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女性管理職のエピソードから導き出す「変えていく力」への近道 女性管理職のエピソードから導き出す「変えていく力」への近道

めまぐるしく変化する経営環境のもと、企業をはじめ職場や人もまた、絶え間なく変わっていくことが求められています。そんな中、管理職として、身近な人や職場、ビジネスを変え続けている女性たちがいます。彼女たちが変えてきたもの、そして、彼女たちに影響を与えてきたものとは何なのか。今回は、「対顧客」「組織・職場運営」「人材マネジメント」「自分の価値観」の4つの観点で、それぞれのエピソードをひも解き、「変えていく力」を発揮するためのヒントを見出します。

※この記事は2015年3月に発行した株式会社パーソル総合研究所の機関紙・別冊『HITO』でまとめた記事をWoman Careerが再編集しました。
※所属や肩書きは取材当時のものです。

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掲載日:2015年8月24日

野村證券株式会社 女性管理職 ―外資系起業での経験を活かした一人ひとりの主体性を根付かせる取り組み 野村證券株式会社 女性管理職 ―外資系起業での経験を活かした一人ひとりの主体性を根付かせる取り組み

東 由紀(43歳)
野村證券株式会社
人材開発部 兼 人事部 エグゼクティブ・ディレクター タレントマネジメント・ジャパンヘッド

※所属や肩書きは取材当時のものです

外資系企業で培ったグローバルな視点を活かし、これまでの概念にとらわれない人材育成に取り組む東さん。海外と日本とのキャリア観の違いを強く感じながらも「チームが一体となり個々が輝く組織」づくりを進めています。独自のマネジメント観を含めて詳しくお話を伺いました。

野村證券株式会社

日本を代表する証券会社として個人投資家をはじめ、さまざまな企業に向けて資産運用や資金調達のサービスを提供。顧客のニーズに合った商品を提案し、高度なリサーチ能力や問題解決能力を活用しながら、日本の証券市場の発展に貢献している。

常に顧客のニーズに耳を傾けること
社内の人材開発を担う私の顧客は「社員」

新卒でブルームバーグ エル・ピーに入社してカスタマーサポートに携わった後、トレーディングシステムの法人営業や開発を担当。この時、初めて管理職を経験しました。その後、リーマンブラザーズに転職。機関投資家向けのリサーチ分析ツールのマーケティング担当を務め、2008年に野村グループが同社を継承したことにより野村證券株式会社に入社しました。機関投資家向けのリサーチサービスを開発するグローバルプロジェクトマネジャーを務めた後、13年に人材開発部へ異動。現在は人材育成とダイバーシティ&インクルージョン、タレント・マネジメントなどホールセール部門の人事戦略を担当しています。

前職のカスタマーサポートの経験があるからか、顧客志向が強く、前例や習慣にとらわれない新たな仕事をつくり出すのが好きです。今の仕事で人材育成の方法や研修を検討する際も、これまでやってきたことにこだわらず、まずは現場でどんなことが課題になっているかをヒアリングした上で提案することを心掛けています。外部の先進的な情報や流行の手法であっても、現場の状況を無視して当てはめたのでは、本当の意味で現場に役立つものにならないと思っています。

2年前に人材開発部に異動した際に、「今、何に困っているか」「上司にどうしてもらいたいか」「部下にどう育ってほしいか」を社員77人にヒアリングし、新たな人材育成のガイドラインを作成しました。それぞれの現場や職位でどのようなリーダーシップや能力が必要とされていて、それは具体的にどういう行動なのかを細かく定義したんです。上司が一方的に部下のキャリアプランを決めるのではなく、お互いに納得した上で、育成過程を共通言語で語れるようにしました。

私の考え方の根底には「メンバーの評価は上司の主観ではなく、行動や結果など見えるもので測れる」という思いがあります。これをもっとクリアに実現できるように、社内の人材育成の仕組みを変えているところです。人材開発部に所属する今の私のクライアントは「社員」。こういう意識で、常に社員の声に耳を傾けた現場発信の仕事をしていきたいですね。

ビジョンを共有して、個々の主体性が発揮できる役割を

学生時代を海外で過ごし、最初に就職したのも外資系企業だったので、内資系の野村證券に転職した時は、文化やキャリアに対する社員の考え方の違いに驚くことが多くありました。例えば社員のキャリア形成について、外資系は個人の主体性がより重視されるのに対し、内資系は企業主導ということ。野村證券に入社して部下に何がやりたいかを聞くと「東さんに言われたことをしっかりやります!」と返されてびっくりしました。

