退職届・退職願はいつまでに出せばいい?
提出タイミングとよくある疑問を解説
監修者:社会保険労務士 北 光太郎(きた・こうたろう)氏 (きた社労士事務所 代表)
この記事のまとめ
- 退職届・退職願は就業規則に記載されている期日までに提出するのが原則(一般的には1カ月前まで)
- 引き継ぎや有休消化の期間を考慮するとできるだけ早めに提出した方がスムーズに退職できる
- 事前のアポ取得や上司や会社に配慮することが退職のトラブル回避、円満退職につながる
退職届・退職願は必要?
多くの会社では「退職の意思を伝えた証拠」として、退職届・退職願の提出を求めています。口頭で退職の意思を伝えても「言った言わない」のトラブルが発生する恐れがあるためです。円滑に退職手続きを進めるためには、退職届・退職願は必要な書類です。
まずは会社の就業規則を確認しましょう
退職手続きを進めるにあたり、まず退職届・退職願が必要か否かを就業規則で確認しましょう。就業規則は、労働条件や職場のルールを定めた文書であり、退職に関することが記載されています。円滑に退職手続きを進めるためにも、まずは就業規則を確認し、その規定にのっとって退職手続きを進めることをおすすめします。
正社員以外(契約社員やアルバイトなど)の場合は、退職届は必要ありません
契約社員やパート・アルバイトなど決まった雇用形態で働いている場合は、基本的に退職届・退職願の提出は必要ありません。一般的には契約更新に関する話が契約満了の約1カ月前に行われ、更新しない場合は契約満了によってそのまま退職となるためです。ただし、契約期間中に退職する場合は、退職届・退職願の提出が求められる場合があります。退職する際に、人事部門や上司に確認しましょう。
退職届・退職願はいつまでに出せばいい?
退職届・退職願をいつまでに提出すべきかは、まず会社の就業規則を確認する必要があります。一般的には、法律の期限よりも就業規則の期限のほうが早く設定されていることが多いため、速やかに確認しましょう。
一般的には就業規則で定められた期日
退職届・退職願の提出時期は、会社の就業規則に明記されています。提出期限は、一般的に退職予定日の1カ月前であることが多いですが、会社ごとに独自で定められているため、退職を考えている方は必ず自社の就業規則を確認しましょう。
なお、退職届・退職願の提出時期は、業務の引き継ぎに必要な期間も考慮しないといけません。さらに、有休をすべて消化する場合は、残りの出勤日数なども考慮し、早めに退職の手続きを済ませましょう。
法的には2週間前
法的には、退職を申し出れば2週間後に退職が可能です。(民法第627条第1項により)
しかし、やむを得ない事情がない限りは就業規則にのっとった対応をおすすめします。退職届を会社に相談なく2週間前に提出してしまった場合、会社側から無理な引き止めに遭ってしまう可能性や、退職後に必要な離職票の発行が遅れてしまう可能性も考えられます。退職後、次のキャリアやステップにスムーズに進むためにも就業規則を確認し、退職の手続きを進めましょう。
なお、担当業務の引き継ぎや有休消化、退職周りの書類手続きをスムーズに進めることを考慮すると、退職日の2カ月前には退職の意思を伝え、1カ月前には退職届を提出することをおすすめします。
退職届・退職願の提出タイミング、退職までの流れ
ここからは、退職までの流れとスケジュール例を紹介します。
直属の上司に退職の意思を伝える(2カ月前)
退職届・退職願を提出する前に、まずは直属の上司に退職の意思を伝えましょう。休職中など、特別な事情がない限り対面で伝えましょう。退職を伝えるときは、落ち着いて話ができるよう忙しい時間帯や、重要な会議の準備をしているようなタイミングを避けて話を切り出すことが大切です。退職理由を聞かれたときは、あいまいな言い回しを避け、この会社ではかなえられない転職理由や前向きな理由を伝えるのがよいでしょう。
