【例文あり】
キャリアビジョンの描き方と
誰でも実践できる方法を解説
公開日:2025/9/30
この記事では、多くの企業で組織開発、キャリアに関する研修を企画、講師を行っている株式会社セルフトランセンデンス蛭田氏が、キャリアビジョンの定義や描き方を3つのステップで丁寧に解説します。
また、キャリアビジョンを描くメリットや、転職の面接でキャリアビジョンについて聞かれた際の回答のポイントもdodaキャリアアドバイザーの取材をもとに紹介しています。
この記事のまとめ
- キャリアビジョンとは、仕事も含めた人生全体において、自分が目指す将来像のこと
- キャリアビジョンは、近年「はたらくことへの価値観が多様化している」の影響などで重要視されている
- 誰でも実践できる!キャリアビジョンの描き方を3ステップで解説
キャリアビジョンとは?
キャリアビジョンとは、仕事も含めた人生全体で、自分が将来どのように生き、働きたいかという理想の姿を描いたものです。「何を大切にして、どのような仕事を通じて社会と関わっていたいか」といった働く目的に加え、ライフスタイルや価値観も含めた、ありたい姿を示します。
キャリアビジョンは、単なる職業選択にとどまらず、「自分らしい生き方」や「人生全体の中での働く意義」が含まれます。一度決めたら終わりではなく、ライフステージや価値観の変化に応じて、定期的に見直しながらアップデートしていく前提で考えることが重要です。
仕事に悩んでいるときこそ、自分がどうありたいかという人生においての軸を見つめ直すことで、これからのキャリアの選択にも納得感が生まれ、視野が広がります。

キャリアの言葉の意味とは?
そもそも「キャリア」という言葉の由来は轍(わだち)=英語で「career」。
つまりキャリアとは、車輪が通った跡に轍が残るように、過去からの積み重ねによって形成されていくものです。その延長線上にある未来を考えることが、キャリアビジョンです。だからこそキャリアビジョンは、単なる職業選択にとどまらず、人生そのものを考える上でのヒントにもなり得ます。
キャリアプランとの違い
キャリアビジョンとキャリアプランは似た言葉ですが、この2つには以下のような違いがあります。
キャリアビジョンは、「人生全体を通して、自分が目指したい理想の姿や価値観を伴う働き方」の「ゴール」です。一方でキャリアプランは、「そのゴールに向かうための具体的なステップや計画」を指します。
例えば、「教育に関わる仕事をしたい」というのがキャリアビジョンであり、「学校教員を目指す」「教員免許を取る」「教員採用試験に合格する」「教員になる」といった行動計画がキャリアプランにあたります。


この違いを理解せずにキャリアプランから考え始めてしまうと、「やりたいことが分からないまま、無理に計画を立てようとして苦しくなる」といった状況に陥ってしまう可能性があります。
特に、「今の状態に不満はないけれど、このままでいいのか不安」「今の仕事がしんどく、目の前の状況を何とかしたい」と感じている方こそ、まずはキャリアビジョンを描くことをおすすめします。
キャリアビジョンを描くことで、焦りや目先の条件に振り回されそうな気持ちを一度落ち着かせ、自分の軸に立ち返ることができます。一旦キャリアビジョンを考え、冷静になって落ち着くことで、今まで気づかなかった新たな選択肢が見えてくるかもしれません。その上でキャリアプランを立てることで、より現実的かつ戦略的に将来の選択を考えることができるようになります。
キャリアビジョンが重視される理由
近年、働き方や価値観が多様化する中で、働いている個人の方にとっても、企業にとっても、「キャリアビジョン」の重要性は高まっています。
ここでは、キャリアビジョンがなぜ今注目されているのか、キャリアビジョンの研修を企画し、講師としても登壇している株式会社セルフトランセンデンスの蛭田氏への取材をもとに個人と企業の視点からひも解いていきます。
はたらくことへの価値観が多様化している
SNSの台頭によって多くの情報が飛び交う中、働き方の選択肢は大きく広がり、個人にとって「働くこと」の意味も多様化する時代となっています。
今は、誰もが同じゴールを目指す時代ではありません。終身雇用が当たり前ではなくなり、若い世代を中心に「長く勤めること」よりも「自分にとってやりがいや納得感があるか」を重視する人も増えてきています。こうした時代で、自分自身の価値観や目指したい働き方を明らかにするキャリアビジョンは、行動や選択の軸として欠かせないものになっているといえるでしょう。
自律的に動ける人材を求める企業が増えてきている
