働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度
育休(育児休業)の期間は?いつまで取得できる?延長例や給付金も解説
更新日:2024年5月27日
育児休業は子どもの養育を目的として設けられた休業制度です。多くの働くママは産休に続けて育休を取得していますが、両親が協力して育児に取り組めるように、父親の育児休業の取得促進のための特例も設けられています。そこで今回は、育児休業が取得できる期間はいつまでか、受け取れる給付金の金額、延長申請の手続きや退職をする場合の扱いについて詳しく解説します。
育休とは?
育児休業(育休)とは、子どもの養育を目的とした休業です。
子育てや介護をしやすくするため、時短勤務や休業支援、再就職の促進を目的として策定された「育児・介護休業法」で、制度として定められています(※1)。
育児休業と育児休暇の違い
一般的に「育休」と呼ばれているものには「育児休業」と「育児休暇」があります。
育児休業が育児・介護休業法で保証された「1歳未満の子を持つ従業員の権利」であるのに対して、育児休暇は法的に保証されたものではありません。
育児のために取得する休暇が「育児休暇」と呼ばれており、会社の就業規則などに定められている場合に限り利用できます。
ただし、事業主に手当を支払う義務はなく、基本的には無給休暇であると考えたほうがよいでしょう。
なお、育児休暇に似たものとして、子どもの病気やけが、予防接種、健康診断のために取得できる「子の看護休暇」があります。
子の看護休暇は、育児・介護休業法に定められた制度です。
子の看護休暇について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
産休(産前・産後休業)との違い
「育休」とともに、子育てと大きく関わりのある休業が「産休(産前・産後休業)」です。
産休は、出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から産後8週間まで取得できる休暇です(※2)。
出産のための休業なので、女性にのみ取得が認められています。
後述するように、育休の取得には一定の条件がありますが、産休は産前・産後の女性労働者であれば誰でも取得できます。
産前休業は任意取得ですが、産後休業は任意ではありません。出産翌日から8週間は働くことそのものが禁止されているためです。
ただし、産後6週間を経過した時点で、医師が認めた場合は職場復帰を早めることが可能です。
産休について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
育休を取得できる条件
1歳に満たない子どもを養育する場合、事業主に申し出ることで希望する日数分の育児休業を取得できます。
女性だけでなく、男性も取得可能です。
仮に勤務先の就業規則に育児休業に関する規定がなかったとしても、会社側は育児休業の申請を拒否できません(※1)。
期間契約の場合の取得条件
パートタイマーやアルバイト、契約社員、嘱託社員など、期間に定めのある雇用形態の場合、育児休業を取得するには以下の条件が求められます。
- ・子どもが1歳6カ月になる日まで(期間を1歳6カ月から2歳まで再延長する場合は、2歳になる日まで)に雇用契約がなくなることが明らかでないこと
なお、日雇いの場合には育休を取得できません。
申請期限
育児休業の申請期限は休業開始の1カ月前までと定められています。
また、子どもが1歳6カ月になるまで育児休業を延長する場合は、1歳の誕生日の2週間前までに申し出ることが必要です。
育休を取得できる期間はいつからいつまで?
育休を取得できる期間はどのくらいでしょうか。延長できるケースも含め、押さえておきましょう(※1)。
期間はどのくらい?
育児休業は、1人の子どもに対して2回まで取得できます。
子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの間で、希望する時期に取得できます。ただし、一定の条件を満たせば、1歳の誕生日以降も延長可能です。
具体的には以下のとおりです。
【1歳の誕生日前日まで取得】
前述の育児休業の取得条件を満たせば取得可能です。
なお、女性の場合、産後8週間は働くことそのものが禁止されています。そのため、育児休業を取得できるのは産後8週間経過後から子どもが1歳になるまでのおよそ10カ月間です。
男性の場合は、子どもが誕生してから1歳になるまでの最大12カ月間の育児休業を取得できます。
【1歳の誕生日から1歳6カ月になるまで延長】
以下の条件を満たせば延長可能です。
- ・1歳の誕生日の前日に本人またはその配偶者が育児休業中である
- ・以下の①と②のいずれかに当てはまる
①保育所への入所を希望しているが入れない
②子どもを育てる予定だった配偶者が、死亡やけが、病気、離婚によって育児をすることが難しくなった
【1歳6カ月になった次の日から2歳の誕生日前日まで延長】
以下の条件を満たせば延長可能です。
- ・1歳6カ月になる日に本人またはその配偶者が育児休業中である
- ・以下の①と②のいずれかに当てはまる
①保育所への入所を希望しているが入れない
②子どもを育てる予定だった配偶者が、死亡やけが、病気、離婚によって育児をすることが難しくなった
育休の期間延長申請にはどんな手続きが必要?
