転職で年収が下がる人は3割程度
厚生労働省の「雇用動向調査(令和5年上半期)」の「転職入職者の賃金変動状況」によると、年収が「増加」したと答えた人は38.6%、「減少した」が33.2%でした。差分は大きくないものの、年収が「増加」した人のほうが多いことが分かります。一方で、年収が下がる人も同じ程度いるといえるでしょう。
▼転職入職者の賃金変動状況
転職で年収がどう変動したか
出典:厚生労働省「令和5年上半期雇用動向調査 転職入職者の賃金変動状況」
※転職入職者の賃金変動状況不詳(1.8%)を除く
次の章では実際にどのようなケースで年収が下がるのか、詳しく見ていきましょう。
転職で年収が下がるケースとその要因
転職で年収が下がる主な要因は以下のとおりです。大きく分けると、職種やポジション、働き方が変化するケースと、前職の給与・手当が標準よりも高かったために年収が下がるケースがあります。それぞれのケースについて詳しくご紹介します。
職種やポジションが変わるケース
職種やポジションが変わるケースとは、具体的にどのような転職でしょうか? それぞれ詳しく見ていきましょう。
未経験の業界や職種にジョブチェンジした
年収が下がるケースで特に多いのが、「未経験の業界や職種へのジョブチェンジ」です。
未経験で転職をする際、即戦力としての経験・スキルがあるわけではないため、入社後の活躍度合いを測りづらいことから、年収が下がることがあります。ただ、必ずしも未経験だと年収が下がるわけではなく、入社後に活かせる経験をアピールすることができれば、同等の年収で転職することも珍しくはありません。
自分の経験・スキルと転職先の仕事との共通点や親和性を見つけ、未経験でも入社後にアピールできる経験を見つけてみましょう。
前職より役職や階級が下がった
前職より役職や階級が低いポジションで転職して年収が下がるケースがあります。役職・階級が低くなると職位の分の手当がなくなってしまうからです。
ただ、管理職候補として、あえて初めはメンバーとして採用をするケースもあります。例えば、もともとマネジメントの立場にいた人が、転職先での仕事の進め方を理解するために、まずはメンバーとして働き、将来的に役職に就くことを期待されるというケースです。
このように、中長期的に見ると年収が戻る・上がるケースもあるため、入社後にどのように昇進していくのかを確認するのがおすすめです。
働き方が変わるケース
業務量や夜勤の有無によって、年収の変化が発生することもあります。詳しく見ていきましょう。
残業時間が減少した・夜勤などがなくなった
転職によって残業時間が減少したり、夜勤がなくなったりすると、時間外手当や深夜手当が減るため、結果として年収が下がるケースがあります。特に、夜勤の場合は、日勤(基礎賃金)と比較して割り増し手当が支給されます。このような手当がなくなる分、年収が下がって見える場合もあります。
前職の給与水準が高い・手当が充実しているケース
前職と転職先で給与水準や手当に違いがあると年収が下がる可能性があるでしょう。それぞれ詳しく見ていきましょう。
前職の給与・手当が一般的な給与水準よりも高い
業界や企業規模などによって給与水準や手当は異なります。現在の会社や業界が一般的な給与水準よりも高い場合、転職先によって年収が下がるケースがあります。家賃補助や資格手当などの福利厚生が豊富な企業から、そういった手当が少ない会社へ転職する場合も同様です。平均的な給与水準を知りたい方は、dodaの平均年収ランキングも参考にしてみてください。
給与水準の高い地域の会社へ転職をした
地域によって給与水準が変わることもあります。例えば、都道府県別の平均年収を集計したdodaが調査した「平均年収ランキング」では、エリアによって差があることが分かりました。一方、地域によっては生活にかかるコストが変わる可能性もあるため、額面の変化だけでなく、総合的な支出面で考えるとよいでしょう。
転職で年収が上がる・維持するケース
下記が転職で年収が上がる・維持するケースです。
- ・転職後に活かせるスキルをアピールできた
- ・転職によって役職が付いた
- ・同じ業界や職種へ転職した
- ・転職先の福利厚生や手当が多い
- ・給与水準が高い地域や企業に転職した
転職によって年収を上げるために重視されるのは、実務経験や業務で活かせるスキルです。そのため、転職後も活かせるスキルをしっかりアピールできれば、入社後の活躍を見込んで、年収を上げていくことができるでしょう。同じ理由で経験を活かせる同業種への転職も年収の維持または上昇を見込めるでしょう。
また、転職先の給与水準・手当が前職よりも高いと、同じポジションや職種であっても年収アップにつながりやすいといえるでしょう。
年収アップのコツについては以下の記事もご覧ください。
年収が下がっても転職するケースって?
