求人からは仕事内容や応募資格はもちろんのこと、読み方次第でその会社の方針やアピールすべきポイントなど、多様な情報を得ることができます。ここでは後々「こんなはずでは…」とならないための求人票の見方や求人を見る際のチェックポイントや、面接で確認すべきことをまとめています。
1:企業メッセージ
企業のビジョンやミッション、応募者にどんなことを期待しているのか、職場の雰囲気や会社の特長など、企業が応募者にアピールしたいことが書かれています。
■応募者に対する「アピール」から「求める人材像」を知る
ここには、その企業が持つ他社にはない強みなど、採用に際して企業が応募者に最もアピールしたいことが記されています。またはこれからどんなビジネスを展開しようとしているのか、今回採用する人にはどんな働きを期待しているのかが書かれていることが多いので、「事業内容・募集背景」とセットで、この募集の目的とどんな人に来てほしいと考えているかを読み取りましょう。
■企業と自分が「大切にしていること」をすり合わせる
書かれている内容は、企業のビジョンやミッション、事業の特色、職場の雰囲気、一風変わった福利厚生制度などさまざまです。ここから、その企業が何を大切にしているかが分かります。自分が働く上で大切にしたいことと一致する部分があるかどうかを考えることが重要です。
2:事業内容・募集背景
募集の背景や理由が書かれています。「業界・職種を問わず人物重視で採用中」「新規事業のための新戦力を募集」など、採用の方向性に加えて事業展開や企業ビジョンが垣間見えることも。
■自分の転職理由ややりたいことと、任されることが一致するか
ここには、企業がなぜ人を募集するのか、その理由・背景が書かれています。具体的には、事業拡大や新規事業を始めるに当たっての増員募集の場合もあれば、社員の退職や異動などに伴う欠員募集の場合もあるでしょう。募集背景から任される仕事の内容や性質を読み解き、自分の転職理由や今後やりたいことと合致するかどうか見極めましょう。
■新規事業の場合は、「誰にとって新規」なのかを確認する
「新規事業のため」を募集背景としている求人も多くあります。ただその場合、二つの点で注意が必要です。一つ目は、「誰にとって新規」事業なのかという点。他社ではすでにやっている事業でも、その会社にとっては新規である場合と、世の中にまだなく、マーケットにとって新規である場合では、仕事内容も求められる能力も異なります。二つ目は、新規事業にどのフェーズから携わるかという点。何をやるかも決まっておらずゼロから事業を企画するのか、あるいは方向性がすでに固まっている新規事業にジョインするのかという点も、同様に確認すると入社後のズレを防げるでしょう。
3:仕事内容
担当する業務や配属先についての情報のほか、企業によっては入社後の研修や評価体制、キャリアプランなどについて書かれているケースもあります。
■職種名は同じでも、会社によって仕事内容が異なる場合も
例えば職種名が「ITコンサルタント」と書いてあっても、システム導入の上流から関わるコンサルタントの場合もあれば、ITに関して顧客からの相談に答える仕事を指してITコンサルタントと呼ぶ企業もあります。入社後に何をするのかをイメージできるかどうか、「募集背景」や「対象となる方」と合わせて確認すると良いでしょう。より詳しく知りたい場合は、面接の場で確認が必要です。時間軸で、一日の仕事の流れを詳細に聞いていくことで、より具体的に仕事内容をイメージできるようになるでしょう。
■プロジェクト事例では、具体的な取引先が書かれていないケースがほとんど
製造やIT、流通や建設などの業界で、クライアントからプロジェクトを受託している企業の場合、プロジェクト事例が書かれていることがあります。しかし多くの場合「大手人材会社の顧客管理システム導入プロジェクト」などのように、取引先の社名が分からないように書かれています。守秘義務がある場合は入社まで聞くことはできませんが、Web上で公表できないだけの場合、面接では話してもらえる可能性が高いので、ぜひ聞いてみましょう。それによって、案件規模やその会社が持つ技術レベルなどを推し量ることができます。
4:対象となる方
必要な経験やスキルなど応募条件が書かれています。必須の条件なのか、持っていると望ましい条件なのかを把握し、自分の経験をどう活かせるかを考えましょう。
