監修者:戸村 直樹(とむら・なおき) dodaキャリアアドバイザー
公務員の方のよくある転職理由
まずはdodaキャリアアドバイザーから聞いた公務員の方のよくある転職理由をご紹介します。主に地方・国家公務員の方が抱えてしまいがちな転職理由を解説していきます。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
定期的なジョブローテーションの影響で、スキルや専門性が身につきにくい
仕事軸の理由としては、公務員という特性上、定期的なジョブローテーションがあるため、職種ごとのスキルや専門性を磨き上げられないという点が多く挙げられます。将来的に特定のスキルを身につけて自身の市場価値を高めたいという考えの方が多いです。
配属が希望制ではないため、希望する仕事内容や部署でのキャリアが構築しづらい
公務員経験者の中にはジョブローテーションを経て自分に合った仕事を見つけたものの、さらに別部署へ異動になってしまったことをきっかけに転職する方も多くいます。
配部署によっては調整業務やルーティンワークが多く、自身の成長ややりがいを感じにくい
公務員の仕事は部署によっては、ルーティンワークが多いのでスキルが身についている実感が湧かなかったり、やりがいを感じられなかったりするようです。結果的にモチベーションを見いだしづらいと感じ、転職に踏み切る人もいらっしゃいます。
部署によっては繫忙期に業務量が増え、ワーク・ライフ・バランスを整えにくい
働く環境に関して多いのが、残業の量やリモートワークができない環境を変えたいと転職を検討するケースです。部署によっては年度末など諸手続きの対応が増える繁忙期に一時的に残業が増えたり、リモートワークできなかったりという特徴があり、その点を転職理由として挙げる人もいます。
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公務員の方が抱えがちな転職のお悩み
次に公務員の方が抱えがちな転職のお悩みをよくあるパターン別にご紹介します。それぞれのお悩みについて詳しく見ていきましょう。
転職して失敗するのが怖い、公務員を辞めて後悔したくない
転職に踏み切れない理由として大きいのが、公務員としての安定性や公務員になるために試験や面接で努力してきた経験を大切にしたい気持ちと、民間企業や転職に対しての漠然とした不安です。
このような背景から「失敗や後悔をしないか」と転職に悩んでしまうのです。
自分がどんな仕事をしたいのか分からない
いざ転職を決意したとしても、自分にどんな業種・職種が合うのか、そもそも自分は何がしたいのか分からず、悩んでしまうケースも多々あります。特に公務員はジョブローテーションによって、一つのスキルを突き詰めづらいため、興味のある、深めていきたいと思えるスキルを見つけられていない方も少なくありません。
自分に活かせるスキルがあるのか、どうやって見つけたらいいのか分からない
ジョブローテーションによってスキルが身についていないと感じている場合も、「転職活動でアピールできるものがないのでは?」と不安になってしまい、活動に踏み切れません。
また、今までの経験を民間企業でどのように活かせるかが見えにくいと、転職後のミスマッチへの恐れからくる不安もあるようです。
民間企業は何をしているのか、どのような仕事があるのかイメージが湧かない
公務員以外の就職活動を行ったことがない場合、そもそも民間企業とは何をしているのか、どのような仕事があるのかがイメージできていない方も多くいます。情報収集しようにも、転職活動の進め方も分からないというケースも多いので、転職活動を始める前に行き詰まりを感じてしまうかもしれません。
公務員から民間企業への転職は可能!