終身雇用制度の見直しや、年功序列から成果主義に移行しつつある中、企業は「自らのキャリアを自ら考え、その実現に向けて自ら行動できる人」を重視するようになっています。
時代の流れが速く、企業や事業の成長と衰退が激しい中で、「何を目指して働くのか」が明確な人は、変化に対応しやすく、どのような状況でも自らをコントロールできる人として評価される傾向にあります。
また前述のとおり、若年層を中心に「自分の価値観を大切にしたい」と考える人が増えており、企業側もそうした価値観を尊重し、適応する動きを見せています。
キャリアビジョンを描いておくことで、自分にどのような働き方や学びが必要かを自分で判断しやすくなります。
個人のキャリアビジョンで会社との相性を見極めている企業が増えている
前述のとおり、企業はキャリアビジョンを持ち、目標に向かって自律的に行動できる人材を求める傾向が強まっています。特に、企業の掲げるミッションやバリューと、個人のキャリアビジョンに重なりがある場合、双方が同じ方向を向いて歩んでいけます。
これにより、働く個人にとっては働きやすさや納得感につながり、企業側にとっても働く個人の方の長期的な活躍を期待しやすくなるといった相乗効果が生まれます。
キャリアビジョンを持つことは、企業と個人の双方にとって重要な判断材料となるといえるでしょう。
キャリアビジョンを描くメリット
ここでは、dodaキャリアアドバイザーへの取材をもとに、キャリアビジョンを描くことで得られる具体的なメリットを紹介します。「自分はどうありたいのか」を見つめ直すことで、選択肢が広がったり、一歩を踏み出す原動力が得られたりします。漠然とした不安を抱えている方も、メリットを知ることで考えるきっかけをつかめるはずです。
自分自身のスキルや強みが理解できる
キャリアビジョンを考える過程では、まずこれまでの経験や実績を振り返ることになります。この作業を通して、自分がどんなことが好きなのか、どのような場面で力を発揮しやすいのかといった強みを客観的に見つけることができます。
また、自分の弱みや課題にも自然と気づけるため、強みとのバランスを踏まえて、これからどの方向に進みたいか、どの方向に進むと自分の強みが活かせるのかが明確になります。こうした自己分析が深まることで、自分自身への理解が深まり、日々の仕事にも自信を持って取り組めるようになるでしょう。
目標が明確になり仕事へのモチベーションが上がる
「自分は何のために働いているのか」が明確になると、日々の業務にも意味を見いだしやすくなります。キャリアビジョンは、単なるゴール設定ではなく、「自分にとっての働く意味」を言語化する作業です。
その結果、目の前の小さな成果に一喜一憂するのではなく、長期的な視点で努力を積み重ねる姿勢が生まれます。また、迷いや挫折を感じたときも、キャリアビジョンが自分の「軸」として機能するため、再び立て直しやすくなるでしょう。
キャリアの選択肢の幅が広がる
キャリアビジョンを描くことで、将来的に必要なスキルや経験が明確になり、日々の学びや行動にも前向きな意図が生まれます。また、これまで気づいていなかった自分の可能性に目を向けられるようになることも、大きなメリットです。
例えば、自分の強みを活かせる分野や、自分に合う働き方に気づくことで、選択肢が大きく広がります。ビジョンがないままでは見落としていた新しい道が、見えてくることも少なくありません。
特に転職活動では、キャリアビジョンがあることで、企業との相性を見極めやすくなり、将来の選択にも納得感が生まれます。とはいえ、最初から明確なビジョンを持っている必要はありません。中でも社会人歴が浅い方だと自己理解が深まっていないことで、キャリアビジョンをうまく描けないケースも多いので、次に紹介するステップで一緒に考えていきましょう。
誰でも実践できる!キャリアビジョンの描き方【ステップ別】
キャリアビジョンの研修を企画し、講師としても登壇している株式会社セルフトランセンデンス蛭田氏のお話をもとに、以下の3つのステップに分けて、具体的な進め方を紹介します。全体で2〜3時間ほどを目安に取り組んでみましょう。
ステップ1:過去を振り返り、価値観や強みの原点を探る
キャリアビジョンを描く第一歩は、これまでの人生で自分がどんな経験を積み、どんな価値観を育んできたかを見つめ直すことです。過去の業務経験はもちろん、ライフイベントや印象的だった出来事を時系列で振り返ることで、自分らしさの源泉に気づけます。
例えば、学生時代に打ち込んだ部活動や、ある出来事で挫折した経験など、些細に思えることも振り返りの材料になります。一つひとつの出来事の中で、「どんな考え方が芽生えたのか」「自分にとって何が大切だと感じたか」といった問いを投げかけてみましょう。
