働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度
育児時間とは?申請方法や具体的な使い方も解説
更新日:2024年4月26日
子どもを育てながら働く女性が利用できる制度は多くありますが、そのなかでも利用条件や対象者がよく分からず、見過ごされてしまいがちなのが「育児時間」の制度です。この育児時間は子どもが何歳になるまで利用できるのでしょうか。申請方法や具体的な使い方、給与の扱いなどのよくある疑問について詳しく解説していきます。
育児時間とは?
「育児時間」とは、1歳未満の子どもを育てる女性が、法定の休憩時間とは別に、育児のために1回30分の休憩を1日に2回取得できる制度のことです。
この説明を聞くと、「子どもの世話をする時間すべてが対象になる?」「育休や時短勤務制度とはどう違う?」といった疑問が出てくるでしょう。
そこで、働くママの強い味方になる育児時間について、制度の具体的な内容や対象者などをチェックしていきましょう(※1)。
働くお母さんと赤ちゃんを守るのが目的
育児時間は法律で定められた制度です。
労働基準法には、働くお母さんと赤ちゃんを保護するための「母性保護規定」が設けられており、その中で定められた制度の一つとして育児時間があります。
もともとは「授乳などで乳幼児を育てるための時間」を確保するための制度として制定されました。
しかし、その認識も変化し、現在では、「育児をするために必要なちょっとした時間」として取得できるようになっています。
実際には、育児時間中の過ごし方は申請者の判断に任せられているケースが多いようです。
子どもが1歳未満であれば申請可能
育児時間は、1歳未満の子どもを育てながら働いているすべての女性が対象です。
したがって、どのような雇用形態で働いていても育児時間を申請できます。
もちろん義務ではないので必ずしも申請する必要はなく、会社が強制的に取得させて勤務時間を短縮することもできません。
育児時間の長さと1日の利用回数
育児時間は、具体的にどのくらいの時間と回数を取得できるのか見ていきましょう(※1)。
1日当たり30分×2回が基準
育児時間の利用回数は、30分を一区切りで考えます。
所定労働時間が1日8時間の場合、育児時間は少なくとも30分を2回取得できます。所定労働時間が4時間以内なら30分を1回です。
さらに、育児時間をどの時間帯に請求するかは従業員の自由とされています。例えば、以下のような使い方も可能です。
<実際の利用例>
- 始業直後と終業間際に30分ずつ育児時間を取る
- お昼の休憩時に30分、それ以外の好きなタイミングで30分の育児時間を取る
まとめて1時間にすることも可能
育児時間はまとめることも可能なので、2回分を合わせて1時間とし、1日に1回の利用にすることもできます。
<実際の利用例>
- 始業と同時に1時間の育児時間を取り、朝に余裕を持たせる
- お昼の休憩時に合わせて取得し、午後の勤務時間を1時間短縮する
- 終業直前の1時間を育児時間に充てて、早く帰る
所定勤務時間が8時間の場合、「育児時間は30分ずつなら1日2回、1時間なら1回」と覚えておき、タイムスケジュールを踏まえて自分に合った取り方を考えてみましょう。
育児時間の申請方法
労働者が育児時間の取得を申請した場合、勤務先はその申請を拒否することができません。
また、育児時間の申請方法には、法律による明確な規定がありません。基本的には、育児時間の取得は事業主と従業員の話し合いで決まります。
したがって育児時間の申請は、勤務先の就業規則を確認し、定められた方法で行いましょう。
ただし、企業によっては育児時間に関する明確な規則がなく、これまでの慣例に従って応じているケースもあります。
もし不安がある場合は、職場の先輩や上司に相談して申請方法を確認してください。
もし申請が却下されたら
育児時間の申請は働きながら子どもを育てる女性の権利であり、事業主にはこれに応じる義務があります。
しかし中には、育児時間の申請を却下されるというケースもゼロではありません。
もし直属の上司に育児時間の申請を却下されてしまったら、さらに上の上司や人事・労務などの部署、勤務先の労働組合に相談してみましょう。
それでも解決しない場合は、最寄りの労働局や労働基準監督署に出向いて相談するという選択肢もあります。
育児時間についてのよくある疑問
上手に利用すると育児と仕事の両立がしやすくなる育児時間ですが、デメリットも気になりますよね。とくに給与への影響などが分からず、利用するまでのハードルが高いと感じる人もいるでしょう。
そこで、育児時間のよくある疑問について、具体的な回答や解決方法を紹介します。
時短勤務との併用はできる?