また日本は仕事の権限があいまいなケースが多いと感じますが、私はメンバーそれぞれに求めることや役割をはっきりさせたほうが成果を適切に把握でき、本人の責任感を醸成するためにも良いと思っているので、マネジメントする時も部下の権限をしっかり決めるようにしています。その際、部下がキャリアを主体的に考えらえるように、まずは組織のビジョンをしっかり共有します。その上で一人ひとりにチームの一員としての期待を伝えた上で、「何がやりたいか」を細かく聞き、経験や個性を活かしながら目指すキャリアが実現できるような役割分担をすることで、キャリア形成をサポートしています。

仕事を進める上で何らかの課題を抱えるメンバーには、本人の意思や考えを尊重しながら、小さな成功体験を積ませるのが効果的だと思っています。例えばスキルが足りないと悩むメンバーには、まずはできることは何か、できないことは何かを整理して、その中から最初にやるべきことを明示したり、チームでほかにできるメンバーがいればその人と一緒に仕事を進めるなど、具体的なスキルアップを重視します。モチベーションが下がっているメンバーには、これからどんな仕事をしていきたいか、キャリアプランをあらためて確認することで意欲的に仕事に向き合えるようにするなど、個に合わせたマネジメントを心掛けています。

チーム運営についても主体性を重視したマネジメントを意識しています。新年度にはチーム全体で新しく挑戦したい分野について話し合って年間計画を考え、そして節目ごとに振り返り、ともに喜び、ともに学ぶことを大切にしています。こうすることで、個人の能力とチームのモチベーションが拡大していると感じています。また定例ミーティングはあえて実施していません。お互いに聞きたいことはその場ですぐに聞くかメールで対応します。これまで同じチームと言っても、中には海外の支店で働いているメンバーも数人いて、時差の関係で同時に会議をすることが難しいため必然的にこうなったのですが、子育てをしている社員が何人かいて、それぞれが自分の業務を進める今のチームでも、このやり方が効率的だと思っています。定例会議に出席するために必ずその場にいることを求められると、時間制限のある中で効率的に仕事ができなくなりますし、情報共有のための資料作りの労力や、定例ミーティングで陥りがちな「順番に話して質疑応答のない会議」は、もったいない時間の使い方だという気がしているからです。必要に応じてメンバー同士相談し合うことで、自然に密なコミュニケーションが生まれていると感じます。

自分を知り、それぞれの違いを受け入れること

新卒のころから、人生の折り返し地点と言われる40歳前後には、それまでとまったく違うことにチャレンジしてみたいと思っていました。41歳となった2年前、未経験の分野である人材育成をやってみようと決めました。異動後にダイバーシティ&インクルージョンも担当することになり、今取り組んでいるのは、性別や年齢、国籍、性的指向や性同一性などの多様性を認めるダイバーシティへの理解の推進にとどまらず、個人の価値観や考え方を認め合える環境をつくること。それにはまず自分のことを知り、さらにお互いの違いを認め、受け入れることが大切だと考え、今期から全すべての管理職研修にダイバーシティ研修を導入しました。また、自分の強みや弱みを理解する女性社員のためのキャリア研修を入社2年目から実践することにしました。若いうちに自分のパーソナリティを理解しておくと、キャリアの目標が立てやすくなったり、将来管理職になった時には部下の多様性を理解したマネジメントができるようになると考えています。

また当社には、女性のキャリアを考える「ウーマン・イン・ノムラ」や、健康と育児と介護をテーマにする「ライフ&ファミリー」、文化と世代間のギャップを議論する「マルチカルチャー・バリュー」というダイバーシティ&インクルージョンの推進を目的とした三つの社員ネットワークがあります。それぞれ10人ほどの社員がボランティアスタッフとして参加し、社内外のロールモデルの可視化や外部講師を招いたセミナーの開催、同じ課題を持つ社員が悩みや工夫を共有できるような仕組みの構築の活動をしています。

このように社員それぞれが伸び伸びと個性を活かして働けるような職場が実現すれば、活き活きと働く社員が増え、成果もついてくると信じています。常に現場を見つめて、社員一人ひとりを尊重する人材開発と組織改革を進めること、それが私の目標です。

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私の「変えていく力」って何だろう

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