パラレルキャリアとは?副業との違いを解説
パラレルキャリアとは、経営学者として有名なピーター・ドラッカーが提唱した働き方です。非営利目的のボランティアや趣味の活動などを含め、複数の職責や立場を持ち仕事をすることで第二、第三のキャリアを築くことを指します。
似たような意味の言葉として使用されるパラレルキャリアと副業ですが、実はそれぞれに厳密な定義はありません。それぞれ一般的に使用される際の意味を解説します。
パラレルキャリア |
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副業 |
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パラレルキャリアは基本的に、キャリアの開拓を目的として複数の仕事を行うことを指し、「仕事」にはボランティア活動なども含まれます。「複業」と表すこともあるように、個々の仕事をメイン・サブに分けず、どちらも同じ比重で取り組むケースもあります。
一方の副業は、本業に対するサイドビジネスを指します。パラレルキャリアとは時間配分の仕方が異なると考えられるでしょう。
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パラレルキャリアはなぜ注目されている?
人生100年時代を迎え、個人の価値観や人生観が変化しています。職業観も「1つの会社で長く働く」だけが正解ではなく、状況に応じて柔軟なキャリアを築きたいと考える人も増え、国も能動的なキャリア形成を推奨するようになりました。これまでの終身雇用という考え方は主流ではなくなり、転職も一般的になった今、複数の職場でやりたいことを実現するパラレルキャリアが注目されるようになったのです。
今後は本業・副業の境目がさらにシームレスになっていき、状況によっては本業と副業が入れ替わるようなケースも発生すると考えられます。それに伴い会社に個人が属するのではなく、個人に対して仕事がついてくる働き方に変化していくと考えられるでしょう。
コロナ禍を通してキャリアや就業意識への変化も
パーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
パーソル総合研究所が2020年11月に約15,000人を対象に行ったインターネット調査によると、コロナの影響によって「副業・兼業を行いたい」という思いが強まった人は、全体の28.3%。テレワークの頻度が高くなるほど、副業・兼業への意向も高くなる傾向もみられています。通勤時間がなくなって余剰時間が生まれたこと、不安定な社会情勢を受けて収入を1カ所に依存するリスクが顕在化したことで、副業やパラレルキャリアを意識する人が増えたと考えられるでしょう。
パラレルキャリアの3つのタイプ
パラレルキャリアは次の3つのタイプに分けることができます。
分類 | どんな人に向いているか | 概要 |
---|---|---|
ベーススキルアップ型 | 今のスキルを活用して、さらに業種・職種の幅を広げたい人 | 本業と近い業界・職種で、自分ができることをさらに拡大する |
新たなキャリア開発型 | 今のスキルを活用しつつ、新しいことにもチャレンジしたい人 | 現在の仕事だとできないことに、副業としてチャレンジする |
自己実現追求型 | 自分のやりたいことが明確な人 | 本業とはまったく別の働き方をする。ボランティアや趣味などの活動も含む |
実際は、3タイプのいずれかにはっきり分けられるということではなく、それぞれが重なり合う複合型が多いです。また、政府が示す「副業」は多様なキャリア形成を図ることを指しており、企業もその目的で解禁するケースが増えています。
また、副業を解禁する企業は増加傾向にあり、世間的にパラレルキャリアへの興味も高まっています。
しかし実際、自分のスキルが何なのか、どう活かせるのかを棚卸しできている人は少ないです。これからパラレルキャリアへの挑戦を考えている人は、自分はどの方向性で本業以外のキャリアを作っていきたいのか考える必要があるでしょう。
■働き方の例
- 企業に所属するWebエンジニアが、プライベートで作ったシステムを個人向けに販売
- アパレルの販売員が、パーソナルスタイリストとして個人のコーディネートをサポート
- 事務職の人がスクールに通ってWebデザインを学び、個人でサイト制作を受託
- 会社員をやりながら、週末はボランティアでフリースクールのNPO活動へ参加
- 将来の起業・独立を目指して、他企業の新規企業立ち上げプロジェクトを手伝う
パラレルキャリアの5つのメリット