育児休業の延長手続き期限は以下のとおりです(※1)。
- ・1歳6カ月になるまでの延長:1歳の誕生日の2週間前まで
- ・2歳になるまでの延長:1歳6カ月になる翌日の2週間前まで
提出書類は以下のように延長理由ごとに異なるため、注意しましょう。
子どもが保育所に入れなかった場合
自治体が発行する、保育所等において保育が行われないことを証明する書類を勤務先に提出します。
原則本人の手続きが必要ですが、ごくまれに勤務先に手配してもらえる場合があります。
子どもを育てる予定だった人が死亡やけが、病気、離婚によって育児をすることが難しくなった場合
以下の書類などが必要になります。
- ・世帯全員の住民票の写し
- ・母子健康手帳
- ・保育を予定していた人の状態に関する医師の診断書
なお、一部例外はありますが、基本的には子ども1人につき期間を分けて2度申請することはできません。
男性も育休を取得できる?
育児休業は男性も取得でき、夫婦同時に取得することも可能です。
女性の場合、育休は産休終了後から取得することになりますが、男性は子どもの出生日から取得できます。
また、最長1年間を2回に分割取得することができるようになりました。
さらに、育児・介護休業法には、男性の育児休業の取得促進および夫婦が協力して育児休業を取得できるように特例が設けられています。
それが「パパ・ママ育休プラス」と「産後パパ育休(出生時育児休業)」です(※1)。
「パパ・ママ育休プラス」は、通常子どもの1歳の誕生日前日まで取得できる育休を、父母ともに取得する場合に限り、子どもが1歳2カ月になるまで延長できる制度です。
ただし、育休の取得期間そのものは延長前と変わらず、最長で1年間とされています。
パパ・ママ育休プラスについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
「産後パパ育休(出生時育児休業)」は従来の「パパ休暇」を廃止して、2022年10月から創設された制度です。詳しくは次の章で説明します。
新たな制度「産後パパ育休(出生時育児休業)」
かつて、「パパ休暇」という制度がありました。妻の産後8週間以内に夫が育児休業を取得した場合、2回目の育児休業を取得できる、というものです。
しかし、育休取得率の向上や、男性の家事・育児への参加促進、女性の社会復帰支援などを背景に、制度の見直しが行われました。
これに伴いパパ休暇を廃止して、新設されたのが「産後パパ育休(出生時育児休業)」です(※1)。
産後パパ育休(出生時育児休業)とは
産後パパ育休とは、産後8週間以内であれば、最長4週間まで休業を取得できる制度です。4週間をまとめて取得したり、2回に分割して取得したりできます。
労使協定の締結によっては休業中の就業も可能で、業務の状況を勘案しながら柔軟に取得できるようになっています。
「パパ休暇」と「産後パパ育休」の違い
産後8週間以内を対象期間としている点は、従来のパパ休暇と変わりません。
産後パパ育休では、この仕組みがより柔軟になり、取得可能日数を最長4週間として、2回に分割して取得することが可能となりました。
「産後パパ育休」と「育児休業」は別の休業制度
産後パパ育休は、出生時育児休業ともいわれているように、子どもが生まれたときに取得する休業です。
それに対して育児休業は、子どもの1歳の誕生日前日まで取得できる休業であり、産後パパ育休とは異なります。
そのため、産後パパ育休と育児休業を組み合わせれば、最大4分割で休業を取得することも可能です。
育休中に受け取れるお金は?
育児・介護休業法では休業中の収入は保証されていません。その代わり、健康保険や雇用保険から支給される給付金があります。
出産手当金
健康保険の加入者が出産のために会社を休み、給与の支払いを受けなかったときに支給される手当金です(※2)。
出産日以前42日(出産日を含む)から出産日の翌日以降56日を加えた98日間が支給対象となります。出産が予定日より遅れた場合は、その遅れた期間も含まれます。
支給金額は以下のとおりです。
支給額=支給開始以前12カ月間の標準報酬月額平均÷30日×2/3×日数
詳しくは以下の記事をご覧ください。
出産育児一時金
子ども1人につき最大で50万円が支給される給付金です(※3)。
保険組合や支払機関を通じて医療機関に支払われるため、出産費用の自己負担が不要、あるいは超過分のみになることが大きなメリットです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
育児休業給付金
原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した場合、一定の要件を満たすと「育児休業給付金」の支給を受けることができます(※4)。
育児休業給付金の支給額の計算式は以下のとおりです。
- ・育児休業の開始から6カ月目までの支給額=育児休業開始日前の6カ月間の賃金÷180日×支給日数×67%
- ・7カ月目以降の支給額=育児休業開始日前の6カ月間の賃金÷180日×支給日数×50%
育児休業を延長した場合も7カ月目以降と同様です。子どもが1歳6カ月または2歳になるまで、賃金月額の50%を受け取ることができます。
また、育児休業を2回まで分割取得できるようになったことに伴い、1歳未満の子について原則2回の育児休業まで、育児休業給付金を受けられます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
出生時育児休業給付金
産後パパ育休を取得した場合、一定の要件を満たすと「出生時育児休業給付金」の支給を受けられます(※4)。
出生時育児休業給付金の支給額の計算式は以下のとおりです。
支給額=休業開始時賃金日額×出生時育児休業を取得した日数×67%
基本的な考え方は育児休業給付金と同じです。
出生時育児休業給付金が支給される日数は、育児休業給付金の支給率67%の上限日数(180日)に通算されます。
つまり、28日分の出生時育児休業給付金の支給を受けた場合、支給率67%の育児休業給付金を受けることができるのは、残り152日分となります。
また、支給要件は以下のとおりです。
- ・休業開始日前の2年間に、賃金の支払い基礎日数が11日以上の完全月が12カ月以上あること
- ・休業期間中の就業日数が、最大10日以下(10日を超える場合は80時間以内)であること
申請期間は、子どもの出生日から8週間経過した翌日から2カ月後の月末までです。2回に分割して取得した場合でも、給付金の申請は1回にまとめて行います。
育休中に退職した場合はどうなる?