また、起きた出来事すべてを洗い出す必要はありません。「いかに自分の記憶に残っているか」を判断軸として書き出し、その中でも「今の自分により強く影響を与えていそうな出来事」に関してはよりていねいに書き出してみましょう。
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人に見せない自分のための作業であることを意識して本音を見つめよう
よくありがちな失敗例として、「うまく書こう」「かっこよくまとめよう」として、かえって本音から離れてしまうことがあります。ここでの注意点は、「誰かに見せる」ことを前提にしないことです。
多少言葉が整っていなくても、自分の感情や考えが素直に出ていれば問題ありません。強みややりがいを、綺麗な言葉で表現する必要はありません。本音で書き出してみましょう。
ステップ2:ステップ1をもとに今の自分が持っている考え・スキル・状況を明らかにする
ステップ1で振り返ったこれまでの自分を踏まえて、「今の自分」がどのような考えやスキルを持っているか、どのような状況に置かれているのかを言語化していきます。以下のような問いかけを行ってみましょう。
自分の考えやスキルを考えるときの問いかけ例
- どのような業務に携わっているときにポジティブな感情の動きがあるか
- 自分が仕事上で心掛けていること、こだわりを持っていることは何か
- 自分にはどんなアピールポイントがありそうか
- 自分は周囲からどう思われていそうか など
置かれている状況を考えるときの問いかけ例
- 自分は今、人生の優先順位(仕事、パートナー、子どもなど)をどう捉えているのか
- 人生で何に重きを置いているのか
- 今の環境にいることで、今後どのようなスキルや経験を得られるのか など
また、自分の置かれている状況を考える場合は、仕事でどういった働き方が現実的に選択肢に入り得るのかを整理してみましょう。例えば、「親の介護があるので地元で働くことが最優先である」「来年結婚するので引っ越しを検討しなくてはならない」など自分を取り巻く環境による制約を思い浮かべることで整理することができます。
ステップ2はあくまでも「現状の自分はどういう人間か」を正しく把握することが目的で、ステップ1で振り返った経験や価値観を整理するプロセスでもあります。自分の現在地を明らかにすることで、次のステップである“未来像の設計”がよりスムーズになります。

自分を労う気持ちで全面肯定してあげることが大切
自分のスキルを棚卸ししていると、「特別な実績がない」「自分に強みなんてあるだろうか」と感じてしまうことがあります。しかし、注意すべきなのは、“当たり前にできていること”ほど、自分では気づきにくいという点です。
うまく言語化できない場合は、他者の視点(家族や友人、キャリアアドバイザーなど)を借りるのもおすすめです。
このポイントはステップ3でも重要なポイントなので覚えておきましょう。
ステップ3:自分はどういう人生を送っていきたいのか?を考える
最後のステップでは、自分の持っている考え・スキル・状況も参考にしながら「これから自分がどんな人生を送りたいか」「どんな人物になっていたいか」を思い描いていきます。まずは時間の制約を抜きにして、「自分はどんな価値観を大切にし、どんな人と、どんな環境で過ごしたいか」をざっくりと考えるところから始めてみましょう。
その後、「5年後に誰とどんな仕事をしていたいか」「10年後、誰とどこでどんな日々を過ごしていたいか」など、時間軸を区切ることでさらにイメージしやすくなります。
また、最終的には「いつ(When)、どこで(Where)、誰と(Who)、何をして(What)、なぜそう思うのか(Why)」という5Wの視点で整理してみると、より具体的な言葉として落とし込めるようになります。
この段階での未来像は、必ずしも具体的である必要はありません。大切なのは、自分の理想や希望に目を向け、人生の方向性を言葉にしてみること。キャリアビジョンは、現時点の仮説で構いません。描いてみることで、未来の選択肢が広がっていきます。

実現できるかどうかは気にせずに考える
未来像を描くステップでは、「これって実現できるんだろうか」といった考えが思考を制限してしまうことがあります。実現可能性を気にしすぎて、ビジョンを小さくまとめてしまわないよう、実現できるかどうかは気にせず考えてみましょう。
キャリアビジョンは、あくまで“理想”を描くフェーズ。具体的な行動計画は、後のキャリアプランで詰めていけばよいのです。また、将来のイメージを思い描くことで、次に進むためのモチベーションにもつながります。
転職面接でキャリアビジョンを聞かれることはある?回答する際のポイントは?
