働く女性が知っておきたい妊娠・出産・育児の制度
出産育児一時金の申請方法と受取条件|いつまでに手続きすればいい?
更新日:2024年5月27日
出産育児一時金は、公的医療保険に加入している被保険者・被扶養者が出産した場合、国から最大で50万円の支給を受けられる制度ですが、いつまでに申請手続きをすればよいのでしょうか。「直接支払制度」「受取代理制度」「事後申請」それぞれの申請方法や受取条件、退職・転職をしたケースについて解説します。
出産育児一時金とは
出産育児一時金は、健康保険や国民健康保険、共済組合や船員保険などの公的医療保険に加入している被保険者や被扶養者が出産した際に支給される一時金です(※1)。
被扶養者が受給する場合は「家族出産育児一時金」と呼ばれますが、出産育児一時金と同一のものです。
分娩・出産は病気ではないので健康保険は適用外となり、病院やクリニックなど医療機関への出産費用の支払いは自己負担となります。
出産費用は、病院や母体の状況などによって異なりますが、一般的には50万円程度とかなりの高額です(※2)。
しかし、出産育児一時金を申請すると出産費用の一部に充てられるため、経済的な負担が減ります。
出産育児一時金の支給額は?
出産育児一時金の支給額は以下のとおりです。
支給額 | |
---|---|
産科医療補償制度に加入している医療機関で、妊娠22週以降に出産した人 | 子ども1人につき50万円 |
産科医療補償制度に未加入の医療機関で出産した人 | 子ども1人につき48万8,000円 |
産科医療補償制度に加入している医療機関で、妊娠22週未満で出産した人 |
出産育児一時金と混同されがちな給付金として、「出産手当金」があります。
出産手当金は被保険者が出産を理由に仕事を休んだ際に支給されるものなので、出産育児一時金とは別の制度です(※3)。
出産育児一時金の受取条件
【支給対象者】
出産育児一時金の支給対象者となるのは、公的医療保険に加入している被保険者、または公的医療保険に加入している夫の被扶養者です。
【妊娠期間の条件】
妊娠4カ月目(85日目)以降で出産したことが条件です。
妊娠から4カ月目以降であれば、正常分娩のほか、帝王切開、流産、早産、死産、人工妊娠中絶も支給対象に含まれます。
いつまでに申請すればいい?
受給するためには申請書に必要事項を記入して、出産翌日から2年以内に申請する必要があります(※4)。
具体的な手続方法は保険者により異なります。
加入している健康保険組合(または協会けんぽ、共済組合など)に、国民健康保険に加入している場合は各市区町村に問い合わせましょう。
また、後述する「直接支払制度」と「受取代理制度」を利用する場合、事前申請が必要になるため注意してください。
退職・転職した場合でも出産育児一時金は受け取れるの?