転職で年収が下がることを不安に感じる方は多いかもしれません。ただし、目指したい働き方や仕事内容によっては、一時的に年収が下がっても転職を選択するケースもあります。具体例を見ていきましょう。
年収が下がっても転職を選択するケース(例)
- ・かなえたい中長期のキャリアビジョンがある
- ・やりたい仕事・自分に合った仕事ができる
- ・年収よりもプライベートの時間を大切にしたい
- ・転職後すぐは年収が下がるが、将来的には年収が上がる評価制度などが設けられており、生涯年収は高くなる
どの理由にも共通していえるのは、年収よりも優先してかなえたい条件があるということです。例えば、やりたい仕事に就く、働きやすさを優先する、将来のキャリアアップに向けて経験を積む、などが挙げられます。
ただし、入社後に年収が上がることを見込んで転職をしたものの、思いどおりにいかないケースもあるので、事前に自分の生活に必要な最低限の金額を知っておくことが大切です。
年収が下がるから…と転職を迷う人が、転職活動をするときに考えたいこと
働き方や将来のキャリアのことを考えた転職をした結果、一時的に「年収が下がる」ことは必ずしも悪いことではありません。しかし、生活のことを考えると、年収が下がるのはやはり不安に感じるでしょう。
転職で年収が下がる可能性がある場合に、押さえておきたいポイントをまとめました。詳しく見ていきましょう。
Point1:最低限必要な年収はいくらかを考える
転職で年収が下がる可能性がある場合、まずは今の生活を維持するために最低限必要な年収を明確にしましょう。年収が下がることによって、生活が成り立たなくなる恐れがあるなら、転職を避けるほうが無難です。
また、年収だけでなく、月々の手取りも把握しておくことが大切です。
転職後に年収が上がることを見込んで、一時期に最低限必要な年収以下になる転職を選択したとしても、入社後に想定どおり昇給できるとは限りません。
事前に昇給のスピード感を確認したり、モデル年収を確認したりして、慎重に判断しましょう。
Point2:目先の「年収」よりも「生涯年収」で考える
年収が一時的に下がっても、市場価値が高まる経験やスキルを得られれば、長期的に見て生涯年収が増える可能性があります。
未経験の業界であっても、将来的に年収が向上しやすい分野や職種ならば、一時的に年収が下がるのを受け入れるのも選択肢の一つでしょう。評価制度などにより、中長期的には生涯年収が高くなる見込みがあるなら、転職を前向きに検討する価値があるといえます。
業種別の生涯年収や将来の年収の伸び幅を知りたい方は、dodaの平均年収ランキングも参考にご覧ください。
Point3:スキルを活かした転職の可能性を考える
未経験の仕事にチャレンジしたいと考えている場合、今までの経験を活かしづらい仕事ではなく、少しでもスキルや経験を活かせる見込みのある仕事を選びましょう。また、資格取得や実績を積んでから転職したりするのも一つの選択肢です。
ただ、職種や会社によっては、資格を取得したけれど業務では使わず、評価されないというケースもあります。そのため、資格取得をする際は、自分が目指したい職種では、どのようなスキル・資格を評価されることが多いのかを確認してから取り組むことがおすすめです。
生活にあたって必要な年収を考えた結果、どうしても年収を下げたくない場合、今のスキルや知識を最大限に活かせる転職を検討してみましょう。入社後に活かせそうだと評価される経験があれば、年収維持または上がる可能性が高まります。もしスキルが不足しているなら、資格取得や実績を積んでから転職する、または経験を積める職場に転職して力をつけることも選択肢の一つでしょう。
「実際にどのようなスキルが評価されるのか分からない…」という場合は、転職のプロであるキャリアアドバイザーへの相談もおすすめです。dodaのキャリアアドバイザーに相談するためには、dodaエージェントサービスに申し込み、キャリアカウンセリングを受けてみましょう。
Point4:転職でかなえたい要素が満たされるかを考える
仕事に求める要素を振り返った際に、年収よりも重要視する要素があるかを見直してみましょう。例えば、年収よりも希望する仕事内容や働き方などを優先したい場合は、転職でかなえることができるかもしれません。
自分が求める職場環境やキャリアの方向性などのうち、どの要素を年収よりも優先すべきか、または同等に重視すべきかを整理することで、転職の判断がしやすくなります。
仕事に求める要素を振り返る際は、自己分析の結果や転職の軸を参考にしましょう。以下の記事もあわせてご覧ください。
年収が下がるのを防ぐには?転職活動のどのタイミングで注意すればよい?