公務員の方のよくある転職理由や転職のお悩みをご紹介してきましたが、結論からお伝えすると、公務員から民間企業への転職は十分に可能です。実際に転職を成功させた方も大勢います。
また、公務員から民間企業への転職を成功させるためには民間企業から評価を受けやすいポイントや、公務員・民間企業それぞれの働き方の違いなどの、公務員からの転職活動ならではのコツを理解し実践することが重要です。
まずは公務員として培ったスキルや知識のうち、転職の際に評価につながりやすいポイントについて次の章で詳しく見ていきましょう。
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公務員が民間転職で評価されるポイント
具体的に公務員のどのような経験やスキルが民間企業に評価されるのでしょうか。こちらでは主に地方・国家公務員経験者の方が民間企業への転職で評価されやすいポイントを3つに絞って解説します。
さまざまな関係者と協業する調整力・適応力
公務員はさまざまな団体や組織と連携して業務を進めていく中で、さまざまな役職・ポジションの方と交渉やスケジュール管理を行うといった調整力が培われます。また、定期的なジョブローテーションに伴い、各担当部署で担うべき役割やミッションが変化する中で、一からの業務をキャッチアップしていくことになるので、業務や組織への適応力の面でも評価の対象となります。
ルールや決まりにのっとって進める力
公務員はあらかじめ定められたルールや決まり、法律を理解し、その上で担当業務やプロジェクトを進めるという経験を日常的に行っています。目の前の業務に合わせてさまざまな角度からルールや法律解釈をしながら進めていく力は、決まったルールの中で物事を最後まで遂行しきるといった実行力や責任感の高さにもつながる能力です。民間企業でも高い評価の対象になるでしょう。
業務管理・遂行力
公務員はポジションにかかわらず、複数のプロジェクトを同時に管理するような業務が多いため、期日・納期に向けた業務管理・遂行力が培われます。またその際にやりとりする相手も、組織内の職員はもちろん、地域住民や取引先、その他法人など、非常に多様です。自分とは異なる立場や知識量の相手とも円滑にコミュニケーションを取るための関係構築力も合わせて、民間企業から高く評価されるポイントです。
自分の評価されるポイントが
分からないという方へ
公務員と民間企業の違いは?
民間企業への転職を進めていく上で次に押さえておくべきポイントは、公務員と民間企業の違いです。民間企業に対する漠然とした不安を一緒に解消していくため、いくつかの角度で、公務員と民間企業の違いを見てみましょう。
公務員 | 民間企業 | |
---|---|---|
活動目的 | 非営利目的 | 営利目的 |
仕事内容 | 行政サービスを通して国民・ 市民に良い社会・ 暮らしを提供する |
自社の商品やサービスの提供・ 販売を通して顧客に価値を届ける |
待遇(給与や福利厚生) | 人事院規則に従って決定 | 企業ごとの給与規定 に従って決定 |
キャリア | 基本的には年功序列 | 成果・実績による昇給が多いが 企業によってさまざま |
就職・採用方法 | 毎年決まった時期に
決まった人数を 公務員試験を経て、採用 |
企業によって募集時期や選考方法、 採用人数はさまざま |
活動目的の違い
公務員と民間企業の活動目的には、根本的な違いがあります。公務員は基本的に非営利目的で活動しており、社会全体の福祉や公共の利益を追求することが主な役割で、安定したサービスの提供や公共の秩序維持が求められます。
一方、民間企業は営利目的で活動し、利益を追求することが重要なミッションです。顧客満足度向上や、社員への還元、市場競争、社会的役割を果たすために、市場競争の中で、売り上げや利益の拡大を目指すことが企業の存続・成長のためには欠かせません。このため、民間企業では成果主義やコストへの意識が高い傾向にあります。
仕事内容の違い
公務員の主な役割は、生活者に対して公平な行政サービスを提供し、社会全体の福祉や生活の向上を目指すことです。公務員はその職務上、公共の利益を最優先し、透明性や公平性が求められる点が特徴です。
一方、民間企業の仕事は、顧客に対して自社の商品やサービスを提供し、その価値を届けることが中心です。企業は顧客のニーズに応え、競争市場の中で利益を上げることを目標にしています。価値を創出し、売り上げを最大化することが求められるため、迅速な意思決定や競争力の強化が重要となります。
待遇(給与や福利厚生)の違い
公務員の場合、給与やボーナスは「人事院規則」に基づき、一定の基準で支給されます。給与体系は年功序列が基本で、勤続年数が長くなるに連れて段階的に給与が上がるのが特徴です。また、福利厚生も充実しており、年次昇給が確約されボーナスも毎年支給されるため、長期的に見て堅実な待遇が保証されています。