出産のために退職して夫の扶養に入った場合、出産後は扶養家族として家族出産育児一時金を受給できます。
妊娠中に退職して後に出産した場合、以下の条件を満たせば自身が加入していた健康保険組合から出産育児一時金を受給できます。
- ・退職するまでに1年以上、継続して健康保険の被保険者である
- ・健康保険の資格を喪失してから6カ月以内に出産した
受け取りは夫か自身の健康保険組合のどちらか一方のみです。重複して受け取ることはできません。
また、転職直後に妊娠が発覚したとしても、前述の受取条件を満たしていれば新たな勤務先の健康保険組合から支給されます。
出産育児一時金の「直接支払制度」とは
直接支払制度とは、出産育児一時金を、分娩した医療機関に健康保険組合が直接支払う制度のことです(※1)。多くの医療機関で利用できます。
直接支払制度を利用すれば、出産費用としてまとまった額を事前に用意する必要がなくなります。
直接支払制度の申請の流れ
直接支払制度を利用する際の一般的な流れは以下のとおりです。下線部分が被保険者・被扶養者が手続きを行う部分になります。
- 1.医療機関に保険証を提示し、直接支払制度に関する書類にサイン・申し込みをする
- 2.出産後、被保険者に明細書が交付される
- 3.医療機関が審査支払機関に請求する
- 4.審査支払機関が健康保険組合に請求する
- 5.健康保険組合が審査支払機関に支払いをする
- 6.審査支払機関が医療機関に支払いをする
申請は出産費用の支払前に行うことになります。
出産費用と出産育児一時金に差額が発生した場合
【出産費用が出産育児一時金を上回る場合】
出産費用が出産育児一時金の支給額を超えた場合、超過分を退院時に支払うことになります。
【出産費用が出産育児一時金を下回る場合】
出産費用が出産育児一時金の支給額に満たなかった場合、自己負担は発生せず、健康保険組合へ請求することで差額分を支給してもらえます。
出産育児一時金の「受取代理制度」とは
直接支払制度は、多くの医療機関で利用できるものの、小規模の医療機関では導入されていないケースがあります。
その場合に利用できるのが、出産育児一時金の申請を医療機関に委託して手続きをしてもらう「受取代理制度」です(※1)。
この制度でも、出産費用の自己負担を減らすことができます。
ただし、この制度を利用できるのは、厚生労働省へ届け出を行っている医療機関などに限られます(※5)。
出産予定の病院が受取代理制度を利用できるか、事前に確認しておくとよいでしょう。
直接支払制度と同様に利用する場合は事前申請が必要ですが、出産予定日まで2カ月以内という条件付きです。
受取代理制度の申請の流れ
受取代理制度を利用する際の一般的な流れは以下のとおりです。下線部分が被保険者・被扶養者が手続きを行う部分になります。
- 1.申請書に必要事項を記入し、健康保険組合に提出する
- 2.健康保険組合が医療機関に申請受付通知書を送付する
- 3.出産後、医療機関が健康保険組合に出産に関わる費用などの書類を送付する
- 4.健康保険組合が医療機関に支払う
このように、受給者にとっては直接支払制度と大きく変わる点はないといえます。
出産費用と出産育児一時金に差額が発生した場合
直接支払制度と同様に、出産費用が出産育児一時金の支給額を上回った場合、超過分を退院時に支払うことになります。
下回った場合は、健康保険組合に差額を請求できます。
自身で支払いを済ませてから行う「事後申請」
直接支払制度・受取代理制度を利用しない場合、産後に自分で出産育児一時金を請求できます。いわゆる事後申請と呼ばれるものです。
この方法だと、退院時に出産費用を自費で全額支払う形になりますが、「クレジットカードで支払うとポイントがつく」などのメリットがあります。
事後申請する際の一般的な流れは以下のとおりです。下線部分が被保険者・被扶養者が手続きを行う部分になります。
- 1.支払制度に関する書類の「直接支払制度・受取代理制度は利用しない」にチェックを入れ、医療機関に提出する
- 2.退院時、医療機関に全額自費で支払う
- 3.出産後、申請用紙、医療機関との合意書、分娩などの費用の明細書をそろえ、健康保険組合または各市区町村に提出する
- 4.申請後、2週間から2カ月で指定の金融口座に出産育児一時金が振り込まれる
出産育児一時金を利用すると出産費用を大幅に抑えられます。
産後は赤ちゃんのお世話で忙しくなりがちです。早めに受給条件を調べたり、支給方法を決めておいたりすると、いざというときに安心でしょう。
制度をうまく活用して経済的な不安を減らし、安心して出産に臨みたいですね。
参考
※1 全国健康保険協会「子どもが生まれたとき」
※2 厚生労働省「出産費用の見える化等について」
※3 全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき」
※4 全国健康保険協会「健康保険出産育児一時金支給申請書」
※5 厚生労働省「『出産育児一時金等の受取代理制度』実施要綱」
監修者:社会保険労務士法人クラシコ/代表 柴垣 和也(しばがき・かずや)
昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
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