キャリアアップとは何をすること?
キャリアアップするには、具体的にどのように計画を立て、アクションすればよいのでしょうか? 最初にキャリアアップとは何なのかを整理しましょう。
キャリアアップの一般的な意味と目的
キャリアアップとは、「仕事の能力や専門性を磨いて、社会的に市場価値の高い経験を重ねること」です。つまり、なりたい自分になって自己実現するだけではなく、それによって組織や社会に貢献することがキャリアアップなのです。
キャリアアップの中身は人それぞれ
「キャリアアップ」という言葉から、自分のどんな姿を思い描きますか? 今の仕事でリーダーを任されることでしょうか。マネジャーとして組織をまとめることでしょうか。まったく違う仕事で活躍することや大企業への転職、独立起業を思い描く方もいるでしょう。
キャリアアップの例
- 大企業で規模の大きい、もしくは専門性の高い仕事をする
- 中小企業で幅広い業務を担う
- 起業する
- 役職に就く、管理職になる
- 仕事の専門性や熟練度を高める
- 新たに専門知識を習得する
- やりがいをもてる仕事に転職する
- 年収を上げる
- 仕事の幅を広げる
このように、思い描くものはさまざま。共通しているのは、仕事のレベルを上げたり、範囲を広げたりすることによって、自分のなりたい姿に近づいていく、ということです。
スキルアップとどう違う? よく似た用語との違いは?
キャリアアップと似た言葉に、スキルアップ、キャリアチェンジ、キャリアパス、キャリアプランなどがあります。それぞれ何を意味するのか整理してみましょう。
- スキルアップ
仕事などで必要な知識やスキルを向上させること、資格などを取得すること。 - キャリアチェンジ
これまで経験してきた業界や職種から、 まったく別の経験のない業界や職種へ変わること。 - キャリアパス/キャリアプラン
ある職務や役職に就くまでに必要な経験や道筋とその計画。また、自分が将来目指す仕事に向けて経験を積んでいくための順序とその計画。
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キャリアアップの概念図
下の図はキャリアアップ、スキルアップ、キャリアパスを表したイメージです。法人営業の人が「将来はサービス企画にキャリアアップしたい」と考えた場合、営業チームのマネジメント、営業企画を経験してサービス企画を担当するというキャリアパスが考えられます。「仮説を立てて提案」「メンバーごとの課題に合わせて育成・指導」などがスキルアップです。
キャリアアップをするには|キャリアプランを立てるための4ステップ
管理職になる、専門性を高める、やりがいのある仕事に就くなど、キャリアアップで目指すゴールは人によってさまざまということが分かりました。どんなゴールであっても、そこに近づくためには、どう経験やスキルをつけていくかという「キャリアプラン」が必要です。キャリアプランを立てるための4つのステップを紹介します。
STEP1 これまでやってきたことを振り返る〈過去〉
まず自身の今までの業務を振り返り、「キャリアの棚卸し」をします。これまでの業務内容や実績、得られたスキルなど、小さなことまで書き出してみましょう。経験を可視化して、仕事における自分のこだわりは何かを自己分析します。
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自己分析といっても、どうやればいいの?という方向けの診断ツール。質問に答えていくだけで多角的な解説付きの診断結果が得られるのでおすすめです。
STEP2 自分の強みを洗い出す〈現在〉
キャリアの棚卸しをしたものの中から、「自分の強み」を拾い上げ、「人より得意なこと」もしくは「苦ではないこと」を把握します。過去にやってきた業務を「好き・嫌い」「得意・苦手」で整理してみましょう。例えば「データを分かりやすく整理するのが得意」「ルーティン作業をコツコツ続けるのが苦手」といった具合です。
ただし、好きと得意は異なります。やりたい仕事や目指す方向によっては「好きで得意」だけでなく、「嫌いだけど人よりできる」も強みになります。自分では嫌だと思っている業務の中にも、案外気づいていない得意なことがあり、それがやりたい仕事に活かされることがあるからです。
さらに、「何に力を入れてきたのか」「何を達成目標にしてきたのか」をクリアにすると、キャリアプランが立てやすくなります。これらを踏まえて、転職を考えている人は「今どうして転職したいのか」という理由も洗い出しておきます。
STEP3 将来のありたい姿を思い浮かべる〈未来〉