育児休業給付金は職場復帰を前提とした制度なので、退職の予定がある場合は申請できません。
しかし、復職予定だったものの、育児休業中に生活の変化で退職を希望するケースもあるでしょう。その場合について詳しく見ていきます。
育休中の退職は可能?
本人の意思による場合は育児休業中に退職できます。ただし、事業主が退職に追い込むような働きかけをすることは違法です(※1)。
育児休業給付金は退職後に受け取れる?
育児休業給付金は雇用保険の加入者であることが給付条件なので、退職日を含む月以降は受け取れません(※4)。
育児休業中に退職したとしても、それまでに受け取った育児休業給付金の返還義務はありません。
ただし、退職する予定を隠して受給していた場合は返還義務が生じます。
育児休業終了時に退職した場合でも、育児休業中の退職と同様、意図的に退職の予定を隠していた場合は返還義務が発生します。
育児・介護休業法の改正で何が変わった?
育児・介護休業法は、2021年に大きく改正され、2022年4月、2022年10月、2023年4月の3段階で施行されています(※1)。
法改正によってどのような点が変わったのか押さえておきましょう。
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
従来の制度としてあった「パパ休暇」を廃止して、2022年10月から新設されたのが「産後パパ育休」です。
男性が子どもの出生後8週間以内に、育休とは別に最長4週間の休業を取得できます。
申請期間は休業前2週間前まで。労使協定で定めた場合は1カ月前までです。
男性が出生直後に育児休業を取得することで、子育てへの積極的な参加を後押しすることが期待されています。
育児休業の分割取得が可能に
従来の育休制度では、育児休業を分割して取得することはできませんでした。
しかし、2022年10月の法改正によって、取得の際にそれぞれ申し出を行うことで、分割して2回取得することが可能になりました。
例えば男性であれば、産後パパ育休と組み合わせることで、業務の都合や会社の状況に合わせて休業できるため、育児休業を計画しやすくなるでしょう。
女性は、子どもが1歳未満であれば「育児時間」の取得も可能です。育児休業以外の制度も組み合わせて育児計画を考えてみるとよいかもしれません。
育児時間について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
事業所に対し、研修の実施や相談窓口の設置など、育児休業の申し出がしやすくなる環境整備を行うことが義務づけられるようになりました。
従業員に対しても、法令や自社による育休制度や社会保険料の免除などを提示し、休業取得について意向を確認する必要があります。
申し出をしないよう威圧する、不利益をほのめかすなど、取得を控えさせるような形で行ってはいけないということも定められています。
こちらは2022年4月1日から施行されました。
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
雇用形態にかかわらず、育児休業が取得できるように2022年4月から取得要件が緩和されました。
従来は「引き続き雇用された期間が1年以上であること」、あるいは「1歳6カ月までの間に雇用期間が満了することが明らかでないこと」が要件となっていました。
このうちの「引き続き雇用された期間が1年以上であること」が撤廃され、有期雇用者の育休取得の可能性が広がりました。
育児休業取得状況の公表の義務化
2023年4月から、常時雇用する労働者が1,000人を超える事業所では、育児休業などの取得状況を公表することが義務づけられるようになりました。
公表内容は、「男性の育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。
育児休業は、最長で子どもが2歳になるまで取得できる休業です。また、休業期間中には生活を支えるためのさまざまな給付金が用意されています。
パパ・ママ育休プラスや産後パパ育休などの制度もうまく組み合わせて、パートナーと協力して楽しく子育てに取り組んでいきましょう。
参考
※1 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
※2 厚生労働省「産前・産後休業を取るときは」
※3 全国健康保険協会「子どもが生まれたとき」
※4 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
社会保険労務士法人クラシコ(https://classico-os.com/)20の質問に回答するだけ
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