Q. 一身上の都合とは?自己都合退職の場合、退職届に退職理由を書いてはダメ?
退職届の例文に「一身上の都合により」と書かれていることが多いのですが、そもそも、「一身上の都合」の一言で退職理由をまとめてしまってよいのでしょうか? 会社に退職を切り出す際、おそらく退職理由を聞かれると思います。しかし、私は口下手なので、退職理由を口頭で伝えるよりは、書面で伝えたほうがきちんと伝えられると思います。会社都合退職であれば退職理由を書いてもよいと聞いたのですが、自己都合退職の場合は退職理由を書いてはダメでしょうか?(28歳/男性)
A.自己都合退職の場合は、退職届には「一身上の都合により退職」とだけ書きましょう。
確かに、自己都合で会社を辞めるときには、退職の意思と理由を会社側に伝える必要がありますが、口頭でうまく退職理由を伝えられるか不安な場合でも、退職届に具体的な理由は書かないほうがよいでしょう。
その理由は以下で詳しく解説していきます。
「一身上の都合」とは? 意味や読み方を解説
一身上(いっしんじょう) | その人自身の身の上、境遇などに関すること。個人的な事情。 |
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※出典:精選版 日本国語大辞典
上記のように、「一身上の都合により退職」とは、個人の都合での退職、つまり「自己都合退職」を指します。「自己都合退職」とは、主にライフイベントや家庭の事情、キャリアアップのためなど、働く人の個人的な都合による退職のことです。
退職届で「一身上の都合により退職」を使ったほうがいい理由
①会社都合退職と自己都合退職の判別がしやすくなるため
「自己都合退職」か「会社都合退職」かによって、失業手当(失業保険)の給付開始日や給付日数が変わってきます。ハローワークで失業手当(失業保険)を受給する場合、必要書類を会社がまとめてハローワークに提出しますが、退職理由が「自己都合」「会社都合」のどちらになるのかは、最終的にハローワークが判断します。そのため、退職理由を詳細に書くことで、自己都合退職なのか会社都合退職なのかの判断がつきづらくなってしまい、場合によっては退職届の再提出を求められる可能性もあります。その点「一身上の都合により退職」と書いておけば、「自己都合での退職」と一目で分かるため、書類の手戻りが少なくなるでしょう。
退職理由による、失業手当(失業保険)の給付開始時期や給付日数の違いについては以下の記事も参考にしてください。
②円満に退職するため
退職届は書面で残るものです。そこにネガティブな退職理由が事細かに書かれていた場合、受け取る側も気分がいいものではありません。退職に当たり、会社にどうしても伝えたいことがある場合、書面には「一身上の都合により退職」とだけ書き、思いは口頭のコミュニケーションで伝えるのがよいでしょう。
ただその後の退職交渉を円満に進めるためには、口頭で退職を伝える場合も、基本的に退職理由は職場や現状への不満を理由にしないほうがベターです。うまく伝えられるか不安な場合は、事前に伝えたいことをメモに書くなどしてまとめておくとよいでしょう。
口頭での退職理由の伝え方については、以下の記事も参考にしてください。
退職届に「一身上の都合により退職」が使えないのはどんなとき?
①「会社都合退職」の場合
「一身上の都合」は「自己都合退職」を指します。会社都合で退職する場合は使うことができません。「会社都合退職」とは、会社の倒産やリストラなど、会社側の都合や判断による退職のことです。そのほか、ハラスメントを受けていたと認定された上での退職などの場合も「会社都合退職」となります。
今回の退職が「会社都合退職」に当たるかどうかは原則として会社が判断するため、自分がどちらに該当するか分からない場合は人事担当者に相談するとよいでしょう。特に退職後、失業手当(失業保険)の給付を希望する場合、「自己都合退職」と「会社都合退職」では給付開始日や給付日数が変わるため、確認しておくことをおすすめします。
また、退職後に離職票を受け取ったら「具体的事情記載欄(事業主用)」に「自己都合」と書かれていないかどうかも確認するようにしましょう。会社都合にもかかわらず、もし「自己都合」になっていたら、「具体的事情記載欄(離職者用)」に会社都合の退職であることが分かるよう記入し、離職理由を確認できる資料を持参の上、ハローワークに申し出るようにしましょう。
「会社都合退職」の場合の退職届の書き方
会社都合で退職する場合、退職届に記載する退職理由は「会社都合退職」であることが分かるように記載します。以下が文例となりますので参考にしてください。
- ・貴社の事業規模縮小により退職
- ・貴社の経営不振による退職勧奨により退職
- ・ハラスメントに伴う心身の不調により退職
- など
②「契約期間満了による退職」の場合
契約期間満了で退職した場合は、退職届に「一身上の都合により退職」という言葉ではなく、「契約期間満了により退職」と記載するのがよいでしょう。ただし、契約期間満了前に退職する場合は、自己都合退職か会社都合退職かで退職理由の書き方が変わります。
退職願・退職届での「一身上の都合」の使い方・書き方<例文あり>
退職願や退職届での「一身上の都合」の使い方を例文付きで紹介します。
・退職願(例文)
このたび、一身上の都合により、勝手ながら、20××年×月×日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。
・退職届(例文)
このたび、一身上の都合により、勝手ながら、20××年×月×日をもって退職いたします。
以下の記事では、退職願・退職届の書き方を詳しく解説しています。テンプレートのダウンロードもできるので、ぜひ参考にしてください。
退職願・退職届の正しい書き方や出すタイミング(テンプレートあり)
「一身上の都合」の正しい使い方を理解して、退職手続きをスムーズに進めよう
ここまで、「一身上の都合」の正しい使い方について解説してきました。「一身上の都合により退職」は「自己都合退職」を指す言葉です。「会社都合退職」の場合は使用しないので注意しましょう。
「自己都合退職」か「会社都合退職」かによって、失業手当(失業保険)の受給開始日や受給日数が変わります。退職後に失業手当(失業保険)を受給したい場合は、自分がどちらに当てはまるか、人事担当に確認するのがよいでしょう。
dodaでは、「一身上の都合」の使い方以外にも、退職交渉や退職手続きに関する内容を解説しています。失業手当(失業保険)を受給するための流れも詳しく解説しているので参考にしてください。
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この記事を監修した社会保険労務士
柴垣 和也(しばがき・かずや)
社会保険労務士法人クラシコ 代表
1984年大阪生まれ。
人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。
企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
国家資格キャリアコンサルタント
【経歴】
前職・前々職でメーカーの人事を8年半経験した後、パーソルキャリアでITエンジニア・コンサルタント・データサイエンティストの方々の転職支援に従事。人事としての知見や、年間約300人の方とお会いしてきた経験を活かしてアドバイスしています。技術トレンドや採用ニーズの変化が激しいIT領域において、求職者の方々が「何を大切にし、何をかなえたいのか』を明確にしてご支援することを大事にしています。