2007年7月〜2017年12月の期間に、dodaエージェントサービスを利用して転職したビジネスパーソン15万人の“転職年齢”を、職種や男女別に調査しました。この10年で、転職成功者の年齢はどのように変化したのでしょうか?
転職成功者の平均年齢は32.1歳、過去10年で3.0歳上昇
2017年下半期に転職した人の平均年齢は32.1歳で、前回(2017年上半期)と同じ結果になりました。調査を開始した10年前の2007年下半期のデータと比較すると、転職年齢は29.1歳から3.0歳上昇しています。男性の転職年齢は平均32.7歳で前回比マイナス0.1歳、過去10年では3.1歳上昇しており、女性は前回と同じ29.7歳で、過去10年では2.1歳上昇しています【グラフ1】。
転職者の年齢の内訳を見ると、全体に占める割合の中で最もボリュームが大きいのは「25~29歳」の38.1%で、次いで「30~34歳」の23.8%が続きます。10年前との比較では、「24歳以下」「25~29歳以下」「30~34歳以下」の割合はそれぞれ、2.0pt、10.3pt、5.3ptずつ下がりましたが、反対に、「35~39歳」の割合は8.0%から13.1%へと5.1pt上がり、「40歳以上」は2.9%から15.5%へと12.6pt上がっています。転職者の人数そのものは、すべての年代で10年前を上回っていますが、中でも35歳以上のミドル層で転職をする人たちが増加していることが分かります【グラフ2】。
転職年齢が上がった背景には、「採用ターゲットの変化」「人事制度の変化」「働き方の変化」という3つの変化が大きく関係していると考えられます。ここ10年で仕事に対する企業や個人の意識は変わり、転職者の平均年齢は右肩上がりのトレンドが続いています。2017年に入ってからは新卒採用を予定通りに充足できなかった企業などで、新卒向けのポジションを第二新卒者まで拡大したり、採用要件を緩和して未経験者を求める動きが進み、年齢上昇の勢いは鈍化したようにも見えますが、ミドル層の転職は変わらず増加傾向にありました。若手からミドルの募集まで求人のバリエーションは増え、仕事の選択肢が広がり続けてきたことで、年齢を理由に転職を思いとどまる必要はなくなっています。また、定年退職の年齢引き上げなどもあり、個人が仕事に向き合う期間が長くなっているからこそ、希望に合った働き方をかなえるためにも、今のうちから、未来を見据えて自律的にキャリアを選び取っていくことが求められます。
【転職年齢が上がった背景】
1. 採用ターゲットの変化
たとえば、自動車分野では衝突防止システムなど電子制御技術をはじめとするカーエレクトロニクス化が進んでいたり、総合商社では貿易や卸しといったトレード業務から事業投資への事業転換が進んでいたりと、10年前には存在しなかった技術や企業構造の変化が、急速に起こっています。さらにIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などITテクノロジーを活用した新たな商品やサービスも続々と生まれている中で、企業の多くは、これまで社内になかったノウハウや考え方を取り込む必要性を感じており、その活路を中途採用に見いだしています。求人の種類はポテンシャル重視の若手採用だけでなく、経験に基づいた実績やスキル重視の即戦力採用までバリエーションが広がっており、中には業界経験不問や管理職経験のないミドル層など、従来の採用要件にとらわれない転職の決定事例も増加しています。
2. 人事制度の変化
「55歳で役職定年、60歳で定年退職」が一般的だった10年前に比べて、今は定年退職の年齢引き上げに代表される、“人生100年時代”に向けた人事制度の改革が国や企業を挙げて進んでいます。30代・40代からの転職者であっても、入社後に腰を据えたキャリア形成が可能になり、企業にとっても中長期的な人員計画が立てやすくなったことで、経験豊富なミドル層の採用に意欲的な企業は増えています。
3. 働き方の変化
世の中の働き方に関する意識は今、大きな変化の節目にあります。国や企業は、“一億総活躍社会”の実現に向けて、働く時間や環境の見直し、就労の機会創出などを促進してきました。すでに、柔軟な働き方を可能にするテレワーク、在宅勤務制度の導入や、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた長時間労働の是正、時短勤務の範囲拡大といった仕組みづくりに積極的な企業も少なくありません。結婚や出産を機に仕事を辞める女性が減り、「M字カーブ※」の解消が緩やかに進んでいることや、シニア世代の労働参加率が高まってきたことなどを受けて、労働市場自体の平均年齢が上昇していることが、転職年齢の上昇にも影響していると見られます。
※M字カーブ:20代後半〜30代前半で結婚や出産を機に離職し、育児が一段落した40代以降に再び働きだす女性が多いことを反映している、年齢層別の女性の労働力率をグラフで表したときに描かれるM字形の曲線のこと。
「企画・管理系」や「専門職系」など、10の職種別の転職年齢はすべてで上昇
職種別の調査では、2007年下半期と比べて、10職種すべてで転職年齢が上昇していることが分かりました。特に「技術系(建築/土木)」(35.7歳)、「技術系(電気/機械)」(33.1歳)、「事務・アシスタント系」(30.5歳)、「企画・管理系」(35.0歳)、「専門職系」(34.1歳)の5つの職種の年齢は、それぞれ3.5歳、3.7歳、3.9歳、4.9歳、5.6歳ずつ上昇しており、全体平均のプラス3.0歳を大きく上回っています。
アベノミクスの財政戦略や震災復興、2020年に向けた開発ニーズの増加などによって、公共事業への投資が拡大している建築業界では、2012年ころから現在まで深刻な人材不足が続いています。特に、大規模案件を遂行するうえで欠かせない有資格者や専門スキルに特化した人材は引く手あまたの状態にあり、実務経験の豊富なミドル層の採用が活況なことが、「技術系(建築/土木)」職種の平均年齢を押し上げてきました。
また、グローバル化や新規事業の立ち上げなど、新たなステージでの成長や変革を見据える企業が増加したことで、組織の抱える課題は高度で複雑になってきました。特に、事業戦略の根幹に関わる「企画・管理系」や、経営・人事コンサルタントや金融のファンドマネジャーなどの「専門職系」の職種では、経営視点に立って踏み込んだ提案を行ったり、プロジェクトを牽引できる即戦力人材を求める動きが高まっています。メンバー層の経験者採用だけにとどまらず、近年では幹部候補や管理職、役員の転職事例も珍しくなくなったことで、これらの職種の転職年齢は大幅に上昇したものと考えられます。
調査概要
2007年7月~2017年12月の間に、dodaエージェントサービスを利用して転職したビジネスパーソン(有効回答数 約15万人)
※記事中の割合データは、四捨五入の関係で合計値が100%にならない場合があります。