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- Company株式会社スマートエデュケーション
- 2007年創業の家電メーカー。「ネットと家電で生活をもっと便利に・豊かに」を企業スローガンに掲げ、ネット接続型家電の企画・開発を手掛ける。これまで既存のビデオカメラにUstream配信機能をつける機器『LiveShell』シリーズなどを世界23カ国以上で販売。15年1月に米国で開催された「International CES」で「2015 CES Innovation Awards」を受賞。本社は、東京・秋葉原。
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- 代表取締役社長池谷大吾さん
- 1976年生まれ。明治大学大学院理工学研究科修士課程修了後、2000年4月、日本ヒューレットパッカード株式会社に入社。システムコンサルタントとして大手携帯キャリアの基幹システムの開発プロジェクトに携わる。04年8月に株式会社シーエー・モバイルに転職。同社執行役員、取締役を経て、11年6月にスマートエデュケーションを創業し、現在に至る。
子どもたちに「本物」を感じてもらいたい
スマートエデュケーションが提供する知育アプリが幼児期の親子の間で話題だ。中でも特に大ヒットとなっているのは、池谷さんが自らプロデュースした「おやこでリズムえほん」。リリースから2年以上たった今でも、AppleのAppStoreで人気ランキングに入るアプリだ。
「おやこでリズムえほん」は"親子で一緒に楽しむ"がコンセプト。子どもをひざに乗せ、一緒に画面をタップして、楽器を鳴らして歌いながらリズム遊びができる。スクリーンに現れる5つの楽器のうち上の2つが親パート、下の3つが子どもパートだ。「このアプリは、子どもの創造力を引き出すお手伝いができると確信しています」。自らも3児(9歳、6歳、4歳)の父である池谷さんは語る。
とはいえ、スマートデバイスを子どもに与えることに抵抗がある親は多い。その理由の大半は、仮想世界に子どもが熱中しすぎることにあるのではないだろうか。テレビゲームのやりすぎは良くない、と言われるのと同じ理由だが、「おやこでリズムえほん」は、親子で一緒に遊ぶことを前提としている。その点が、従来のゲームアプリなどとは大きく違う。アプリ自体と最初の2曲だけは無料で、曲数を増やす際に課金される仕組み。子どもが小さいうちは童謡、成長すればアニメソングやヒット曲など、約350曲の中から曲を選ぶことができる。「僕らは、アプリというより、親子で楽しめるミュージックストアを作っている感覚なんです。音楽がコミュニケーションツールとなって、親子の触れ合う機会が増えればうれしいですね」。
最近のスマートデバイスは音質も画質も高いため、本物さながらの楽器の演奏音を提供できるのも魅力だ。「書店で売っているこれまでの音が出る絵本って、どう考えても残念な音質でした。でも、何でも吸収する0~5歳の子どもには、できるだけ本物に触れて脳を活性化させた方が良いと聞きます。子どもにこそ、本物を与えてあげないと、と思うんです」。
スマートエデュケーションの事業ミッションは、「世界中の子どもたちの"いきる力"を育てたい」。では、知育アプリでの遊びを、"いきる力"とどう関連づけているのだろう。「音楽や絵など、クリエイティブな才能を伸ばすのがまず一つ。それから、スマートデバイスやネットに慣れ親しむことも、これからの時代の"いきる力"だと考えています。これだけ普及しているのに、子どものころ、まったく触らないって不自然じゃないですか?英語が必要だと言われるのと同じように、ITだって、たくましく、かつ安全に使えるように、子どものうちから育ててあげたいと思います」。
「ダメなパパ」にヒントをくれたのは、わが子だった
