ニーズが高まる「マネジメントスキル」
マネジメントポジションの求人割合、10年で2倍に増加。不況時も求人ニーズなくならず
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2000年から2011年の間に、doda(※注)へ寄せられた約25万件の中途採用求人について、マネジメントポジションの求人割合を調査しました。その結果、2000年の5.45%から右肩上がりに上昇し、2009年には11.09%と2倍以上に増加、それ以降も10%以上で推移していることがわかりました。特に、リーマンショックの影響で求人数全体が前年より3割以上減少した2009年においても、要マネジメントスキルの求人は1割程度の減少に止まったため、割合が増えたようです。(図1参照)
(※注)2006年までのデータは、「doda」サービスに名称変更前の「パーソルキャリアの人材紹介サービス」に寄せられた求人を参照
マネージャーと一般社員の平均年収、90万円差
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dodaに登録している25〜39歳のビジネスパーソン約5万人のデータから、マネージャー職と一般社員の平均年収を調査しました。その結果、役職のない一般社員の平均年収が442万円なのに対して、マネージャー職に就いている人は532万円と、90万円の差があることがわかりました。また、年齢別に見ると、25〜29歳では37万円、30〜34歳では72万円、35〜39歳では101万円と、年齢が上がるにつれて年収の差は広がることがわかりました。(図2参照)
こうした結果から、不況に強いキャリア形成や年収アップを目指すためには、マネジメントスキルを身につけることが一つの手段であると考えられます。
上司のマネジメント力、部下からの評価は?
部下から見た上司「話はよく聞いてくれるが、目標やタスクの管理が甘い」
25〜39歳のビジネスパーソン800人を対象に、直属の上司のマネジメントスキルを10項目に分け、それぞれ10点満点で評価してもらいました。
各項目の平均点を見てみると、最も点数が高い項目は「傾聴スキル」の5.37点で、「部下の話を前向きに聞き、すぐ行動に移してくれる(26歳/男性)」といったコメントが寄せられています。次に高いのが「組織外調整」の5.07点で、「他部署との折衝が上手く、部下として頼もしい(38歳/男性)」などの声が見られました。
一方、最も点数が低いのは「目標達成」の4.40点で、「問題解決への道筋を明示してほしい(32歳/男性)」といったコメントが見られます。次に低いのが「タスク管理」の4.44点で、「業務配分に偏りがあり、全体を把握した上で分担してほしい(27歳/女性)」といった声が多く寄せられました。
この結果から、上司のマネジメントスキルについて部下は、「話はよく聞いてくれるものの、目標やタスクの管理に課題がある」と感じている人が多いことがわかりました。
マネジメントスキルの要素 | 平均点 (10点満点) |
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目標設定 | 組織の目標を明確にし、組織内に浸透させられているか | 4.61 |
目標達成 | 目標達成に向けた、道筋や手段の提示ができているか | 4.40 |
人材育成 | 部下の育成・能力向上のための機会を設けているか | 4.46 |
人材評価 | 正当で明確な評価を行っているか | 4.87 |
タスク管理 | 組織のタスクを、適切な分担・スケジューリングで管理できているか | 4.44 |
タスク創造 | 新たな取り組みに積極的に取り組んでいるか | 5.03 |
組織内調整 | 組織内の風土・モチベーション向上に取り組んでいるか | 4.45 |
組織外調整 | 他組織と円滑な折衝やコミュニケーションが取れているか | 5.07 |
傾聴スキル | 部下の報告、連絡、相談にしっかりと耳を傾けられているか | 5.37 |
伝達スキル | 組織内に必要な情報の共有、伝達が適切に行われているか | 4.86 |
合計(100点満点) | 47.6 |
■平均点が最も高い■平均点が2番目に高い
■平均点が2番目に低い■平均点が最も低い
職場ごとに異なるマネジメントスキル
次に、業種・職種・企業規模別に、マネジメントスキルの10項目を平均点と比較しました。