■MUST条件とWANT条件を分けて理解する
募集するポジションで仕事をするには必ず備えていてほしい「MUST」条件と、あれば望ましい「WANT」条件があります。まずは「必須条件」と明記されていることが多いMUST条件を確認して、自分が対象となるかどうかを確認しましょう。WANT条件は、「歓迎する方」「歓迎するスキル・経験」などのように書かれています。MUST条件は、最低限備えていてほしい条件ですが、中には条件を満たしているかを自分だけで判断しにくいケースや、「TOEIC(R)テストのスコアが700点以上」と書かれていて、「自分は600点なのだけど…」ということがあるかもしれません。その場合、応募したい意思があるなら、チャレンジしてみたほうが良いでしょう。企業は複数の条件の掛け合わせで判断することが多く、一つの条件の不足をほかの条件で補って余りあるなら、選考の対象となることも珍しくないからです。
■未経験歓迎の場合は、「何が未経験でいいのか」を確認
「未経験可」「未経験歓迎」と書いている求人に出合った場合、どんな点に気を付けるべきでしょうか。同じ「未経験」でも「業界未経験」のことを言っている場合もあれば、「職種未経験」を意味している場合もあります。また、仕事としての経験は無くてもよいが、学生時代に特定の領域を専攻していたことが条件になっている場合もあります。「何が」未経験と言っているのかをよく読んで、自分が対象かどうかを確認しましょう。また面接では、どのような研修制度やOJT体制があるかを確認し、未経験で入社した人がどのように活躍しているか、具体的な事例を聞くと、より入社後の仕事やキャリアのイメージがつきやすいでしょう。
5:勤務地
本社所在地や面接会場が実際の勤務地と異なるケースというのも多くあります。実際に働く場所がどこなのかはここに書かれていますので、必ず確認しましょう。
■総合職の場合は転勤の可能性も。面接で詳細を確認する
総合職で採用される場合は、転居を伴う転勤の可能性が考えられます。大手企業などで事業所や工場など複数の拠点がある場合は、自分の勤務地がどこになるのかを確認しておきましょう。もし転居が難しい事情などがある場合は、企業のWebサイトで事業所がどこにあるかなど確認しておき、将来的な可能性も含めて面接で確認しましょう。また、勤務地によって給与が異なる場合もあるので、転勤の可能性があることが分かった場合は、その点も確認しておきたいポイントです。
■受託事業、技術者派遣をしている会社は勤務地が明記されない場合も
IT系・モノづくり系問わず技術系職種などの求人では、「東京23区内」「一都三県のどこか」といった形で勤務地が明記されないことがあります。これは受託事業を行っている企業や技術者派遣をしている企業に見られるケースで、参加プロジェクトや派遣先によってまだ勤務地が決まっていない場合などにとられる方法です。面接の際に確認すれば詳細を教えてもらえるので、遠慮せずに確認しましょう。
6:勤務時間
1日の勤務時間について書かれています。フレックスタイム制を導入している企業では標準労働時間やコアタイムについて書かれている場合もあります。職種によって勤務時間が異なる場合もあるので確認しておきましょう。
■部署やポジションによって異なる場合がある点に注意
始業・終業時刻が部署によって異なる場合があるため、自分の所属することになる部署やポジションの就業時間を確認しておきましょう。また、残業の有無や、ある場合は頻度なども面接で確認しておきましょう。
■フレックスタイム制は、定例会議や打ち合わせの有無も確認
フレックスタイム制とは、社員が自身の業務の都合に合わせて出社・退社時間を決められる制度です。出社・退社時間を完全に自由に決められる企業もありますが、多くの企業では、一日に勤務しなければいけない時間が「標準労働時間」として決められていたり、必ず出勤していなければいけない時間帯として「コアタイム」が設定されていたりします。また、定例の会議や打ち合わせがあれば、フレックスタイム制とはいえどもその時間は出勤していなければならないこともあるので、固定された予定がどれくらいあるかも併せて確認しておくと、より正確に働き方をイメージできるでしょう。
7:雇用形態