これまでの経験から、自分の強みなどを把握したら、その延長線上にどのような自分でありたいのかを思い浮かべてみてください。まずこの先3年間における1年ごとのキャリアプランを立ててみるとよいでしょう。1年後にどうなっていたいか、それが実現したら2年後、3年後はどうしたいか。徐々に先のことをイメージしていきます。
もし具体的なイメージが湧かなければ、組織の中でどういう立場で働いていたいのか、自分の人生において仕事をどういう位置づけにしたいのかを考えてみましょう。「先輩の○○さんのように頼られる存在になりたい」といったイメージでも考えやすいでしょう。ひとまず3年後の目標が立てられれば十分です。
ただし、ここで立てたプランをかたくなに守りとおす必要はありません。置かれた環境や状況によって考えが変わることもあるので、そのつど見直せばよいのです。今の時点でどう考えているのかを一度整理・確認しておくとよいでしょう。
やりたい仕事がない!? 適職の5つの探し方と分からない原因 自分が将来どんな仕事をしていたいか、思い浮かばない原因とやりたい仕事の探し方を紹介
STEP4 現在と将来のギャップは何かを考える〈プランニング〉
理想の将来像に近づくためには、今の自分の経験値やスキルと、将来なりたい姿との間にあるギャップが何か把握する必要があります。それを補い、ギャップを埋めるためにどんなスキルをつけ、どんな経験をつむかが、キャリアプランの具体的な道筋になります。
なりたい将来像と今の自分とのギャップを自己判断するのは意外と難しいものです。なぜなら、やったことのない仕事の難易度やスキルの身につけ方は分からないからです。また、たとえ今と同じ業界・職種でキャリアアップを考えていても、企業・組織によって求められるものが違うこともあります。転職する・しないにかかわらず、一度キャリアアドバイザーに相談してみるのもよいでしょう。
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キャリアアップするための3つの方法
自身で立てたキャリアプランを実現させるには、どのように行動すればよいのでしょうか。キャリアアップの計画案には、現在の仕事を続けながら成長する、パラレルキャリアを選択する、または転職するという3つの方法が考えられます。それぞれのメリットとデメリットもあわせて紹介します。
方法1 現職でキャリアアップする
必ずしも転職しなければ、キャリアアップを達成できないわけではありません。現在の会社や仕事でも、キャリアアップは可能です。
- ・思い描くキャリアプランを上司に相談してみる
- ・研修や社内のビジネスコンテストがあれば、積極的に参加する
- ・社内異動でポジションを変える、新しい業務スキルを身につける など
現職でキャリアアップするメリット
- ・これまでの経験や成果をもとに評価してもらえる
- ・長年築いてきた信頼関係があるため、周囲のサポートを得やすい
現職でキャリアアップするデメリット
- ・その会社では一般的であっても、社外では通用しないスキルしか習得できない可能性がある
- ・自分の市場価値を客観的に見つめることが難しい
方法2 パラレルキャリアでキャリアアップする
今の仕事を継続しながら、自社とは別の場所で新たな仕事にチャレンジする方法もあります。パラレルキャリアと呼ばれる新しい働き方です。副業可、ボランティア休暇などの制度を活用できれば、キャリアアップに有利でしょう。
- ・パラレルキャリアとは
キャリアの開拓を主な目的とし、本業とは別の活動を有償・無償で行うこと(ボランティア、プロボノも含む) - ・ボランティアとは
公共性の高い活動に自発的に参加すること - ・プロボノとは
職業上の専門性や知識・スキルを無償提供する社会貢献活動
パラレルキャリアを選択するメリット
- ・現職を手放すことなく、新しい経験や人脈が得られる
- ・異なるジャンルのキャリアを、同時に複数持つことができる
- ・本業のモチベーション向上につながる
パラレルキャリアを選択するデメリット
- ・基本的に自発的な活動であるため、目的が明確でないと中途半端に終わってしまう
- ・収入が発生した場合は、自分で確定申告する必要がある
- ・本業と掛け持ちするため、タイムマネジメントが大変
パラレルキャリアとは? 新しい働き方を選び取るメリットやデメリット
本業とは別に複数の仕事を持ち、スキルや経験を磨きながら自分らしいキャリアを築く方法を紹介
方法3 転職でキャリアアップする
新たな経験やスキルを積むために、転職するという方法もあります。
自分の理想とする将来像に近づくためには、現在の仕事や会社では得られないスキルもあるかもしれません。20代のうちは、転職で新しい経験を積むことによって、30代以降は、これまでの経験を新しい組織に還元することで、キャリアアップにつながるでしょう。自分に最適な進路を選択することが大切です。