dodaキャリアアドバイザーによると、転職活動でも、キャリアビジョンに関する質問はどの面接フェーズでも企業から聞かれることが多いです。
面接の場では「キャリアビジョンはありますか?」と直接聞かれることもあれば、「入社後どんな仕事がしたいですか?」「どのように成長していきたいですか?」といった形で尋ねられることもあります。
これは、企業が個人の方の価値観やありたい姿と自社の方向性にギャップがないか、自社でかなえられるかを確認するためです。
回答する際のポイントとしては以下の2つがあります。
ポイント
- 内容が壮大である必要はありません。例えば「お客さまに信頼される営業でありたい」など、日々の仕事の中で大切にしたい姿勢でも十分です。
-
「将来的には○○の職種に挑戦したい」といった立ち位置のビジョンと、「どんなキャリアを歩んでいきたいか」というありたい姿の両方を話せると、より企業側の納得感が得られ、評価につながるでしょう。
面接の場では、自分なりの言葉で具体的に語ることで、企業への意欲がより伝わりやすくなるでしょう。
転職面接でキャリアビジョンを尋ねられたら?例文3選
ここでは職種別に、キャリアビジョンの回答の例文を3つご紹介します。
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営業職
<回答例> 営業として着実に実績を積み、お客さまから「あなたに任せたい」と言っていただけるような信頼される存在を目指しています。将来的にはチームリーダーとして、若手の育成にも携わりたいと考えています。
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事務職
<回答例> 社内の調整役として、周囲が安心して業務に集中できるよう支える存在になりたいと考えています。将来的には業務改善の提案やマニュアル作成など、組織全体の効率化にも取り組みたいです。
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エンジニア職
<回答例> エンジニアとして組織から頼られる存在になりたいと考えます。そのためにまずは一人で案件を担当できるよう技術力を高め、その後は新しい技術の導入やプロジェクトの立ち上げにも関わっていきたいと考えています。中長期的には、メンターとして後進の育成にも携わりたいです。
まとめ
キャリアビジョンは、自分の過去・現在・未来をつなぐ重要な指針です。特に転職活動では、企業との相性や将来像を確認する上で、キャリアビジョンを面接で聞かれる場合もあります。本記事では、3つのステップに分けてキャリアビジョンを考えるプロセスと、それぞれの注意点を解説しました。ぜひ実践の上、自分にしか語れない言葉で、キャリアの可能性を広げていきましょう。
もし一人で整理するのが難しいと感じたら、転職エージェントに相談してみるのもおすすめ。キャリアの棚卸しや言語化をサポートしてもらえるので、より自分らしいキャリアビジョンを描きやすくなります。dodaエージェントサービスは、業界に精通したプロのキャリアアドバイザーが多数在籍しているので、これまでのキャリアや経験に沿った的確なアドバイスを受けられます。ぜひお気軽にご相談ください。
取材協力

蛭田 友朗(ひるた・ともろう)氏
株式会社セルフトランセンデンス
多くの企業の組織開発・人材開発や採用・転職支援をメイン事業とする株式会社セルフトランセンデンスでコンサルタントとして活躍。
新入社員や中堅社員向けに女性活躍の推進、働き方改革、次世代経営者の育成等、人事課題研修の企画を行う傍ら、自ら講師として登壇している。また、求職者向けに転職支援事業にも携わっている。
多岐にわたる領域でキャリア相談や、採用担当・求職者双方への支援を行ってきた経験から、多様な視点に基づいた転職支援を得意としている。また、自分自身の転職経験に基づき求職者の悩み・不安に寄り添い、転職後もより活き活きと働くためのキャリアサポートを心掛けている。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
【経歴】 新卒でブライダル業界にてウェディングプランナーとして7年間従事。その後パーソルキャリア株式会社にてキャリアアドバイザーとして入社。その後、組織開発部へ異動し新人研修、育成部門にてキャリアアドバイザー育成をし、2024年に再度キャリアアドバイザーへ復帰。これまで2,000人以上の方にキャリアカウンセリングを実施。
【メッセージ】 転職はまさに「人生の大きな節目」だと考えています。選択を間違えないか、何が正しいのか、など迷うことがあって当然です。ただ、自分の人生において大事なものは何か、自分らしさとは何か、幸せとはなにか、を考える絶好の機会だとも思っています。ぜひ、転職活動を楽しんでいただきたいです。またdodaキャリアアドバイザーとして伴走できるとうれしいです。
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