正社員、契約社員、アルバイトなど、雇用形態が書かれています。試用期間についての記載もチェックしておきましょう。
■正社員登用の可能性がある場合は条件まで確認を
契約社員として採用する予定の求人に、「正社員登用制度あり」と書かれているケースがあります。ゆくゆくは正社員になることを希望している人には魅力的ですが、どんな条件を満たせば正社員になれるのか、明確な条件がない場合は登用可能性が出てくる目安や、これまでの登用実績を面接で聞いておくと、キャリアパスがイメージしやすくなるでしょう。
■「出向」の記載がある場合は、指揮系統や規則をチェック
出向とは、企業が社員をグループの子会社や関連会社に企業間異動させることです。社員は出向元との雇用契約を維持しながら、同時に出向先とも雇用契約を結びます。注意しておきたいのは業務上の指揮命令や給与の支払いをどちらの企業が行うか、また就業規則はどちらの企業の規則が適用されるかです。両社間の契約内容によるため、面接で詳細の確認が必要です。
8:給与
応募条件を満たしている場合の基本的な金額が書かれています。年齢別のモデル年収が書かれていることもあるので参考にしましょう。
■給与額には幅があるため、給与例の記載があれば必ずチェック
給与額は、「月給25万円~35万円」のように書かれていることが多いです。ただし、あくまでも企業が想定している給与帯であり、応募者の経験・スキルによってはそれ以上になる可能性もゼロではありません。面接のどこかの段階で希望額を確認されることがありますが、求人を見ている段階では、「年収例」が書かれていればそれを参考にしましょう。「30歳(勤続3年)・グループリーダー・年収470万円」などといった形で書かれているので、自分に当てはめた場合のだいたいの給与水準が分かります。
■入社後のキャリアパスに応じて給与がどう変わるのかは面接で確認を
求人に書かれているのは、入社時点での給与額です。どのような成果を上げると、どの程度給与が上がるのか、といった給与体系については分からないことがほとんどです。入社後のキャリアパスをイメージするためには、面接の場で確認が必要です。ただし、面接の初期段階で給与体系について聞くのは考え物です。面接で希望年収を聞かれた時や、内定が出た後の処遇面談の際に確認すると良いでしょう。
9:休日・休暇
週休や長期休暇のほか、年間休日の日数などについて書かれています。企業が独自に定めている特別休暇などについての記載がある場合もあります。
■「週休2日制」は土日休み?休日の体系を把握する
「週休2日制」と言われたら、「毎週土日が休み」と思われるかもしれません。しかしそれは間違いです。月に最低1回、2日休みがある週があれば「週休2日制」です。1日しか休みがない週があるケースもあります。また、「完全週休2日制」も、毎週2日は休みがあるというだけであって、土日が休みとは限りません。毎週土日休みだと間違いなく言えるのは「完全週休2日制(土日休み)」と書かれている場合のみです。それ以外の場合は、面接時に休日の体系について確認しておくと良いでしょう。
■会社独自の休日・休暇制度は取得率も確認を
会社によっては、法定の休日以外にも、独自にさまざまな休日・休暇制度が設けられている場合があります。ただ、制度としては存在していても、必ず取得されているとは限りません。入社後に配属される予定の部署での取得状況などは確認しておきたいところです。確認する際のタイミングは、内定が出た後の処遇面談の時が望ましいでしょう。
10:会社概要
資本金や売上高、事業内容、従業員数など会社の基本情報が書かれています。企業理解のためのデータとして活用しましょう。
■会社全体の事業構造、自分が担うかもしれない役割を知る
募集しているポジションに関連する事業については詳しく記載がありますが、その企業がほかにも事業を行っている場合があります。会社概要を見て全体像を把握したら、企業のWebサイトを見て、さらにその企業の理解を深めましょう。入社してからその企業の事業全体の中で、自分がどういう位置づけに立ち、何をミッションとしていくのかが分かるはずです。上場企業では投資家向け情報(IR情報)がWebサイト上で開示されていますので、そこで売上や利益の推移などを確認すると、企業のことをより深く理解できるでしょう。