全体:転職成功者の平均年齢は31.3歳。6年前より2.4歳上昇
ミドル層の採用が活発化。35歳以上の割合は23.6%と6年で2倍以上に
転職者の平均年齢は、2008年1〜3月の28.9歳から右肩上がりで、2013年10〜12月には31.9歳と6年間で2.4歳上昇していることが分かりました。また、転職者の年齢分布を見ると、「25〜29歳」の割合が大きく減少しており、調査開始の2007年4〜9月の49.2%に比べ、2013年10〜12月は40.3%と、8.9ポイント減少しています。一方、「40歳以上」の割合は2.5%から9.3%、「35〜40歳」も8.0%から14.3%と大幅に増加。2013年10〜12月には35歳以上の割合は23.6%と転職者の4分の1を占め、ミドル層の転職がますます活発化していることが見受けられます。一方、リーマンショック以降、新卒採用を控えていた企業が、アベノミクスによる景気回復を引き金に2013年から第二新卒層の採用に乗り出したため、「24歳以下」の転職者の割合は2013年1〜3月以降、微増しています。
企業がミドル層の採用に積極的になったのは、ここ2〜3年。その背景には、世の中の変化に合わせて、新商品や新サービスの開発、場合によっては新たなビジネスやマーケットを開拓する必要に迫られているためです。今までのように、社内の人材や中途で採用したポテンシャルの高い若手層を育成する方法では、世の中の変化スピードに追いつくことが難しくなり、社外から高い専門スキルを持つミドル層を即戦力として採用するようになったのです。
また、これまでミドル層の採用を阻んでいた、「能力以上の高い給料」という問題も、年功序列型給与体系の崩壊によって解消されつつあることが後押ししています。中途採用において入社時の待遇(給与)を決定する際、前職の給料を元に算出するケースも多く、勤続年数の長さといった社内のモノサシで評価された給料をそのまま参考にすることはリスクが高くもありました。それが、年功序列型の崩壊によって、能力やスキルといった社外でも通用する基準で給料が設定されるようになったことで、能力に見合った待遇を提示しやすくなったということです。
さらに、能力主義の広がりによって、「年下の上司」の存在が受け入れられつつあることも影響しているでしょう。今までの中途採用マーケットでは、配属先の上長より年下であることが求められていましたが、そういった制限は徐々に薄れている傾向にあります。他にも、経済的に余裕があり、人口の増加が確実なミドル層やシニア層をターゲットにする企業が増える中、顧客の年代に近いミドル層を採用する動きなども見られます。
このように、ミドル層の採用が活発になっているものの、それは年齢に応じた専門的なスキルや経験を持っていることが大前提です。さらに、その専門スキルを活かすために、環境や状況の変化に対して柔軟に思考や行動を変えられる人材は、年齢問わず企業から高く評価されます。
次に、男女別に転職者の平均年齢を見てみると、男性は31.3歳(+2.6歳)、女性が29.4歳(+1.7歳)と、特に男性の年齢上昇が目立ちます。これは、正社員として長期的にキャリアを築き、専門的なスキルを身に付けてきたミドル層の多くは男性が占めているためと考えられます。ただし、長期的なキャリア形成を望む女性が増え、企業側も女性の活用を積極的に進めていることから、数年後には女性の転職年齢も大きく上昇することが推察されます。
業種別:転職年齢が高い「メディカル」、「建設/不動産」。転職年齢が低い「小売/外食」
転職前の業種(出身業界)別に見てみると、最も平均年齢が高いのは「メディカル」で33.1歳。調査開始の2007年4〜9月の平均年齢と比較して3.0歳上昇しています。特に、2010年7〜9月のタイミングで年齢が大幅に上昇しています。これは、大型新薬の特許が一斉に切れる、いわゆる「2010年問題」を背景に、MRや薬剤師などの資格保持者の採用ニーズが高まり、年齢問わず積極的に採用する企業が増えたことが背景にあります。