時短勤務制度と育児時間は申請できる条件が同じなので、「どちらか一方しか利用できないのでは?」と不安になるかもしれません。
しかし、時短勤務制度と育児時間は併用できます。
そもそも、時短勤務制度は育児・介護休業法で定められた制度です(※2)。一方、育児時間は労働基準法で定められています。
つまり、時短勤務制度と育児時間は異なる制度です。そのため、時短勤務を利用すると育児時間が利用できないといった制限はありません。
ただ、ごくまれに「時短勤務制度を利用する場合、育児時間は申請できない」と定めている企業もあります。詳しくは勤務先に確認しましょう。
育児時間中の給与は支払われる?
育児時間は、あくまで“休憩時間”なので、その時間には給与が発生しません。
例えば時給1,000円で働いているパートタイム従業員の場合、30分の育児時間を取ると500円分、1時間の育児時間を取ると1,000円分が無給扱いになります。
これは、「ノーワーク・ノーペイ(働いていなければ払わない)」の原則に基づく考え方です(※3)。ただし、就業規則の内容次第で対応が変わることもあります。
給与に関して疑問があるときは、必ず就業規則を確認するか、勤務先に尋ねておきましょう。
育児時間は男性にも適用される?
もともと育児時間は授乳を念頭においた制度のため、基本的に男性は取得できません。
ただし、会社によっては男性が取得できるも場合もあるので、就業規則を確認するか、勤務先に尋ねてみましょう。
パートやアルバイトでも育児時間は利用できる?
どのような雇用形態であっても育児時間を請求できるため、正社員・派遣社員・パートタイム・アルバイトなどの区別なく利用可能です。
ただし、労働基準法では8時間勤務をしている女性労働者を対象としているため、1日の勤務時間が4時間を下回る場合は、通常の半分である1日1回30分の育児時間となることもあります。
公務員は利用できる?
公務員も、民間企業に勤めている人と同様に育児時間を申請できます。
また、育児休業制度や育児短時間勤務制度(時短勤務制度)といった、ほかの制度も同様に適用されます。
変形労働時間制の場合は?
変形労働時間制とは、1日の勤務時間が8時間と決まっておらず、週単位や月単位で労働時間を決められる制度のことです。
もちろん、この場合でも1日2回30分ずつの育児時間を申請できます。
育児時間中に子どもの送り迎えは可能?
育児時間を「子どもの授乳や世話のためだけの時間」と考える人もいます。しかし、育児時間は「子育てに必要なことをこなす時間」です。
そのため、育児時間中に子どもの送り迎えをしても問題ありません。子どもの登園や通院、その他のアクシデントに備えるために取得している人もいます。
ただし、育児時間には移動時間も含まれます。子どもの送り迎えが主な用途の場合には、渋滞や混雑などで遅れないように注意しましょう。
遅れてしまっても、会社によっては柔軟に対応してくれるケースもあるようです。育児時間の超過が心配な場合は勤務先に確認すると安心ですよ。
育児時間の使い方
育児時間にはどのような取り方・使い方があるのか、具体的な例を紹介します。
子どもの急病やけがなどの通院
事後申請が認められている場合は、子どもの急病やけがなどがあった際に育児時間を取得することで、臨機応変に遅刻や早退ができます。
子どもが保育園を休ませるほどではない体調不良のときや乳児健診のときなどに、育児時間を取得して通院してから出勤するといった使い方も可能です。
1時間以上かかってしまいそうな場合は、子どもが小学校就学前であれば看護休暇の取得も可能なので、必要に応じて併用を検討してみるとよいでしょう(※2)。
保育園のお迎えを早める
保育園によっては1歳未満の子どもの預かり時間が短く、延長保育を利用できないことがあります。
そのような際にも、終業時間までの1時間を育児時間にすれば、お迎えを早められるでしょう。
忙しい毎日のなかで少しでも使える時間が増えると、かなり助かりますよね。
育児時間の申請を行うと、働きながらの子育てにも心の余裕が生まれ、産後の体調も整いやすくなるかもしれません。
育児時間を上手に利用して心と体のバランスを保ち、仕事と育児の両立に役立てていきたいですね。
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
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