1つの仕事だけでキャリアを積むのではなく、パラレルキャリアを選ぶことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。パラレルキャリアをおすすめする5つのメリットをご紹介します。
自分のやりたいことを見つけやすい
自分に合う仕事ややりたい仕事が分からない場合は、本業と同時にさまざまな業務を体験することで、いきなり転職をするよりも低リスクで希望の仕事を見つけられるでしょう。
スキルや経験を早く積める
さまざまな仕事を経験することで、1つの会社、1つの部署で働くよりも、経験の幅が広がります。本業では役割分担上、担当できない領域や、関わるまでに時間のかかる仕事にも挑戦できる可能性があるでしょう。自身のスキルをどう他社で活かせるのか試せるので、柔軟性や吸収力が身につきます。
視野を広げることで、多様性が身につく
社外の人との関わりを持ち、一歩外に出ることで、ある会社や組織の「当たり前」が「当たり前」ではないことに気がつくことができます。社外の人からの観点やフィードバックを通し、さまざまな価値観に触れることで、自分の視野を広げられるでしょう。
プロ視点が身につき、自分への自信につながる
個人での仕事はすべて自分の評価につながるため、プロとして結果を出さなければならないという当事者意識を強く持てるでしょう。会社の肩書に頼らずに結果を出すことができれば、自分自身への自信や満足感につながります。
今後のキャリアを考えるきっかけになる
本業があれば経済面の心配をしなくてよい分、自己実現をするための一歩が踏み出しやすいため、将来的なキャリアチェンジの足掛かりになります。また、収入源を分けることによるリスクヘッジもできるでしょう。
パラレルキャリアの注意点
魅力的な点の多いパラレルキャリアですが、以下のような注意点もあります。
勤め先が副業禁止ではないか確認する必要がある
企業によっては副業を禁止していることもあります。始める前に必ず就業規則を確認しましょう。副業をOKとしている企業でも、セキュリティや情報漏洩の観点で同業他社の場合は禁止としているケースもあるため、判断に迷う際は上司や人事へ相談しましょう。
自分で時間や収入などの管理を行う必要がある
パラレルキャリアにはタイムマネジメントや収支管理のスキルが欠かせません。場合によってはキャパオーバーになってしまうこともあるので、ペースをつかむまでは大変でしょう。まずは短時間から始めてみるなど、自分に合った方法を見つけることが大切です。
また、収入が発生する場合は確定申告も自分で行う必要があります。
自力でスキルアップの努力をする必要がある
会社の肩書に頼れない分、確かなスキルを提示できなければ仕事相手からの信頼が得られないことも多いです。即戦力としてのスキルをシビアに見られるため、現状に甘んじずにスキルを磨いていく、継続的な努力も必要でしょう。
目的を明確にしないと中途半端で終わってしまう
やりたいことベースで新たなキャリアに挑戦するのはよいことですが、自分なりの目的を立てて取り組まないと、結果につながらず中途半端に終わってしまう可能性があります。キャリアを広げた先でどうなりたいのか、目的やゴールを明確にしてから始めることが大切です。
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パラレルキャリアによる影響
実際にパラレルキャリアを展開した人たちにはどのような影響があったのでしょうか。副業マッチングサービス「lotsful」が行った2つのアンケートをもとに、パラレルキャリアの影響を見ていきましょう。
所属企業へのエンゲージメントが高まった
lotsful「副業・兼業が本業に与える影響調査」
lotsfulが2022年6月に行ったインターネット調査によると、副業を経験したことで自身が所属する企業への愛着心が増した人が半数以上いたことが分かりました。自分のスキルに自信を持てるようになったこと、キャリアに関する棚卸しがしっかりできたことで、視野が広がり企業や他社の多様な価値観を受け入れられるようになった人が多いようです。
また、副業で得た反省や学びを所属企業での業務に活かすなど、パラレルキャリアはスキルアップにも大きく寄与しています。
副業がきっかけで転職した経験
lotsful「副業と転職の因果関係調査」
一方で、同じくlotsfulが2022年7月に行ったインターネット調査(副業経験のある20代~40代の会社員が対象)によると、副業がきっかけで転職した人も全体の半数以上いました。さらに、副業がきっかけで転職をした人のうち、8割が副業先へ転職しています。これは全体の4割にあたります。転職の理由としては、自分の力を試したい気持ちが高まった、チャレンジすることへの恐怖心が弱まったという回答が多く、副業をきっかけにより納得のできるキャリア形成のための一歩を踏み出した人が多いといえるでしょう。
