転職ストーリー
研究者にならなかった私が、
JAXAで次代の宇宙開発に貢献している
「研究者としてではなく、社会のために研究開発を“支える”立場に」。環境科学を修了後、資金配分を行う公的機関に就職した高橋さん。現在は、JAXAの宇宙戦略基金事業部で宇宙開発の最前線を支えています。基金事業の専門家という、少し珍しいキャリアを歩む高橋さんは、「宇宙の経験がなくても、JAXAで強みは必ず活かせる」と語ります。高橋さんのストーリーから、宇宙戦略基金事業の今に迫ります。
高橋 美里さん
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙戦略基金事業部 業務管理課 主事
2025年JAXAに入構。研究開発公募案件の運営・調整に従事
研究者ではなく、“研究を支える”道へ
前職も資金配分を行う公的機関だったそうですね。お仕事内容を教えてください。
新卒で、産業技術やエネルギー・環境分野の研究開発に対して資金配分を行う機関に就職しました。公募の事務局業務や予算・文書管理など、適正な資金配分を行うための業務全体を支える仕事をしていました。技術の“芽”と呼べるような、社会実装の手前にあるさまざまなプロジェクトに触れられる、刺激的な仕事でしたね。
学生時代は理工系専攻だったのですね。研究職での就職は考えませんでしたか?
大学院では環境科学の領域で研究をしていましたし、友人たちは化学メーカーの研究職に就いた人も多いですね。一方で私は、就活が近付くにつれて「研究は楽しいけれど、それはプレッシャーが少ない学生だからなのでは」という気持ちが大きくなり……研究職や技術職として社会人になるイメージは、正直あまり浮かびませんでした。「私は自分で手を動かすよりも、別の形で研究開発に関わるほうが向いているのでは」と感じるようになったのです。
就職先を考えるうえで、大切にしていた軸は何だったのでしょうか。
一つは、せっかく社会に出るのであれば利益を追求するよりも、社会貢献性を重視して仕事を選びたいということ。もう一つは、やはり“間接的”に研究や技術開発を支える立場で働けるということ。そうした視点で調べていく中で、国と民間の中間に位置する「資金配分機関」や研究機関の事務職という選択肢に出会いました。
明確な軸を持っていなければ出会えない職業ですね。
はい。あまり一般的な仕事でもないので、家族や友人への説明は少し難しかったのですが(笑)。実際働いてみると、社会的インパクトのある研究開発からニッチな分野の研究まで、さまざまなプロジェクトを知る面白さは期待以上でした。
そして、衛星開発関連の公募業務を担当した際に、JAXAの宇宙戦略基金の構想を知ることになります。「今の経験を活かしながら、まったく新しい挑戦ができるかもしれない」と直感しました。JAXAというブランドへの憧れも正直ありましたが、それ以上に「今しかないタイミング」だと思い、求人へ応募。今に至ります。
専門家に囲まれて、時代の宇宙開発の芽を見定める
現在は、宇宙戦略基金事業部でどのような業務を担当していますか?
主に、委託・補助事業における契約・検査業務を担っています。採択された事業者と契約を結ぶための経費調整や、事業が始まった後に「お金が適正に使われているか」を確認する業務です。また、公募審査の場面では、提案者と審査委員の間に利益相反がないかをチェックする役割も担っています。
業務内容自体は、前職と共通点も多いのでは?
そうですね。資金配分機関としての基本的な業務や、競争的研究費に関する考え方は前職と大きくは変わりません。その点では、これまでの経験がそのまま活かせていると感じます。
一方で、「宇宙領域ならでは」だと感じるポイントはありますか?
「動く金額が大きい」という点はもちろん、一番は「宇宙空間の状況を肉眼で確認できない」という点ですね。お金が適正に使われているかを判断する際には、購入物などの現物を確認することが重要です。ただ、宇宙に打ち上げたモノを直接目で確かめることはできないので、研究開発の中で適切に使われているのかを見極めるのが非常に難しい側面があります。
しかし、JAXAには技術の背景や研究開発現場の実情を理解している方が多く、「この装置は何のために必要なのか」「どのように使用してどんな成果に繋がるのか」を丁寧に教えてもらえます。専門家に囲まれて、研究開発課題の中身を理解しながら判断できるのは、とても面白いですね。
前職の仕事から、さらに「研究開発」の部分が身近になったのですね。
はい。だからこそ、学生時代に研究室で過ごした経験が役立っているとも感じます。自分の実体験に照らし合わせて、「この測定装置は、この研究に本当に必要かな?」「現場で適切な判断ができていないかもしれない」と、感覚的に分かる場面がある。研究者の立場と公募制度の両方を俯瞰しながら仕事ができる点に、この仕事ならではのやりがいを感じています。
仕事の一番の魅力を教えてください。
先ほども挙げたとおり、「専門家に囲まれて仕事をする」という点だと思います。JAXAの宇宙戦略基金事業部はまだスタートから日が浅いので、技術職・事務職が一丸となってルールや運用を整備している段階です。建設的に、前向きに議論ができる方々に囲まれていることが、「転職して良かった」と一番に感じているポイントですね。
自分の強みが“宇宙”の現場で活きる
今後、どんなことに挑戦していきたいですか。
一番の目標は、「この基金制度があったから事業が前に進んだ」と言ってもらえる仕組みをつくることです。そのために、他の資金配分機関の制度を参考にしつつ、宇宙分野の挑戦を後押しできる形を模索していきたい。事業のフェーズが進み、成果が出始めるタイミングに合わせて、制度や運用もどんどん最適化していきたいと考えています。そのためには、法律や簿記・知財などの知識はもちろん、広く社会のことを学ぶ必要があると感じます。今の働き方はプライベートの時間をしっかり確保できるので、計画的に自主学習に取り組みたいですね。
「公募審査業務の専門性」を高めるということに繋がりますね。
そうですね。特に事務系職種は、頼まれごとに応じて業務範囲が広がり、不本意に“なんでも屋さん”になってしまう課題もあると耳にします。しかし、今の働き方はその心配はありません。業務範囲・専門性を考慮して仕事を頼まれるため、一つひとつの業務に集中できています。だからこそ自主的に「もっと専門性を高めたい」と思えるのかもしれません。
「宇宙分野」という観点での専門性は必要なのでしょうか?
実は、そうとは限りません。宇宙分野というと特別に聞こえるかもしれませんが、実際には多様なバックグラウンドの人が関わっています。私自身、転職前は宇宙に関して特別強い興味を持っていたわけではありませんでした。JAXAでは自分の得意を活かせるポジションがきっと見つかると思うので、「自分には関係のない仕事」と思わないでいただきたいと思っています。
これから一緒に働く方々にメッセージをお願いします。
宇宙戦略基金事業部だけを見ても、公募、契約・検査、広報・展示会対応など役割は幅広く、年齢や職務経歴も本当に多様です。別の業界を経験した後や、独立起業後のキャリアチェンジとしてJAXAに入構する方もいます。さまざまな経験を積むと、やりたいことが変化することもあると思いますが、上司や同僚がきっと背中を押してくれるはずです。だからこそ大切なのは、「自分の強みは何か」をしっかり持つこと。自分らしさが活かせる環境がありますよ。
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