転職ストーリー
地元・群馬で生きる。
その決意が導いた、警察官への転身
民間企業から群馬県警察へ転職したSさん。その決断の背景には、結婚や子どもの誕生をきっかけに、自身の暮らしを見つめ直した時間がありました。もともと警察官を志していたわけではなく、不安や迷いもあったといいます。それでも一歩を踏み出し、現場での経験を重ねるなかで、自分の関わりが誰かの安心につながっていると感じる瞬間が増えていきました。そうした歩みをたどります。
T.S.さん
群馬県警察 警務課採用係長
保険会社勤務を経て、2015年に群馬県警へ入庁
「地元で子育てをしたい」その想いがキャリアの転機
前職はどんなお仕事をされていましたか?
前職では、保険事業に携わり、営業メンバーへのセールス研修や、顧客への商品説明会を担当していました。社員や顧客に「どうすれば納得してもらえるか」を考えるなかで、深層心理を読み取る力はかなり鍛えられたと思います。
入社当初は群馬で勤務していましたが、事業拡大に伴い、新規営業所の立ち上げメンバーとして東京へ異動になりました。初めての上京でしたが数年で群馬に戻る想定での異動だったため、「任された機会を活かしたい」と前向きな姿勢で取り組んできました。
警察官への転職を考えたきっかけを教えてください。
得難い経験を重ねる一方で、首都圏での勤務が長引き、当初想定していたように地元へ戻る見通しが立たない状況が続きました。年齢も20代後半に差し掛かり、「このまま東京で働き続けるのか」と将来を考える場面が増えていきます。
ちょうどその頃、結婚と子どもの誕生も重なり、生活拠点について改めて向き合うことになりました。夫婦ともに群馬出身であることから、「地元で暮らしたい」という想いは次第に現実的なものに変わっていきます。
そんななかで、元同僚が群馬県警へ転職しており、「Sさんも向いているよ」と声をかけてもらいます。それまで考えたこともない選択肢でしたが、自分の仕事ぶりを知る相手からの言葉だったこともあり、一度向き合ってみようと思えたのが転機でした。
それまで想像もしなかった道ですが、不安はありませんでしたか?
かなりありました。危険性や体力面、働き方など、気になる点はいくつもありました。だからこそ、元同僚に「武道経験は必要か」「どの程度の体力が求められるのか」「急な呼び出しの頻度はどうか」と一つずつ確認していきました。
話を聞くなかで見えてきたのは、「警察官は思っていたほど特殊な仕事ではない」ということです。多くのことは入庁後に身につけられると知り、「自分にもできるかもしれない」と感じられたことが、最終的な決断につながりました。
任される現場が人を育て、未来の被害を食い止める
警察官として、どのような経験を積まれてきましたか?
警察学校を卒業後、交番勤務を1年半、その後留置管理業務を約2年経験し、刑事課へ進みました。刑事時代は特殊詐欺事件や薬物事件を担当しながら、現場の捜査に携わってきました。
群馬県警で働くなかで印象的なのは、経験年数に関わらず一定の役割を任される点です。現場対応から書類作成まで、一つの案件に一貫して関われるため、経験の密度が非常に高い環境だと感じています。自分の判断がどの部分で検挙につながったのかを実感しやすく、捜査の組み立て方や判断の精度も自然と高まっていきます。
また、周囲にも経験豊富で的確に判断される方が多く、そのなかで仕事を進めていくことで、自分自身も引き上げられている感覚があります。そうした環境が人を育て、それが結果として群馬県の高い検挙率にもつながっているのだと思います。
今まで担当されたなかで、特に印象的な事件はありますか?
特殊詐欺事件は印象深いですね。いわゆる「オレオレ詐欺」のように、家族を装って現金をだまし取るケースや、役所や金融機関を名乗って不安をあおるケースなど、被害の形はさまざまです。ただ共通しているのは、 「相手を信じざるを得ない状況をつくられてしまう」という点です。
特殊詐欺の被害者は、何の落ち度もない方がほとんどです。それでも、だまされてしまった自分を責めてしまう二次被害も少なくありません。だからこそ、「なんとか犯人を捕まえて安心させたい」という気持ちが強くなりました。
特殊詐欺の捜査は簡単ではなく、資金の流れを追うだけでも時間がかかります。それでも、チームで役割を分担しながら進め、最終的に犯人にたどり着いたときには、単に事件を解決したというより、「これ以上同じような被害を出さずに済んだ」という安堵の感覚に近いものでした。目の前の事件を一つ止めることで、その先にある被害も止まる――そう考えたときに、この仕事の意味がはっきり見えた気がします。
特別な経験はいらない。続けるなかで自分なりの手応えが、必ずある
この仕事をしていてよかったと思った瞬間はありますか?
学校の授業参観で、子どもが将来の夢に「警察官」と書いていたことです。普段からなりたいと言っていたわけではなかったので、正直なところ驚きました。日々の仕事の話を細かくしているわけでもなく、むしろ家にいる時間も決して多くはありません。それでも、子どもなりに何かを感じ取ってくれていたのだと思います。
「この仕事をしていてよかった」と強く実感したというよりは、自分の仕事が子どもにとって一つの選択肢として映っていたことに気づいた瞬間でした。そう思ってくれていたことが素直にうれしかったです。
最後に、転職を考えている方へメッセージをお願いします。
警察官は特別な人だけが就く仕事ではない、ということを伝えたいですね。
自分自身も特別な経験があって入ったわけではなく、学生時代はいわゆる帰宅部でした。体力に不安を感じる方も多いと思いますが、それは誰もが通る過程で、続けていくなかで少しずつ慣れていきます。できなかったことが当たり前にできるようになる。その変化は、きっと多くの方にとっても印象に残る経験になると思います。私も、気がつけばフルマラソンを完走できるようになっていました。
現在は採用業務を担当しているので、入庁前の私と同じように迷っている方と接する機会も多くあります。そうした方々と話すなかで感じるのは、「まずは一歩踏み出してみること」の大切さです。少しでも興味があれば、話を聞いてみるところからでも構いません。思っているよりもずっと身近な仕事であることは、私自身の実体験としてお伝えできると思います。
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