次いで年齢の高い「建設/不動産」(32.2歳)は、2007年4〜9月と比較して+3.6歳と、最も年齢の上昇幅が大きい業種です。経年変化に着目すると、2011年10〜12月から年齢が大幅に上昇しています。これは、震災後の復興事業や耐震工事案件の増加、景気好転により商業施設やマンション需要の復活、さらに増税前の不動産駆け込み需要など、建築案件が急激に増えたことが背景にあります。「建設/不動産」も「メディカル」と同じく、資格が重視される業界ですが、資格保持者の人数が急激に増えることはなく、深刻な人手不足から年齢問わず資格保持者を高待遇で採用しようとする企業の動きが見られます。
また、3番目に転職者の年齢が高い「メーカー」(32.0歳)では、製品サイクルの加速化に対応するため、即戦力として高い専門スキルを持つミドル層の採用が活発化したことが背景にあるでしょう。一方、最も平均年齢が低いのは「小売/外食」の29.3歳で、若手の転職が活発なことが分かります。
転職後の業種別では、最も平均年齢が高いのは「建設/不動産」の32.6歳。次いで、「メーカー」の32.5歳が続きます。この2業種は、専門スキルや資格を保有するミドル層の採用が特に活発だと言えます。一方、「メディカル」は、メディカル業界出身の転職者の年齢(33.1歳)に比べ、メディカル業界へ転職した人の年齢(31.0歳)は、2.1歳若いことが分かりました。「メディカル」は、MRや臨床開発モニターなど数十名〜100名単位の採用ニーズがあり、経験者だけでは採用枠を満たすことが困難なため、第二新卒のポテンシャル採用を行う企業も多いことが背景にあります。
職種別:転職年齢が高い「技術系(建築/土木)」、転職年齢が低い「販売/サービス系」
資格や専門スキルが必要な職種ほど転職年齢は高い傾向に
転職前の職種別では、「技術系(建築/土木)」の年齢が最も高く36.0歳。2007年4〜9月の平均年齢と比較して+6.1歳と、上昇幅も最大です。施工管理職や設計職などは、施工管理技士や建築士などの資格を保有していないとその職種に就くことは難しく、さらに資格取得のためには実務経験を有することが不可欠なため、資格保有者の年齢は必然的に高くなります。また、昨今の建設ラッシュにより、施工管理職、設計職は深刻な人手不足に陥っているため、企業は資格保持者であれば年齢問わず積極的に採用しており、40代、50代の転職者が他職種に比べて多いのも特徴的です。
次いで年齢が高い職種は、「技術系(電気/機械)」(33.2歳)、「企画/管理系」(33.1歳)、「専門職系」(33.1歳)と、専門性の高い職種やスキルを保有し、即戦力として採用されるケースの多い3職種が並びました。一方、最も年齢が低いのは「販売/サービス系」(28.7歳)、次いで「営業系」(29.5歳)が続きます。これらの職種出身者は、年齢を重ねることで身に付く専門スキルよりも、コミュニケーション力や営業成績など年齢を問わないその人自身のポテンシャルを評価されることが多い傾向にあります。同じポテンシャルの高さであれば、柔軟性や将来性を期待できる若手の方が採用されやすく、転職年齢は低くなっていると考えられます。
転職後の職種別を見てみると、こちらも「技術系(建築/土木)」の年齢が最も高く35.0歳。次いで高いのは「技術系(医療/化学)」(33.0歳)が続きます。臨床開発や薬剤師、化学系の研究開発職など、資格や専門的なスキルを必要とする職種が多い「技術系(医療/化学)」は、資格や専門スキルを保有している人であれば、年齢を問わず採用される傾向にあります。
また、続く「事務・アシスタント系」(32.7歳)は、2007年4〜9月の平均年齢と比較して+5.5歳と、上昇幅が最も大きくなっています。これは、事務職の多くが派遣社員で構成されるようになり、正社員として採用される場合には、高いスキルが求められるようになったことが背景になります。特に、英語力や業界の専門知識、さらには派遣社員を管理するマネジメント力などが求められるようになり、採用される人材の年齢も上がっていると推察されます。
調査概要
2007年4月〜2013年12月の期間に、dodaエージェントサービスを利用して転職を行ったビジネスパーソン6万人以上の年齢を調査しました。転職成功者の年齢は、時代と共に変化しているのでしょうか?
【対象データ】2007年4月~2013年12月の期間に、dodaエージェントサービスを利用して転職を行ったビジネスパーソン
【有効回答数】約61,945件