転職市場予測 不動産・建設の転職市場動向 2024下半期
設計、建築施工管理、土木施工管理、設計監理、設備保守、プラント関連・不動産売買、不動産仲介、不動産賃貸、不動産管理など、2024年下半期の不動産・建設業界における求人数の増減や求人トレンド、採用ニーズなどの転職市場予測をご紹介します。
2024年下半期、不動産・建設業界の求人数は引き続き高い水準
2024年下半期の不動産・建設業界の求人数は引き続き高い水準と予想されるものの、さらに増加が続くわけではなく、高止まりの状況となる見込みです。不動産・建設業界の求人数が多い背景には、少子高齢化による人手不足や業界全体の高齢化による世代交代の必要性、半導体や電子部品メーカーの工場や物流企業の倉庫などの設備投資が堅調に伸びていることがあります。
さらに、公共工事の2024年度政府予算は、国土交通省の一般会計総額で2023年度よりほぼ横ばいに推移しており、建設経済研究所が発表する住宅着工戸数も昨年度と同水準となることが見込まれています。これらのデータから、2024年下半期も不動産・建設会社への発注ニーズは継続されると予想されます。
一方、建設業界の「2024年問題」や円安・物価高は求人に対しマイナスの影響を及ぼす可能性もあります。時間外労働の上限規制への対応に現場は追われており、新たなシステムや制度が軌道に乗るまでは採用を抑制する動きが高まるでしょう。また、円安・物価高は資材や運輸コストの上昇を招き、2024年問題は一人当たり賃金の上昇や工期が延びる原因ともなります。これらによって利益に影響が出た企業は採用を控える傾向がありそうです。
建設業界の「2024年問題」とは?
労働基準法の改正により、2024年4月1日から復旧・復興の事業を除くすべての建設事業者に時間外労働の上限規制が適用されました。規制に対応するために、勤怠管理の強化・残業時間の抑制・割増賃金の見直しなど建設事業者が取り組まないといけない働き方の問題を総称して「2024年問題」といいます。従来は残業でこなしていた業務も人員補充やDXによる自動化などで対応する風潮が強まっており、業界全体で働き方改革や、現場の生産性向上に向けた施策が進められています。
2024年下半期、不動産・建設業界でニーズの高い職種や有効なアピールは?
2024年下半期の不動産・建設業界では、特に施工管理職のニーズが高まる予想です。メンバー、リーダー(主任)、マネジャー(所長)など各クラスで求人があり、1級施工管理技士(建築・土木・管工事・電気工事)と3年程度の現場代理人経験があれば転職成功の可能性は高まるでしょう。自身が得意とする工事案件の特徴も伝えられるとより印象に残りやすく、中堅・大手・スーパーゼネコンでは、マネジメント経験や原価・工期・品質リスクに対しどのように対処してきたかのプロセスや実績、成果も重視される傾向にあります。
また、2020年10月に改正建設業法が施行されたことで、監理技術者は複数の現場を担当できるようになりました。そこで、監理技術者あるいは監理技術者補佐として新制度にのっとった現場経験を持つ方は、職務経歴書に記載するとよいでしょう。特に監理技術者にとっては強い自己PRとなる可能性があります。
設計職は建築・土木を問わず、一級建築士や技術士の資格と実務経験の両方があることが不可欠です。設計の中でも電気系や空調系の設備設計の求人ニーズは高く、その背景には省エネニーズや環境問題への対応などで、メーカーをはじめとする発注元が電気関連の設備投資を継続することが見込まれるという事情があります。
工事管理および品質管理、積算職は、比較的求人数は少ないものの「施工品質を維持したい」「赤字リスクを低減したい」というニーズは発注者、施工者ともに高く、経験者の需要は大きいです。資格に加えて案件を主体的に進める能力も重視されるため、打ち合わせや基本計画、基本設計などに主担当として携わった経験を詳しく伝えましょう。
加えて、大手を中心に3DソフトのBIM(Building Information Modeling)推進の動きが加速しており、その使用経験やスキルは高く評価される傾向にあります。設計職のキャリアでは年齢・経験を重ねるごとに、案件の主担当からマネジメント、設計から監理など求められる役割が移行するため、実務から経験の幅を広げたいという方は、転職成功の可能性が高まります。
また、2024年問題で人員を増やそうとしている施工管理職は転職のチャンスが大きいです。特に建設系のアウトソーシング企業や各地域に根差している地場の建設会社は施工管理職の採用意欲が高く、その背景には自社で足りない人材をアウトソーシング企業から補完しようとする動きや世代交代のニーズがあります。施工管理職は、現場で工事の管理監督をする仕事のため、未経験から挑戦したい場合は、これまで社内外の調整や顧客折衝に取り組んだ経験をアピールするとよいでしょう。設計職はより経験と資格が求められる傾向にあり、未経験の方のハードルは高いことが多い状況です。
不動産・建設業界の人材は、どんな動機で転職している?
2024年下半期の不動産・建設業界では、引き続き、スキル・経験のステップアップとして受注側から発注側へ転職したいというニーズが見られるでしょう。最近では、結婚や子育てを機に転勤のない仕事を希望したり、働き方改革で残業が減ったことを機に年収アップを狙ったりするなど、ライフイベントや働き方の変化が転職の動機となるケースも少なくありません。
加えて、不動産・建設業界での経験を活かしながら異業種への転身をかなえたいという方の中には、ここ数年増加傾向にある建設関連のIT企業に目を向ける方もいます。
不動産・建設業界の企業は給与アップや制度作りに取り組んでいる
2024年下半期の不動産・建設業界で、企業は2024年問題によって以前より残業手当が減るという従業員の懸念や不満に対応し、追加の手当てを支給したりベースアップにより給与水準を上げたりする取り組みが増えるでしょう。また、転勤なしで働きたいというニーズに対応し、大手企業を中心に一定のエリアに転勤先を限定する地域限定社員制度や子育て・介護などで転勤が難しい方を対象に一定期間転勤を免除する制度を設ける企業もあります。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー
【経歴】
2008年、株式会社インテリジェンス(現・パーソルキャリア株式会社)へ入社。現在はキャリアアドバイザーとして主に不動産・建設業界におけるエンジニア(施工管理、設計、開発、不動産管理など)の方のキャリア相談、転職活動サポートを担当。
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