- Profile
森窓可(もり・まどか)さん - 1980年生まれ。東京学芸大学卒業後、JICA(独立行政法人国際協力機構)ボランティア青年海外協力隊の活動でネパールへ。小学校教諭として約20校の巡回指導にあたる。アウトドアメーカー勤務を経て、2013年JICAに転職。青年海外協力隊から帰国した会員の進路支援をするうち、サラヤのプロジェクトについて知る。現在、海外事業本部BOPビジネス推進室ウガンダユニット係長。
せっけんも水もない。
開発途上国の感染リスクに震撼
ネパールの小学校で目の当たりにした衝撃。それが森さんの原点だ。「校庭の隅にしゃがんで用を足した子どもが、真っ白な下痢を地面に残し、教室に帰っていくんです。トイレも水道もありません。子どもたちは病気の感染リスクにさらされたまま勉強をしているんです」。青年海外協力隊の活動で、教師として20校を巡回していた時のことだ。
「どうしたらいいんだろう」。途方に暮れた。せっけんも、水もない。それを手に入れるお金もない。学習の指導をするつもりで行ったネパールで、開発途上国の子どもたちには命の危険という切実な問題があり、何らかのサポートで環境を改善することが急務だと痛感する。「一時的な寄付などでは、とてもカバーできそうにない。利益を得られるビジネスとして、継続的に支援することが望ましいと、このころから意識していました」。
特に、青年海外協力隊の活動中に出会ったアウトドアメーカーからは、ビジネスの基本構造を学ぶところが多かった。そこで、まずは企業理念に深く共感していたそのメーカーに就職してビジネスの現場経験を積み、その後JICA(独立行政法人国際協力機構)に転職。青年海外協力隊の活動を終えたメンバーの進路支援を担当し、海外で活躍する企業の情報を集めるうち、サラヤがユニセフとともに立ち上げたアフリカ・ウガンダへの支援活動「100万人の手洗いプロジェクト」について知る。
「開発途上国の衛生環境向上に、こんなにも力を入れている企業がある」と知った時、「劣悪な環境をどうにかしたい。人が生きるためには、衛生がいかに大切か」という、ネパールでの強烈な記憶がよみがえった。サラヤの主軸である衛生商品が、開発途上国の衛生環境改善に直結しており、ビジネスで支援に関われるのも魅力だった。
ストレスなき導入で、現地の負担を軽く、
効果は最大に
サラヤへの転職を志した森さん。面接を担当した海外事業部BOP推進室室長の北條さんからも「援助ではなく、ビジネスで社会問題に関わる必要性を重視している」と聞き、強く共感したという。
「サラヤのプロジェクトは、手洗いという自社の強みを活かしたもので、継続を念頭に考えられ、一般ユーザーへのアピール力も十分。すでにウガンダに拠点を持ち、現地の手応えを得やすい立場にあるため、ビジネスニーズにも的確に応えられる可能性を感じました」。海外事業に長く携わってきた北條さんから森さんへの期待は、「顕在化している消費者ニーズがすべてとは限らない。現地に関わることで、本当に求められることを自ら考えて動く姿勢、何にでも積極的に取り組んでいけるスタンスが欲しい」というもの。森さんも「教育や啓発によって需要を広げていくプロジェクトですから、個人の裁量が重視される。新しいことに挑戦できる仕事環境だと感じました」と、むしろ望むところだった。
森さんは現在、年3回程度のペースでウガンダに赴き、現地にいるマネジングディレクターをサポートしている。例えば、それまであまり配慮されていなかった現地の文化・風習(ウガンダの人は体臭が強いので強い香りを求める、宗教上アルコールをよしとしないなど)について、あらためて把握して商品開発に反映するなどだ。
手指の消毒を啓発してきた最初の活動と並行し、医療器具の洗浄・消毒を病院に導入するという新しいプロジェクトも立ち上がった。森さんはその進行補佐として、予算の活用、取り組み手法、商品開発などを担当。「電源や水を供給するとともに、感染症対策のメリットを医療スタッフに納得してもらう必要があります。いかに現場にとってストレスの少ない導入ができるか?私たちの力量が試されます」。
世界にネットワークを広げ、
チャレンジングな仕事がしたい
森さんはサラヤの強みとして、ユニセフ、JICAなど「ほかの団体としっかり協力体制が組めるところ」を挙げる。すでに開発途上国で活動している世界的な団体とタッグを組めば、プロジェクトを社会にアピールする機会が増え、対象製品の売上1%を寄付するという目標を達成させやすく、プロジェクトそのものの継続も見込める。
さらにユニセフ、JICAを通じて豊かな出会いがあることも、ネットワークの広がりを呼び、新たな挑戦やそのための土台づくりにつながる。ウガンダでの活動報告も、提供した報告書がさまざまな場面で多くの人の目に触れ、消費者が知るきっかけとなり、プロモーション効果が見込める。森さんにとってJICAは前職。両者を知る懸け橋として、サラヤとJICAを有機的につなぐ役割を果たす。
「世界の他社に先駆け、資金を投じてビジネスを始めたサラヤ。ニーズにまっすぐ目を向け、やってみようという企業のチカラに、すごくチャレンジングなものを感じました。私も今後、日本国内では流通していない海外の素材を用いた商品に取り組んでみたい。例えば、開発途上国の植物などから、まだ知られていない効果的な天然由来成分などを見出し、商品展開することです。素材の産地から情報を引き出し、ビジネスとして成立するか、ほかの部署との連携はスムーズか、コスト面など、一つ立ち上げるにも、しなければならないことは多々ありますが、ビジネスを通じて関わるからこその面白みや継続性がある。フットワーク軽く、トライしたいですね」。
世界は広く、異国の地には新しい出会いも多い。誰も経験したことのない仕事が必ずあり、フロンティアスピリットを分かち合う満足感も大きい。森さんの目は、広く、遠く、世界の未来を見わたしていた。
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