転職ストーリー
一度は手放した外交官の夢を現実に。
ロサンゼルスから日米の未来に種をまく
世界各地に存在する日本の在外公館は、外務省の海外拠点として、主に他国との交流や日本国民の保護を担います。在外公館で働く省員のバックグラウンドはさまざま。民間企業から転職し、世界を舞台に日本の国益のために活躍する方も数多くいます。今回お話を伺った石井彩さんも、民間企業から転職した一人。長年の夢だったという外交官の仕事へとキャリアチェンジした原動力や、日本と世界をつなぐ仕事のやりがいについて語ってもらいました。
石井 彩さん
在ロサンゼルス総領事館 総務発信班 領事 日系人担当
メーカーの通商部門、IT戦略部門でキャリアを積んだ後、2023年4月に外務省へ入省。
同年より在ロサンゼルス総領事館に駐在。
「日本の力になりたい」。その思いを一人でも多くの日系人に広げていくために
石井さんが所属する在ロサンゼルス総領事館の役割について詳しく教えてください。
在ロサンゼルス総領事館は、南カリフォルニア・アリゾナを管轄とし、当地に居住・滞在する日本人が安心して生活できるよう、さまざまな役割を担っています。主に邦人保護、ビザやパスポートに関する対応が大きな柱です。その他にも日本関係の情報発信、現地の政治関係者との交流、日本企業の支援を含む経済関係のフォローなど多種多様な仕事があります。
石井さんが担当している業務について教えてください。
私の仕事のうち、約4割が領事館全体の運営に関わる業務、約6割が現地の日系人との関係構築に関する業務です。館全体で行う行事、例えば天皇誕生日の祝賀レセプションなどの実施に向けた企画立案・調整業務や、時期ごとの挨拶状送付の取りまとめなどを担当しているほか、日系人との関係構築業務として、交流イベントの開催やSNSなど各種媒体での発信をはじめ、当地在住の日系人の方々にアプローチするためのさまざまな活動を行っています。具体的な活動の例として、当地在住の日系人の方々を公式に日本へ招待する「招へいプログラム」があります。日系人の中には観光で日本に行ったことがある方もいますが、招へいプログラムでは、外務省の省員や政府関係者と面会する場を設け、日本政府の取り組みに理解を深めていただくとともに、日本に対する親近感を高めて、「日本のために力になりたい」という思いを持っていただくことを目指しています。
日米のより良い関係づくりのためにも、非常に重要な仕事ですね。
はい、私たちが管轄する南カリフォルニアには、非常に多くの日系人が暮らしています。日系人の方々と良好な関係を築くことは、彼らに日米の架け橋として活躍していただくためにもとても重要です。日系人と当地に暮らす日本人との交流の機会を増やし、お互いに協力できる関係づくりや、さまざまな分野で活躍する日系人の方に、日本への関心や親しみを持っていただくことで、米国における日本のプレゼンスを向上させていくことが私たちの重要な役割です。
一度は諦めた夢を後悔で終わらせないために、外務省への再挑戦を決意
海外への駐在を伴う仕事を選ばれたのは、人生において大きな決断だったと思います。
外務省での仕事に興味を抱いた原体験は何だったのでしょうか?