転職でキャリアアップするメリット
- ・即戦力として迎えられた場合、収入や待遇アップが期待できる
- ・求める分野、ポジションへの転職に成功すれば、最速でキャリアプランが実現する
- ・転職先の企業が持っていない知識や技術を提供できれば、入社後すぐに貢献し、評価される
転職でキャリアアップするデメリット
- ・転職先の労働条件を重視しない場合、待遇・収入ダウンの可能性がある
- ・勤続年数がリセットされるので、ローン審査などが通りにくくなる
- ・自分ひとりで転職活動を進める場合、情報の収集や条件交渉が困難
転職する・しないにかかわらず、キャリアアップしたいが、どうしたらよいのか分からないときは、キャリアアドバイザーに相談することができます。キャリアプランの作成やキャリアアップの方法を一緒に考え、サポートしてくれるでしょう。
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キャリアアップしつづけるための4つのポイント
ここまで、キャリアプランの立て方やキャリアアップする方法を紹介しました。具体的なアクションを起こしたあとに、キャリアアップをこの先も続けていくために心にとめてほしいポイントをお伝えします。
定期的に目標を見直す
キャリアを順調に歩んでいくためには、キャリアプランを定期的に見直すことが必要です。その時々の自身の状況、置かれている環境、社会情勢の変化に応じて、一度定めた目標も変化するものだと柔軟に考えましょう。
自分の軸を明確にしておく
今の会社で描けるキャリアパスが目指す将来像とほど遠い場合は、転職も考えられます。その際、転職先で何を実現したいのかを明確にできれば、自身のキャリアプランを実現できる可能性は高いと言えます。何のために転職するかが言語化できていれば、企業を選ぶ条件や、応募書類や面接で語ることに一貫性が生まれます。
自発的なコミュニケーションを取る
キャリアアップを目指して、新たな仕事や副業、ボランティアなどにチャレンジすることを決める方もいるでしょう。新たなステージで活躍するためには、その場や組織になじむことも必要です。柔軟な考え方をもち、自ら積極的にコミュニケーションを取ることは、そこでのキャリアアップを順調にすることにつながります。
できることを増やす
キャリアアップのゴールにいきなりジャンプする近道はありません。少しずつでいいので、選択した道でできることを増やし、短期的な目標を達成していくことが、目指すゴールへの着実なアプローチ方法です。
キャリアアップするために必要な知識やスキルを身につける道筋が、キャリアプランとなります。キャリアの選択肢もアプローチの方法も多岐にわたります。転職する・しないにかかわらず、たくさんの人のキャリアのサポートをしてきたキャリアアドバイザーに相談してみることは、キャリアアップを考える一歩になるでしょう。
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キャリアアップは「なりたい自分」をかなえる手段のひとつ
働き方が多様化する中、キャリアの選択肢も増えています。キャリアの積み方を自身で考えることで、理想の働き方や将来の進む道を主体的に選択できるようになります。
自分が「こうなりたい」という目標があれば、必要な知識や技術の習得にもやる気が湧いてくるもの。また自分が「こうなりたい」と思って選んだ仕事であれば、プラス思考で取り組むことができます。そうでないと「やらされている」という思考になってしまい、同じ仕事をしていてもやりがいに差が出てきます。なりたい自分を意識することは、キャリアを充実させる第一歩です。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
江上 綾(えがみ・あや)
国家資格キャリアコンサルタント
【経歴】
メーカーで購買、営業を経験した後、株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に入社。キャリアアドバイザーとして管理部門領域を担当し、メンバーからリーダー、管理職クラスの方々まで、幅広いご支援実績があります。現在は、ハイキャリア層の方の転職支援をメインに行っております。
【メッセージ】
世の中の変化が速く、一企業で一生涯働く方は少なくなってきており、個人が自身の価値観や強みを認識しキャリアを選択していくことが求められる時代だと感じます。前向きな選択となるようお手伝いさせていただきます。
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