一方、民間企業では、給与形態や報酬は会社ごとに異なりますが、基本的には基本給として毎月安定した給与支給がありつつ、業績や個人の成果によっても左右されます。インセンティブやボーナスが事業の利益や、チーム・個人の業績に連動している会社では、成果次第で高額な報酬を得られる場合や、実力が評価され昇給という形で月々の基本給が上がっていく給与形態を取っている場合もあります。
キャリアの違い
公務員のキャリアは、基本的に年功序列による昇格が主流です。勤続年数や経験が重視され、一定の年数を経るごとに昇進する仕組みとなっています。また、基本的にはジョブローテーションにより定期的な転勤や異動が行われます。これは、幅広い分野での経験を積むための一環として行われ、さまざまなポジションを経験することで幅広い経験・スキルを身につけるためです。
一方、民間企業は実力主義で、基本的には入社したポジションで評価制度に基づいて昇進や昇給が決まります。中でも実力主義が強い会社の場合は成果やスキル次第でキャリアが大きく変わるため、短期間での昇格も可能です。また、会社によっては「社内転職」と呼ばれる制度があり、希望や能力次第で別の職種や部署に異動し、新たなキャリアパスを切り開くこともできます。
就職・採用方法の違い
公務員の場合、採用は基本的に毎年決まった時期に行われ、ポジションごとに定められた人数が採用されます。採用については、一律の公務員試験に合格することが必須で、合格者は採用候補者名簿に登録されます。試験は通常、1次試験と2次試験に分かれており、2次試験の面接では一律の評価基準が適用され、公平な評価が行われるのが特徴です。
一方、民間企業の中途採用では欠員補充や増員によって、企業ごとに募集時期や人数が異なります。選考では一般的に書類選考と面接が行われ、各企業の独自の評価基準に基づいて評価されますが、特に具体的な職務経験や実績が重視されます。
転職のプロが直伝~転職成功のコツ
初めて民間企業への転職活動を行う公務員の方に向けて、基本的な転職のコツについて転職活動を始める前と始めてからの2つのフェーズに分けてステップ別にご紹介します。
転職活動前(事前準備)
まずは、実際に企業に応募するなど転職活動を本格的に始める前にやっておくべき3つのポイントをご紹介します。
転職活動のスケジュールを考える
転職活動開始から内定を得るまでの期間は人によってさまざまですが、平均で2~3カ月ほどかかります。まずは今の自身の状況とも相談しながら「おおよそいつまでに転職を完了したいか」という目標を設定しましょう。
また基本的に民間企業への転職では内定から入社までの期間が短く設定されることが多いため、最終的な選択肢を多く確保するためにも、活動をスタートさせてからは複数の企業に並行して応募することをおすすめします。
これまでの経験の中から、活かせるスキルや強みを見出す
「自分にはスキルはないかもしれない」「専門性や資格がないとスキルと認めてもらえないのではないか」などと不安に思われている方も多いかもしれません。しかし転職活動では目に見える資格や専門性だけでなく、これまでの業務や経験から「次に持ち出しできる」スキルもしっかりと評価されます。
「次に持ち出せる」スキルはしっかりステップを踏んで考えることで、どんな経験をお持ちの方でも見つけることが可能です。今回は実際にキャリアアドバイザーが面談時に行っているステップをご紹介します。
ステップ1:これまで行ってきた業務を洗い出す
例のように、行動ベースで洗い出すことが大切です。また、その業務を1日や1週間単位で何件対応していたかという具体的な数字も洗い出しておきましょう。
例)窓口業務経験の方であれば住所異動、住所登録手続き、マイナンバーに関する手続き、郵便請求の問い合わせ対応など
ステップ2:洗い出した業務がどんなスキルにつながるか整理する
例のように各行動に対して、どのようなスキルの獲得につながるか考えていきます。このとき一つの行動に対して複数のスキルがあっても構いません。
例)住所登録手続きであれば…
「PC入力する時のタイピングスキル」
「住民の方に対して手続きを説明する伝達力」
「住民の方からの質問に対して受け答えできる臨機応変なコミュニケーション力」など
この2ステップで自身の「次に持ち出せる」スキルを洗い出し、整理していきましょう。
「転職で何を解決したいのか」を整理する
転職を考える際は、まず「辞めたい理由」となっている問題が現職で将来的に解決できるかを見極めましょう。その上で、転職で何を解決したいのか(どうなりたいのか)を整理します。またその中でも特に解決したいことを3つに絞ると求人を探す際にも判断がしやすくなります。
転職活動中
続いて、転職活動中のコツをご紹介します。
やりたいこと・できることのかけ合わせで求人を探す
求人を探す際には、やりたいこと(今の悩みが解決する、やりがいがある)と自分ができること(これまでの経験・持っているスキル)が必ずしも同じではない点に注目することがポイントです。自分の「やりたいこと」と「できること」を明確にし、その両方が合致する仕事や環境を整理してみましょう。