中学生の頃に初めて海外へ行き、英語や海外に関心を持ったことです。やがて外交官への憧れを持つようになり、大学卒業後はイギリスの大学院に留学して学びを深めました。私が就職した当時はワークライフバランスという考え方もまだ世の中に浸透しておらず、家庭を持つことも想像すると、世界を飛び回る外交官としての生活を送ることは難しいだろうと思い、就職を考えるときに、外交官の夢からは一度離れてしまいました。そこで日本のメーカーに就職して、大学院で学んだフェアトレードやダンピングなどの専門知識を活かして通商部門での業務に従事しました。その後、IT戦略部門に異動し、社内の基幹システムの刷新におけるプロジェクトマネジメントを担いました。就職してからは仕事を覚えることで精一杯の時期が続き、結婚して子どもが生まれて育児で忙しくなると、外交官への思いを意識することはなくなってしまいました。
日本で長くキャリアを積まれた後、外務省へ転職することになりますが、そのきっかけについて教えてください。
あるとき、お世話になった方が、病で急逝されたことが、人生を見つめ直す大きな転機になりました。知らせを聞き、とてもショックを受けるとともに、「人生はいつ何があるかわからない」とも強く感じたんです。外務省が民間からの中途採用を募集しているという広告を偶然目にしたのは、それからしばらくしてのことです。そこで大きく気持ちが動きました。
「もし自分の人生が明日終わってしまうとしたら、何を後悔するだろう。それは外交官の仕事に挑戦しなかったことかもしれない」。その思いが一気に湧き立ち、外務省の中途採用に応募することを決めました。
そして採用試験に見事合格され、かつての夢を実現したんですね。
合格がわかったときには本当に嬉しかったですね。一方で家族がいるなか海外で仕事ができるのだろうかという不安も同時にありました。家族とはしっかり話し合い、二人いる子どもたちの将来についても考え抜いた結果、思い切って子どもたちと一緒にロサンゼルスに赴任する決断をしました。海外で仕事と子育てを両立するのは大変だと感じることもありますが、家族で支え合いながら夢だった仕事に打ち込めていることに感謝しています。
未来の日米の架け橋のために、若い世代への種をまく大きなやりがい
念願だった外交官になり、どんなやりがいを感じていますか?
私たちの活動の結果、日系人の方々が日本に興味を持ってくれて、「日米関係をより良くしたい」と思ってもらえたときには、大きなやりがいを感じます。特に若い世代の日系人が「将来、仕事を通じて日米関係に貢献したい」と話してくれたり、交流プログラムで日本から訪米した学生が「またアメリカに来たい」「目標ができた」と言ってくれたりすると、とても嬉しく思います。私たちが接する若者たちが、5年後、10年後、20年後に日米の架け橋として活躍しているかもしれない。そんな未来のために「種をまく」仕事だと実感しています。
非常に意義ある仕事ですね。民間企業での仕事との違いはどんなところでしょうか?
外務省に入って変わったのは、「この業務は日本や、国民のためにどう役立つのか」を意識するようになったこと。そして自分の言葉が一個人の意見ではなく「日本政府の人間の言葉」という責任を背負う自覚を持つようになったことです。すぐに明確な利益を出せる仕事ではないからこそ、国益のためという目的を見失わないこと。そして日本の代表として責任を持ったふるまいをすることの大切さは、外務省で働くうえで強く意識していますね。
石井さんの今後の目標について教えてください。
将来はロサンゼルス以外の地域にも赴任することになりますが、これからも赴任先の人々と対話しながら、友好な関係を築く業務に携わりたいと思っています。日本人と海外の方の交流を促進し、若い世代や子どもたちが平和に暮らせる世界をつくることに貢献したいと思います。
また、中途採用で入省する方もさらに増えると思いますので、同じ立場の後輩たちの相談に乗ってあげられるロールモデルの一人になりたいとも思います。私の経験から言えるのは、「なんとかなるという気持ちを持つのは大事」ということです。私自身も初めての海外駐在で、考え出すと不安な要素はいくらでもありました。しかしすべてを完璧に整えてから行こうとしていたら、「自分には無理だ」と諦めていたかもしれません。実際に来てみると、総領事館の仲間から生活情報をもらえたり、困ったときに助けてくれたりして、少しずつ道が開けていきました。「なんとかなる」という気持ちを持って行動してみることで、人生は思っている以上に大きく変えられるのではないかと思います。
キャリアの変遷
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学生時代の体験が、海外に関わる仕事へ興味を持つきっかけに 海外旅行やホームステイの経験を通じて、外交官として海外で働くことを意識
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仕事と家庭の両立を考え、国内企業へ新卒で就職 新卒時には仕事と家庭との両立を考えて、国内のメーカーへ就職
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人生を考える転機が訪れ、あらためて外交官への挑戦を決意 身近な人との別れをきっかけに、後悔のない選択をしたいと外務省のキャリア採用に応募
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努力が実り、見事試験に合格。外交官としてロサンゼルスへ 仕事と子育ての合間を縫い、努力を積み重ねた末、採用試験に合格。家族の理解を得てロサンゼルスへ