なお、この段階で提出する書類は一般的に「退職願」と呼ばれます。「退職願」は退職したいという意思を会社に伝える書類です。退職願の必要の有無や提出のタイミングは就業規則で確認するか人事部門または上司に確認しましょう。
退職届を提出する(1カ月前)
退職の意思を上司に伝えた後は、「退職届」を提出します。「退職届」は退職の申し出が了承され、退職日が確定した後に提出する書類です。会社によっては退職願を提出し、承認が下りてから退職届を提出する場合もあります。
会社で指定のフォーマットが用意されている場合もあるため、退職届・退職願作成する前にフォーマットの有無を確認しておきましょう。
業務の引き継ぎ(1カ月前)
退職届が受理されたら、業務の引き継ぎを行います。後任に負担がかからないよう、できるだけスケジュールに余裕を持って引き継ぐことが大切です。引き継ぎを始める前には、業務マニュアルなどを用意しておくとスムーズに引き継ぎができます。
なお、有給休暇をすべて消化して退職したい場合は、その日数も含めて引き継ぎスケジュールを調整しましょう。有給休暇を取得する日はできるだけ早く上司や同僚に伝え、仕事に支障がでないよう配慮することが大切です。
あいさつ・会社貸与物の返却(1週間前~最終出社日)
退職日の1週間前〜最終出社日にかけては、社内や取引先に退職のあいさつをします。お世話になった人には直接あいさつ回りをし、直接あいさつができなかった場合には電話やメールで退職のあいさつをしましょう。
また、社員証や名刺、健康保険証など会社から貸与されたものは返却しなければなりません。返却を求められているものはリスト化するなど、漏れがないか確認することをおすすめします。最終日のあいさつは、ネガティブな内容は避け、できるだけ簡潔に感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。【ケース別】退職届・退職願の提出で困ったときの対処法
ここからは、ケース別に退職届・退職願の提出で困ったときの対処法をご紹介します。
転職先に「できるだけ早く入社してほしい」と言われた場合
転職先に「できるだけ早く入社してほしい」と言われた場合には、焦らず転職先と退職する会社の両方に話を聞いた上で退職日を調整しましょう。
転職先のみを優先してしまい、退職する会社を疎かにしてしまうと、円満に退職できず今後の人間関係にも影響が出てしまいます。
まずは、早急に上司へ退職の意思を伝え、後任の選定や引き継ぎが必要な日数などを相談した上で退職日を決めましょう。
また、転職先にも現在の引き継ぎの状況などを相談した上で、折り合いがついたら退職届・退職願を提出し、転職先に確定した入社日を伝えるようにしましょう。
退職届・退職願の受理を拒否された場合
退職届・退職願の受理を拒否された場合は、直属の上司より役職が上の人、または人事部門に相談しましょう。退職の意思は、直属の上司より役職が上の人や人事部門に伝えても法律上、問題はありません。
なお、どうしても退職が認められないなど、やむを得ない状況である場合は内容証明郵便で退職届を郵送し、退職する方法もあります。詳細については以下の記事をご確認ください。
休職中に退職する場合
休職中、やむを得ず出勤できない場合はメールや電話で退職の意思を伝えましょう。退職に向けての相談は、メールや電話だけではなくオンライン面談などで顔を合わせて実施することもあります。退職届・退職願の提出方法は、メールや郵送でも可能か確認し、手続きを進めましょう。
提出期限を過ぎてしまった場合
やむを得ない状況で退職届の提出期限が過ぎてしまった場合は、早急に上司または人事部門に理由を説明した上で提出しましょう。
退職届は会社の手続きに必要なものです。病気などやむを得ない理由がある場合は、例外的に認められるケースもありますが、原則は期日までに提出しなければなりません。万が一遅れてしまいそうな場合は、間に合わないことが分かった時点で相談するようにしましょう。
退職交渉の始め方は? 転職先とのやり取りのポイントは?