具体的な事実根拠を交えてアピールする
転職活動の中で採用担当者は、これまでの業務の具体的な内容・ボリューム感や、自分なりにどう工夫して取り組んでいたかを重要な評価ポイントとして見ています。そのため職務経歴書など応募書類や面接で自分をアピールする際は、具体的な数字や実績、自分なりにどう工夫したかを交えることが重要です。必ずしも大きな成果である必要はなく、業務の中で変化した数字、例えばコスト削減やミスの減少率など、改善につながった事実を行動とともに示すことが大切です。
転職で悩みが解決できた~公務員からの転職事例
公務員の各職種からの転職先としてはこのような事例があります。転職を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
事例の中から、よくあるエピソードをいくつか見ていきましょう。
国家公務員の方の転職成功事例はこちらで詳しく解説しています。
地方公務員から東証プライム上場企業の法務職へ
プロフィール
名前:Aさん
年齢:20代前半
職歴:市役所
転職先:東証プライム上場企業の法務職
エピソード
Aさんは法律や条例に関わる業務に興味を持ち、新卒で市役所に入庁しましたが、配属や異動先が窓口業務や福祉、財務課などと、なかなか希望の業務を担当することができず悩んでいました。市役所内でその業務に関われる部署への異動が難しい状況だったことや、より専門的な法務の知識を深めたいとの思いから、転職を決意します。
結果的に、窓口業務で培った高いコミュニケーション能力や、福祉、財務課での補助金申請、税理士申請業務、行政手続きの経験、そして公務員経験を通して培った基礎的な法律知識が評価され、東証プライム上場企業の法務職への転職を成功させました。これにより、Aさんは興味のあった法律に関わる仕事に就くことができ、キャリアの新たな一歩を踏み出しました。
国家公務員から事業企画職へ
プロフィール
名前:Bさん
年齢:20代後半
職歴:中央省庁
転職先:IT系企業の事業企画職
エピソード
Bさんは大学卒業後、国土交通省として勤務し、官公庁や民間企業との調整業務を担当していました。しかし、自らが主体となって課題解決を主導できるスキルを磨きたいと考え、転職を検討します。
結果的に、窓口業務で培った高いコミュニケーション能力や、福祉、財務課での補助金申請、税理士申請業務、行政手続きの経験、そして公務員経験を通して培った基礎的な法律知識が評価され、東証プライム上場企業の法務職への転職を成功させました。これにより、Aさんは興味のあった法律に関わる仕事に就くことができ、キャリアの新たな一歩を踏み出しました。
教員からメーカーの営業事務職へ
プロフィール
名前:Cさん
年齢:20代後半
職歴:小学校教員
転職先:部品メーカーの営業事務職
エピソード
Cさんは新卒で小学校教員として勤務し、クラスの担任として子どもたちの学習のサポートや保護者との関係性構築に力を注いできました。しかし、結婚を機に、出産やパートナーの転勤といった今後のライフイベントを見据え、仕事とプライベートの両立ができる環境を求め、転職を考え始めます。
結果的に教員として培った高いコミュニケーション能力や問題解決力が評価され、Cさんはライフイベントに合わせた柔軟な働き方が可能な企業で、営業事務職としての内定を得ることができました。
成功のコツを押さえて納得感のある転職活動を始めましょう
公務員から民間企業へ転職する場合、転職のコツを知って行動すれば後悔のない、納得のいく転職活動ができるでしょう。現職で業務を続けながら、転職活動を進めるのは大変そうと感じる方はエージェントサービスの利用もおすすめです。
dodaには公務員の方の転職に関する知見が深い経験豊富なキャリアアドバイザーも多数在籍しています。転職をご検討の際はぜひ一度ご相談ください。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
【経歴】 2016年株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)に中途入社。約3年、法人営業として採用向けコンサルタントとして従事。その後、キャリアアドバイザーとして販売職・営業職・専門職の方を担当。2023年4月に公務員の方々を専門に担当する組織が発足し、メンバーとして参画。
【メッセージ】 これまで5,000人を超える販売職、営業職、その他専門職、公務員の方々とお会いして転職をサポートしてきました。一人ひとりにそれぞれの思いやかなえたい未来がある中で、これから転職活動に臨むことになると思います。転職活動の良い点、厳しい点も率直にお伝えしますので、後悔のない転職活動を一緒に進めていきましょう。
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