パラレルキャリアを始めるための第一歩
転職であっても、パラレルキャリアであっても、軸になるのは「自分のキャリアプランをどうしていきたいか」です。それを踏まえてパラレルキャリアを始めるには、まず何からスタートすればよいのか解説します。
自分の強みや、伸ばしたいスキルを知る
まずは、現状を知ることが大切です。キャリアの棚卸しをして、自分の強みやこれから伸ばしたいスキルは何かを考えてみましょう。自分自身では気づいていなくても、当たり前にこなしていることが実は強みだということもあります。特にほかの会社や組織から見ると、魅力的なスキルと評価されることもあるため、自分の特性を細かく分析することが大切です。
キャリアや働き方の選択肢が増えた今、よりよい人生を送るためにも、将来的なキャリア像を見据えて、「今後どのスキルを伸ばすべきか」を知ることはとても重要です。こうしたキャリアの棚卸しは、一人でやると難しいことも多いので、エージェントサービスを利用してみるのも一つの方法です。
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自分なりの目標を立てて少しずつ始める
現在の強みや伸ばしていきたいスキルが何か分かったら、その先のゴールではどうなっていたいのか、自分なりの目標を立ててみましょう。そして、そのゴールから逆算して、今何をすべきかを設定します。
一段ずつ階段を上るようなイメージでキャリアを積み重ねていけば、ゴールに近づくことができます。一気に高みを目指すのではなく、少しずつ守備範囲を広げて成功体験を積んでいけばよいのです。
例えば、副業や業務委託案件を扱うプラットフォームの求人に応募してみたり、一般公募のセミナーや勉強会などに参加して学びを深めるなど、新たなキャリアにつなげるきっかけはさまざまです。学びたいと思っていることや興味があることに対して、日ごろから積極的に情報収集をするとよいでしょう。
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パラレルキャリアの選択ができる環境を目指す
もし自分が目指すパラレルキャリアが、今の会社では実現できないという場合には、パラレルキャリアの選択ができる環境を目指すのも一つの方法です。今はパラレルキャリアという働き方を積極的に推奨する企業も増えています。
転職サイトでもパラレルキャリアや副業に理解がある会社を検索できますし、希望する働き方やキャリアプランを転職エージェントに伝えれば、それに合った転職先などを提案してくれます。自分の経験だけでは考えられなかった広い視野で、新しい環境を見つけられるかもしれません。その際にも自分の強みや今後伸ばしたいスキル、具体的な目標などが定まっていると、転職エージェントに相談しやすくなります。
パラレルキャリアで納得のいくキャリアを築きましょう
新しいことに挑戦したいと思った際は、すぐに転職を考えるのではなく、パラレルキャリアのように小さく始めて、少しずつ実績を積み上げていく方法もあります。パラレルキャリアは経済面でのリスクが少ない分、気軽に始めやすいですが、目的を設定せずやみくもに進めてしまうと、業務量が増え仕事に忙殺されてしまう恐れも。
事前準備としてキャリアの棚卸しをして、自身のスキルや強み、仕事のやりがいを知ることからスタートしましょう。将来的なキャリアパスをしっかり描けるようになると、どのようなスキルを身につけるべきかが明確になるので、仕事へのモチベーションアップにもつながります。自分のキャリアを言語化するには、第三者に話すのがおすすめ。転職を考えていなくてもキャリアに関することならdodaのキャリアアドバイザーにぜひ一度ご相談ください。
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記事監修
田中 みどり(たなか・みどり)
パーソルイノベーション株式会社 lotsful 代表
新卒で、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に入社。 正社員の転職支援領域における法人営業に従事。IT・インターネット業界を主に担当し、ベンチャー企業を中心に採用支援に携わる。大手企業とベンチャー企業の事業開発支援を行う事業立ち上げを経て、副業人材マッチングサービス「lotsful(ロッツフル)」を立ち上げ、代表として運営。従来の「会社に勤めて働く」におさまらない、ワーキングスタイルの多様化に取り組んでいる。
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