会社があなたの退職を引き止める2つの理由
会社が社員の退職を引き止める場合、大きく2つのケースに分かれます。
会社側にデメリットがあり引き止めるケース
組織としての生産性や周囲の社員のモチベーションの低下を防ぐ、上司が自分の評価が下がることを懸念している、採用活動にかかるコストカットなど。
社員の将来を考えて引き止めるケース
その社員の経験年数が短く退職後のキャリアを心配している、まだまだ社内で活躍を見込めるポテンシャルがあるなど。
どちらの理由で引き止められているのか見極めた上で、自身の意向を伝えて円滑な話し合いが行えるように、どうすれば円満に退職できるのか冷静に考えましょう。
引き止めをかわして円満退職する方法とは?
上でお伝えしたような理由により、基本的にどの会社でも社員には退職してほしくないと考えています。退職を申し出た際、上司はあなたに会社に残ってもらうための提案や声かけをほぼ確実に行うと思って交渉に臨んだほうがよいでしょう。心構えやスケジュール調整、引き継ぎ準備など、円満退職に向けて準備しておくべきポイントを整理したので、役立ててください。
引き止めのかわし方【その1 心構え編】
「なぜ退職するのか」を上司や同僚など、周りの人に納得してもらえるような理由を固めることから始めましょう。「しばらくのんびりしたいから辞めたい」など、あいまいな言い回しや決め手に欠ける理由は、会社が引き止める口実になります。
「今とは別の業界に行きたい」「この会社にはないシステムに携わりたい」など、この会社ではかなえられない転職理由を伝えると、会社は引き止めにくいでしょう。
また、「近々退職したいと思っているのですが…」というあいまいな相談の姿勢では、会社もまだ引き止められる余地があると思ってしまいます。「退職を希望しています。〇月末で調整できないでしょうか」というように、退職の意思を明確に示した上で、具体的な日程や引き継ぎの方法などを相談するという意識を持ちましょう。
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引き止めのかわし方【その2 退職準備編】
退職の準備が十分に整っていないと「会社の規則」「引き継ぎの時間が必要」などの理由で引き延ばされたり、引き止められたりすることがあります。下記の項目に注意して準備を進めましょう。
・就業規則の確認
「退職予定日の〇日前までに意思表示すること」など、企業ごとに定められている場合があります。一般的には退職予定日の「1カ月前まで」と設定されていますが、中には、「3カ月前まで」としている企業もあります。転職活動中から、前もって就業規則を確認しておくことをおすすめします。民法第627条1項では「14日前まで」となっていますが、法律で定められているからといって就業規則を無視すると、退職交渉をスムーズに進められません。
・内定通知書
転職活動中であれば、必ず内定通知書をもらってから退職する意思を伝えてください。次の転職先や入社日が決まっていれば、会社も引き止めにくくなります。また、万が一、内定取り消しなどのケースに備えるために、内定通知書を受け取り、内容に選考段階での説明との齟齬や疑問点がないか確認してから退職交渉を始めたほうがよいでしょう。
・引き継ぎ準備
会社に退職意思を伝える前から退職を見越して、自分の業務のリストアップや、引き継ぎマニュアルの作成を少しずつ始めておきましょう。そうしておくことで、退職を伝えた後、速やかに業務の後任を相談でき、業務の引き継ぎがスムーズに進められます
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引き止めのかわし方【その3 退職交渉編】
引き継ぎ期間を踏まえて退職希望日を相談しなかった結果、引き継ぎを理由に希望日どおりに退職ができなかった、というケースも。また、退職の交渉自体が長引いて、思いどおりのタイミングで退職できなかった、というケースもあるようです。それを避けるために、退職意思を伝えて退職日を交渉するタイミングと目安の期間を知っておきましょう。
退職の意思を伝えるタイミングは、繁忙期を避けた上で引き継ぎや取引先への挨拶などを考慮し、遅くとも1カ月前をめどにしましょう。ただし、企業によって、退職日の何日前までに退職を申し出る必要があるかは異なります。必ず就業規則を確認しましょう。
退職交渉は、「退職の意思を伝えること」と「退職日の調整」をセットにして進めてください。退職交渉は1週間を目安に2回程度の短期間で終わらせることが重要。その際、調整を主導することも大切です。きちんと会議室を確保し上司のスケジュールを確認した上で、1対1 で話せる時間を作りましょう。なお、上司や人事から転職先の企業名を聞かれても答える必要はありません。
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【ケース別】引き止めにあったときの対処法
ここでは、企業が退職を引き止めるとき、どんなケースがあるのか、それに対する社員側の考え方(会社に残るのか、転職するのか)や断り方など、5つのケースを紹介します。
ケース1 待遇の改善を打診する引き止め
<引き止め例>
「年収を〇〇〇万円に上げる」
「残業時間を減らす」
「希望する部署へ異動できる」
「転勤しないように配慮する」
退職交渉時の待遇改善に関する話は、残念ながら口約束であることがほとんどです。待遇改善を条件に現職にとどまったものの、実際に待遇は改善されず、結局転職活動を再開する人もいます。
そもそも、退職交渉の場で初めて待遇改善の話をされるということは、それまで正当に評価されていなかったことの証しとも考えられます。また、待遇改善を理由に会社に残っても、「一度は辞めようとした人」と見なされるので、今後の昇進や評価に影響が出る可能性があることも考慮しておきましょう。
ケース2 良心に訴える引き止め
<引き止め例>
「今、辞められるとチームの皆が困る」
「君がいなければ、この部署は成り立たない」
「リーダーなのだから、辞めないでくれ」