現在の年収を維持もしくは上げたい場合、年収が下がるのを防ぐためには、転職活動の各フェーズでポイントを押さえることが重要です。転職活動の各フェーズに合わせて意識しておくべき注意点について解説します。
応募先を選ぶとき
応募先を選ぶとき、自分の経験やスキルが活かせる業界や職種の求人を選ぶと即戦力を見込まれ、年収も維持しやすくなります。
未経験の場合でも、自分の経験・スキルと転職先の仕事との共通点や親和性があれば、入社後の活躍を評価され、年収が下がらないケースもあるでしょう。
ただし、どの経験・スキルが活かせるのか、自分一人でイメージするのは難しい場合もあるため、dodaエージェントサービスを活用し、活かせるスキルを見つけたり、求人を紹介してもらったりすることも一つの手段です。
Point
共通点や親和性のある応募先選びのコツ
応募先を選ぶ際、自分の経験をどう活かせるかイメージを持つことが大切です。
以下の手順で考えてみましょう。- 1:応募先での働き方や1日のスケジュールを想像する
※おすすめの調べ方:「doda職種図鑑」や企業の採用ページ、社員インタビューのほか、YouTubeで「会社名+採用」「職種名+働き方」などと検索 - 2:自分の日々の業務内容を振り返る
- 3:応募先の業務と今までの自分の業務と共通点を探す
- もしイメージがつかない場合は、まずは自分の志向に従って応募してみて、一次面接に臨んだ際に「1日の流れ」や「自分が求められる役割」について質問し、入社後の働き方をより具体的に理解しておきましょう。
面接を受けるとき
面接時の注意点は、「活かせる経験・スキルをアピールすること」と「適切な希望年収を伝えること」の主に2つです。
面接でアピールするために大切なのは、入社後に活かせる経験・スキルを整理し、面接の準備をすることです。まずは、応募先の求人をよく読み込んで、仕事内容や日々の働き方についてイメージしましょう。その上で、日々の業務の中で、転職後に活かせるものをピックアップし、アピールにつなげます。
また、希望年収を聞かれた際に適切な希望年収を伝えるには、希望年収についての根拠を持って説明することが大切です。面接は複数回行われますが、1次面接で希望年収を質問されるケースも多くあります。その際、「御社の規定に従います」と答えるのが無難ですが、明確な希望年収がある場合は、ミスマッチを防ぐために根拠を持って伝えましょう。
例えば、「小学生の子どもが2人いて、生活をする上でこの金額が必要」や「将来のライフイベントや、自己研鑽に備えてこの金額が欲しい」などだと、納得感のある伝え方ができます。
また、希望年収を伝えたり、年収交渉をしたりする場合は、内定前がおすすめです。なぜなら、内定を出す際に企業内で稟議をしているケースが多く、稟議後に内定条件を変更するのは難しい可能性があるためです。そのため、選考中にタイミングや聞き方を見計らって確認する必要があります。
ただし、根拠なく高い年収を伝えたり、逆質問で年収にばかり触れたりするのは印象を悪くする恐れがあるため注意が必要です。適正年収の目安を知りたい場合は、dodaの年収査定や業界・職種の平均年収ランキングを参考にしてください。
面接で年収について確認・交渉するときのコツを知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「想定年収を把握しながら選考を進めたいけれど、自分では聞きにくい…」という方は、転職エージェントを利用し、エージェント経由で確認するのがおすすめです。
年収交渉に限らず、そのほか転職に関するさまざまな不安やお悩みも転職のプロであるキャリアアドバイザーに相談しながら進められるので安心でしょう。
転職活動における年収の悩みは、
転職のプロに相談しよう
転職と年収に関するよくある質問
転職での年収変化に関するよくある質問をご紹介します。事前に確認し、疑問を解消しておきましょう。
Q.年収を下げない(上げる)ために前職の年収を高めに言うのはアリですか?
A. 避けましょう。入社後に提出する源泉徴収票により、実際の年収は必然的に明らかになります。
うそをついていたことが発覚すると信用を失いかねません。入社後の待遇に影響がある可能性もあり、場合によっては内定取り消しなどの厳しい対応を受けるケースもあります。
自分のスキルや実績を具体的にアピールし、信頼される形で希望年収を伝えることが大切です。詳細は以下の記事もご覧ください。
年収が下がるか不安で転職活動に迷うなら、キャリアアドバイザーへの相談がおすすめ
「年収が下がるかも…」と思いながらの転職活動は心細いと思います。また、そのような状態で一人で転職活動をしていくと、転職サイトの求人情報の中で年収にばかり目が向いてしまいがちです。
そんな方には、dodaエージェントサービスで、キャリアアドバイザーと一緒に転職活動を進めるのがおすすめです。
キャリアアドバイザーがいれば、「この業界で○万円ということは仕事がハードそうですが問題ないですか?」といった客観的なアドバイスが受けられたり、「想定年収はいくらか」「希望年収がかなう可能性があるか」といった直接聞きづらい質問を、キャリアアドバイザーを通じて確認したりすることができます。
転職のプロであるキャリアアドバイザーは、さまざまな転職希望者の年収相談に応じてきた経験があります。そのノウハウを活かして、あなたの状況に合った転職をサポートします。
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