※平均と比較して+5ポイント以上の場合は◎、+0.1〜+4.9ptの場合は○、−0.1〜−4.9ptの場合は△、−5pt以下の場合は×、と表記。
【業種別】評価が高い「金融、IT」 評価が低い「医療福祉、小売外食、サービス」
上司に対する評価が最も高い金融業界は、ほとんどの項目で平均点を大きく上回っています。金融業界は人事制度を整備している企業が比較的多く、マネジメントポジションの人材を育てる環境や、マネジメントを行いやすい体制が整っていると考えられます。ただし、「タスク創造」についてはやや苦手なようです。次いで評価が高いIT業界は、全ての項目が平均点以上で、特に「タスク管理」、「組織内調整」が高評価です。プロジェクト単位で業務を進めるIT業界は、プロジェクトマネージャー(PM)の役割が明確なこと、またPMを育成する教育制度が充実していることが、背景にあると考えられます。
一方、医療福祉、小売外食、サービスの3業種は、全ての項目において平均点以下となっています。この3業種は、個人顧客との接点が多く、職場が拠点(店舗・事業所など)ごとに分散しているという共通点があります。アンケートのコメントを見ると、「部下によって評価や接し方が異なる(28歳/女性)」「自分を基準に全てを判断する(31歳/男性)」といった声が多く見られました。“現場主義”の考え方が強い傾向にあり、人事制度が整備されていなかったり、各拠点のマネージャー(店長など)に管理が一任されているケースも多く、部下の不安や不満に繋がっているのかもしれません。
こうした業界格差は、その業界のマネージャーの能力が高い・低いという訳では決してなく、マネジメントスキルを身につけられる環境や、マネジメントを行いやすい制度の有無が関係しているのでしょう。企業は、マネージャーにマネジメントスキルの高さを求めるだけでなく、組織としてマネジメントレベルを高める体制を整えることが必要なのではないでしょうか。
業種別 | 金融 | IT | メーカー | メディア | 建設 不動産 |
商社 流通 |
サービス | 小売 飲食 |
医療 福祉 |
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目標設定 | ◎ | ○ | ○ | × | △ | ○ | × | × | × |
目標達成 | ◎ | ○ | △ | × | △ | △ | △ | × | × |
人材育成 | ◎ | ○ | ◎ | × | △ | × | △ | × | × |
人材評価 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ○ | ○ | △ | × | × |
タスク管理 | ◎ | ◎ | △ | × | △ | ◎ | △ | × | × |
タスク創造 | △ | ○ | ○ | ○ | ◎ | × | △ | × | × |
組織内調整 | ○ | ◎ | ○ | ◎ | △ | × | △ | △ | × |
組織外調整 | ◎ | ○ | ○ | ◎ | △ | △ | × | × | × |
傾聴スキル | ◎ | ○ | ○ | ◎ | △ | × | △ | × | × |
伝達スキル | ◎ | ○ | △ | △ | △ | △ | △ | × | × |
合計点 | 52.4 | 49.2 | 48.4 | 47.1 | 47.1 | 45.5 | 45.4 | 43.0 | 41.9 |
◎ 平均比+5pt以上 ○ 平均比+0.1〜+4.9pt
△ 平均比-0.1〜−4.9pt × 平均比-5pt以下
【職種別】評価が高い「企画事務系、ITエンジニア」 評価が低い「クリエイティブ系、販売サービス」
上司に対する評価が最も高い企画事務職は、ジョブローテーションを経て管理部門へ配属されるケースが多く、マネージャーとしての経験が豊富なことが関係していると考えられます。また、会社を管理(= マネジメント)する立場にあるからこそ、人材のマネジメントにも長けているのかもしれません。ITエンジニア職は、前述のIT業界と同様と考えられます。
一方、最も評価が低いクリエイティブ系の職種は、個々で仕事を進めるケースが多いため、マネジメントが行われていると実感する人が少ないのかもしれません。「もう少し現場をみてほしい(32歳/男性)」といったコメントが、そうした状況を明示しているように思われます。販売サービス職は、前述の医療福祉、小売外食、サービスの各業界と同様の傾向でしょう。