「将来の幹部候補に考えている」
良心に訴えるような引き止めをされると、ついつい情に流されてしまうかもしれません。しかし、1人辞めただけでまわらなくなる組織やチーム自体が問題ですので、あなたが自責の念にかられる必要はありません。
会社に対して「感謝と退職は別もの」という態度をしっかり示してください。こうした情に訴える引き止めの場合、回数を重ねて徐々に退職をあきらめる方向に持っていく、あるいは大人数で引き止めることがありますので、毅然とした対応が必要です。
ケース3 不安を誘導する引き止め
<引き止め例>
「まだ一人前になっていない」
「在籍年数が少ない」
「転職はリスクが高い」
「転職先の会社は悪い評判がある」
「転職したら今より年収が下がる」
「まだ何も業績を上げていない」
退職の意思を示した社員を不安にさせて、転職を思いとどまらせるケースです。「成長していない」と言われても、不満のある職場でこのまま働いて成長できるかは分かりません。現職に感じている不満を自分の力で変えるのが難しいため、転職して成長できる環境を選んだのだということを忘れないようにしましょう。
転職先での成長を否定する上司の言葉を信じるか、実際に転職先の企業と話して可能性を感じた自分を信じるか、最終的な判断は自分でしなければいけません。
ケース4 期間を指定する引き止め
<引き止め例>
「引き継ぎがまだ済んでいない」
「現在のプロジェクトが終わるまで待ってほしい」
「退職は承知するが、半年後にしてほしい」
「あと1年頑張ってからでも遅くない」
会社側の都合で引き止められるケースや、期間を提示されて、もう一度検討するよう促されることがあります。特に、「関わっているプロジェクトが終わるまでなら…」という慰留をのんでしまう人は少なくありません。
しかし、業務の引き継ぎは個人ではなく、組織に引き継がれるものです。どうしても後任のめどが立たなければ、一時的にでも上司に引き継ぎ先になってもらうのもひとつの手です。有休消化の日数の調整で済む程度であればよいのですが、入社日が大きくずれると、入社先の企業に迷惑がかかるだけでなく、内定取り消しとなる可能性があるので、注意しましょう。
ケース5 強引な引き止め
<引き止め例>
「退職は絶対にさせない!」
「何を甘えたことを言っているんだ!」
円満退職を目指すのであれば、直属の上司に直接話すのが基本ですが、脅しに近いような対応をされて、上司とまともに話ができない場合は、電話やメールで退職を申し出るのもやむを得ません。
ほかにも直属の上司を超えて、人事や部長クラスに相談する方法もあります。その際は、憲法第22条の「職業選択の自由」や、民法第627条1項にある「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」など、退職に関する法的根拠を把握しておくとよいでしょう。
退職の引き止めに関するQ&A
- Q上司と対面で話すのが苦手なので、できればメールで退職を伝えたいです。
- どうしても上司と話すのが難しい事情があれば、メールによる退職の申し入れも絶対にNGというわけではありません。ただし、対面のほうが退職への強い気持ちを伝えられますので、まずはメールで退職意思を伝えた上で、改めて対面で正式に申し入れるのが得策です。うまく伝えられるか心配であれば、あらかじめ伝えたいことを紙などにまとめておきましょう。「退職面談をうまく切り抜けるコツは?」の記事で面談での心構えを解説していますので、ご覧ください。
- Q引き止めにあって退職日が延びた場合、内定先は入社日の延期を受け入れてくれるでしょうか?
- 入社日が変更できるかどうかは、企業の都合やあなたのポジション次第です。場合によっては、内定自体が取り消される可能性もありますので、入社日変更を相談する事態にならないよう、慎重に退職交渉しましょう。あらかじめ就業規則を確認しておき、退職日の何日前に報告する必要があるのか把握しておきましょう。また、退職日は「相談」ではなく、「報告」のスタンスで上司に伝えましょう。「入社日に間に合わない場合、どうすればよいですか?」の記事で、入社日を決める際のポイントや入社日交渉のポイントを解説しています。
- Q契約社員なのですが、契約途中でも退職はできますか?
- 最もスムーズに退職できるのは、契約を満了してから転職するケースです。ただし、勤続1年以上の場合は、契約途中であっても退職の希望を伝えて退職することができます(労働基準法第137条)。また、1年未満であっても「業務内容の法令違反や契約違反」「ハラスメントやいじめ」「本人の心身の病気」など、やむを得ない理由であれば退職できます。
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- 転職Q&A(内定・退職・入社)
- 内定後の流れや、入社までの不安、退職届の受理についてなど、内定・退職から入社までにまつわるちょっとした疑問や悩みに、転職のプロが答えます。
スムーズに退職するには、まず退職理由を自身でしっかり考えて、それを明確な言葉で上司に「報告」することが大事です。それでも引き止めにあった場合には、ケース別の対処法を参考にして、円満退職を目指してください。
この記事を監修したキャリアアドバイザー
住永 正(すみなが・ただし)
【経歴】
法人営業に従事後、dodaのキャリアアドバイザーとして10年以上にわたり2,000人以上の方の転職支援を行ってきました。医療業界専門誌「ミクス」Online上での連載「MR減少時代のサバイバル」執筆等の経験もあり、現在は、管理職として複数の事業領域を管掌しております。
【メッセージ】
職務経歴書を作り、応募して、面接して、内定をもらい、退職交渉をして、入社する。転職活動のプロセスは長らく変わっていないですが、転職市場の状況によって、どのプロセスが大変かが、大きく変わります。今、この時代に即した活動の仕方をお伝えします。
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