以降も同じことがいえます。
他人と自分を比較することがトリガーになって、働く不幸せの因子を引き出していることが多いようです。※5
また、不幸せだと感じている人が現状から脱却するには、次の2つの方法があるといいます。
井上さん
不幸せから脱却するには「自分を変える」か「環境を変える」かの2つの選択肢があります。
まず、自分を変える方法としては、物事の「認知の仕方を変える」「行動を変える」という2つの方法があります。
認知を変えるとは、自分の仕事を別の視点から捉え直し、新たな意味づけを与えることです。「行動を変える」とは、日常的に付き合う人を変える、時間の使い方を変えるなどを指しています。
たとえば、同じ作業でも、つまらない作業だとネガティブにとらえるのではなく、自己成長につながる機会だととらえ直してみること。
そして、実際に別の角度からアプローチしてみること。そうすることで、いつもと同じ作業でもまだやれることがあるかもしれませんし、わくわくポイントを見つけて前向きに仕事に取り組むことができそうです。
一方で「環境を変える」とは、物理的環境を変えることを指すとのこと。
井上さん
まずは自分を変えることをやってみる。それでも不幸せから脱却できないのであれば、副業を始めてみたり、リカレント教育(学び直し)を受けるなど学びの場に身を置いてみたりするのもいいでしょう。
人生100年時代、これからのキャリア形成には“学び直し”が重要なの?
もしくは、今よりもいい状態になれる場所に行けるのであれば、転職を検討してみるのもいいかもしれません。。
「筋トレと同じで、不幸せの因子も一定の負荷として必要」と前置きした上で、井上さんは「どうありたいかを考え、それが実現できる環境かどうかを見極める必要はある」と話します。
自分でやるべきことをやってみた上で、置かれている環境が理不尽(ハラスメント)因子や協働不全(職場バラバラ)因子など不幸せから脱却しづらいのであれば、一度キャリアアドバイザーに相談してみるといいかもしれません。
まとめ
- 働く上で感じる不幸せを減らすには…
-
・自分と他人を比較しない
・認知や行動の観点で自分を変えてみる
・副業を始めるなど環境を変えてみる
・自助努力でどうにもならない場合は転職も検討してみる
というアドバイスをもらいました。
不幸せ実感を少しでも抑えたら、次は働く幸せ実感を高めたいところ。働く幸せを構成する7つの因子や幸せを高める働き方については、以下の記事を参考にしてみてください。
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識者プロフィール
- 井上 亮太郎
パーソル総合研究所 主任研究員 - 大手総合建材メーカーで営業を経験後、経営統合に伴い統合先メーカーに出向し組織融合施策に参画。その後、組織文化・風土の違いに関心を抱き、学校法人産業能率大学に移り組織・人材開発のコンサルティング事業に従事。人や組織、社会が直面する複雑な諸問題をシステマティック&システミックに捉え、分析し、創造的に解決するための知見を深めたいと考え、2019年から現職。主な研究プロジェクトは「はたらく人の幸福学」(慶應義塾大学前野研究室と共同研究)。
<参考>
※1 ※2 ※3 【出典:パーソル総合研究所「はたらく人の幸せに関する調査【続報版】」2021】
男女別 はたらく不幸せ因子重視度/因子得点
※4 ※5 【出典:パーソル総合研究所「はたらく人の幸せに関する調査」2020】
はたらく人の幸せ・不幸せの実態