今では「子どものために」と事業を展開する池谷さんだが、起業前はソーシャルアプリ事業関連企業の役員を務め、早朝から深夜まで、休日も働き、子育てはほとんど妻任せの「ダメなパパ」だったという。「新卒で働き始めてからずっと、モーレツ社員だったんですよ。熱い思いでものづくりに没頭したり、売上・利益のために、力技で経営を進めたり。当然その分の報酬も得ていましたが、それだけって寂しいな、と次第に思うようになって。1カ月ほど突き詰めて考えていたら、心の奥にあった"いつかは起業したい"という思いが明確になってきたんです」。池谷さんが次のフィールドで大事にしようと思ったのは、社会的価値の高いイノベーティブな事業、そして、ワークライフバランスを大事にしながら腰を据えて長く取り組める事業、ということだった。
退職を決めた池谷さんは、初めてゆっくり子どもと過ごした自宅で「知育アプリで子どもの創造性を育てたい」というテーマに出会う。「当時、幼稚園の年中組の長男が、iPhoneに夢中になってGREEのゲームをマスターしていた。それが驚異的な理解力とのめり込みようだったんですよ」。可能性を感じた池谷さんが調べると、日本の知育アプリはまだ発展途上、でも海外ではすでに有望マーケットになっていた。
「テーマを決めたら、仲間を誘って起業するだけでした。最初は、長いつき合いの前職メンバー5人で起業しました。でも、35、6歳で起業って、ITゲーム業界では年寄り集団(笑)。未成熟だった子ども向け市場に絞りすぎるのもリスキーなので、最初は大人向けの英語学習アプリをメインに開発を進めたんです。僕以外の4人は手堅い英語学習用のアプリ担当(笑)、池谷だけは、夢を追って好きなことやってていいよ、って」。
ところが、「おやこでリズムえほん」のデモ版ができたあたりで、これはイケるっていう確信が生まれちゃって。うちの息子も夢中だし、開発協力をしてもらっている知人の親子の反応もすごく良くて、欲しい欲しいと言われる。当時、資金調達の相談をしていたベンチャーキャピタルからも、『子ども向けに絞るんなら出資してもいいよ』って言ってもらえた。5人で3日間徹夜で議論した末に、子ども向けアプリ開発に注力することを決めました」。
とは言え、その時点で英語学習アプリの開発につぎ込んだ投資が数百万円。起業間もないベンチャーにとって小さな額ではない。それでも子ども向けに絞れた理由は何か。「やはり、どんどん工夫してクリエイティビティを発揮しながら遊ぶ子どもたちのキラキラした笑顔が印象的だったことですよね。こんなふうに創造性を引き出すことができるのか!という感動は、今でもサービス開発の原動力になっています。ビジネスとしても、グローバル展開を見据えれば、せいぜいアジア止まりの英語学習アプリよりは、全世界に広がる子どもマーケットのほうが市場として魅力だろう、と判断しました」。
子どもたちに、
これからの時代を生き抜くツールを与えたい
5人で始めた会社は、今や21人になった。仲間を増やす時に大事にしていることは何だろう。 「必ず問うのは、"君の大事な人生を、なぜうちで使いたいんだ?"ということ。何のために、何をしに来るんだ?とかなり深く掘り下げます。ミッションやビジョンへのコミットメントがないとお互い不幸になりかねないですから」。
話は未来に向けての夢へと発展した。「今後、楽しみなのは、当社のアプリで遊んで育った子どもたちが世の中で活躍してくれること。"あのアプリが原点です"とか言われたら、うれしくて失神するかも(笑)。これからはますます、いろんな個性が肯定されるべき。朝から晩までパソコンをやったっていいし、そこからすごい開発やイノベーションが生まれることだってある。だから僕らは、今の時代なりのツールを子どもたちに与えたい。それが、"いきる力"を育てる、ということだと思っています」。今はまだ日本市場での流通が大半だが数年後には、「IT×教育」のジャンルで、世界で存在感ある会社になりたいという池谷さん。すでに、北米やアジアなどでは、ダウンロード数も増えているのだそう。その大きな夢は少しずつ実現し始めている。
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