職種別 | 企画事務 | IT エンジニア |
アシス タント |
営業 | モノづくり エンジニア |
販売 サービス |
クリエイ ティブ系 |
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目標設定 | ○ | ◎ | ○ | ○ | △ | × | × |
目標達成 | ◎ | ◎ | ○ | △ | ○ | △ | × |
人材育成 | ○ | ◎ | ◎ | × | ○ | × | × |
人材評価 | ◎ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × |
タスク管理 | ◎ | ◎ | ○ | △ | × | × | × |
タスク創造 | ◎ | ○ | × | ○ | △ | × | △ |
組織内調整 | ◎ | ○ | × | ◎ | △ | △ | × |
組織外調整 | ◎ | ◎ | ○ | △ | ○ | × | × |
傾聴スキル | ◎ | ◎ | ○ | × | △ | × | △ |
伝達スキル | ◎ | ◎ | ○ | △ | △ | △ | × |
合計点 | 51.0 | 50.9 | 47.7 | 47.1 | 47.1 | 44.7 | 40.5 |
◎ 平均比+5pt以上 ○ 平均比+0.1〜+4.9pt
△ 平均比-0.1〜−4.9pt × 平均比-5pt以下
【企業規模別】100〜500人規模の組織はマネジメントが難しい!?
従業員数1000人以上の企業は上司の評価が高く、従業員50人未満の企業は上司の評価が低いという結果になりました。これは、人事制度の構築レベルや浸透度、マネージャーの育成機会などが影響しているものと考えられます。ただし、企業規模が大きいほど上司の評価が高く、企業規模が小さいほど上司の評価が低いとも一概に言えないようです。
従業員50人〜100人未満の企業は、従業員100人〜1000人の企業よりも、上司の評価が高いことがわかりました。従業員数が50人を超えると、徐々に企業の制度や体制も整えられ、マネジメントが機能してくるのでしょう。一方、100人以上の規模になると、それまで二桁規模の組織で機能していた制度や体制が通用しなくなり、マネジメントも行いにくくなると考えられます。
こうした結果から、組織のマネジメント機能を十分発揮させるためには、企業規模に合わせて、人事制度や体制を整えておくことが重要なファクターであると言えそうです。
企業規模別 | 5,000人 以上 |
1,000〜 5,000人 |
500〜 1,000人 |
100〜 500人 |
50〜 100人 |
10〜 50人 |
10人 未満 |
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目標設定 | ◎ | ◎ | ○ | × | ○ | × | × |
目標達成 | ◎ | ◎ | ○ | △ | ○ | × | × |
人材育成 | ◎ | ○ | ◎ | △ | ◎ | × | × |
人材評価 | ◎ | ◎ | × | ○ | ◎ | × | × |
タスク管理 | ◎ | ◎ | △ | △ | ○ | × | × |
タスク創造 | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | △ | ○ |
組織内調整 | ◎ | ◎ | △ | △ | ○ | × | × |
組織外調整 | ◎ | ○ | △ | △ | ○ | × | × |
傾聴スキル | ◎ | ◎ | △ | △ | ○ | × | × |
伝達スキル | ◎ | ◎ | ○ | △ | ○ | × | × |
合計点 | 51.9 | 50.6 | 47.4 | 46.3 | 49.2 | 41.7 | 43.1 |
◎ 平均比+5pt以上 ○ 平均比+0.1〜+4.9pt
△ 平均比-0.1〜−4.9pt × 平均比-5pt以下
調査概要
昨今、「マネジメント」がさまざまな場面で注目されていますが、実際にマネジメントスキルは企業からどれだけ重視され、また、世の中のマネージャーのマネジメントスキルはどのくらいのレベルなのでしょうか?
【対象者】25歳〜39歳のホワイトカラー系職種の男女
【雇用形態】正社員
【対象地域】関東、関西、東海
【調査手法】ネットリサーチ会社を利用したインターネット調査
【実施期間】2011年3月1日
【有効回答数】800件