その疑問、
キャリアアドバイザーがサポートします
円満に退職するポイント
会社を退職するにあたって、トラブルにならないよう注意するポイントがあります。主なポイントは以下の3つです。
退職を伝えるときは事前にアポイントを取る
退職の意思を明確に伝える
受け入れてもらいやすい希望退職日を伝える
退職を伝えるときは事前にアポイントを取る
退職の意思をいきなり伝えるのではなく、まずは「ご相談があるので、お時間をいただけないでしょうか」と上司に事前にアポイントを取って退職の意思を伝えるようにしましょう。意思を伝える際は、オープンな場所ではなく会議室などを押さえ、同僚などに聞かれない場所で伝えるのがポイントです。
アポイントを取る方法は、メールやチャットでも問題ありません。上司に連絡しやすい方法でアポイントを取りましょう。
退職の意思を明確に伝える
退職する際に、一番重要なことは「退職する強い意思」を伝えることです。あいまいに伝えてしまうと、「どのようにしたら退職しないで済むか」という相談になってしまい、会社もまだ引き止められる余地があると思ってしまいます。
「新しい会社でやりたいことがある」「自分の夢に向かってがんばりたい」など前向きな理由を伝えることが大切です。
また、退職の意思を伝えた後は、希望する退職日や業務状況、有給消化の開始日などを伝え、引き継ぎのスケジュールについても相談しましょう。状況によっては何度か面談をすることになるかもしれませんが、焦らずていねいに話し合いましょう。
受け入れてもらいやすい希望退職日を伝える
退職の申し出は一方的に決めて伝えるのではなく、「希望日があるので相談したい」というスタンスで切り出してみましょう。一方的に退職日を決めてしまうと会社となかなか話がまとまらず、結果として想定より退社日がずれ込んでしまう可能性もあります。就業規則、転職先への入社日、業務の進行状況、業務の引き継ぎ状況、有給休暇の消化などを検討し、受け入れてもらいやすい希望退職日を決めて切り出してみることをおすすめします。
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その疑問、
キャリアアドバイザーがサポートします
退職までに必要な手続きまとめ
退職するまでには、さまざまな手続きがあります。事前に「会社に返すもの」と「会社から受け取るもの」を把握しておくと、退職手続きをスムーズに進められます。
退職時に会社へ返却するもの
退職時に会社へ返却する主なものは、以下のとおりです。
健康保険被保険者証
身分を証明するもの(社員証・IDカード・社章など)
カードキーなどの鍵・入館証などのセキュリティカード
名刺(自分の名刺、仕事上で得た取引先の名刺)
通勤定期券
書籍や参考資料
事務用品などの備品
制服・作業着
業務用の関係書類やデータ
会社のパソコン・携帯電話などのデジタルツール
また、会社で利用しているクラウドツールのアカウントがある場合は、会社に相談して、削除するなど対応しておきましょう。
退職時に会社からもらうもの
退職時に会社から受け取るものは、以下のとおりです。
源泉徴収票
雇用保険被保険者証(会社が保管している場合)
年金手帳・基礎年金番号通知書(会社が保管している場合)
離職票(退職時に請求した場合)
退職証明書(請求した場合)
会社から受け取るものは、税金や社会保険にかかわるものです。どれも退職後の手続きに必要となるため、なくさないよう大切に保管しておきましょう。
そのほか、会社によっては確定拠出年金や退職金に関係する書類などを受け取る場合もあります。また、退職後は転職先が決まっているか否かで手続きが異なりますので注意しましょう。
よくある質問
Q.退職届・退職願を就業規則よりも早く提出することは可能?
A.就業規則に規定されている期限よりも早く退職届・退職願を提出することは可能です。早めに提出することで、引き継ぎ期間が十分に取れるようになり、会社側も後任の採用などの準備が早期にできるようになります。
ただし、退職日までに期間があるため、会社側からの引き止めに遭う可能性が高いでしょう。また、退職が決まってからは、仕事に対するモチベーションを維持することが難しくなります。
退職届・退職願の提出は、遅すぎるよりは早いに越したことはありませんが、早く提出する場合のリスクも考慮した上で提出しましょう。
Q.今日退職届を出した場合、最短いつ退職可能?退職日は1日や15日などキリがいい日でないとだめ?
A.退職届を提出した場合、最短で退職可能となるのは提出日から2週間後です。例えば、1日に退職届を提出したとすると、15日には退職が可能となります。これは、法律で退職の意思表示をした2週間後に退職できると定められているためです。そのため、キリがいい日でなくても退職日とすることは可能です。
ただし、円満退職や退職手続きをスムーズに進めるためには退職日の1カ月前には提出するように心がけましょう。
まとめ
退職届・退職願は、退職手続きをスムーズに進めるためにも、会社の就業規則に記載されている期限までに提出することをおすすめします。多くの会社の就業規則では、退職日の1カ月前までに提出することと定められていますが、会社ごとに期限が異なるため、必ず就業規則を確認しましょう。
初めて退職する方は、段取りやどういったスケジュールでなにをすればいいのか、どこに注意すればいいのか、など迷いやすい点が多いと思います。これから転職活動を始める場合、dodaエージェントサービスを利用して内定を獲得すれば、退職交渉や現職・転職先とのやりとりについても相談できます。
転職のプロからアドバイスを受けながら転職活動を進めましょう。
この記事を監修した社会保険労務士
北 光太郎(きた・こうたろう)氏
きた社労士事務所 代表 大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士資格を取得し、不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善などさまざまな取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。読者に分かりやすく信頼できる情報を伝えるとともに、Webメディアの専門性と信頼性向上を支援している。
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