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- Company株式会社協和
- 1948年設立、従業員数220名(2014年3月時点)。ランドセル、スーツケース、ビジネスバッグを中心に企画・製造から販売までを手がけるカバンの老舗総合メーカー。海外9カ所にも販売拠点を展開。売上比率50%を占めるランドセルはすべて国内で製作され、品質の高さに定評がある。障がい児のためのオーダーメイドランドセル製作や、被災地へのランドセル支援など、その幅広い社会貢献活動も注目されている。本社は東京都千代田区。
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- 専務取締役若松秀夫さん
- 1950年生まれ。大学卒業後、YKK株式会社に入社。堪能なフランス語を活かして約10年のパリ駐在員経験を経て、1982年、実父の経営する株式会社協和に入社。ランドセル売上が8割以上を占める中、当時起こり始めた海外旅行ブームに着目してスーツケースなどの旅行用品事業を立ち上げ、現在は売上の4割近い事業となるまでに成長させた。現在、専務取締役。
震災直後に考えた。「カバン屋に何ができるのか?」
東日本大震災の直後、約1カ月半のうちに、被災地の小学生一人ひとりにランドセルを約1万個、無償配布した会社がある。それが設立60年を超えるカバンの老舗総合メーカー・協和だ。震災が起こったのは、3月11日金曜日。若松さんは、翌月曜日朝に早速役員会に諮り、ランドセル支援実行委員会を立ち上げた。「困っている人がいる。ならば僕らのできることをしよう。そんなシンプルな考えからです」。
協議の結果、1,2年生には新品を、3年生以上には全国から寄付された品を、新品同様に補修して提供することにした。高い修理技術のある協和だからできる方法だが、工場は通常業務をストップし、ランドセル支援でフル稼働になった。県庁に一括発送しても個別発送は難しいと聞き、青森県、岩手県、宮城県、福島県、千葉県の役所や教育委員会に電話して必要な人数・性別・希望色を確認した。「1週間は、ほとんど全社員でかかりきりでした。時期が時期だけに、ヒアリングも相当大変でした。でも、性別も希望も分からないままランドセルを届けても、子どもたちは喜んでくれるのかな?と。それに、個数に過不足が出てしまっても困るでしょう」。実際、宮城県庁から、ほかメーカーが寄付した大量のランドセルの扱いについて相談されたこともあった。全国から届く中古ランドセル寄付の申し出は、必要数だけ受けつけ、余剰分は丁重に断った。本当に役立つ支援をするためには、こういう細かい気遣いが欠かせない。最終的には、必要な数を必要な場所に届け切ったと言う。
利益は会社存続の手段
だから大もうけをする必要はない
被災地へのランドセル支援は、協和の数多くの社会貢献活動の一例にすぎない。経営理念に「会社は社会に支えられているという感謝の念を持ち、社会事業、福祉事業に積極的に取り組む」を掲げ、日常業務でもことあるごとに大切にしている。それを示す商品の一つに、障がい児のためのオーダーメイドランドセルがある。この商品が生まれたのも、「そこに困っている人がいたから」。十数年前のある日、ある保護者から届いた「うんと軽くて、サイズオーダーできるランドセルはないですか」という問い合わせからだ。
お客さまにさらに詳しく話を聞くと、息子さんの体が弱くて、ランドセルの細部に工夫が必要だと言う。対応した社員が「なんとか製作してあげられないか?」と社内や関係者に掛け合い、オーダーメイドランドセル第1号を完成させた。「こういう声にちゃんと耳を傾けて対応できるのは、社員一人ひとりが理念を理解し、それに基づいた行動ができるからです。この後、オーダーメイドランドセルは、全国肢体不自由児者父母の会連合会などにも協力をいただきながら正式に商品化しました」。
チャックには大きな取っ手をつけて握りやすくする、背負いズレ防止のベルトをつける、車椅子に掛けられる仕様にするなど、さまざまな障がいに対応できるよう改良を重ねた。もちろんカラーも自由に選ぶことができる。気遣いが行き届いた、優しい機能満載のランドセルは、今や協和のロングセラー商品になった。だが、コストも手間もかかる分、利益率は低くなる。ほかに対応しているメーカーがほとんどないのも、それが一因だと言う。「でもね、利益って、極論かもしれませんが、会社を存続させるための手段でしかないと思うんです。だから、別に大もうけしなくてもいいのではないか、と。無理のない範囲なら、多少利益を削ってでも、困っている人の役に立つことの方がずっと大事。そういう姿勢でもの作りをしていれば、中長期的にはお客さまからも評価していただけると思います」。
「他者を思う力」のない人に、
社会貢献活動は難しい
理念の浸透と、それに基づいた行動ができることが何より大切と言う若松さん。社員採用においても、一番見るのはその点だそうだ。「理念への深い共感がないと、長く働いてもらえないですからね。採用では能力やスキルよりも重視して、慎重に判断しています」。では具体的には、どんな方法で判断するのだろう。「例えば、最近の社会課題で印象的なテーマを、自身の考えとともに説明してもらったりします。質問自体は目新しくはないかもしれませんが、ここで確認しているのは"他者を思う力"や、"社会に対して幅広い関心を持つ力"です。答えに正解はありませんし、テーマは人それぞれ、何でもいい。それのどこに問題を感じ、どうしなければならないと考えているのか、そこが聞きたいんです。こういう力は、一朝一夕には身につきませんが、理念への共感を大きく左右する。ですから採用時に深く掘り下げて確認するんです」。
実際、協和には身近な同僚同士を思いやる風土がある。例えば最近は、営業部長が親の介護休職を2カ月間取得した。課長が子どもの病気の看病を理由に3日間休んだ。これらは普段から当たり前にあることで、残った社員が自然と助け合い、不在者の仕事を補い合う。「隣の人を理解してあげられる社員だからこそ、遠く離れた被災地の人たちのことも想像して思いやることができるのだと思います」。こんな理念を持つ協和は、日々良い商品をつくり、価値ある社会貢献活動を生み出している。
協和の様子
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